クルト=レヴィンという思想

 よい理論ほど実践的なものはない
 ひとから成り立つシステムを理解する最良の方法はそれを変えてみることである

(Kurt Lewin)

  ▼

 クルト=レヴィンの著作、伝記などを古本屋で見つけて読んでいる。

 クルト=レヴィンといえば、グループダイナミクスの創始者にして、組織開発・ワークショップ・感受性訓練・Tグループの原型をつくった人でもある。晩年にはアクションリサーチという研究手法を定式化し、社会問題にもチャレンジしようとした人であった。

 レヴィンは、優秀な研究者にして、教育者でもあった。フェスティンガーやマクレガーなど優秀な弟子にも恵まれ、後世の人文社会科学に多大なる影響を与えた人でもある。組織文化論、組織行動論でよく知られるエドガー・シャインやウォーレン・ベニスらも、レヴィンの流れをくむ研究者である。

 あまり知られていないことだが、成人教育学にも影響を与えている。
 成人教育学の創始者のひとりとして数えられることの多いマルカム・ノールズは、NTL(National Training Laboratory)においてクルト=レヴィンのワークショップに触れ、大いに知的興奮を受けた。のちに、マルカムノールズは、成人学習のプリンシプルを、成人教育の実践の中からつむぎだしている。

 様々な人々と、様々な事を立ち上げ、様々な成果あげ、様々な影響を与えた人である。生涯においてひとつの業績をあげることすら、通常の研究者にとっては難しいのに、レヴィンに関しては、それが多すぎるが故に、その人物像を捉えるのには苦労する。「クルト=レヴィンとは何であったのか」という問いには、なかなか答えようがない。

 しかし、敢えて無理を承知で、彼の生き様を一言で要約しようとするならば、「現場・実践の中で生きること」と「科学者として探求すること」の間を、何とか往還しようとすることではなかったか、と思う。

 同書には下記のような文言がある。

一科学者としての生活は、一市民としての生活と統合されていなくてはならないと信じ
る人にとっては、(クルト=レヴィン)は理想的であった

 レヴィンを語ることは難しい。
 しかし、あくまで、僕にとってのレヴィンはこうだ。
 クルト=レヴィンとは「アカデミアに根付きつつ、一方で、アカデミアを超えること」である。

投稿者 jun : 2009年9月30日 17:44


「力のある学校」と「スクールリーダーシップ」

 志水宏吉(編)「力のある学校の探求」(大阪大学出版会)を読んだ。

 力のある学校(effective school)とは、「家庭環境、地域環境名不利な条件を抱えているのにもかかわらず、一定以上の学力水準を維持している学校」のことである。
 本書は、そうした学校のもつ特徴、そこでの教育実践のありようを、実地調査をもとに、何人かの若手研究者で記述している。非常に労作で読み応えがあった。

 Edmonds(1986)によれば、「力のある学校」は下記のような諸特徴をもつのだという。

 1.校長のリーダーシップ
 2.教員集団の意志一致
 3.安全で静かな学習環境
 4.公平で積極的な教員の姿勢
 5.学力測定とその活用

 また、White and Barbar(1997)によれば、「力のある学校」をつくるには下記のようなチャーターが必要なのだという。

 1.校長のリーダーシップ
 2.ビジョンと目標の共有
 3.学習を促進する環境
 4.学習と教授への先進
 5.目的意識に富んだ教え方
 6.子どもたちへの高い期待
 7.動機付けにつながる積極的評価
 8.学習進捗のモニタリング
 9.生徒の権利と責任の尊重
 10.家庭との良好な関係作り
 11.学び続ける組織

 いずれにしても、そうした学校を生み出すためには、いわゆる教室の中の「教授法」や「学習環境」の「開発」だけでは不十分である、ということである。それは重要であるが、決して、十分ではない。
 1)学校の統治やリーダーシップ、2)教員のモティベーションや仕事や目標の意味づけ、3)家庭や地域との関係作り、4)学習に関するフィードバックループの存在などを、包括的に見直す必要があるようだ。

 ちなみに、本書と同時並行で、OECDの編著である「スクールリーダーシップ-教職改革のための政策と実践」も読んだ。あわせて読むと、非常に面白い。
 

 今、中原研究室では、今年、学校という「組織」に切り込む研究のグラントを申請しようとしている。非常に参考になった。

(ちなみに前者の書籍において、個人的には、力のある学校の操作定義とマルチレベル分析に興味がわいた。僕個人としては、学校の研究には今着手はしないけれど、今企業・組織でやっている学習研究の知見が、将来的に生きる可能性もでてくるのかもしれないと感じている)

  ▼

 ちなみに、これは余談だが、米国教育工学会によると、教育工学の定義は下記のようになる。

教育工学は、人間の学習のあらゆる側面における諸問題を分析し、これらの問題の解決法を考案し、実行し、評価し、運営するための手だて、考え、道具、人材、組織を含む、複雑な統合過程である

 ここでは二つの重要な視点 - それでいて、現在の教育工学では、なかなか顧みられることのない視点 - が語られている。
 ひとつは「問題を分析する」ということ。
 もうひとつは問題解決の手段として「人材、組織」を含むということ。

 特に後者の視点は、今日のエントリーで話した「力のある学校」「スクールリーダーシップ」の開発・構築支援を考えるときに、非常に重要な視座になる。

  ▼

 教育工学はともすれば「ツールの開発学」、あるいは「問題解決学」とみなされがちである。しかし、開発されるべきは「ツール」だけに限定されないと僕は思う。ツールの開発が不必要なのではない。それは従来からの研究をより進めていく必要がある。しかし、それに加えて開発・介入・支援するべき対象を再考するべきときにきている。
 今日、昨日のエントリーではないけれど、「ふわふわしたもの」にいかに切り込むかが重要であり、現代的課題なのだと個人的には考える。

 また「教育工学=問題解決学」という定義は、「解決するべき問題は誰かが与えてくれる」という点に再考の余地があると僕は思う。
 不確実で不安定な世の中にあって、「解決するべき問題が見えないから」、みんなが困っているのである。そこを他人に譲ってしまうと、「問題解決の下請け人」になることを余儀なくされてしまうのではないだろうか。
 もちろん、このあたりは議論が必要だろう。教育工学の若手研究者の皆さんは、どのようにお考えなのだろうか。一度、ゆっくりじっくり議論したいな、と思う。

 それにしても、上記の教育工学の定義はよく出来ている。これをつくるために、米国の研究者は3年間議論したという。

 おぬしらに、「議論」はあるのか?

