批判される人間になれ!

 昨夜、NHK「プロフェッショナル」を見た。

 脳神経外科医・上山博康先生の言葉が印象的だった。この言葉は、上山先生が、師匠から言われた言葉だそうです。

「批判される人間になれ。人間何かをやっていれば、必ず批判される。必ず人のやっていることを見て、評論家みたいなやつがでてくる。評論家になるな、批判される人間になれ」

 まさに同感。そういえば、中島みゆきの歌詞にこんなのがあったことを思い出す。

 闘う君の歌を
 闘わないやつらが笑うだろう

「評論家」や「闘わないやつら」なんか、そのへんに放っておけ。そんな奴らにかまう時間があったら、他にやらなければならないことがたくさんある。

 僕らの時間は限られている。

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 週末、某社の企業研修で逗子の湘南国際村へ。段取りの最終確認し、いざ実施。うまくいきますように。

投稿者 jun : 2007年9月30日 08:33


学習、この不可思議なもの

 誰も教えてないのに、いろいろと世界を探索しながら、知らずしらずのうちに学ぶ。そして、ある日突然、何かができるようになる。世界が広がる。世界が広がるから、さらに学びの機会が広がる。

 子どもの「発達のプロセス=学習プロセス」というのは、本当に不思議なものです。この「不思議さ」を前にしては、言葉を失う。

 僕は罪の意識を覚えます。この不可思議で、人間に与えられた天賦の能力を、慣れた口調で、訳知り顔に語って良いものか、と。僕は、学習について、ほとんど何一つわかっていないのだな、と思います。

 TAKUの成長を見ていて、僕もカミサンも全く飽きません。いい経験をさせてもらっている。いいものを見ている。心からそう思います。

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 早いものでTAKUは10ヶ月になりました。いろんなことができるようになってきている。

 指先がずいぶん器用になりました。前は「押す」という動作ができなかったのですが、最近は、人差し指で、何かを「押す」ということができるようになりました。

 下記はおもちゃについているボタンを押している様子。わずか数ヶ月前までは、彼は、小さいボタンを押すことはできなかったのです。

omocha_yubi.jpg

 それにしても、このおもちゃ、指先を鍛えるための知育玩具です。ボタンやら、ヒモやら、ビデオテープやら・・・子どもが好きなアイテムが、ミニチュアになってたくさんついているものなのですが・・・。

 確かに、子どもはビデオは好きだ。でも、「パパのまる秘ビデオ」って何気なく書いてあるのは、教育上、どうなんだろうか。しかも、NO.2だぜ。NO.1はどこいった?

omocha_video.jpg

 最近は、指先がずいぶん器用になって、寝ているカミサンの「鼻の穴」に指をつっこむ、という芸当もできるようになったそうです。ブラボー、オモロイからもっとやれ。

 食事はほぼ卒乳しました。そして食べる量も増えている。ずいぶん、ウ●コも「一人前のオイニー」になりました。前は香ばしかったのにね、今はくせーよ。でも、いいんだよ、それで。お父さんもお母さんも、嬉しいです。

paku2.gif

 歯も生えました。上に4本、下に2本です。下記は、こちょばして、無理矢理笑わせてとった写真です。なかなかむずかしいね、歯の写真をとるのは。

takuto_no_ha.jpg

 あと、最近、「男臭」がするようになってきた。「獣臭」?。ちょっと前までは、甘いミルクの臭いがほんわか、としていたのに。今、だっこをすると、「男くさい」。というか、大学院に続き、自宅も、「男塾」かよ。

 あと2ヶ月でついに1年・・・子どもの「発達」というのは、「ブレーキのない車に、トップギアでアクセルを踏み込む」ようなものですね。

 そして、彼の人生は続く。
 でも、まだはじまったばかりだね。
 大いに動け、大いに学べ。

投稿者 jun : 2007年9月29日 07:00


あなたの組織の重さはどのくらい?:沼上幹他著「組織の〈重さ〉」を読んだ

 沼上幹他著「組織の〈重さ〉」を読んだ。

 戦略に関する情報は共有されない一方で、社内の合意形成(根回し・報告)に過剰な時間と労力を傾ける日本の「重い」組織。

 現代の組織が抱える機能不全の多くが、この「組織の重さ」にあった。このことを質問紙調査をもとに実証的に論じている。

 本書では、「組織の重さ」指標と各データの相関を調べ、パス解析でモデルをつくるという地道な作業が繰り返されている。このような大規模な組織構造調査は、ほぼ20年ぶりだという。

 去年の秋あたりから、僕、荒木さん、北村君、坂本君らで、日本の企業を対象にした「組織調査」を行っている。先日、データの打ち込みが終わり、いよいよこれから分析がはじまる。
 また、11月には某社との共同研究で「組織診断ツール」の開発がはじまる。こうした意味でも、本書は、大変参考になった。

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 それにしても、本書を読みながら、大学の「組織の重さ」ってどのくらいなんだろう、と考えていた。

 大学の場合は、教授会という形式的にフラットで、すべてのファカルティが等価な裁量をもつ意志決定機関がある。ゆえに、「組織としての意志決定」は遅く、あまり生産的であるとは言えない。反面、あくまで個人が個人の裁量で何かをやりたい場合には、誰からも制約を受けないから、意志決定は早い。

 大学は、今、ファカルティ個人の自由さを確保しつつ、組織としての意志決定を迅速かつ強固に進めなければならない時代にはいってきている。

 大学の「組織としての重さ」を解消するには、その組織構造にメスが入らない限り、いくら小手先で上っ面の民間の経営手法を真似ても、話にならない。

■目次
第1章 日本企業の組織問題
1.日本企業の強さの源泉とその劣化
2.組織構造研究の停滞
3.組織の〈重さ〉研究プロジェクトの概要
4.まとめと本書の展望
第2章 組織の〈重さ〉指標の作成
1.組織の〈重さ〉の操作化
2.因子分析
3.達成感・成長機会・利益率と〈重さ〉の相関
4.まとめ
第3章 調整比率と組織の〈重さ〉
1.各種活動の遂行に必要な日数と調整比率
2.調整比率と日数の相関
3.調整比率・経営成果と組織の〈重さ〉の相関
4.まとめ
第4章 計画・標準化・ルール
1.はじめに
2.計画と標準化
3.社会化・複雑怪奇化(難解性)と組織の〈重さ〉
4.まとめ
第5章 ヒエラルキーと組織の〈重さ〉
1.はじめに
2.BU長までの情報伝達経路の長さと命令の背後の理由説明
3.上下の情報流
4.ルート距離と上下の情報流と組織の〈重さ〉
5.まとめ
第6章 パワー分布と組織の〈重さ〉
1.はじめに
2.コントロール・グラフと組織の〈重さ〉
3.職能部門間の水平的パワー分布
4.職能部門間での水平パワー分布の変化
5.パワーと組織の〈重さ〉
6.まとめ
第7章 水平関係と組織の〈重さ〉
1.はじめに
2.フォーマルな水平関係
3.社内ネットワークの記述統計
4.社内ネットワークと組織の〈重さ〉
5.知人・説得対象者・支援者の相互関係
6.まとめ
第8章 組織プロセス変数と組織の〈重さ〉
1.はじめに
2.BU長のリーダーシップとパワーベース
3.リーダーシップおよびパワーベースと組織の〈重さ〉
4.リーダーシップと対外影響力,パワーベース
5.コンフリクト解消法と組織の〈重さ〉
6.組織プロセス変数と組織の〈重さ〉の因果的連関
7.まとめ
第9章 組織の〈重さ〉の克服に向かって
1.全体の構造的理解
2.リーダーシップによる変革
3.リーダーシップに対する構造的な制約
4.BU長の認識
5.まとめと残された課題
終章 日本型組織の再活性化に向けて


投稿者 jun : 2007年9月28日 10:53


プリ面ぐるみ&祝1万部

 ちょっと前のことになるけれど、あるお店に家族で出かけたら、オモシロイ商品を見つけた。「プリ面ぐるみ」である。

プリ面ぐるみ
http://www.shalark.co.jp/index.html

 要するに、デジカメ写真の「顔」を立体的なお面にして、コスプレ系のマスコットを作成できる、という商品である。価格は小さいもので1000円。ネットでの申し込みもできる。

「着ぐるみ狂」のカミサンとしては、これをほっとおく手はない。
 早速、TAKUのインスタント写真をとってもらい、マスコットをつくってみた。この日のTAKUは、あまり機嫌がよくなく、何度撮影しても、「申し訳なさそうな顔」になってしまったけれど。

ningyou.jpg

 この商品の主たるターゲットは、「子ども」とか「彼女」とからしい。若い二人ならば、お互いの顔を「ぬいぐるみ」にして、日々、どこへ行くのでも携帯したりするものなのだろうか。

 二人の関係が絶頂期の頃はいいけれど、雰囲気がビミョーになってきたら、嫌だろうな・・・別れちゃったりしたら、大変。人形だから、捨てるに捨てれん・・・まぁ、そんな後ろ向きの心配はしないのか、若い人は。

 というわけで、もし興味のある方は試してみてください。

 ---

追伸.
 いやぁ、めでたい!
 拙編著「企業内人材育成入門」(ダイヤモンド社)が、ついに5刷、1万部に達したそうです。お読みいただいた皆様、本当にありがとうございました。

あなたの会社に「人を育てる科学」はありますか?

投稿者 jun : 2007年9月27日 08:26


Learning bar「京都花街に学ぶ人材育成」

 下記、メルマガで既に募集を開始していますが、もう3分の1が埋まりました。くれぐれもお早めに!

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Learning bar@Todai 2007

「京都花街から学ぶ人材育成:
 夢見る少女は、どうやって一人前の舞芸妓さんに
 なるのか?」

2007年11月9日(金曜日)東京大学
=================================================

 2007年11月のLearning bar - 今年最後のLearning
barは、神戸大学よりスペシャルゲストをお招きいたします。

『京都花街の経営学』(東洋経済新報社)を上梓なさ
ったばかりの西尾久美子先生(神戸大学大学院
経営学研究科・COE研究員)です。

京都花街の経営学

 西尾先生は、400年続く「京都の花街」を対象とし
て、その事業システム、舞妓さん養成の人材育成シ
ステム、キャリア形成過程を明らかにした研究を、
金井壽宏先生のご指導のもとまとめ、神戸大学より
経営学博士を取得なさりました。

西尾久美子先生のblog
http://www.kyotohanamachi.biz/

 11月のLearning barでは、

1.京都・芸妓舞妓の育成システム
2.京都・芸妓舞妓の評価システム
3.京都・芸妓舞妓のキャリア形成

 などの観点から、広く、人材育成に関する講演を
いただく予定です。

 参加をご希望の方は、下記の参加条件をお読みになり、
フォームに必要事項をご記入のうえ、10月末日までに
sakamoto [atmark]tree.ep.u-tokyo.ac.jpまでご
連絡下さい。

 なお、応募多数の場合、〆切前でもお申し込みを
中止する場合がございます。どうぞお早めにお申し込み
ください。

 ふるってご参加下さい。
 
     企画担当:中原 淳(東京大学・准教授)

※Learning bar / Cafe (Seriousを含む)は、
NPO法人 Educe Technologies主催、東京大学大学院
学際情報学府 中原研究室が共催の学術イベントです。
 
