オープンソースの風

 昨今のeラーニング業界を見ていると、ロラン・バルトのセオリーを思い出してしまう。

 「作品からテクストへ」
 「作者は死んだ」
 
 という挑発的なコンセプトで、現代哲学を切り開いたのは、コレージュ・ド・フランスにて教授をつとめたロラン=バルト。

 彼の哲学がきっかけとなり、作品における作者の特権的な地位は剥奪された。作者の創意、作者の代弁した他者の声、そして、読者の解釈によって編み込まれた多声的な空間として、作品をみなす視座を、切り開いた。

 「あなたの声は、あなたの声ではない。あなたは、知らず知らずのうちに、他者の声を腹話している」

 ...そのまま上記の文章を読めば、まさに「貞子」的状況。何だか背中が寒くなってくる。でも、この考え方も、彼が切り開いた現代思想の常識である。

 そして情報通信技術の普及した現代、もしロランバルトが生きていたら、こう言うのかもしれない。

 ソフトウェアの<作者>は死んだ

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 このところ、eラーニング業界では、オープンソースの動きがかまびすしい。

日経 Opensource LMSについての記事 http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/ITPro/NEWS/20050803/165847/

Opensource LMS
http://www.oss.ecl.ntt.co.jp/lms/index.html 

 要するに、従来の「システム売り切り」のビジネスモデルから、システム自体は無償で提供し、利潤の追求はサポートでおこなうというビジネスモデルへの転換だと言える。

 システムには、いろいろな人々の声が反映している。システムは、あなただけで開発するものじゃない。

 オープンソースのLMSたちをつめるこめるだけ詰め込んだ、ブータブルCDも、人気を集めているようである。ここには、東京大学情報基盤センターが開発したCFIVEも盛り込まれている。

KNOPPIX LMS http://www.eitl.cs.takushoku-u.ac.jp/knoppix/LMS/

 僕もかつてexCampusというオープンソースシステムの開発をディレクションしていた。そのときは、まさかこんな時代がくるなんて予想だにしていなかった。

 ネクスト・フェーズがあらわれようとしている。そこには、どんな可能性が開けているか。

文責:中原 淳