 かつての指導教官の言葉が脳裏から離れない。

  ▼

追伸1.
 先日、NTT ICCでのシンポジウムが映像になりました。こっぱずかしいですが、もしご興味があれば、下記からご覧下さい。

NTT ICC
http://hive.ntticc.or.jp/contents/symposia/20090823/


追伸2.
 先日のシンポジウムについて、シンポジウムにご登壇いただいた先生らが、ブログで感想・リフレクションを寄せてくれました。ありがとうございました。

佐藤先生 ファカルティディヴェロッパー日記
http://blog.livedoor.jp/sandy_sandy/archives/51525948.html

木原先生
http://toshiyukikihara.cocolog-nifty.com/puppy/2009/09/25-be3d.html

堀田先生
http://horitan.cocolog-nifty.com/nime/2009/09/2920-a394.html

投稿者 jun : 2009年9月29日 09:00


ふわふわしたものを、いかにデザインするか?:岸勇希 (著)「コミュニケーションをデザインするための本」を読んだ!

 岸勇希 (著)「コミュニケーションをデザインするための本」を読みました。

 AIDMA(Attetion - Interest - Desire - Memory -Action : 注意を確保して、人の欲望を喚起し、商品の名前を覚えてもらって、購買につなげる)という行動モデルを前提にしていた「従来の広告」を超えるために、今、何ができるか。 

 近年消費者たちがとっている購買行動AISAS(Attention - Interest - Search - Action - Share:興味関心をもったら、ネットなどで口コミをサーチし、購買し、よければそのレビューを他者とシェアする)を前提に、どのような広告コミュニケーションが存在しうるか。

 結論からいうと、こうした消費者に対応するためには、広告は「変わらなくてはなりません」。
 従来目指されていたExprosure(各メディアにおける露出を最大限にする)ことを超えて、Engagement(人々が参加し、関与してくれるような)広告をつくらなければなりません。

 それは「気になる広告であり、自分から見たくなる広告であり、他者に伝えたくなる広告」です。そうした広告をいかにつくるかが、ポイントになります。
 本書では、永谷園「ミス冷え知らずcollection 2008」やフマキラー「一発命虫」、マリエール「40人40色の恋愛模様」など、著者のチームが行ったコミュニケーションデザインの事例が紹介されています。

 わたしは広告は全くの門外漢です。しかし、この本を読んでいて、僕には自分の研究領域のことが思い浮かびました。
 デザインする対象が、広告そのものから、広告をめぐる人々のコミュニケーションや関係にうつってきている、という意味で、昨日僕が書いたエントリーと通じるところもあると思います。

 そういう「ふわふわしたもの」をいかにデザインするか。あるいは、そういう「ふわふわしたもの」を統御するようなアーキテクチャをいかに構築するかが、現在、様々な場所で課題とされているような気がするのは、僕だけでしょうか。

「ふわふわしたものを、いかにデザインするか」

 その答えを、僕たちはまだ知りません。

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追伸.
「コミュニケーションをデザインするための本」にのっていた商品が、非常に心惹かれました。「手洗い液体石けん」なんです。
 手洗い液体石けんなんて、もう既にコモディティ化していて、何のイノベーションもないように感じますよね。

 でも、この「squid soap」は面白いです。「この液体石けんを使うと、子どもにちゃんと15秒から20秒、手洗いさせることができる」のです。

squid soap
http://www.squidsoap.com/

 仕掛けは簡単。ソープを出すところにスタンプがついています。石けんをだすと、もれなく、手にスタンプがつきます。このスタンプが消えるように、手を洗うためには、15秒から20秒必要だと言うことだそうです。

 下記にビデオがあります。

 米国CDCの調査によると、感染症の予防には「きれいな水と石けんで20秒程度洗うこと」が必要なのだそうです。
 そして、このスタンプは、15秒から20秒こすって消えるようにデザインされているのですね。
 すごいイノベーションだと思うのですが、いかがでしょうか。

 綺麗な手にするために、敢えて、手に一度汚れをつくる。素晴らしい発想ですね。ちなみに日本では未発売のようです。商社が輸入してくれるといいのにね。

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追伸2.
 僕の授業「ラーニングイノベーション論」の修了生の皆さんが「学びYA(仮称)」というアラムナイ・コミュニティ(勉強会兼飲み会)をおつくりになりました。

「学びYA(仮称)」というのは・・・

 ○学び(ばせ)「屋」(学びの仕掛け人達が)
 ○学び「ヤ~!」(わいわい楽しく)
 ○学び「舎」(集い、学ぶコミュニティー)

 なのだそうです。

 先日、わたし自身はお邪魔することができなかったのですが、懐石料理をモデルにしたプログラムで、勉強会をなさった模様です。

 一、先付け - 学びYAへの想い -
 一、お碗発案 - ご挨拶 -
 一、御造り - M社様事例紹介 -
 一、箸休め - 乾杯 -
 一、八寸 - グループダイアログ-
 一、焼物 - ディスカッション -
 一、炊き合せ - ラップアップ -
 一、お食事 - 講評
 一、水菓子

 非常に嬉しいことですね。今度こそは、ぜひ、伺いたいと思っています。初回幹事をなさった渡辺さん、宮崎さん、田中潤さん、小松さん、お疲れ様でした。

投稿者 jun : 2009年9月28日 08:57


日本教育工学会シンポジウム「変革をささえる教育工学」を振り返る!