 ---

○主催
 NPO法人 EDUCE TECHNOLOGIES
 http://www.educetech.org/
 
 EDUCE TECHNOLOGIESは、教育環境の構築に
 関する調査、研究、コンサルティングを行う
 非営利特定活動法人です。
 
 企画担当
 副代表理事 中原 淳

 
○共催
 東京大学大学院 学際情報学府 中原淳研究室
 http://www.nakahara-lab.net/
 
 
○日時
 2007年11月9日(金曜日)
 午後6時00分より午後9時まで
 
 ※時間が限られておりますので、定刻通り
  に始めます。本郷キャンパスは意外に
  広いです。くれぐれも、迷子になりませんよう
 
 
○内容(案)

 □開場
 (5時30分)
  ・今回のLearning barでは、ソフトドリンク、
   ビール、ワイン等の飲み物ののみご用意して
   おります。食べ物はご自由にお持ち込み下さい。

 □企画趣旨説明
 (6時00分-6時15分)
  ・中原 淳(東京大学)

 □講演前半
 「京都花街の基礎知識-芸舞妓のキャリア・パス」
 (6時15分 - 7時15分)
 (25分講演+5分質疑)×2セット
  ・西尾久美子先生(神戸大学)

  京都花街の「舞妓さん」は、実は京都以外の
出身者が9割。伝統文化の技能や慣習について
ほとんど知識がない10代半ばのごく普通の少女
たちが、なぜ1年程度の育成期間で、サービス・
プロフェッショナルになれるのかを、キャリア
形成の視点から考えてみます。

   - 10分トイレ休憩 -

 □講演後半
 「芸舞妓の育成-学校制度と評価制度」
 (7時25分 - 8時05分)
  (35分講演+5分質疑)×1セット
  ・西尾久美子先生(神戸大学)

  芸舞妓さんたちは、現役である限り、花街にあ
る学校の生徒である。10代半ばから80歳まで、
多様な年齢と経歴の芸舞妓はどのように学ぶのか?
 また、どのような評価を彼女たちはうけるのか?
 芸舞妓の育成について、花街にある制度から考える。
 
 
 □ペアディスカッション
 (8時05分 - 8時25分)
  お隣2名 - 3名程度で自己紹介をし、20
  分間ディスカッションをしていただきます
 
 
 □全体質疑応答&ラップアップ
 (8時25分 - 8時45分まで)
  講演者をまじえ、質疑応答を行います

 
○場所
東京大学 工学部2号館 9F 93B
大学院情報学環 教室
http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_04_03_j.html 

地下鉄丸の内線本郷三丁目駅から徒歩15分程度
地下鉄南北線東大前駅から徒歩10分程度
 
 
○参加費
 2000円(一般・学生)
 (講師招聘費用、講師謝金、飲み物、運営費等
  に支出いたします)
 
 
○参加者
 参加をご希望の方は下記のフォームをご利用のうえ、
 sakamoto [at mark] tree.ep.u-tokyo.ac.jpの
 メールアドレスまで、お申し込みをお願いします。


○食事
 ソフトドリンク、ビール、ワインなどの飲み物を
 準備いたします。
 パン、サンドイッチ、おにぎり、弁当など、ぜひ、
 簡単な食事をお持ち込み下さい。

 
○参加条件
 本ワークショップの様子の写真、NPO Educe Technologies、
 東京大学 中原研究室が関与するWebサイト等の広報手段、
 講演資料等に用いられる場合があります。
 参加にあたっては、上記条件を許諾いただける方に限ります。

 欠席の際には、お手数でもその旨、
 sakamoto [at mark] tree.ep.u-tokyo.ac.jp
 までご連絡下さい。
 人数多数のため参加をお断りしている場合には
 繰り上げで他の方に席をお譲りいたします。
 
 
〆ココカラ=======================================
 参加申し込みフォーム
 sakamoto [at mark] tree.ep.u-tokyo.ac.jpまで
 10月末日までにお申し込み下さい
-------------------------------------------------

 上記参加条件のもと、参加を申し込みます。

氏名:(            )
フリガナ:(          )
所属:(            )
メールアドレス:(       )

〆ココマデ=======================================

投稿者 jun : 2007年9月26日 07:00


教育工学会3日目

 教育工学会3日目。

 ポスターセッション。

 早稲田大学の山本さんによる、「教師組織」に関するレビューの発表が勉強になった。心理学、教育学、社会学、経営学をまたがる研究だけに、この研究領域はレビューする文献が膨大になる傾向があるので。
 「組織として学校をとらえる」という視点は、今後、伸びるのではないか、と思う。

 また、早稲田大学の山下さんによる、バレエの熟達化に関する研究も面白かった。熟達にしたがって、バレエダンサーが、身体をどのように意識するようになるか、という話。分析手法も参考になった。その後、大学院生2名とも話したけど、同じような感想をもったようだった。

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 午後、課題研究。
 僕もここで発表をした。

 プレゼン終了後、ある人に感想をもらった。このところ、こう言われることは実に多い。

「中原さんのプレゼンは、営業の人っぽいですね」

 営業したことないけどなぁ。

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 学会終わった。
 充実していたけど。
 が、3日間は疲れた。

投稿者 jun : 2007年9月25日 08:36


教育工学会2日目

 教育工学会2日目。

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 ポスターセッションへ参加。今年から教育工学会は、大会参加者増に対応するため、ポスターセッションをはじめた。

 下記、印象深かった発表。

 ひとつめは、複雑ネットワーク理論を応用して電子掲示板のコミュニケーションを分析する、という大島先生(静岡大学)のご発表。複雑系に関しては、2005年のAERAでも特集セッションが組まれていたので、そろそろくるだろうな、と思ってたけれど。

 ふたつめ。木原先生(大阪教育大学)の「ミドル教師の活性化」に関するご発表。学校での「授業研究」を促進する役割として、10年目あたりのミドルを位置づけ、オンラインで育成する、というお話であった。

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 一般発表へ。

 山下さん(静岡大学)の発表。勉強になった。

 自己学習能力の向上のためには、学習観や主体性といったもの(=認識主体性:Epistemic Agency : Scardamaria 2002)を向上させることが重要。EAの発達を、協調学習の中から拾い出していこうということらしい。

 発表中にあった下記の要件は、今後、e-journal plusや舘野君プロジェクトの評価指標を決める際に参考になるな、と思った。

知識を進展させる議論の要件(Bereiter 1994)
 ・問題設定の変換 
 ・検証可能性の確保
 ・集団的妥当性の向上
 ・検証対象の拡張

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 大手広告代理店「博報堂」田村さんのご発表

 ブランドのヴィジョンを、ボトムアップのワークショップで構築する手法の提案。

 上からトップダウンでブランドを構築すると、1)なかなか話が進まない、2)予定調和的なアイデアしか出てこない、3)他人事になりがち、という問題がある。これを回避するために、ワークショップという手法に何ができるか、という話であった。

 博報堂How(HAKUHODO ORIGINAL WORKSHOP)のご紹介。組織開発の手法である、アプリシエイシブ・インクアイアリーに似ているな、とい印象。「利害関係者の全員参加によるコミットメントのひきだし」という共通点がある。

 ご発表の中で、「勇気をもっていったんはメンバーの話を拡散に導く」とおっしゃっていたのが印象的。

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 安武先生(広島大学)の複雑性ネットワークの発表へ。
 人々の結びつき=ネットワーク構造が協調学習に与える効果を複雑系ネットワーク理論によってモデリング。要するに、ミクロな学習者同士の相互作用が、学習環境(構造)に与える影響を考察したのだと思った。

 この分野は伸びるのではないか、と思った。

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 シンポジウムへ参加。

 熊本市立飽田東小学校の前田康裕先生の「ユニバーサルデザイン」の授業のプレゼンテーションが興味深かった。開発者、研究者、授業実践者、教育行政の4つのあいだに循環的なエコシステムが成立していないことを指摘していらっしゃった。

 特に、

 授業者が授業実践ニーズを教育行政につたえられないこと
 研究者が研究成果を授業実践者につたえられないこと

 は問題だと思った。

 堀田先生の話は、教育行政の話で、非常に生々しかった。「地方自治一括法」によってはじまった「地方の時代」がはじまった。「地方の教育委員会」「地方の首長」に対して、どのようにアカウンタビリティを果たしていくかが問題だろう。

 教育工学の定義
 ・教育における「現実の問題」を解決する学問
 ・ただし「いつ頃に解決するか」は様々

 というのは考えさせられた。

 佐伯胖先生の提起された問題は、「語るべきこと」が多すぎるので、また別の機会に。

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 明日はいよいよ最終日。
 はやく家に帰りたい。

投稿者 jun : 2007年9月24日 09:08


日本教育工学会初日!

 早稲田大学で開催されている日本教育工学会に参加している。
 3連休ぜんぶ学会です。
 下記、印象に残った発表の自分メモ。

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 深見俊祟さん(大阪市立大学)の発表。

 中堅教師がいだく「実践イメージ」が時間をへて変容していくことを、メタファ法とインタビューで明らかにした。

 従来、先行研究では、ある一時点で、教師がどのような実践イメージをもっているか、メタファ法を用いて調査したものがあったと思う。初任者、ベテランとの比較であった。

 本研究に関しては、ミドルに注目している点、クロノジカルにメタファの変化を追っている点がユニークな点なのかと感じた。

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 稲垣君(東北学院大学)に廊下であった。

 聞くところによると、ビリーザブートキャンプで8キロ痩せたらしい。確かにほっそりとした印象。

 ちなみに、僕は、今まで言わない出来ましたけど、モロ3日ボウズで辞めちゃいました。つーか、筋肉痛がひどくて、やる気うせた。

 すげーな、稲垣君。

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 ベネッセコーポレーション宮原詩織さんの「協調ライティング環境」に関する研究。

 協調ライティング環境とは、

 ・ジグソー学習を応用した協調的なレビューが可能になる
 ・文章推敲プロセスを振り返られる

 場であるようだ。

 望月君(東大)や、舘野君(東大大学院)など、本学でも、文章読解、文章ライティングの研究が盛んだ。
 結局、「他者がどのような役割をはたし、何が変わったのか」を記述すること、換言すれば、「協調であることによって起こった出来事の意味をアカウントすること」がポイントなのかもしれないと思った。分析手法など、参考になった。

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 教材内容解釈支援システムの有効活用が促す知識の再構築。遠山紗矢香さんの発表。

 協調学習を行う前には、あらかじめ自分の意見(=初期仮説)を持たせることが重要である、と。その自分の意見を形作るために、システムからプロンプティング(質問)を行う。そうやってもたせた初期仮説を、協調学習システム(ReCoNote)に読み込ませて、ジグソー学習をする、という話であった。
 そうした方が、よりよくジグソー学習ができる(内容を関連づけながら学べる)そうである。

 非常に興味深い研究だと思った。

投稿者 jun : 2007年9月23日 09:18


ファカルティ・ディヴェロップメント2.0ワークショップ

 今日は、Faculty Development 2.0 Workshopと題して、名城大学の神保啓子さんにご講演いただいた。

fdw1.jpg

 前にも話したけれど、僕は、FD(Faculty Development)にはいくつか腑に落ちないところがある。一般に広く受け入れられているFDの定義とは、下記のようなものである。

「教授団のとくに教育者としての役割の側面において、その才能を豊かにし、関心を広げ、能力を改善し、あるいは、その専門職的かつ個人的成長を促進していくことである」
(Gaff 1976)

「主要な関心は授業過程に向けられるが、とくに授業方法、授業技術、及び学生の授業評価に向けられる」
(Bergquist & Phillips 1975)

 要するに、それは「ファカルティ(教授・准教授・講師)が主体となって授業プロセスのカイゼン」をめざす試みである。

 もちろん、それは100%必要であるし、とても貴重な試みだと思う。
 しかし、そのことは認めながらも、どうも、僕にはこういうFDのとらえ方が腑に落ちない。一言でいうと、「FDの概念、実施単位をもう少し広くとらえられないものだろうか」と思う。

 それは下記のような疑問からなる。

 ●大学での学習=授業か?
  ・授業は最も大きな教育活動であるが、大学での
   Quality of Learningは、それだけで限局され
   るわけではない
  ・大学がもつ学習リソースの中で、変えうるものが
   あるとすれば、それこそ変わるべきではないか。
   それに答えることこそが、FDではないか?

