蓮實重彦先生、季刊リュミエール

 先日、あるTVディレクター、Webディレクターの方と飲んでいたときに、映画の話になりました。どちらの方も映画好きで、かつ映像に携わっていたこともあり、話していると、ポンポンと映画のタイトルがでてくる。

 ○○という映画の、○○のシーンの、○○はよかった

 みたいな、マニアックな会話でした。僕は「ほほー」と思って楽しく聞いていましたが、二人ともが強い影響を受けていたのは蓮實重彦先生の評論でした。彼らがまだ若い頃、蓮實重彦先生が編集をなさっていた「季刊リュミエール」の、扇情的で、かつ、挑戦的な批評に興奮していたとのこと。

 蓮實先生といえば、僕が駒場に入学した頃の学部長。卒業したときは、総長としてご活躍になっておられました。

 駒場での、蓮實先生の映画論の講義では、「北野武を講義にぜひ呼びたい」というようなことをおっしゃっていたような記憶があります。

 この映画論の授業、とても人気講義で、初回の授業は数百人の学生が殺到してしまうんですね。で、蓮實先生は、人数を減らすため(!?)、初回の授業で「過酷なイニシエーション」をなさいます。

 新入生なんて誰も見たこともないような昔の映画をみせて、過酷な質問を、学生にあびせるのです。彼が指名するのは実は、彼の院生(たぶん)で、その質問に何のよどみなく答えてしまう。
 そういう非常に高度なやりとりを見ていると、「オレ、この授業でやっていけるんだろうか?」と新入生たちは、みな、思うようになる。で、人数が減る(笑)・・・みたいな感じです。

 うーん、真意はわかりませんが、その後の授業では、そういうやりとりはあまりなかったので、きっと、そういう目的でなさっていたのだと思いますけど。だって、教室から人があふれて満員電車のような状態だったからね。

 あと、僕は蓮實先生のお言葉で、自分の成長を感じたことがあります。

 入学式のときは、蓮實先生の「とてもありがたい高尚な式辞!?」が、何一つわからなかったのですが、卒業式の「ありがたい送辞」は、すべて意味がわかりました。
 「嗚呼、4年間で僕も成長したなぁ」・・・と変なところで感慨深くなりましたけど。

 蓮實先生が編集なさっていたという「季刊リュミエール」は、恥ずかしながら、実は、僕はまだ一度も目を通したことがありません。それがどういう雑誌だったのか、わからないのですが、二人のディレクターの方々のやりとりを聞いていると、なんだかワクワクしますね。

 ちょっと今日は、これから本屋、古本屋さんなどをまわって、探してみようかな・・・と思っています。あるとよいけどね・・・。

 それにしても、異領域の人たちと話すのは、本当に愉快ですね。「あなたの知らない世界」じゃないですけど(古いか)、「まだまだ知らない世界があるんだなぁ」と思うのです。

 「裸のマハ」とかで有名なスペインの画家、フランシス=ゴヤは臨終の際、「オレはまだ学ぶぞ」と言ったと言われています。別に、僕は「臨終」を迎えているわけじゃないけど(笑)、やはり思うのです。

 オレはまだ学ぶぞ

追伸.
 この日、Webディレクターの方が、自分の仕事についてこんなことを言っていました。

 Webのデザイナーは、優秀な人ほど、クライアントの過酷な要求には耐えられません。そのために、わたしのようなWebディレクターが必要なのです。

 なるほど、と思いました。

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