 ちょっと前のことになりますが、日本教育工学会では、不肖中原は、全体シンポジウムを担当させていただきました。

 今年のシンポジウムの内容、登壇者は下記の通りです。

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■変革をささえる教育工学
 サスティナビリティとスケーラビリティ

 教育工学研究は、教育現場の変革(改善)に資することをめざす「実践志向」の学問である。「実践志向」の意味するところは様々な解釈が可能であるが、避けて通れない問題のいくつかに、サスティナビリティ(sustainability:持続可能性)とスケーラビリティ(scalability:普及性)の問題がある。

 サスティナビリティとは、ある現場で試みられた変革が、外部からの介入をなくしても、自律的に維持されうることをさす。対して、スケーラビリティとは、ある現場で実施された変革が、他の現場に普及することである。

 近年、学習研究においては、サスティナビリティやスケーラビリティが問題になっている。研究者と実践者が共同して、あるいは研究者個人が、ある実践を試行した後、その実践はどのように維持され、継承されていくのか。そして、それが、ある特定の場所での試みを超えて、他の教育現場にどのように普及・伝播していくのか。 これらの問いに対するモデルなき模索がはじまっている。

 教育工学が「実践志向の学」であることを標榜するならば、これらの問題にいかに向き合うべきなのか。
 本シンポジウムでは、初等中等教育、高等教育から各2つずつ実践的研究事例を報告していただきつつ、これらの問いを、会場の参加者をまじえて議論したい。
 
司会
 中原 淳(東京大学)

■講演者

【初等教育】

1.木原俊行先生(大阪教育大学)

○タイトル
カリキュラム・リーダーシップに関する理論的・実践的研究-語りと探究のコミュニティの可能性と課題-

○概要
「カリキュラム・リーダーシップ」は,カリキュラムに関する「語りと探究のコミュニティ」をいかに充実させるかという,問題解決の営みである。この概念の台頭や実践化を報告しつつ,そこに内包される,カリキュラムに関する知恵の交流や伝承の可能性と課題について,理論的・実践的に論ずる。
 
 
2.堀田龍也先生(玉川大学)

○タイトル
学校現場・企業・研究者による共同研究のサスティナブルなデザイン

○概要
教育工学を支えるプレイヤーである学校現場・企業・研究者は,それぞれ異なる立場を持つため,一般に連携することは容易ではない。教育工学の発展のためには,三者が連携する共同研究をサスティナブルにするデザイン原則を共有すべきではないか。いくつかの事例をもとに検討する。

コメンテーター
 松尾 睦先生(神戸大学:組織心理学の立場から)
 長岡 健先生(産業能率大学:組織社会学の立場から)
 
 
【高等教育】

3.松下佳代先生(京都大学)

○タイトル
京都大学センターによるFDの組織化:そのサスティナビリティとスケーラビリティ

○概要
京都大学センターでは現在、学内・地域・全国・国際の4レベルでFDネットワーク構築と拠点形成を進めている。今回は、地域レベルでの組織化の事例を取り上げ、それがどう生成し、持続し、波及しつつあるか、そこに我々がどう関与してきたのかを議論する

4.佐藤浩章先生(愛媛大学)

○タイトル
FDは研究か、実践か?~高等教育学における臨床研究アプローチの模索~

○概要
報告者はFDを実践するFDer(ファカルティ・ディベロッパー)である。自らの実践を普及させるために、その成果を明らかにする臨床研究に取り組んでいる。報告者の事例を紹介しながら、その特質を考察する。さらに研究成果を持続させるための、人材育成やシステムづくりの実践を紹介する。

コメンテーター
 松尾 睦先生(神戸大学:組織心理学の立場から)
 長岡 健先生(産業能率大学:組織社会学の立場から)

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 シンポジウムを実施するにあたり、僕は、主に3つの点について工夫をしました。

 ひとつめ。
 シンポジウムの前に、事前の打ち合わせを3時間半かけて行ったことです。講演者の先生方には大変ご迷惑をおかけしましたが、これは、中原のわがままで、敢えて行わせていただきました。

 決して、お互いの発表の「角をとる」ためではありません。またシンポジウム開催中にお話しいただく内容を「振り付け」するためではありません。そんなことは、「ひとつ」もしていません。
 むしろ、お互いの「違い」をクリアに際だたせるために、事前にディスカッションをしたかったのです。
 
 先生方には、「プロレス」という比喩を使って、下記のようなお願いをメールでもしました。

 明日のシンポジウムでは、立場の「違い」や、見え方の違いをクリアにしていただければ幸いです。
 今日申し上げた「プロレスをしてください」という比喩は、誤解をまねく表現かもしれませんが、敢えて、オーディエンスの前で、お互いの立ち位置の違いや研究スタイルの違いを表現していただければ幸いです。

 プロレスはもちろん「比喩」です。

 先生方には、当日、敢えて3つの質問に答えていただくスライドを準備いただきました。

1.あなたは、「何」を教育現場においてつくり、どうやってサスティナブル(持続可能性を向上させるのか)にしていますか?

2.あなたは、「何」を教育現場においてつくり、どうやって、スケーラブル(普及可能性を向上させるのか)にしていますか?

3.そのとき、あなたは誰とどのようにかかわっていますか?

 こういうフォーマットをつくることで、お互いの「違い」がかなりクリアになったかと思います。先生方は、わたしの意をくんでくださって、当日、非常に面白いやりとりをしてくださいました。本当にありがとうございました。

  ▼

 ふたつめ。

 敢えて異分野の先生方 - 神戸大学の松尾先生、産業能率大学の長岡先生をお呼びして、先生方の専門から見て、それぞれの発表がどのように「見えのか」を率直に言っていただくコメントの時間を設けました。

 松尾先生、長岡先生は、それぞれ組織心理学、組織社会学的なスタンスから、それぞれの発表にコメントしていただきました。

 あとで、様々な場所で、本シンポジウムの評価を聞きましたが、これは会員にとって非常に刺激的であり、内省を深めることができたようです。

 松尾先生、長岡先生には非常に感謝しております。これまでもそうなのですが、「これまで以上に足を向けて眠れません」。本当にありがとうございました。

  ▼

 みっつめ。

 携帯電話を使ったフィードバックを導入しました。これは、既にワークプレイスラーニングやLearning barなどで導入し、ある程度はうまくいくことはわかっていましたが、アカデミアのそろう学会でうまくいくかどうか全く自信がなかったです。

 が、結果としては大成功でした。60数件のフィードバックが寄せられ、質問をうまくまとめることで、20件弱の質問を投げかけることができました。ご協力いただいた皆様ありがとうございました。従来のマイクを使った質疑は、敢えて、カットしました。

 ちなみに、お隣ディスカッションも導入しました。これもうまくいくかどうかは全くわかりませんでしたが、結論からいうと、ポジティブな評価の方が多かったです。

 これらのやりとりで出されたオーディエンスからの主な質問は、下記のとおりです。

 アクションリサーチ型の研究モデルをとる木原先生には、「木原先生はスケーラビリティをどのように把握し、どのように実現しようとしているのか」という質問が最も多かったです。

 堀田先生には、「企業 - 学校 - 研究者」というステークホルダーの中で、研究を生み出していくコツは何か、という質問が多かったです。

 松下先生には、「なぜ、FDのネットワークを外部に創る必要があるのか」という質問が多かったです。

 佐藤先生には、「教育工学には、研究者、普及者、実践者のどの立ち位置を期待しますか」という質問が印象的でした。

 松尾先生には、「組織学習を促進するための要因としては何があるのか」「組織学習にとって、組織外のネットワークと接続することのメリット」などの質問がありました。

 長岡先生には、長岡先生自身が聴衆に投げかけた質問に対する質問が多かったです。

 教育工学は、「誰」の利益代弁者なのか?