 ●エージェンシーの問題
  ・従来のFDは、いわゆる「キョウイン」と「ジム
   カタ」という2分法を受け入れてしまう。
  ・教育のことを考えるのは「キョウイン」だけなのか?
  ・むしろ、大学教育を考える人々のアクターネットワーク
   を構築することこそが、FDなのではないか?

 ●授業のカイゼンでいいのか?
  ・既存の授業のメソッドを変えるのが、FDなのか?
   新たな教育価値をもつと思われてはいるけれど、
   今の大学教育の枠組みからは外れてしまう試みを
   実践しうるのも、FDではないか?
  
 ●負担と普及の問題
  ・カイゼンFDとは「負担」としてイメージされる
   実際に「負担であるか、ないか」は問題ではない。
   既にできあがっているイメージが「負担」に直結
   することが問題である
  ・「負担としてイメージされる」ものは「普及しない」。
  ・「負担」としての「見え」をかわしつつ、したたかに
    普及をめざすモデルはないのか?

 ●FDの単位は「個人」か?
  ・FDを組織的広がりをもつものとして実施したい
   のであれば、それを支える組織スキームを構築
   するべきではないか?

 ●FDを語る言語
  ・FDを語る言語は、現在、高等教育論的な制度論風
   語りか、教育工学的な、教授法的な語りに限局
   されている・・・それで十分なのか?
  ・むしろ、それをサスティナブルな試みとして自律的
   に運営するためには、組織論的、かつ戦略論的な語り
   が内包されるべきではないか?

 ---

 今日、神保さんからいただいた話は、これらの僕の疑問に、いくつかのサジェスチョンを与えてくれた。非常に学際的でいて、エキサイティングな話題であった。

fdw2.jpg

 そこで提示されたアイデアはまだコンセプチャルなものもある。だが、問題の本質をズバリつくものであったと思う。さすがは、FDの現場で、教員とじかに向き合う数年間をすごした方の話だと思った。

 下記に、今回のworkshopで神保さんが語ってくれたスライドを公開していただけることになった。もしご興味のある方は、ぜひ、ご覧下さい。

Faculty Development 2.0 Workshop スライド
http://www.nakahara-lab.net/learning_cafe_bar/20070921_learningbar_jinbo.pdf

 最後になりますが、お忙しい中、ご講演を快諾してくださった神保啓子さん、そして、この試みを陰ながら支えてくださった東京大学大学院 学際情報学府の大学院生諸氏(坂本さん、坂本あつろうさん、酒井さん、山田さん、林さん)にこの場を借りて御礼申し上げます。

 本当にありがとうございました!

投稿者 jun : 2007年9月22日 08:19


子育てパパ力(ヂカラ)検定?

 父親を支援するNPO「ファザーリング・ジャパン」が、パパの子育て知識を問う「子育てパパ力(ヂカラ)検定」(パパ検)を来春からはじめるらしい。先日、カミサンが嬉しそうに教えてくれた。

「アンタも受ければ?」

あなたの「パパヂカラ」は? NPOが来春「パパ検」
http://www.asahi.com/life/update/0919/TKY200709190040.html

 成績によって、「スーパーパパ」「ナイスパパ」「チャレンジパパ」などの称号がもらえるそうだ。

 代表の安藤さんが「知識の優劣を問うものではない。父親になることの意義や役割に気づくきっかけとして前向きに楽しんでもらえれば」と、述べているように、パパ検は「競争」や「差別化」のためにあるのではないだろう。個人的には、「遊び心」があって、大変オモシロイ試みだと思う。

 それにしても、僕が受けたら、どうなるんだろう?
 いい加減きわまりないからなぁ、僕の子育ては。「わたしの教育論」のかたまりみたいなもん。「ダメパパ」とか、不名誉な称号をいただいてしまうような気がしてならない。

kaeru_takuto.JPG

 今日は「かえる」です。
 「着ぐるみ道」を爆走中!

投稿者 jun : 2007年9月21日 08:40


国家公務員の育成?

 朝、某大手薬局チェーンでインタビュー調査。

 薬局チェーンの内部には、パート社員 - 社員 - 店長 - エリアマネージャという階層がある。その階層の中で、人々がいかにコミュニケーションを円滑に行えるかが、売り上げ増の鍵である、という話であった。

 人は、「意味」を見いだすとき、はじめて学ぶことができ、そして動くことができる。どのようなスタッフであっても、組織の大きな目標や、今やっていることの社会的意義を、キチンと理解してもらうことが重要だそうだ。

 月並みだけれど、最初から最後まで「コミュニケーション」である。

 ---

 午後、人事院の研修で講演。各省庁の人材育成担当者が集まる会である。僕の方からの話題提供が半分。半分は、育成担当者でディスカッションを行った。

 国家公務員の人材育成は、これまで「現場」や「上司」にまかされ(アフターファイブの飲み会も含む)、「組織として個人の専門性発達や能力開発を促進する」、という発想はなかったのだという。「親方日の丸」を背景に、優秀な人がたくさん集まっていたので、彼らの能力開発を敢えて行わなくても、よかったのだろうと推測する。

 しかし、今の若い世代はそうした「組織の姿勢」に敏感だ。
 彼らは、「アフターファイブに一緒に飲みに行ってまで、上司から話を聞きたいとは思わないけれど、自分の能力を開発すること」には興味がある。そうした彼らに、組織として専門性発達の機会を提供できないことが、彼らから不評を買っている一因だという。
 今は、景気がよいこともあって、多くの優秀な人材が「民間」に流れるきっかけにもなっているそうだ。

 国のために働く若い人が元気にならなければ、国は元気にならない。ぜひ、彼らをエンパワーメントする様々な施策を実行に移して欲しいな、と思った。

 ---

 夜、ワールドビジネスサテライトを見る。結構長い特集だった。ワークプレイスラーニング2007の様子も映っていて、よかったと思う。テレビ東京記者ののAさんには大変お世話になった。ありがとうございました。

 この日記で以前予告したとおり、このイベントは来年も行いたいと思う。来年のテーマはまだ未定だが、「学びの視点から、人材育成からみなおす」という大枠は貫いていきたい。

 継続は力、だと信じている。

 ---

 明日は立教大学大学院での授業の初回。
 どんな学生たちに逢えるだろうか。楽しみである。

投稿者 jun : 2007年9月20日 07:48


ワークプレイスラーニング (Workplace Learning):質問編

 このところ3回にわたって、ワークプレイスラーニングについての話をしています。

ワークプレイスラーニングとは:定義編
http://www.nakahara-lab.net/blog/2007/09/post_1005.html

ワークプレイスラーニングとは:現場の学び編
http://www.nakahara-lab.net/blog/2007/09/workplace_learning.html

ワークプレイスラーニングとは:学習環境のデザイン編
http://www.nakahara-lab.net/blog/2007/09/workplace_learning_1.html
 
 これに関して、いくつか質問をお寄せいただきました。ありがとうございました。今日は、これに答えていくことにします。

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Q1.ワークプレイスラーニングとブレンディッドラーニング(blended learning)の違いは何ですか?

 ブレンディッドラーニングとは、企業教育の場合、「eラーニング」と「研修」の組み合わせをさす傾向があります。mもともとは、「eラーニング」の弱点を補うために、対面教育で「補完」することをさして、この言葉が作られました。

 これに対して、ワークプレイスラーニングは、もっと広いです。それは「学習」を「研修」だけの話に限定するのではなく、「現場の学び」をすべて含みこむものとして捉えます。

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Q2.ワークプレイスラーニングを実践している企業には、どのような企業がありますか?

「ワークプレイスラーニング」という言葉を使うか、使わないかは別として、多くの企業が「研修の限界」と「現場の学びの活性化」に興味をお持ちになっている、と思います。

 ワークプレイスラーニングは非常にひろい概念ですので、様々な実践がありえます。先日のワークプレイスラーニング2007では、「研修」と「職場におけるフォロー教育」を組み合わせた東京電力さんの事例や、「現場でのOJT」と「メンタリング」を組み合わせたHOYAさんの事例をご紹介いたしました。

ワークプレイスラーニング2007
http://www.educetech.org/test2/

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Q3.ワークプレイスラーニングは「経営学」の専門用語でしょうか?

 いいえ。

 ワークプレイスラーニングは学際的な研究領域ですので、単一の研究領域の知見に還元されるものではありません(Rothwell et al 2000)。

「経営学」「心理学」「社会学」「教育学」など、関連諸科学の専門的な知見があわさって、この学際領域を研究していくべきだと考えています。

 ワークプレイスラーニングは「研修と現場の学びの融合」というハイブリッド(異種混交)な主張を行っていますが、それを裏打ちする学問もハイブリッドなのです。

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Q4.ワークプレイスラーニングは、要するに「OJT」と「OFF-JT」の組み合わせですよね。

 ある一面では、Yes。ある一面ではNoです。

 確かにいわゆる「OJT」と「OFF-JT」を組み合わせたものは、ワークプレイスラーニングです。ただし、その組み合わせ「だけ」がワークプレイスラーニングではありません。

 ワークプレイスラーニングは、もっともっと広く「学習」を捉えます。他者とコミュニケーションをしながら、情報を交換したりすることも「学習」です。

 様々な「学びのタネ(=リソースといいます)」の無限の可能性こそが、ワークプレイスラーニングの可能性でもあります。

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Q5.インストラクショナルデザインでワークプレイスラーニングをデザインすることはできますか?

 できません。

 インストラクショナルデザインは、「教育のカリキュラム」のデザイン手法です。それは、学習環境を構成する「教材」「研修」といった要素に適用可能な手法です。

 一部に「インストラクショナルデザインの理論系」と「学習環境のデザインの理論系」をゴタマゼにしている主張が存在しますが、それは個人的には非常にマズイと思います。

 もちろん、だからといって、インストラクショナルデザインの有用性が少なくなるわけではありません。教材、研修に関して、ノイズの少ないものをデザインすることが可能だと思います。

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 今日のところはこんなところで。

ワークプレイスラーニングとは:定義編
http://www.nakahara-lab.net/blog/2007/09/post_1005.html

ワークプレイスラーニングとは:現場の学び編
http://www.nakahara-lab.net/blog/2007/09/workplace_learning.html

ワークプレイスラーニングとは:学習環境のデザイン編
http://www.nakahara-lab.net/blog/2007/09/workplace_learning_1.html

投稿者 jun : 2007年9月19日 07:00


ワークプレイスラーニング2007がワールドビジネスサテライトに

 先日東京大学で開催した「ワークプレイスラーニング2007」が、明日9月19日午後11時・テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で放映される予定です。もしよろしければ、どうぞご覧いただければと思います。

ワールドビジネスサテライト
http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/

ワークプレイスラーニング2007
http://www.educetech.org/test2/

 もちろん、「報道番組」ですので、大きな事件がなければの話です。総裁選の行方いかんによってはわかりません。予定が変わったら、すみません。

投稿者 jun : 2007年9月18日 16:41


舞妓・芸妓さんたちはどのようにして一人前になるのか?:西尾久美子氏著「京都花街の経営学」

 西尾久美子氏著「京都花街の経営学」(東洋経済新報社)を読みました。

 本書は、西尾さんが、5年にわたって京都花街をフィールドワークした研究成果です。この研究は、先だって、神戸大学の博士論文として受理されたそうです。出版にあたっては、一般の人向けに書き直されていますので、非常に手軽に読むことができます。

 なぜ、京都の花街は350年にも続いているのか?
 「一見さんお断り」はなぜ存在するか?
 舞妓・芸妓さんたちの人材育成はどのように行われているのか?
 舞妓・芸妓さんたちの評価システムはどのようになっているか?
 
