アンタを食わせるために生きてるんじゃない!:城繁幸「若者はなぜ3年で辞めるのか」

「アンタら上の世代を支えるために、僕らは生まれてきたんじゃない! 僕らの人生は僕らのためにある」

「高度経済成長時代に昼夜を問わず働いて、現代の豊かさをつくってきたのは、誰だと思っているんだ」

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 今日も不毛な世代間の衝突が、街場のどこかで起きているでしょうか。
 
 城繁幸著「若者はなぜ3年で辞めるのか」に通底したテーマは、今日も街場で繰り返される世代間の衝突に他なりません。

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 さて、皆さん。現在、大卒入社3年以内で、何パーセントの若者が離職するかご存じでしょうか。
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 なんと!、いまや、その数字、36.5%に達しているそうです。
 かつて離職率が1割だったことを考えると、ここ数年でその数字は3倍になっている。そして、本書は、若者の早期離職の原因を「年功序列のレールが崩れたこと」に求めます。

 上の世代は、「大丈夫、今はキツイけど将来は楽になるから」と若者を懐柔し、多くのキツイ単純な労働を若者に押しつける。

 しかし、バブル世代以降の若者は、上の世代の欺瞞を見抜いていく。
 
 成果主義に移行し、定期昇給がなくなり、かつ上に大量の管理職が余っている現状で、いつ仕事が楽になるというのか。

 いつになったら、自分のやりたい仕事ができるようになるというのか。自分らしい仕事に取り組むことができるのはいつの日なのか。
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 Hopeless

 そう自分の将来が、全くHopeless(ホープレス)であることを悟っていく。そして、彼らは積極的に降りていく、のだそうです。かくして「自分探しの旅」が始まります。

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 正直言って、本書の説明が正しいかどうか、専門外の筆者にはわかりません。まぁ、そんな気もするし、ちょっと単純すぎりんじゃないかな、という気もする。皆さんの実感としてはいかがでしょうか。

 ただ、ひとつ印象的だったことがあります。

 「若者の自分探しの旅」というのは、圧倒的に上の世代にとって有利なのだ、とわかりました。

 上の世代の戦略としては、若者に「いいよ、いいよ、自分らしい仕事を見つけなさい」と言っている方が、圧倒的に得なのです。

 つまりこういうこと。

 そもそも「自分らしい仕事」なんか、なかなか見つかるわけがない。仕事なんか、そんなものです。これは僕もそう思います。

 でも、そのプロセスにおいて、若者たちは正社員の地位を自ら捨ててくれる。で、年収3分の1にも満たない派遣社員として働いたり、フリーターとして働くことを自ら選択してくれる。彼らは正社員と同じ仕事を圧倒的低賃金でこなしてくれるのです。

 そして、これが上の世代を支えることになります。

 少子化、人口減少で市場規模が拡大しない現在、上の世代が、どうやってこれまでの「高賃金」を維持するか。

 売り上げがあがらないのだから、間接費を削るしかありません。つまり、上の世代の高賃金は、「若者の自分探し」によって維持されている。

 そう考えると、もしかすると「若者の自分探しの物語」というのは、上の世代によってつくられたのではないかと邪推してみたくもなります。

 巧妙だよなぁ。

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 午前5時50分・・・僕の乗っている電車は大手町につきました。研究室には6時過ぎにはつけるでしょう。今日も夜まで仕事です。

 自分は「自分探し」はしていません。また、今の仕事から「降りる」気も毛頭ありません。しかし、その僕も「若者」のひとりです。

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