 ポストモダン以降、学問をする人間が決して避けては通れない、強烈な「問い」ですね。

 ▼

 シンポジウムの最後は、僕のラップアップで終わりました。

 僕が掲げたのは2点。
 
 ひとつめ。

 もし、実践性を教育工学が標榜するのなら、現在の教育工学が置かれている状況を考えて、それは、サスティナビリティとスケーラビリティを向上させるべく、研究を生み出すという選択肢をとらざるをえないと僕自身は考えます。しかし、サスティナビリティとスケーラビリティという問題の背後には、学会や研究者自身の、もうひとつのSが隠れています。それは「サバイバビリティ(生存可能性)」です。

 ふたつめ。

 もし前者の命題が「真」だとするならば、学会の「よい研究の基準を見直すべき時」がきていると僕は思います。
 4つの事例で「開発」されていたのは、いずれも、長期的に形成された人間の社会的関係、あるいは、そうした人間の社会的関係をベースにした取り組みでした。あるいは、人の相互作用、コミュニケーションといったもの。
 ツール、いわゆる「モノを開発する」だけでなく、「関係やコミュニケーションを開発する」というパラダイムを教育工学が扱うことを検討しなければならない、と僕は考えます。

 さて、皆さんはいかがでしょうか。

   ・
   ・
   ・

 数年前、僕のかつての指導教官は、教育工学会のシンポジウムに登壇した際、3つのことを鮮烈に言い放って、去っていきました(笑)。誠に先生らしいです(笑)、そして的を得ていると、僕は感じました。

 教育工学会には「議論」がない
 教育工学会には「批判教育工学」がない。
 ゆえに、学問自体を批判的に検討する機会がない

 僕は、それ以来、これらの問いがずっと頭から消えませんでした。
 今回はシンポジウムで、僕は、この問いに対する最初のきっかけや波紋をつくりだしたかったのかもしれません。「サスティナビリティ」と「スケーラビリティ」というアポリアを敢えて持ち出すことで、この師の言葉に僕なりのレスポンスをだしたかったのかもしれません。

 「そんなことはありません!」
 
 ▼

 ふぅ。

 学会のシンポジウムの企画というのは、非常に緊張するものです。かつて何度も学会に参加していて、懇親会の席上などで、シンポジウムの内容が、いわゆる酒の肴になり、酷評されているところを、僕は何度も目にしているからです。

 僕にとってはいくつもの「挑戦」がありました。一見些細なことに感じるかもしれませんが、それがうまくいかないときのリスクを考えると、前日の夜は、かなりうなされました。

 今回のシンポジウムの是非は、僕にはわかりません。それはお聴きいただいた方々のご判断におまかせます。

 最後になりますが、このシンポジウムの成功の影には、様々な人々のお力添えがあります。まずは、ご登壇いただいた木原先生、堀田先生、松下先生、佐藤先生、松尾先生、長岡先生にはこの場を借りて感謝いたします。
 また、当日の裏方を担当してくださった御園さんには、ネットワークの件で、最後の最後までご迷惑をおかけしました。

 また、大会実行委員会の各係を決める際、僕に、「シンポジウム担当」という機会と場を与えてくださり、やりたい放題させていただいた、同僚の山内さん、そして、日本教育工学会の関係者の方々に感謝いたします。

 そして人生は続く。

投稿者 jun : 2009年9月27日 20:54


「ハーバードビジネススクール 不幸な人間の製造工場」を読んだ!

「私たちの社会は、自己陶酔的な表計算屋、パワーポイントのプレゼン屋によってなるほんの一握りの人間の階層に、過大な力を与えすぎてしまったのだろうか?」

 ▼

デルヴス・ブロートン(著)、岩瀬大輔(監訳)、吉澤康子(訳)「ハーバードビジネススクール 不幸な人間の製造工場」を読みました。

 イギリスのデイリー・テレグラフの元編集長が、ハーバードビジネススクール(HBS)に大学院生として入学し、そこでの猛烈な学習、過度に緊張し、刺激に満ちた生活を綴った本です。

 HBSといえば、泣く子も黙る「ビジネススクール」の最高峰ですが、著者は、ジャーナリストらしく、冷静に、かつ辛辣に、時にユーモアと皮肉をまじえて、ビジネススクールを分析します。

 時にはHBSやHBSのファカルティに共感と憧憬を示しつつも、あくまで冷静に記述をめざす。その書きっぷりは、巷にあふれるMBAホルダーによる「ビジネススクール礼賛書」とは、ひと味違う感想を持ちました。

 HBSでの生活を通して、入学当初には「志高かった人々」が、普通の人の年収を大きく凌駕する「自己陶酔的な表計算屋」「パワーポイントのプレゼン屋」になっていくのかが、非常に興味深いところです。

 文章はやや散逸ですが、一種のスクールエスノグラフィーとしても読むことができるのではないか、と思います。

 ▼

 本書を読んでいると、サブプライムに端を発した世界同時不況が起こるべくして起こったような気にもなってきます。
 

投稿者 jun : 2009年9月25日 07:49


医療と学習

 日本医療教授システム学会(Japan Society for Instructional Systems in Healthcare)という学会があります。

日本医療教授システム学会
http://www.asas.or.jp/jsish/index.html

 学会代表理事の池上敬一先生(獨協医科大学)にお誘いを受け、「医療学習システムの構築に関するラウンドテーブル・ディスカッション」という場に登壇することになりました。

日時:2009年11月25日午後1時-午後5時

場所:日本橋プラザ(東京・日本橋)
http://www.nihonbashiplaza.co.jp/access.html

池上先生のブログ
http://d.hatena.ne.jp/ikegamik/

池上先生による当日の問題提起
http://www.simclub.jp/pdf/091125.pdf

 最初に言っておきますが、僕は、「医療」はドシロウトです、アタリマエですけどね(笑)。
 単なるドシロウトではなく、「恐がり」で、「大げさ」です。「血」が怖いです、申し訳ないけど、、、きゃー。ちょっと手をカッターで切っただけで、切腹したかのように騒ぎます。
 ほんの少し熱を出すたびに、「遺書」や「辞世の句」を残します、、、ウソだと思うかもしれないけど、8割くらいは本当です。