 などなど、興味深い問いに答えるかたちで、エスノグラフィーが進行します。上記にありますように、「人材育成」についても、非常に興味深い議論がなされています。

 京都花街という「秘密の世界」をぜひ、垣間見てみたい、という方、また、サスティナブル(持続的)な人材育成システムをお考えになりたい方も、参考になるでしょう。
 ちなみに、京都花街の人材育成システムも、ワークプレイスラーニングでしたよ。

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 最後に「先行大ニュースです!」

 なんと、11月9日開催予定のLearning bar@Todaiでは、西尾久美子さんを講師にお招きすることになりました。11月9日午後6時、東京大学にて開催予定です。

 今年最後のLearning bar!
 ぜひお楽しみに。

 参加募集は、NAKAHARA-LAB.NETメーリングリストが先行しますので、これを機会にぜひ、登録をご検討下さい。

NAKAHARA-LAB.NETメルマガ
中原の関係するイベント情報を不定期に配信
Learning barの募集はこちらから!
http://www.nakahara-lab.net/mailmagazine.htm
 

投稿者 jun : 2007年9月18日 07:00


ワークプレイスラーニング (Workplace Learning)とは:学習環境のデザイン編

 先日から、ワークプレイスラーニングについての話をしています。

ワークプレイスラーニングとは:定義編
http://www.nakahara-lab.net/blog/2007/09/post_1005.html

ワークプレイスラーニングとは:現場の学び編
http://www.nakahara-lab.net/blog/2007/09/workplace_learning.html
 
 
 ワークプレイスラーニングは、企業における人間の「学習」を、「研修」と狭く捉えるのではなく、より広く、「現場の学び」を含みこむものとして捉えるのでしたね。

 ワークプレイスラーニングの視点にたつと、「学習」とはイコール「知識伝達」ではありません。
 一般的に研修で行われるような「知識集積」だけでなく、現場で行われる「知識構築」や「知識統合」をも、学習とみなす。それがワークプレイスラーニングの視点でした。

 先日は、「現場の学び」とは何か、という話をしました。それは、いろいろな要素を含むのでしたね。現場に偏在する様々な「学びのタネ(=リソースとかアクターと言います)」から、人は常に学び続けています。

 今日の話は、じゃあ、どのように「現場の学び」を促進したらいいのか、という話です。それを促進しようと願う人は、何をすればいいのか。

 結論から申しますと、「学習環境をデザインするべし」ということになります。別の言い方をするならば、「アクターネットワークを構築すべし」ということになるでしょうか。

 うーん、わからんね、わからんよ、こんな説明では。
 下記、もうちょっと具体的に説明していきましょう。

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 前者の「学習環境のデザイン」という考え方は、「教育のデザイン≒インストラクショナルデザイン」という言葉と「対」をなす言葉です。

 Lave and Wenger(1991)は、学習には、下記の2つの見方があるとしました。

1.教育のカリキュラム=教授法のデザイン
 「教えるべき内容」を教授者が学習者に教えること。学習者個人がスキルや能力を向上させるための、一連の教育プログラムや教授を開発することが教授者のやるべきこと、となる。教授的な処方箋を書くこと。別名、インストラクショナルデザイン。

2.学習のカリキュラム=学習環境のデザイン
 日々、学習者が過ごす場には、「学習のリソース=学びのタネ」がたくさん偏在している。学習者の立場にたって、彼らの学習を成立させるリソースや、その配置をデザインすることを学習環境のデザインという。学習者が、様々なリソースにアクセス可能な空間的、社会的、制度的なデザインを行うことでもある。

 この「差」、わかりますでしょうか。

 具体的に事例をあてはめていきますと、前者は要するに、「研修のデザイン」ですね。
 後者は、「研修後、学習者が過ごす職場環境の整備=しつらえ」ということになるでしょうか。

 前回も述べましたように「現場の学び」には、様々なタネがありましたね。タネ(=リソース)は、制度(ジョブアサインメントの場合など)であったり、モノ(ナレッジマネジメンントシステムの場合など)であったり、他者(メンタリングの場合など)であったりしました。

  加藤・鈴木(2001)では、「ヒト・コト・モノ」という3分類で、学習環境のデザインを整理しています。

1.ヒト(組織)のデザイン
  ・組織
  ・制度
  ・規則
  ・行動規範
  ・人的関係

2.コト(活動)のデザイン
  ・活動内容
  ・目的
  ・動機付け
  ・達成目標
  ・必然性
  ・賞罰
  ・インセンティヴ
  ・モデル
  ・出来事(イベント)
  ・活動の(時間的)場

3.モノ(道具)のデザイン
  ・器具・道具
  ・教育メディア
  ・インフラ
  ・機能
  ・ヒューマンインタフェース
  ・意匠
  ・ドキュメント(コンテンツ)
  ・活動の(空間的)場

 すげーな、こんなにデザインするべきものがあるんだね。

 いずれにしても、「現場の学び」をつくりだすためには、様々なリソース、手法を組み合わせて、もっと具体的に言いますと、「道具」や「他者」などを組み合わせて、学習者が自ら学んでいける「環境」をつくりだすかが、ポイントなのです。上記の「学習のカリキュラム」のところでは、このことを述べています。

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 ちなみに、こうした学習環境のデザインは、「アクターネットワーク」という理論においても説明することができます。

 アクターネットワークというと、ラトゥール(1987)とか、カロン(1987)が有名ですが、これはそのまま解説すると超難解なので、簡潔に述べます。

 まず、アクターネットワーク理論では、何かモノゴトを成し遂げる際には、様々な「アクター」が「ネットワーク」をなすことが重要であると考えます。

 ここでいう、アクターというのは、人間でも、モノでもいい。とにかく、様々な「something」が協調して、ネットワークをなすときに、モノゴトがなしとげられる。

 じゃあ、モノゴトを成し遂げたいと願う人間は何をすればいいか、というと、様々なアクターを巻き込んで、説き伏せ、協調させて、アクターネットワークをつくることをしなきゃならん、というわけなのです。こうした活動のことを「翻訳」といいますね。

 じゃあ、この「翻訳」には、どのような種類があるか。ラトゥールは下記のように整理しています。

1.強大アクターの目的に迎合する
2.弱小アクターの方法を強大アクターの唯一の道として仮構
3.弱小アクターの方法を強大アクターの近道として仮構
4.強大アクターの目的自体を再構成する
  4.1.強大アクターの目的をズラす
  4.2.新しい目的を創造する
  4.3.新しい集団を創造する
  4.4.他の方法を隠蔽する
  4.5.貢献度の審理にかつ
5.必要不可欠な状況で居る

 上記に見るように、アクターネットワークの構築には、ものすごい「政治的かけひき」が必要なのですね。

 でも、これって、僕らが日々やっていることなんですよ。
 何かを成し遂げるためには、誰かひとりの有能な知能だけが必要なわけではない。むしろ、様々な利害関係者(=アクター)を、政治的かけひき(=翻訳)引きずり込んで、ネットワークを構築しなければならないわけです。よーく胸に手をあてて考えてみると、何かしら、いつもやっているでしょ、そういうこと。

 そして、この「アクターネットワークの構築」こそが、学習環境のデザインという考え方の「裏面」なのですね。

 つまり、学習環境のデザインをする人(=現場の学びを促進する人)というのは、政治的に中立(ニュートラル)なまま仕事をすることはできません。どうしても、「政治的かけひき」が必要になるのです。

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 いかがでしたでしょうか。ちょっと抽象的になりすぎたかもしれません。また別の機会にでも。

ワークプレイスラーニングとは:定義編
http://www.nakahara-lab.net/blog/2007/09/post_1005.html

ワークプレイスラーニングとは:現場の学び編
http://www.nakahara-lab.net/blog/2007/09/workplace_learning.html

投稿者 jun : 2007年9月17日 09:45


ウォシュレット、恐るべし

 先日、代官山に家族でお買い物にでかけた。あるテナントでトイレを借りて、ウォシュレットを使ったときのこと。

   じゃー

 水は勢いよくでている。「さて、そろそろ、出るか」と思って、「切」ボタンを押したけど、なんか、おかしい。

   じゃー

 あれっ? ボタン押し間違ったかな? 今度こそ、「切」ボタンを。ピッ。
  ・
  ・
 ピッ  ピッ  ピッ
  ・
  ・
 スイッチを何度も押しても、うんともすんともいわない。むしろ、どんどんと水流がきつくなっていく。

   じゃー、じゃー、じゃー
   じゃー、じゃー、じゃー
   じゃー、じゃー、じゃー
    ・
    ・
    ・
 えっ、マジで?

「もしかしたら、僕はこのまま、この便座の上で一生を終えるのでは?」

 変な考えがいきなりアタマをよぎった。

 まさか、こんなに水流がキツイのに、便座を立つわけにもいかない。そんなことをすれば、水浸しの大惨事。でも、だからといって、このまま座っているわけにもいかず。どうすんの?

「これまで人並みには努力してきたのに、よりによって、便座の上で朽ち果てることになるとは! オレは無念だ、TAKU!」
    ・
    ・
    ・
 結局、水がとまったのは、5分後。便座で「しょぼーん」とうなだれていると、突然止まった。助かったよ、かみさま。おそらく、システムに組み込まれた「強制異常終了」が起動したんだろう。

 休日、人生の悲哀を味わった。
 びっくりしたなぁ、もう。

投稿者 jun : 2007年9月16日 09:16


東京・おすすめのお寿司屋さん:渋谷「蛇の健寿司」

 初秋の味覚を愉しむため、渋谷・蛇の健寿司へ。今日も、どんなものを食べさせてもらえるか楽しみです。

蛇の健寿司(夜のみ)
住所東京都渋谷区道玄坂1丁目20-4
電話番号03-3461-4288
(英語メニューもあり)

大きな地図で見る

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 まずは突き出し、「あなごの煮こごり」。

01_anago_nikogori.jpg

 次は「いくらの醤油漬け」を。だしの味がよくきいていて、塩辛さは感じません。

02_ikura_otsumamii.jpg

 さてここからは、握り。
 さんま、しめさば、かつお、たいらがい、しろえび、たまご、といただきます。どのネタも鮮度が最高。

03_sanma.jpg

04_shimesaba.jpg

05_katsuo.jpg

06_tairagai.jpg

07_shiroebi.jpg

09_tamago.jpg


 最後は創作。雲丹と烏賊。これが絶品です。

08_uni_ika.jpg

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 この他におつまみ×1、6カンほど食べて、お酒はビール×2。今日もすっかりできあがりました。しめて7000円。

 蛇の健さんは、僕が、東京で最もおすすめするお寿司屋さんです。

投稿者 jun : 2007年9月15日 16:37


ワークプレイスラーニング (Workplace Learning)とは:現場の学び編

 ワークプレイスラーニング=「研修での学び」×「現場の学び」

 ですよ、というお話をしました。

ワークプレイスラーニングとは:定義編
http://www.nakahara-lab.net/blog/2007/09/post_1005.html

 それは、企業における人間の「学習」を、「研修」と捉えるのではなく、より広く、「現場の学び」を含みこむものとして捉えるのでしたね。

 ワークプレイスラーニングの視点にたつと、「学習」とはイコール「知識伝達」ではないのです。学習とは「アタマの中への知識をどんぶらこ、どんぶらこと蓄積すること」だけではありません。

 人は、知識を集積するだけでなく、様々な機会や経験をとおして、日々、新たな知識を構築したり、既存の知識と新しい知識を統合しています。
 学習を、そういう「アクティブな活動」として捉えることが、まず重要です。従来の経営学では「知識創造」といっていた活動も、立派な「学習」です。

 じゃあ、次に「現場の学び」とは何か、という問いが生まれてきます。「現場の学び」とは「イコールOJT」なのか?

