少年探偵団

 20年前、僕は「少年探偵団」の一員だった。

 「少年探偵団」とは江戸川乱歩の小説にでてくる、明智小五郎の弟子小林少年の率いる探偵グループである。

 彼らは「7つ道具」とよばれる道具を常にポケットにしのばせ、怪人二十面相と戦う。明智小五郎の手足となり、彼の探偵活動を支援することが探偵団の目的であった。

 もちろんのことながら、僕の所属していたグループは、小説の世界のそれではない。

 当時、乱歩のグロテスクな世界観に惹かれ、それを図書館で乱読していた何人かの男の子たちで、結成した旭川の「少年探偵団」である。僕は作戦参謀として、この探偵団の活動に参加していた。

 僕らの少年探偵団のミッションはひとつ。我が小学校の平和を維持することである。

 僕らはミニ望遠鏡、懐中電灯、ナイフなどの7つ道具を自分たちでこさえて、常に所持していた。いつくるかわからない事件を待って、日々、鍛錬に励んでいた。

 少年探偵団の活動は1年以上は続いたと思う。まぁ、いろいろやっていたが、一番役にたったのは、野口さんという女の子が、靴を隠されて困っていたのを救ったことだ(野口は仮名です)。「野口、我々が調べるからには、君も大船にのったつもりでいたまえ」という感じで、鼻息をふんふん言わせながら調査を開始したことを思い出す。

 なぜかは知らないけれど、野口さんの靴は、ふだんはあまり使われない体育館横の女子便所にあった。「まさか、ここにはあるまい」と疑いつつも、女子の目を盗んで、何tか女子便所に侵入した探偵団員が靴を掃除ロッカーの中から見つけた。

 この犯人をおって数ヶ月のあいだ、いろんな人を尾行した。
 「ガサ入れ」と称して、人の机の中を勝手に探したりもした。また、「追い込み」と称して「人をつかまえて、わき腹をくすぐって、自白を迫ったりもした。

 だが、なかなか犯人がわからず、最後にはどうでもよくなってやめた。メンバーで話し合い、「野口、女々しいぞ、昔のことは忘れろ!」ということになった。今から考えれば、なんともはた迷惑な集団である。
 
 許されるならもう一度、こういう遊びをしてみたいなぁ。週末、探偵のテレビを見ていて、そう思った。

 僕らは少年探偵団!

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