 そんな僕でも、医療にはただならぬ関心があります。
 特に、救命救急に関しては、かつて愚息にして愛息TAKUZOが御世話になりました。その際は、大変献身的な医療・看護に恵まれました。友人のお医者さま、看護師さんから、たくさんの暖かい言葉をいただきました。
 わたしとしては、及ばずながら、自分に何ができるかどうかはわかりませんが、医療の問題は、可能な限りご協力させていただきたいと思っています。

 どんな会になるのか、とても楽しみです。

 ▼

追伸.
 千葉大学大学院看護学研究科の吉本照子先生にお誘いを受け、メヂカルフレンド社『看護展望』10月号にインタビュー記事が掲載されます。吉本先生には大変御世話になりました。この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。

 いずれにしても、医療の領域に関しては、教育・学習研究の果たすべき役割は、少なくないと感じています。
 僕自身勉強させていただきながらですが、微力ながら貢献させていただきたいと思っています。

投稿者 jun : 2009年9月25日 00:57


イマドキ大学生のLearning barが終わった:京都大学・溝上先生をお招きして!

 ちょっと前のことになりますが、9月11日はLearning bar(ラーニングバー)でした。いつもならば、参加者の皆さんがblogに引用しやすいように、すぐに「報告記」を書くのですが、学会を含め様々な予定が立て込んでいて、大変遅れてしまいました。この場を借りてお詫びいたします。

 この日のlearning barのテーマは、

 みんなで「イマドキ大学生」を考える!?
 ゆとり教育世代のラベリングを超えて:
 
 です。

 京都大学 高等教育研究開発推進センター
 准教授
 溝上慎一先生

 を講師にお招きし、現代の大学生の学習実態、生活実態について、みんなでディスカッションする機会を得ました。

溝上先生のWeb
http://smizok.net/

  ▼

 おかげさまで、今回のLearning barも満員御礼!!
 会場は、いつもの福武ホールではなく、2号館です。
 この日は福武ホールがあいておりませんでした。
 狭い教室ですので、2号館93Bは既に、160名の方々の熱気に覆われています。

 会場は5時30分。

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 バーも、5時30分からオープンです。

mizokami_bar1.jpg

 最近、Learning barは満員御礼が続いており、参加登録いただいても、すべての方々の御希望にはお応えできないケースも生じてきています。

 限られたスペースと人的リソースの中で運営し、かつ、参加者のバックグラウンドの多様性を確保する必要がある関係上、すべての方々のご要望にはお答えできない可能性があることを、なにとぞご理解下さい。

 ▼

 冒頭は、中原から趣旨説明です。

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 Learning barは、

 1.聞く
 2.聞く
 3.聞く
 4.帰る

 という場ではなく、

 1.聞く
 2.考える
 3.対話する
 4.気づく

 ような場であるということをご説明いたしました。

  ▼

 昨今、企業の人事部では、「大学生≒ゆとり教育世代」が問題になっています。「コミュニケーションがとれない」「メンタルに弱い」「学力が低い」など様々なことが言われていますが、その実態はあまりわかっていません。

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 今回のLearning barでは、青年心理学・大学生論の気鋭の研究者である、京都大学の溝上慎一先生をお招きして、「大学生」について、最新の調査データを参考にお話しをいただきました。

  ▼

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 溝上先生は、現代大学生に突出した特徴として、勉強も読書もクラブ・サークルも、アルバイトもなんでも激しくこなすアクティビストがあらわれていることを指摘しておられました。
 彼らがどのような成長の実感、将来の展望、アイデンティティを有しているのか、データをもとに詳細に解説しておられました。

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 また、溝上先生はアイデンティティ資本というコンセプトを提示なさっておられました。
 アイデンティティ資本とは、「自分がどのような人間になっていきたいか」というアイデンティティの確立が、社会関係資本や経済資本といった従来の資本と同じように、「もうひとつの資本」として機能してしまう状況をいいます。青年心理学の領域において注目されている概念だそうです。
 不安定で複雑で不確定な現代社会において、アイデンティティの問題までもが「資本」として機能してしまう、というのはいささかセンセーショナルです。

mizokami_bar8.jpg

 ▼

 その後は、Learning bar恒例のディスカッションタイムです。
 今日も、非常に熱いディスカッションがかわされていました。いつものように、教室の温度は急上昇です。最後は、中原によるラップアップで終わりました。

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 講師の方へのわれんばかりの拍手の中、無事終了です。

  ▼

 最後になりますが、溝上先生、そしてこの場づくりに協力してくれた学生の皆様、本当にありがとうございました。とてもよい「学びの場」になりました。この場を借りて感謝いたします。

 そして人生は続く。

投稿者 jun : 2009年9月24日 17:56


学会終了、皆様、お疲れ様でした

 学会が終わりました。
 もう何もいうことはありません。

 皆様、お疲れ様でした。
 御世話になった皆様、ありがとうございました。
 終わっただよ、ようやく。

  ▼

 4日間、ほぼ立ちっぱなし、
 歩きっぱなし、しゃべりっぱなしです。

 身体がだるく、強烈に重いです。
 軽いめまいが時折します。
 そして、一番驚きなのは、このおしゃべりな小生が、
 誰とも喋りたくないのです。
 よほど疲労がたまっているのでしょう。

  ▼

 4日間のホテルずまいを終え、久し振りに
 誰もいない家に帰りました。
 TAKUZOとママは、ママの実家です。
 ババの還暦を祝って、みんなでリゾートに出かけたようです。

takuzo_shirahama.jpg

 今日は、久しぶりに、家では僕ひとりなので、
 どこか映画にでもいこうかと
 思いましたが、ていうか、絶対無理。
 映画館が暗くなったら、爆睡間違いなしです。

 「掟破りの90分マッサージ」+温泉
 +鍼灸+寿司の、オッサンコースでしょう。
 俺を癒してくれ。

 皆様、特に東大の同僚、スタッフの皆様、お疲れ様でした。

  ▼
 
 明日はTAKUZOとママが帰ってきます。
 TAKUZOはピーピーとやかましいこともありますが、
 たまに1日くらい離れるのがちょうどいい。
 長く離れると寂しいものです。

 久しぶりに一人で過ごす時間は、意外に
 長いなぁ、という印象です。

投稿者 jun : 2009年9月22日 09:05


一難去って、即、一難

 学会2日目。

 今日は穏やかな日です。気温がややあがっています。でも、風はやはり強い。野外にでていると、かなり寒いです。

 昨日は、非常に混乱していたインフォメーションセンターも、今日は「何事もなく」スムーズに応対を行っています。

 何事もなく・・・?
 何事もなく・・・?