 そうではないのですね、違うんです。「現場の学び」も非常に広くとらえることが必要です。それは、「OJT」という単一の人材育成手法に還元されるわけではない。

(ちなみに余談ですが、もうそろそろ、OJT・OFF-JT・自己啓発という3種類で企業における学習活動を語ることを辞めた方がいいと思っています。企業・組織の中で教育や学習を語る言語を再構築することが必要です。これについてはまた別の機会で語ります)

 もちろん、OJTも「現場の学び」ひとつです。OJTといいますと、通常は「上司 - 部下間で実施される教育指導関係」ですよね。それも、ひとつです。

 しかし、それ以外もあります。たとえば、メンタリングというのもそうでしょう。これは、「ちょっと上の先輩 - 部下間で営まれる心理的かつキャリア的発達支援関係」でしょうか。

「タフなジョブアサインメント」というのも、立派な「現場の学び」のタネでしょう。
 タフな仕事=修羅場では、人は多くの経験をします。その中から経験学習をする機会は多い。従来の経営学では「一皮むける」といっていた経験です。
 もちろん、「ひー、忙しいー、ひー」って叫んでいるだけではダメで、ちゃんと「振り返り」と「概念化=持論作り」がなされなくてはなりませんね。

「ジョブローテーション」ももちろんそうです。ジョブローテーションとは、僕の見方からすれば「人の学びの軌跡をデザインすること」に見えます。教育を研究しているというのは不思議ですね、どんな現象を見ても、「それって、学習に関係するよね」と思ってしまうのです(笑)。

 ナレッジマネジメントシステム(情報システム:メールでも企業ポータルでも同じ)をつかった、ナレッジの共有なども、立派な「現場の学び」です。概念的知識から手続き的知識まで、いろいろな知識を交換しているじゃないですか。

 あるいは、休憩室での談話も「現場の学び」ですよ。だって、そういう場で、コーヒーを飲みながら、リラックスして、密かに一番大切な話をしていませんか?
 一番重要なことを学んだのは、決して「自席で孤独に」というわけではないでしょう。時には先輩、時には同僚、はたまた競合とか、いろんな人との談話の中で賢くなってはいないでしょうか。

 Orr(オール)という人の研究にこんなものがあります。
 コピー機修理工たちは、修理の方法を、会社の用意したマニュアルから学んでいるわけではない。いつもはクライアント先にいる彼らが、たまに集まるわけですね。そのときに、自分のやった「大修理」は「War story=こんなスゴイ修理をした」として語られる。

「オレは、こないだ、こんなヤツ(故障)をやっつけた」

 のようなかたちで。

 その「語り」の中から、コピー機修理工たちは、学んでいるのです。

 開放的ですぐにお隣同士で話のできるオフィス空間も立派な「学びの場」です。社員が縦にガーと並んでいて、それを監視するようなかたちで上司が座る。ミシェル=フーコー風にいうと、パノプティコンでしょうか。ほとんどの会社のスタイルはそうですけど、そういうオフィス空間では、なかなか情報の交換なんて起きないでしょう。

 先日のワークプレイスラーニング2007における(株)リクルートさんのご発表にもあったように、「社内広報誌」というのも、立派な学びのリソースなんですよ。

「社内広報誌だから教育なんて関係ないね、そりゃ、広報だろ」

 と思っていませんか?

 リクルートさんは、そういうのをよくわかっていらっしゃって、だからこそ、総務・人事・広報という3つを1人の役員の方が兼務していらっしゃる、とのことでした。

 --- 

 こんなことを言いますと、おいおい、それじゃ、何だって「現場の学び」じゃねーか、と言われそうです。
 だけど、「そうなんだから仕方がない」のよ、悪いけど(笑)。人は、どこだって学んでいるのだから、文句言ったって仕方ないの(笑)。文句言うなら、「学習」に言ってよ、もう(笑)。

 でも、このままでは無制限に話が広がってしまいますね。ので、2つポイントを指摘しましょう。

 まず1点目は、いわゆる「コントローラビリティ」という視点です。

 いくら人がどこでも学んでいるから、といって、学びの中には「外部からのコントロールしやすいもの」と「外部からコントロールしにくいもの」があります。別に上記にあげた例をすべてコントロールした方がいい、と言っているわけではないのです。

 じゃなくて、まずは視野を広くもちましょう、と。その上で、「外部からコントロールできるもの」をコントロールした方がいいのではないか、ということです。

 次に、じゃあ、「外部からコントロールする」として、どのように「コントロールするか」が問題になります。「手法」にはそれぞれ、「強み」と「弱み」があると思うのです。それらをうまくReMixして、学習効果を高めることが重要なのではないでしょうか。

 ---

 うーん、今日は雑ぱくな話になりました(いつも?)

 でも、「現場の学び」のイメージをお伝えすることができましたでしょうか。今日の話に関連する研究分野としては「学習環境のデザイン」という研究領域になります。これを企業風に書きました。

 次回は(いつになるかわかりませんが・・・)、じゃあ、上記のようにワークプレイスラーニングの視点にたった場合、担当者は何をするべきか、という話をします。アクターネットワークの話ですね。

ワークプレイスラーニングとは:定義編
http://www.nakahara-lab.net/blog/2007/09/post_1005.html

投稿者 jun : 2007年9月15日 09:52


ワークプレイスラーニング (Workplace Learning)とは:定義編

 ワークプレイスラーニングとは、どういう意味ですか?

 最近、折に触れて、様々な質問をいただきます。

 ワークプレイスラーニングに関しては、様々な定義があります。たとえばね、下記のようなものですね。

1)仕事場での、仕事と学習の同期化(蒋 2006)
2)仕事での活動と文脈において生じる人間の変化と成長(Fenwick 2001)
3)個人や組織のパフォーマンスを改善する目的で実施される学習その他の介入の統合的な方法(Rothwell & Sredl 2000)
4)次世代のeラーニング

 うーん・・・本当に「人生いろいろ、ワークプレイスラーニングいろいろ」だね(笑)。いろいろあって、リンダ、困っちゃう。

 まぁ、4)の「トンデモな定義」は「うっちゃておく」として(なんだ、このワケのわからない定義は!)、ワークプレイスラーニングを理解するひとつのポイントは、「informal learning(非公式学習)への着目」だと思います。

 今、仮に、研修やeラーニングなどの人事・教育部からこれまで提供されてきた施策を「Formal learning(公式学習)」とおきましょう。そして、それ以外の学習を「Informal learning(非公式学習)」とおきます。

 まず、ワークプレイスラーニングは、人が学ぶというとき、多くの人々は、「formal learning」だけから学んでいるわけではない、と考えます。

 むしろ、

「事件は会議室で起きてるんじゃねー、現場で起きてるんだ」

 の「踊る大捜査線」の名台詞風にいいますと、

「学習は研修室だけで起きてるんじゃねー、現場でも起きてるんだ」

 なわけです。

 これに関しては、既に先行研究もなされていますね。McCall(2000)らによると、「人間の能力開発の70%は、Informal learningによって説明がつく」そうです。要するに、Formal learningで30%、残りの大部分は、人は現場で学んでいる。

 ワークプレイスラーニングは、この70%の「現場の学び」にも注目する概念なのです。そして、この「現場の学び」も支援しようとする。これまで「現場の学び」は、現場の人間まかせにされ、多くの場合は、「放置プレイ」を招いていたのですね。ここも何とかしようと。

 ちなみに、ワークプレイスラーニングの定義のうち1)の定義は、ほぼInformal learningだけをさしています。2)の定義は、微妙。3)の定義になると、Informal learning と formal learningの二つが内包される概念になっていますね。

 で、いったいどの定義が正しいか、ということなのですが、僕個人としては、やはり3)の定義がいいと思っています。

 Formal learningのもつインパクトを過小評価するのでもなく、Informal learningのパワーを無視するのでもなく、どちらも活かしていこうというスタンスにたつ方が、教育学的にコレクトな態度かなとおもいます。

 式で書くとすれば、

 ワークプレイスラーニング=研修の学び×現場の学び

 と考えたいですね。「×:かける」によって、いわゆる「シナジー」をめざすというやつです。「現場の学び」が「マイナス」とか、「ゼロ:0」だと、シャレになってないよね。

 ワークプレイスラーニングのインパクトは、「学習」を、いわゆる「研修」とか「eラーニング」によって行われる「知識伝達」として把握しない、ということです。

 むしろ、「学習」をより広いものとして捉える。

 学習とは、現場において人々が、いろいろな機会や場面を通じて、「知識を共有」したり、「知識を創造」したり、「知識を概念化」したり、「知識を統合」したりすることをさす。そして、そういう「広い学習」を「支援」することを試みるわけですね。

 そうなりますと、

1.学習は教室の外でも起こっている
2.学習は知識をアタマに蓄えることだけではない
2.教えることだけが学習のきっかけじゃない

 という考え方になります。

 じゃあ、「現場の学び」とは具体的にどのようなものなのか・・・これに関しては、また機会を改めてご説明します。

投稿者 jun : 2007年9月14日 08:46


着ぐるみ

 誰も「カミサンの暴走」を止められません。

usagi_takuto.jpg

usagi_takuto2.jpg

「着ぐるみ」・・・それは我が家に生まれた宿命。

投稿者 jun : 2007年9月13日 19:48


ファカルティ・ディヴェロップメントを捉え直すワークショップ

 現在、学部・大学院での「ファカルティ・ディヴェロップメント(FD)」の導入が、政策レベルで検討されています。

 9月21日、東京大学では、名城大学の神保啓子さんを講師にお招きし、これまでの実践とはひと味違ったFD=「コミュニティづくりを中心にしたFD」に関するワークショップを開催します。

 通常のFDは、大学教員が主になって「授業のカイゼン」をめざしますが、今回の取り組みでは、職員を含めた大学の構成員が「大学教育の新しい価値創造」を主眼におきながら、活動を進めます。

 大学教育は必ずしも、「授業」だけから構成されているわけではありません。また、大学教育を支えているのは、必ずしも教員だけではありません。

 大学教育を支える多様な人々が、パッションを持ちつつ、新たな教育価値を創造することをめざす。そうした「つながりの創造」がもっと注目されてもいいのではないでしょうか。

 今回のワークショップは少人数で行う予定ですが、まだ残席がございます。ふるってご参加お申し込みをお願いいたします。
 
 
=================================================

ファカルティ・ディベロップメント2.0ワークショップ

「コミュニティ・オブ・プラクティスとしての
 ファカルティ・ディベロップメントの取り組み」

2007年9月21日(金)午後6時から 東京大学

=================================================

 このたび9月21日、名城大学の神保啓子さんを
 お招きして

 「ファカルティディヴェロップメント2.0」

 というワークショップを開催いたします。

 神保さんには、エティエンヌ=ウェンガーの提唱
した「実践共同体」の概念をコアにした「ファカルティ
・ディベロップメント」の取り組みをご紹介いただきます。

 最近、ファカルティ・ディベロップメントの学部、
大学院での導入が、教育行政において検討されており、
関係者の注目を集めています。

 本ワークショップでは、一般の、いわゆる「授業のカ
イゼン」を主としたFDとはひと味違った、「教育価値
の共創をめざす新しいFD」をご紹介いたします。

 ふるってご参加いただければ幸いです。

 なお、今回のワークショップは人数を少人数に限らせて
いただきます。

 今後のFDに関して建設的な意見交換の場となりますので、
 FDに関する経験や興味がある方のご参加を期待します。

 応募は下記のフォームをe-mailでお送りください。
 Looking foward to seeing you !

    企画担当:中原 淳
         Educe Technologies・副代表理事
         東京大学・准教授

 ---

○主催
 NPO法人 EDUCE TECHNOLOGIES
 http://www.educetech.org/
 
 EDUCE TECHNOLOGIESは、教育環境の構築に
 関する調査、研究、コンサルティングを行う
 非営利特定活動法人です。
 
 副代表理事 中原 淳


○共催
 東京大学大学院 学際情報学府 中原淳研究室
http://www.nakahara-lab.net/
 
 
○日時
 2007年9月21日(金曜日)
 午後6時00分より午後9時00分まで
 
 ※時間が限られておりますので、定刻通り
  に始めます。本郷キャンパスは意外に
  広いです。くれぐれも、迷子になりませんよう。
 
 
○場所
 東京大学 工学部2号館 9F 92B
 大学院情報学環 教室
 http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_04_03_j.html

 ※地下鉄丸ノ内線からは徒歩で20分はかかります
 本郷キャンパスは広いので、お早めにお越し下さい。 
 
 
○食事
 サンドイッチ等の簡単な食事と飲み物をこちらで
 準備いたします。
 
 
○内容(案)

 □開場
 (5時30分)

 □ワークショップのご紹介と企画趣旨
 (6時-6時15分)
  ・中原 淳(東京大学)

 □ワークショップ開始(休憩15分を含む)
  1.コミュニティ・オブ・プラクティスを
    FDに適用する意味

  2.事例紹介とワークショップ
   コミュニティ・オブ・プラクティスをFD
   に適用している導入事例に基づき、
   FDマネジメントの視点で紹介

  3.コミュニティ・オブ・プラクティスFD
    の可能性と課題
  

 □ラップアップ
 (8時30分 - 8時45分)
  ・中原 淳(東京大学)

 
○参加費
 2000円(一般・学生)
 (講師謝金、食事代、飲み物代、資料代等に
  支出いたします)

 
○参加者
 参加をご希望の方は下記のフォームをご利用のうえ、
 sakamoto [at mark] tree.ep.u-tokyo.ac.jpの
 メールアドレスまで、お申し込みをお願いします。
 

○参加条件
 1.本ワークショップの様子の写真、NPO Educe
Technologies、東京大学 中原研究室が関与するWeb
サイト等の広報手段、講演資料等に用いられる場合が
 あります。参加にあたっては、この条件を許諾いただ
 ける方に限ります。

 2.申し込みはしていたけれど、参加が難しくなった
場合は、sakamoto [at mark] tree.ep.u-tokyo.ac.jpまで
 連絡をください。このところ、非常に参加希望者が多く
なっており多くの方のお申し出をお断りしているような
 状況が発生しています。
 一人でも多くの方に席をお譲りしたいと思います。

〆ココカラ=======================================
 参加申し込みフォーム
 sakamoto [at mark] tree.ep.u-tokyo.ac.jpまで
 9月19日までにお申し込み下さい
-------------------------------------------------

 上記参加条件を
氏名:
フリガナ:
所属:
メールアドレス:
FDとのかかわり:
(                       )

〆ココマデ=======================================

投稿者 jun : 2007年9月13日 09:02


ボーイズ・ビー・アンビシャス(Boys, be ambitious!)

 世間から遅れること1年。先日、「Dr.コトー診療所」のビデオを見ていたら、クラーク博士の言葉がドラマ内に引用されていました。

 クラーク博士の言葉というと、僕は「ボーイズ・ビー・アンビシャス」しか知らなかったんだけど、実は、その先があるんですね。ご存じでしたか?
 
 
 Boys, be ambitious!

 Be ambitious not for money or
 for selfish aggrandizement,
 not for that evanescent thing which men call fame.

 Be ambitious for the attainment
 of all that a man ought to be

(青年よ大志をいだけ。金銭や我欲のためにではなく、また人呼んで名声という空しいもののためでもない。

人としていかに生きるべきか。その道をまっとうするため、大志をいだけ!)
 
 
 大志というのは、「えらくなりてーな」とかいうような類のものではないんですね。自分が「人としていかに生きるべきか」という「志」なのでしょう。

 で、「大志」をもったら、そのままにしちゃいけない。あとは腰をあげ、前にすすむ「勇気」が必要でしょう。

「勇気」といっても、その背後には「ためらい」がないわけではない。青年であれば「不安」も「戸惑い」もある。でも、それらを振り切り、あとは何とでもなる、と、一歩前にでることがどうしても必要になる。そして、それができるのが「青年」なんでしょう。


 真の勇気とは、極端な臆病と向こう見ずの中間にある
  セルバンテス「ドンキホーテ」


「臆病」と「向こう見ず」の交差するところに、「大志」を実現する鍵があるのかもしれません。

 まずは、一歩前に進め!

投稿者 jun : 2007年9月12日 08:25


CAMPACO : ワークショップをパッケージ化する

 大学院合宿では、ひたすら「勉強」ばかりしていたわけではありません。今回は、いくつかの教育機関を訪問させていただきました。ひとつが、上田信行先生の同志社女子大学。ひとつは、CAMP(大川センター)です。

 同志社女子大学では、上田先生がデザインした教室が非常に印象的でした。そこはまるで、青山とか表参道にある「カフェ」のようで、とても大学の教室には見えません。「表現」を行うための様々な道具、ガジェットにあふれる空間でした。

 また、同志社女子大学の学生の方々から、素晴らしいホスピタリティを受けました。本当にありがとうございました。今度、東京大学にもぜひお越し下さい。

 ---

 子ども向けワークショップの専用施設であるCAMP(大川センター)は3度目の訪問になります。ここでは、北川さん、森さんに、様々な解説を受けました。

CAMP : 大川センター
http://www.camp-k.com/

camp_zenkei.jpg

 特に印象深かったのは、CAMPで行われている「子ども向けワークショッププログラム」のいくつかが、CAMPACO(キャンパコ)というパッケージになってまとめられていることでした。CAMPACOには、教材の他、指導者用のテキストブック、コンセプトブックなどが含まれており、それぞれ大変完成度の高いものでした。

CAMPACO
http://www.camp-k.com/otona/achikochi/index02_03.php

campaco.jpg

 ちなみに、森さんによりますと、CAMPACOは、CAMPの理念の理解を示してくれた教育機関に無償で貸与されているそうです。現在、20箱のCAMPACOが準備されていて、日本中の教育機関に貸与されているとのことでした。

 貸与の際には、パッケージを郵送して終わりではありません。CAMPのスタッフが直接現地に出向き、ワークショップ・ファシリテータのトレーニングも行うそうです。パッケージだけ渡しても、意図したようにワークショップができないことから、このようなトレーニング込みのかたちになったそうです。

 個人的には、CAMPACOの活動は「これこそが、教育工学だ」と思いました。単にアイデアや教育理念を述べるだけでなく、イノベイティヴな学習活動を引き起こすモノを実際につくり、普及をねらい、評価を試みる。大変貴重な活動ですね。

 今回の教育機関訪問、本当にお世話になりました。本当にありがとうございました。

投稿者 jun : 2007年9月11日 13:34


大学院合宿が終わった!

 大学院の合宿が終わった。京都からさっき戻ってきたところである。今回の合宿の勉強会パートは、ピアジェ、パパート、デューイ、ブルーナー、バンデューラ、ヴィゴツキーの一生と、その主張の要旨を学ぶ合宿であった。

 ピアジェにしても、ブルーナにしても、ヴィゴツキーにしても、この仕事をしている以上、ある程度のことはわかっているつもりである。しかし、その主張の「関係」「相違点」「共通点」をパッと言え、と言われると、少し口ごもってしまう。今回は、それらを再度確認することができた。

 あと、自分的には、戦後教育学がデューイとヴィゴツキーとマルクス主義という3つの思想をめぐって、どのような知的格闘を試みたのかが、ぼんやりと把握することができた。このことは、ひそかに「収穫」。そういうことだったのか、なるほどね。

 ---

 帰京・・・久しぶりに我が子、カミサンにも逢い、意気揚々。さぁ、明日からも仕事を頑張るか、さて、明日のスケジュールは何だったけ、とコンピュータを開いたときに、信じられない光景を目にする。

 モニタが、バキバキに割れてる(泣)

 おそらく、新幹線に乗るときに、どっかのオヤジにバッグに強く当たられたのが原因。なんかイヤな音したんだよな・・・でも、そのときは気づかなかった・・・嗚呼・・・。

 ただいま、データの退避中。このクソ眠たいときに・・・。
 オヤジ、マジ殺す。

投稿者 jun : 2007年9月10日 07:00


ワークプレイスラーニング2007が終わった!

 昨日、東京大学・本郷キャンパスで「ワークプレイスラーニング2007」が開催された。まさかの関東台風直撃で、一時は開催が危ぶまれたものの、何とかかんとか終えることができた。

wpl0.jpg

wpl2.jpg

 ---

 今回のカンファレンスに関しては、関係者に、2つの「こだわり」があった。

 1つめは「事例と理論の融合」。

 企業から発表してもらった事例発表をもとに、組織心理学、社会学、教育学の研究者が理論的解説やコメントを加える。なるべく「事例」と「理論」がお互いにかけ離れたものにならないよう、かつ、様々なディシプリンの研究者がそれぞれの立場からコメントができるよう、バランスには配慮したつもりであったが、いかがだったろうか。

wpl1.jpg

 もうひとつは、なるべくカンファレンスを「インタラクティブにすること」。今回は、「事例発表」と「研究者の解説」とのあいだに「参加者全員によるピアディスカッション」を挟んだ。その後、ディスカッションで出てきた内容を、質疑に出してもらうことにした。

wpl3.jpg

 質疑も、なるべく多くの意見を取り扱うことができるよう、挙手を避け、携帯電話とQRコードを用いたものとした。

 質問のある方は、カンファレンス開催中いつでも、携帯電話から決められたアドレスにメールを送ることができる。メールで寄せられた質疑の中で、質問の多かったものを、質疑応答の時間に、事例発表者、研究者に答えてもらうことにした。

wpl4.jpg

 寄せられたメールは80件あまり。もちろん、そのすべてに答えることができたわけではないけれど、通常よりはインタラクティヴな会にはなったと思う。

 ---

 最後に、この場を借りて、今回のカンファレンスの開催に協力いただいた下記の企業の方々、

 学校法人 産業能率大学
 株式会社 ダイヤモンド社
 株式会社 日本能率協会マネジメントセンター
 株式会社 リクルートマネジメントソリューションズ

 また、事例提供をいただいた企業の方々

 東京電力株式会社
 YKK AP株式会社
 HOYA株式会社
 株式会社リクルート

 また、アルバイトとしてお手伝いいただいた大学院生諸氏、エデューステクノロジーズ事務局長の坂本君、そして、足下が「悪すぎる中」参加していただいた皆様、すべてに感謝いたします。

 「関東台風直撃」の悪天候の中で、400名弱の方々にご参加いただけたことは、関係者一同、非常に喜びでした。というか、ホッとした。

 中には、熊本、北海道からのご参加いただいた方々もいらっしゃいました。また、参加はしたかったけれど、交通機関の都合で不可能になってしまった方からも、メールなどをいただきました。