 いいえ、そんなわけはありません。
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 新たな「敵」が・・・。
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 しかも「強敵」が・・・。
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   ・
 「蚊」です(泣)。

 気温があがってきたので、でてきたのでしょうか。寒かった昨日はおとなしくしていたのですが・・・。僕は3カ所、アルバイトの学生さんは4カ所刺された女の子もいました。野外で立っている子は、10カ所くらい刺された人もいるようです。

 しょーがないので、虫除けスプレーとムヒを買いにいきました。インフォメで、掻きむしっているわけにはいかないので。

ka_ka_yo.jpg

 ムヒかよ・・・。
 一難去って、即、一難

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追伸.
 僕は、仕事柄、イベントやセミナーなどで、よく講演をする方になることが多いです。でも、インカムをつけて一日を過ごしていると、それを回す裏方の仕事をなさる方の気持ちが、少しわかりました。皆さん、ありがとうございます。

 そして人生は続く。

投稿者 jun : 2009年9月20日 10:21


カイロを買いました

学会初日。

僕はインフォメーション係です。
屋根のある野外で、参加者の方を案内しております。
今日から3日間、野外です。
風に吹かれております。

samui.jpg

  ▼

朝から案内をしていて、ふたつ、気がついたことがあります。

ひとつめ。
夏といえど、屋外は寒いということです。
風が寒いのです。
カイロを買いました。
いや、マジで。
頻尿になります。
冷えます。

ふたつめ。
最も、よくある質問は下記だということがわかりました。
「ここから一番近いトイレはどこですか?」

  ▼

朝から、5年分くらいの「おはようございます」を連呼しました。
そして人生は続く。

投稿者 jun : 2009年9月19日 11:56


嗚呼

 世の中は、これからシルバーウィークらしい。
 僕はすべてをあきらめた、このウィークを。
 すべてはここにある、このイベントに。

 嗚呼、「学会」。

日本教育工学会@東京大学http://www.jset.gr.jp/taikai25/
http://www.jset.gr.jp/taikai25/

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 新世代オフィス研究センター編「オフィスの夢:集合知:100人が語る新世代のオフィス」が発刊されています。

 僕もちょっとだけ書いています。
 100人の専門家が集まって、未来のオフィスのあり方を、それぞれの立ち位置から論じている本です。100人の専門家の意見をテキストマイニングして、未来のオフィスを構想する、といったことも試みられています。中原は「学」について書きました。

 本書に関しては、京都工芸繊維大学の仲隆介先生、またその学生さんに大変にお世話になりました。ありがとうございました。

投稿者 jun : 2009年9月17日 19:38


TAKUZOのおねしょ

kimyou_takuzo.jpg

 いわゆる、ひとつの、「おねしょ」である。
 犯人は、僕じゃないよ(笑)、、TAKUZOだよ。

 しかし、これは、非常に奇妙な写真である。
 お気づきの方は、どのくらいいるだろうか。
   ・
   ・
   ・
   ・
   ・
   ・
 愚息TAKUZOは、「おむつ」をはいているのに、「おねしょ」をしている。本来、これは「ありえない事態」なのである。なぜなら、「おむつ」をはいている幼児は、「おむつ」の中でおしっこをするから。漏れない限り、ふとんに「世界地図」を描くことはない。

 愚息TAKUZOは、最近、寝ぼけているのか、わざわざおむつを下げて、おち●ちんをだして、ふとんの上で、おしっこをすることがあるのである。
 わざわざ、余計なことをせんでえーっちゅうねん(笑)。
 おかげで、カミサンは、朝っぱらから、ブチぎれている。

 まぁ、かくいう、僕も、夜中に寝ぼけて、トイレの隣にある「クローゼットのドア」をあけて、「小」をしかけたことがある。
 直前にハッと気づいてコトなきを得たが、ひとつ間違えば、大惨事である。嗚呼、「大」じゃなくてよかった。いやいや、そういう問題ではない。「小」でも大惨事、「大」なら「悲劇ならぬ喜劇」であろう。その場合は、カミサン、ブチぎれるではすまないだろう。
 親も親なら、子も子ということか。

 困ったものである。

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追伸.
 光文社の黒田さんから「リフレクティブ・マネジャー」の表紙が出来上がったとの連絡をもらった。

reflective_manager.JPG

 店頭にならぶ日が、非常に愉しみである。

  ▼

追伸2.
 3年間かけて開発したワークプレイスラーニング組織診断が、先日、日経新聞に掲載された。

●人材育成環境診断システム  ダイヤモンド社
(日経新聞 2009年9月9日 朝刊)

 ビジネス系出版社のダイヤモンド社(東京・渋谷)は職場の人材育成風土などを診断する企業向けプログラムを開発、今月中旬に発売する。
 インターネット上で社員と管理職にそれぞれアンケートを実施し、人材育成に関する課題を明らかにする。診断を元に社員らに改善策を自ら考えさせることで、効率的に人材を育成できるという。
 プログラムは「現場の学び診断システムWPL」で、東京大学や神戸大学の研究者と共同開発した。20分程度のアンケートを実施し、約2週間で個々の社員や管理職、人事担当者用の「診断表」を作成する。
 社員ごとの成長意欲や職場の風土などを数値で評価。診断後は職場でワークショップを開き結果を共有する。入社1~15年の若手人材の早期離職防止や、適正な職場配置につなげる。

ダイヤモンド社 WPL
http://jinzai.diamond.ne.jp/other.command?url=test/wpl.html

投稿者 jun : 2009年9月16日 07:13


まばたきもせず

 近況。
 あまりにも忙しく、息つくどころか、まばたきする暇すらない。

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 先日、福岡で開催された企業教育大会に参加。九州大学経済学研究科の星野先生、元日経ウーマン編集長の野村浩子さんらと、シンポジウムのパネリストに登壇した。キリンビールの早坂さん、NTT西日本の渕田さんから興味深い事例を伺って、コメントさせていただいた。

 特に、「女性リーダー」に関する野村浩子さんのコメントはするどく、非常に興味深かった。

 曰く、企業の中において

1)女性はそもそもそもそも孤立しやすい傾向がある。
 →特に情報のソースが男性に比べて限られる

2)ロールモデルが少ない

3)「妙な抜擢」をされがち
 →ゆえに、成功しても、失敗しても、妙に目立つ
  成功したら=「女性の武器を使った」と言われる
  失敗したら=「だから女性はだめ」と言われる
 →いわゆるダブルバインド状況である

4)大きな壁を乗り越えてきたから、自分の価値観を
 後輩に押しつけがち

 とのことである。

 特に、「妙な抜擢」に関しては、なるほどな、と思った。
 このことは、いわゆる「女性活用」と言われる施策に関しても、あてはまることなのかもしれないな、と門外漢ながら思った。
 つまり、女性活用という施策が存在するがゆえに、、万が一、女性が成功したら「あれは女性活用の施策があるからだよ」と言われ正統に評価されず、女性が失敗したら「女性活用の施策があったのに失敗した」と言われかねない状況が生まれる可能性がある。いわゆる「逆機能」である。いずれにしても、門外漢だから、このあたりの現実については、全くわからないけれど。

 懇親会では、宮崎県の東国原知事のお話しを聞く機会に恵まれた。40分の予定を、何のスクリプトもなしに1時間半話せてしまい、かつ、全くまわりを飽きさせない、というのはすごいことだと感じ入った。

 最後に、このような機会をくださったビジネスリファイン社の米谷さんに心から感謝いたします。オファーをいただいたのが、今から1年前。

 1年て、早いものですね。
 ありがとうございました。

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 慶應丸の内キャンパスでの授業「ラーニングイノベーション論」が無事修了。講座修了者全員に修了証を手渡しさせていただく。小生、感無量です。

 最終回の講義では、受講者すべてが、これまで学んできたことをもとに、今後何をしていくかをポスターセッション。会場は非常に盛り上がった。

 講義は終了したけれど、このメンバーの縁は、今後も続くようである。
 9月24日には、資生堂の宮崎さん、IBMCの小松さん、三井物産の渡辺さん、ぐるなびの田中さんらが中心となって、第一回目の勉強会が開催されるようである。大人の学びは終わらない。

 最後に、全受講者の方々、また、御世話になった慶應MCCの保谷さん、井草さん、城取さんに感謝いたします。

 ありがとうございました。

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 その他。

▼「リフレクティブ・マネジャー」校正原稿を光文社の黒田さんに送付。10月16日発売予定です。

▼京都工芸繊維大学の仲隆介先生らが編集なさった「オフィスの夢 集合知:100人が語る新世代のオフィス NEO book」が発売。こちら「学」というタイトルで、中原も小論を寄稿しています。

▼CHO協会・須東さん、日興シティグループ常務取締役・中島豊さんと東大にてランチ。組織開発をめぐって、様々な議論。

▼ワークプレイスラーニング2009、申し込みは1000名を突破する。CCC株式会社取締役兼COOの柴田励司さん、バンダイナムコホールディングスの紀伊さん、アサヒビールの藪内さん、企画委員会メンバーをまじえて勉強会。いよいよ、準備は最終段階に入りつつあります。お申し込みはお早めにどうぞ宜しくお願いします。

▼今年から東京大学中原研究室 - 某鉄道会社で共同研究をすすめています。研究所の戸井さん、静山さんとともに、某駅へ。なるほど。仕事の現場を見学&ヒアリングさせていただきました。次回の現場訪問は25日です。とても楽しみです。

▼日本教育工学会の準備も大詰め。シンポジウムのため、講演者とのやりとり、および、下調べを開始。御園さんと打ち合わせ。中原が司会をつとめるシンポジウムは20日に安田講堂にて開催の予定です。なお、シンポジウム開催時間以外は、中原は2号館のインフォメーションセンターの最前線におります。お暇なときには、どうぞ。

▼次の本の企画で、ダイヤモンド社石田さん、前澤さん、井上さんと議論。「人材育成とは言わない人材育成」「人が育つ徒弟制」の話で盛り上がる。結論は持ち越し。

▼某IT企業と東京大学産学連携本部をまじえて打ち合わせをすることに。リーガルマターの打ち合わせ。

▼東大出版会の企画を練り直して企画書を作成。その他、論文執筆1編。

 まばたきする暇もなく、人生は続く。

投稿者 jun : 2009年9月14日 22:16


アイデンティティ資本

 昨日は溝上慎一先生(京都大学)にLearning barにご登壇いただきました。

 現代大学生にはアクティビストが少しずつ多くなっていること、最近の青年心理学で注目されている概念にアイデンティティ資本というものがある、ということなど、非常に面白い話を伺うことができました。

 また、詳細は、時間のあるときに書きたいと思います。溝上先生、ありがとうございました。心より感謝いたします。

 最近、本当に追われています。
 ブログを書く暇もなかなかとれません。

 それでも、人生は続く。

投稿者 jun : 2009年9月12日 10:49


リフレクティブ・マネジャー

 このところ編集者の方とやりとりすることが多くなっています。

  ▼

 金井壽宏先生との共著書(光文社新書)の発売日とタイトルが決まりました。光文社の編集者黒田さんから連絡がありました。

 発売日は10月16日!
 タイトルは「リフレクティブ・マネジャー」です。

 マネジャーにとっての成長、学びとは何かを考えつつ、最後は「働く大人の学び論」に近づいていく、という本です。後書きでは、僕自身も懺悔!?(内省)をしてみました、こっぱずかしいですが。

 どうぞお楽しみに。

  ▼

 東京大学出版会の編集者・後藤さんと打ち合わせました。

 東京大学出版会さんとは、既に2つの共著案件で御世話になっているのですが、舌も乾かぬうちから、今度は「単独の企画」を持ち込まさせていただきました。

 後藤さんからは鋭い指摘をひとつ受けました。たぶん、このご指摘は、「リフレクティブマネジャー」の後書きで中原が煩悶している問題と密接にリンクしているような気がします。
 僕自身、どういう風に研究をまとめるべきか、迷いがあるのだと思います。さらに内省を深めます。

 企画自体は前向きに進めていただけることになりました。次回の打ち合わせでは、さらに企画をブラッシュアップしたいと思います。

  ▼

「学びの認知科学事典」は週末、校正・加筆・修正をあげ、大修館の金子さんに送付しましたので、これで終わりかと思います。いつ出版予定なのかは知りませんが、他の著者の方がどんなことを書いているのか、楽しみです。

  ▼

 そして人生は続く。
 さて、今日も仕事だ。

投稿者 jun : 2009年9月 9日 09:24


近況諸々、ありがとうごぜーますだ!?