 本当にありがとうございました。
 重ねて御礼申し上げます。

 なお、2つのニュースがあります。
 1つめ、「終わりははじまり」。

 来年も、東大でまた、この規模のカンファレンスを開催することになりました。今度は、台風直撃の危険をさけて(笑)、おそらく11月効用のシーズンなどに。ぜひ、またご参加いただければ幸いです。

 2つめ、今回のカンファレンスの模様は、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」に取材していただきました。放送日のめどがつきましたら、またご報告いたします。

 ---

 明日から大学院合宿で京都へ。
 ふー、忙しい。

投稿者 jun : 2007年9月 8日 03:17


階段を「食う」

 TAKUは「やんちゃ」である。

 幼少時代の僕は病弱で非常におとなしく、黙って本を読んでいるような子供だったのに・・・いったい全体、誰に似たのかは知らないけれど、「じっとしていること」はない。

 大人が「やめてほしいなぁ」と思うことを、もれなく、やってくれます。ちびっ子ギャングだね、トホホ。

 ほれ、ティッシュもこのとおり。

tissue.jpg

 階段だって「かじる」

kaidan.jpg
 
 まぁ、やんちゃでもいいよ、元気なら。

 とはいえ、息子よ、階段は「食えんぞ」。
 しっかり覚えとけ。

投稿者 jun : 2007年9月 7日 07:00


会議は「文化」を「語る」

 先日、ある本(出現する未来)を読んでいたら、その中に、エドガー・シャインのこんな言葉が引用されていた。

「組織の文化を理解したいなら、会議に出るに限る」

 誰かが発言し、誰が発言していないのか、誰の話が聞かれ、誰の話が聞かれていないか、どの話題が取り上げられたか、どれが無視されたり笑いものにされたりしているかは、その組織の実態を知るうえで有力な手がかりとなる、という。
 
 
 なるほどなぁ、と思った。

 人間関係、特にある場に存在する権力関係というのは、invisible(不可視)なものである。

 しかし、

 誰が「発言権(フロア)」を手にするか
 誰の発言が「採用」されうるか

 という外部から観察可能な事象は、その場にいる人間の関係や組織の文化を代表する指標になりえると思う。

 そういう目 - エスノグラファー的視点 - で見てみると、仮に退屈な会議に参加しなければならない場合でも、オモシロク参加することができませんか?

 たかが会議、されど会議、ですね。

 ---

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明日本番、申し込み最終日!600名を超える応募がありました! 今日までのお申し込みです。

投稿者 jun : 2007年9月 6日 08:10


「意志」もまた、ひとつの「孤独」である

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 最近あったらいいなぁと思ういいなぁと思うことのひとつに、「研究者を対象としたコーチング」がある。

 外から「自分の研究活動」を客観視してくれる「研究者の仕事がわかる専門家」が時折アドバイスをくれたらなぁ、と思うのは、僕だけだろうか。

 なにせ、研究者という職業は「自分がすべて」である。

 研究者の仕事は、

 問題1.オモシロイと思う問いを「自分」で設定せよ
 問題2.問題1に「自分」で答えよ

 を地でいくような職業であり、常に「自分」が問われる。

 どういうものを研究対象として設定し、それにどのようなイシューを見いだし、どのようにアプローチして、どのような結果を、どのような媒体にパブリッシュするか。すべて自分で決めて、自分で責任を持たなければならない。

 研究者同士、お互いの研究を批評しあう場がないわけではないけれど、利害関係が全くない状況でそれがなされるのは、きわめて希である。同じような研究領域の同僚がいる場合は非常に助かるが、さりとて通常の大学では同分野から2人の教員を採用することは、きわめてレアなケースである。

 指導教員が「指導」をしてくれる時分はまだマシかもしれないが、原則的には、「職業研究者」となってからは、誰も「指導」はしてくれない。最後は「自分」ひとり。すべて自分で決めなければならない。

 僕は、将来、この領域で○○を論じたい

 と願うことも自由ならば、

 わたしは、この領域の中で、この研究方法論を使って生きていきたい

 と思うことも、どうぞご勝手に。

 僕は、インターナショナルに活躍したい

 と野望を抱くことも自由ならば、

 わたしはドメスティックに地道な活動をして、自分のセオリーの普及をめざしたい

 と考えることも、大いに結構。やりたいならば、やれば。

 そして、この「自由さ」ゆえに、だから危ない。「自由さ」を切り開くためには「強い意志」を持たねばならぬが、この「意志」というモダンの産物がくせ者である。

 アルベール・カミュがいみじくも述べるように、

「意志」もまた、ひとつの「孤独」である

「圧倒的な孤独」の中で、時に、自分がどこに定位しているのか、自分がどこへ向かおうとしているのか、自分が何者であるのかが、わからなくなってしまいがちである。広大な問題領域の中で、自分の進むべき道を見失うことが、頻繁に起こりえる。

 もちろん、これは「領域」によるだろう。ただ、複数の知識ドメインが越境する研究領域とか、応用領域をもつ研究領域にいる人は、多かれ少なかれ、このような悩みを抱えるのではないか、と想像する。

「自分」が何をしたいのか・・・これ以上に難しい問いはない。

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投稿者 jun : 2007年9月 5日 07:58


【締め切り迫る】日本教育工学会・自称ワカモノたちの大宴会

 締め切り迫っているそうです!
 教育工学会にお越しの方は、ぜひ、ご参加ください。

===========================================
毎年恒例!
 Learning of Tomorrowな
    自称ワカモノタチの大宴会2007

 日時:9月23日(日曜日)
 日本教育工学・学会懇親会後 20:30-22:30
 場所:なごみ白木屋 所沢プロぺ通り店
 申し込み締め切り:9月8日(土曜日)まで
===========================================

今年もこの季節がやってまいりました!!

「Learning of Tomorrowな自称ワカモノの大宴会2007」

知り合いも増えれば、学会もますます楽しくなる
ものです。より楽しい、実りある学会にしましょう。
ドシドシご参加ください。

今年も学会の懇親会後に開催致します。
参加をご希望の方は,下記URLのフォームに必要
事項を記入いただき,9月8日(土)までに参加登録
してください.

参加申し込み
http://den.ak.cradle.titech.ac.jp/wakamono/

会場準備の都合上,〆切をお守りいただけると幸いです.

なお,このメールを皆さんのお近くの興味・関心のある方に
ご転送いただければ幸いです.

皆様にお会いできるのを楽しみにしております.
どうかよろしくお願い致します.

本企画についてのお問い合わせは,
wakamono2007@ak.cradle.titech.ac.jpまでお願い致します.

---
●日時 :9月23日(日)20:30~22:30(2時間制)

●予算 :有職者4,000円 学生2,500円
(有職者の定義は,"所得税を納めているもの"です)

●コース:料理8品(飲み放題付き)

●団体名:教育工学会自称ワカモノの大宴会

●備考 :半フロア貸切

●会場 :なごみ白木屋 所沢プロぺ通り店
(西武池袋線・新宿線 所沢駅西口より徒歩5分)
http://r.gnavi.co.jp/b454298/menu8.htm

●〆切 :9月8日(土)

●申し込み方法:
下記URLのフォームに必要事項を記入いただき,
参加登録してください.
http://den.ak.cradle.titech.ac.jp/wakamono/
申し込んだ後,確認メールが送られてきます.

●参加資格
自称ワカモノ!であればOKです.
教育工学会がはじめてでお友達がいない、という方も
是非、ご参加下さい。毎年多くの「初参加者」が参加
しています。きっと知り合いがぐんと増えます。

会場への移動は懇親会終了後,JR小手指駅行きの
臨時バスが出ると思いますので,そちらに乗って
頂く形でよろしいかと思います.西武池袋線
(新宿線)所沢駅から会場までは徒歩5分程度です.

22:30終了予定です。23:30までに電車に乗れば池袋,
新宿、飯能までは確実に帰れます.

なお、ワカモノの大宴会は有志のボランティアに
よって運営されています。不手際などあるかと思い
ますが、ご理解いただければ幸いです。

(以下、敬称略/順不同)
■会場予約
渡辺(東工大)
御園(東工大)
山田(東工大)

■WEB作成
渡辺(東工大)
御園(東工大)
志賀(東工大)

■受付・会計
舘野(東京大)
三宅(東京大)

■案内等
中原 (東京大)
望月 (東京大)
重田 (東京大)
大浦 (青学大)
渡辺 (東工大)
御園 (東工大)
村上 (京都外大)
林  (東京大)
脇本 (東京大)
志賀 (東工大)
西久保(早稲田大)
北澤 (首都大)

■代表
山田(東工大)

===========================================

投稿者 jun : 2007年9月 5日 06:00


認知科学会のワークショップが終わった!

 認知科学会のワークショップが昨日終わった。今回のワークショップは、三宅なほみ先生@中京大学、白水先生@中京大学、大島先生@静岡大学、中原の4名が登壇した。

 ワークショップのテーマは、「学習転移」。僕のお題は「学校外の転移」ということで、「企業教育と学習転移」の話をさせていただく機会を得た。

 自分の発表は
   ・
   ・
   ・
   ・
 うーん、完全に「浮いた」(笑)。「浮く」だろうな、とは思っていたけど、もれなく「浮いた」(笑)。

 ただ、自分としては、ある種の「覚悟」をもって、「企業」を教育研究のフィールドとして選んでいるので、多少の「浮きっぷり」は覚悟はしている。データをもってモノが言えるようになるまで、現在自分が取り組んでいることを粛々と進める他はない。

 自分の発表はともかく・・・収穫はたくさんあった。もっとも大きな収穫は、近年の「学習転移」にいつもモヤモヤ感じていることが、実は、みんなわかっていないことだとわかったことであった。昨日は、大島さん夫妻、望月君、山口さんらとその後飲みに行ったけど、所々で議論になった。忘れないように下記に記す。

 ---

●何がおこったら転移と見なすか、という話は、今も論争中である。1)転移するのは内容知識だとみなす立場、2)学習方略(学び方)が望ましい方向に変われば転移と見なす立場などがありそうだ。「何が起こったら転移と見なすか」という問い自体が、イシューのひとつである。

●「何がおこったら転移と見なすか」はさておき、それをどうやって促進するか、という教授学的な問いが、次のイシューである。これは、○○したときは○○する、のようなパターンを見極めていきたいということなのだろう。しかし、これは言うのは簡単だけど、ものすごい労力が必要である。そのような組み合わせは無限に存在するであろうから。

●わからなくなっていったことは、「熟達化」と「転移」の関係である。僕の理解では、「熟達化」とはドレイファスの5段階モデルにあげられるように、人間が若手から一人前、そしてエキスパートに至るまでの、きわめてロングスパンな線形の学習プロセスであると考えている。別の言い方をすれば、人間の学習を、きわめてマクロに見た場合のかたち。

一方、転移というのは、熟達化プロセスのうちの構成要素であり、どちらかというとミクロの事象なのではないか。

でも、いったんは、この説明で落ちたかな、と思ったんだけど、どうもうまくいかないことにあとで気がついた。非常にツライのは、ダン=シュワルツ的の「Preparation for the future learning」パラダイムのように、転移を「long span」の現象と見ていけば、転移をミクロなものとして把握することはできなくなる。熟達化ほど、ロングスパンではないけれど、少なくともミドルスパンではありそうだ。「time span」といったような切り口は微妙である。

うーん、わからん。正直にわからん。どなたか教えてください。間違いないことは、いずれも、「人間の学習」というとっても現象を、いろいろな角度からアプローチした結果だということ。

 ---

 最後に、このような機会を与えてくださった三宅なほみ先生に感謝いたします。ありがとうございました。

 ---

追伸.
 TAKUに「冬のお帽子」を買ってあげた。

bonbonboushi2.jpg

投稿者 jun : 2007年9月 4日 09:04


最終のご案内:ワークプレイスラーニング2007は今週金曜日!

=================================================
         ワークプレイスラーニング2007
             【最終のご案内】
        参加希望者が600名弱となりました!
================================================= 

■What's New!

 以前よりご案内していた「ワークプレイスラーニン
グ2007」のシンポジウムですが、おかげさまで参加希
望者が600名弱となりました。ご登録いただきました皆
様、ありがとうございました。

・研修で学んだ知識を活かすために、どのように職場
 フォローを行うか?(東京電力)

・経営マインドをもったマネジャーをどのように育成
 するか?(YKK AP)

・イノベーションを生み出すことを奨励する組織文化
 をどのようにして伝えるか?(リクルート)

・徹底した「選抜」によって、グローバルリーダーを
 どのように育成するか?(HOYA)

 当日は、これらの事例に加えて、心理学者、社会学者、
教育学者が、関連する理論を解説いたします。

 残席はまだございます。
 お申し込みは、どうぞお早めにお願いいたします。

■お申し込みWebサイト
http://www.educetech.org/test2/

                  中原 淳
 
=================================================
    ワークプレイスラーニング2007
     - ミドルの学びを支援する -
「組織」と「学習」に関する産学共同シンポジウム

  2007年9月7日(金) 午前10時 - 午後4時30分
    東京大学本郷キャンパス・安田講堂
     http://www.educetech.org/test2/
=================================================

 あなたの組織には、人を育てる環境がありますか?
            ・
            ・
            ・
 近年、企業人材育成の領域において、ワークプレイス
ラーニング(Workplace learning)という新たなコン
セプトが注目されている。

 ワークプレイスラーニングとは、「"研修"と"仕事
現場における学習"を連携させた学びの姿」である。
様々な施策によって、それらを連携させ、高い学習効
果、組織パフォーマンスを生み出すことが目指されて
いる。

 いまや、若手育成、リーダー養成、マネジメント養
成等の様々な局面において、ワークプレイスラーニン
グの考え方が注目されている。

 このような背景のもと、本カンファレンスでは、
「ミドルの学び」に焦点をあてる。「ミドルの成長や
学習は、組織パフォーマンスの要であること」を指摘
する論文は枚挙にいとまはない。

 が、しかし、ミドルにとっての「学習」のあり方は、
目的、方向性、方法のいずれの側面についても極めて
混沌としているように見える。

 ・・何のためにミドルを育てるか?
 ・・どのような方針でミドルを育てるか?
 ・・どのような手法でミドルを育てるか?

 これらの問いに対する答えは、いずれも曖昧模糊と
しているのにもかかわらず、その「成長の必要性」だ
けが声高に叫ばれ、日々、施策の開発は進められ、現
場で実行されている。
 本カンファレンスでは、ワークプレイスラーニング
のコンセプトを切り口に、ミドルの人材育成事例とそ
れに付随する理論を紹介することを目的とする。

 なお、本カンファレンスは、公共性の高い学術会議
が開催される東京大学本郷キャンパス・安田講堂を会
場として産学協同の体制で開催する。

 社会学、心理学、教育学のアカデミックバックグラ
ウンドをもつ大学研究者と、企業・組織の人材育成担
当者が、ともに知恵をだしあい、ディスカッションを
深め、「ミドルのアポリア」に挑戦する。

 曖昧模糊たる「ミドルの学習」に対する答えは、ど
こかに「ある」のではない。それは、我々が「つくり
あげる」ものである。

 あなたの組織には、人を育てる環境がありますか?

 ワークプレイスラーニング、そしてミドルの学習に
興味・関心をもつ、すべての方々のご参加をおまちし
ています。

 -----

■主催:
東京大学 大学総合教育研究センター
http://he.u-tokyo.ac.jp/
 
 
 
■共催:
非営利特定活動法人 Educe Technologies
(エデューステクノロジーズ)
http://www.educetech.org/
 
 
 
■協力:
学校法人 産業能率大学
http://www.hj.sanno.ac.jp/

株式会社 ダイヤモンド社
http://www.diamond.co.jp/index.shtml

株式会社 日本能率協会マネジメントセンター
http://www.jmam.co.jp/corporate/index.php
 
株式会社 リクルートマネジメントソシューションズ
http://www.recruit-ms.co.jp/index.do
 
 
 
■企画:
東京大学 大学総合教育研究センター 中原淳研究室
http://www.nakahara-lab.net/

産業能率大学 情報マネジメント学部 長岡健研究室
 
 
■日時:
2007年9月7日 午前10時 - 午後4時30分
(9時30分開場)
 
 
 
■定員:
700名
※定員にいたり次第、申し込みを締め切らせていた
だきます。おはやめにお申し込みください。
 
 
 
■場所:
東京大学 本郷キャンパス 安田講堂
http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_00_01_j.html

地下鉄丸の内線本郷三丁目駅より 徒歩14分
地下鉄大江戸線本郷三丁目駅より 徒歩12分
地下鉄南北線東大前駅より 徒歩10分
 
 
 
■資料代・会場費等
1名 2000円
領収書を発行いたします(ただし宛名なし)
 
 
 
■カンファレンス内容

○開場 (09:30)
 
 
○問題提起 (10:00-11:00)
 1."学習者としてのミドル"について考える
   長岡 健(産業能率大学)

 2.ワークプレイスラーニングとは何か?
   中原 淳(東京大学)

 
○ケーススタディ1  (11:00 - 13:00)
 ・ケース1-1
   「職場フォローを強化して
   “競争に勝てる若手ミドル”を育成(30min)」
    東京電力株式会社
    執行役員・総合研修センター所長
    高津浩明氏

 ・ケース1-2
   「経営的視点を持ったマネジャーの
    育成に向けた取り組みについて」(30min)
    YKK AP株式会社 経営管理センター
    人材教育部 ビル建材人材教育室
    室長 脇本歩氏

 ・解説(30min)
  松尾 睦(小樽商科大学)
       ・・・心理学の立場から
  長岡 健(産業能率大学)
       ・・・社会学の立場から
  中原 淳(東京大学)
       ・・・教育学の立場から
 
 ・質疑(30min)
 
 
○昼食(13:00-14:00)
 
 
○ケーススタディ2 (14:00-:16:00)
 ・ケース2-1
   「HOYA:分権化を進めながら経営幹部を育成
    する選抜とOJTのプログラム」(30min)
    HOYA株式会社・グループ人事担当
    HRDセンターゼネラル
    マネジャー 有沢正人氏

 ・ケース2-2
   「個人の成長」と「事業の成長」の両立を目
    指す取り組み(30min)
    株式会社リクルート
    取締役・執行役員
    水谷智之氏

 ・解説(30min)
  松尾 睦(小樽商科大学)
       ・・・心理学の立場から
  長岡 健(産業能率大学)
       ・・・社会学の立場から
  中原 淳(東京大学)
       ・・・教育学の立場から

 ・質疑(30min)
 
 
○リフレクション (16:00-16:25)
    中原 淳(東京大学)
 
 
○閉会(16:30)
 
 
 
■お申し込み
http://www.educetech.org/test2/
にアクセスいただき、各自、お申し込みをお願いします。
なお、お申し込みが終了次第、「確認メール」をお送り
いたします。

お手数でも、そちらのメールを各自印刷のうえ、当日お持ち
くださいますよう、お願いいたします。
 
 
 
■本カンファレンスに関するお問い合わせ先
特定非営利活動法人 Educe Technologies 事務局長 坂本
sakamoto [ at mark ] tree.ep.u-tokyo.ac.jp


=================================================
 NAKAHARA-LAB, The University of Tokyo メルマガ
=================================================
 お問い合わせは、下記までお願いします
 中原 淳(東京大学)
 mailmagazine@nakahara-lab.net
 NAKAHARA-LAB.NET (http://www.nakahara-lab.net)
=================================================

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投稿者 jun : 2007年9月 3日 12:58


研修の開発と評価に役立つ本

 教育プログラム(研修)の開発、および評価に役立つ2冊の本が発売されたそうです。

 一冊目は、ガニエの本ですね。インストラクショナルデザイン(教授設計理論)の古典のような本です。

 二冊目は、研修の評価に関する本。非常にわかりやすく研修評価の手法について解説しています。

投稿者 jun : 2007年9月 3日 10:36


職場に「帰ったら」

 今週末、カミサンが制作していた番組のイベントがあるというので、家族で出かけた。カミサンは今、産休中。何人かの職場の人たちから、「いつ帰ってくるの?」と言われていた。

 カミサンが職場に「帰れば」、我が家の「現在の育児の体制」を見直すことになる。今後は、どのように役割分担をして、日々の生活を行えばよいのか。お互い無理の少ないかたちを探さなければならない。

 復帰まで、残り数ヶ月である。

 TAKUは、最近、歯がはえはじめ、つかまり歩きをするようになってきた。元気いっぱい、家中をはい回り、あばれている。ずいぶん言葉も増えている。「ウバー」「アバー」「ババー」とか叫んでいる。

 さて、きょうもプールに連れて行くとするか。

keitai_takuchan.jpg

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追伸.
 TAKUを観察していると大変おもしろい。下記の写真は、TAKUがソファの上にある「おしゃぶり」を何とか取ろうとしている場面である(彼は「おしゃぶりジャンキー」だ、目がない)。どんなに手を伸ばしても、絶対に手は届かない。それにも関わらず、10分以上も飽きもせず、手を伸ばし続けている。

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 この状況で、敢えて、クッションを2個おいてみる。当然、クッションの上にのっかれば、「おしゃぶり」をゲットすることができる。しかし、絶対に彼はそうしようとしない。ちなみに、クッションの上には乗ることはできるし、乗ったこともある。このような状況は、これ以外にも頻繁に観察される。

oshaburi2.jpg

 これは仮説にしか過ぎないが、「何か」を利用して(道具としてつかって)、「何か」を達成する、といったような、いわゆる「道具的思考」がまだ彼にはできないのかもしれない。何をするにでも、「対象へ一直線」である。

 道具として何かを利用できるようになれば、彼の世界は飛躍的に広がる。親は、ますます目が離せなくなる。それはそれで悩ましい状況なんだけどなぁ・・・(笑)。

投稿者 jun : 2007年9月 2日 09:00


上手に手を抜く

 日本一忙しい助産師である神谷整子さんが、NHK番組「プロフェッショナル」に出演していた。

 神谷さんがおっしゃっていたことの中で、「まさにその通りだな」と思ったことに、「子育てにおいて上手に手を抜くことの重要性」がある。

 思うに、子育てにおいて一番難しいことは、「子どもを熱心に世話すること」ではない。難儀なのは「上手に手を抜くこと」で、自分のメンタルな側面を維持しつつ、子育てのプロセスを愉しむことである。

 元来いい加減な人間から構成されている我が家では、子育てに関して大きな問題は発生していない。しかし、ブレーキのないジェットコースターに乗っていたような、この9ヶ月を振り返ると、「これって、ハマっちゃって、精神のバランスを崩す人が多いだろうな」と容易に想像できる。

 そもそも「手を抜けない人」もいるだろうし、逆に「手を抜きすぎてしまう人」もいるだろう。月並みではあるが、要は「中庸」である。

 子育てを完璧にやろうとして親に余裕がなくなると、それは、おそらく子供に伝わるだろう。逆に親があまりにもかまわないと、子どもは悪影響を受ける。

 子育ては本当に難しい。

投稿者 jun : 2007年9月 1日 08:01