 近況。

 大学院入試が終わりました。中原研究室では、今年は3名の合格者がでました。いずれも、社会人大学院生です。

 新大学院生の研究計画は様々です。

 1)学校の社会関係資本と校長のリーダーシップに関する研究
 2)OJTの効果と職場環境の関係に関する研究
 3)研修の効果と職場環境の関係に関する研究

 でしょうか。
 非常に楽しみな内容ですね。

 いずれも、後期のゼミから希望者は参加することができます(中原研究室はM0+M1+M2の2年半で修士を考えています)。

 次は、博士課程後期入試が2月です。

  ▼

 最近、TAKUZOにジュースなどをあげるときに、

「だんな、ありがとうごぜーますだ、と言いなさい」

 とふざけて言っておりました(笑)。「越後屋ごっこ」を親子でやっていたのでございます。まぁ、実際は、ほとんどうまくいかず、彼の口からその言葉が聞かれることはあまりなかったのですが・・・いつも、ケラケラ笑って終わりだった。

 そうしたら、なんと、先日あるコーヒーショップで、TAKUZOにミックスジュースを買ってあげたら、バカでかい声で、自発的に自信たっぷりと叫ぶではありませんか。

「だんな、ありがとうごぜーますだ!」

 なんで、今、言うのよ・・・(泣)。
 家で言いなさい、家で(泣)。

 まわりのお客さんはじめ、店員さんには笑われるわ。冷や汗でした。

 まぁ、僕が悪いんだよね、130%
 余計なことを教えんでいい>自分

  ▼

 先日、ある会議で、中目黒のKIRARAからお弁当をとっていただきました。KIRARAは有機食品をふんだんにつかったオシャレ弁当を提供してくれるお店です。「オシャレざる」に様々な食材が入ってきますよ。

kirara_bentou.jpg

KIRARA
http://blog.kirara.gr.jp/

 このときの会議は、あるところで実施するワークショップの打ち合わせでした。今度、そのワークショップのお昼には、こちらからお弁当をとるのもいいですね、と話しておりました。ピクニックもいいね、と。

 「たかが弁当、されど弁当」です。いつもの揚げ物、いつものハンバーグよりは、ヘルシーに、かつ、オシャレなお弁当を食べたいですね。それで、もしかすると、やる気、ワクワク度が変わってくるかもしれません。

  ▼

 先日、テレビで「どらえもん」を見ていて、ふと、思いました。

 どらえもんとのびたの関係とは、どのようなものとして理解できるのだろうか。

 下記、僕は「どらえもん」のファンでも、専門家でもありませんが、考えたことを書きます。

 まず、一見、どらえもんは、「のびた」が引き起こし、抱えている諸問題を「助けているか」のように見えます。彼は「のびた」のためによかれと思っていることをします。

 ポケットの中から、万能の道具をだして、一時的には「のびた」を救います。しかし、その期間は長く続きません。道具の利用は、「どらえもん」のあずかり知らないところで、「行為の意図せざるを結果」を引き起こしてしまうのです。

 時には、のびたが自分で諸問題を引き受けて、自ら問題解決に当たることはあります。しかし、多くの場合は、「のびた」はヒドイ目にあうか、「のびたのまま」で終わります。

 どらえもんのしていることは、結局、のびたを「成長」させることなのでしょうか。それとも、「のびたをのびたのままにしておくこと」なのでしょうか。もちろん、どらえもん自身はそんなことは望んでいないとは思います。まぁ、のびたが劇的に成長してしまったら、このマンガは終わってしまうような気もするけれど。

 皆さんは、どう思いますか?

 ブログを読んだ方からメールをいただきました。

 ドラえもんの中には、「のび太はドラえもんに頼らずに、課題を解決するという試練がある」そうです。ジャイアンに一人で勝たないとドラえもんは未来に帰ってしまうエピソードだそうです。

心に響くドラえもん名言集 (単行本)
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%89%E3%83%A9%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%B0%E5%BF%83%E3%81%AB%E9%9F%BF%E3%81%8F%E3%83%89%E3%83%A9%E3%81%88%E3%82%82%E3%82%93%E5%90%8D%E8%A8%80%E9%9B%86-%E5%B0%8F%E5%AD%A6%E9%A4%A8-%E3%83%89%E3%83%A9%E3%81%88%E3%82%82%E3%82%93%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%A0/dp/4093876754

「僕だけの力で、君に勝たないと…。ドラえもんが安心して、帰れないんだ!」
「見たろドラえもん。勝ったんだ、ぼく1人で。もう安心して帰れるだろ、ドラえもん」

  ・
  ・
  ・

 泣ける。

  ▼

 ワークプレイスラーニングは、お申し込み開始から1週間で、既に定員800名をこえました。本当にありがとうございます。
 当日が素敵な場になるよう、努力いたします。

wpl2009.gif

■お申し込みWebサイトはこちら■
http://www.educetech.org/wpl2009/

 安田講堂は2階席を入れれば、もう少し入ることができますので、申し込みを続行します。ただし、限界まで達した段階で申し込みを締め切らさせていただきます。

 くれぐれもお早めに。
 ふるってお申し込み下さい。

  ▼

 来週のシルバーウィーク(というらしい)には、日本教育工学会が東京大学で開催されます。僕は、2日目の学会全体シンポジウムを担当しています。場所は安田講堂です。

 シンポジウムは下記のような内容です。入場は無料ですので、もしご興味があえばお越しください。

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■「変革をささえる教育工学:
   サスティナビリティとスケーラビリティ」

 教育工学研究は、教育現場の変革(改善)に資することをめざす「実践志向」の学問である。「実践志向」の意味するところは様々な解釈が可能であるが、避けて通れない問題のいくつかに、サスティナビリティ(sustainability:持続可能性)とスケーラビリティ(scalability:普及性)の問題がある。

 サスティナビリティとは、ある現場で試みられた変革が、外部からの介入をなくしても、自律的に維持されうることをさす。対して、スケーラビリティとは、ある現場で実施された変革が、他の現場に普及することである。

 近年、学習研究においては、サスティナビリティやスケーラビリティが問題になっている。研究者と実践者が共同して、あるいは研究者個人が、ある実践を試行した後、その実践はどのように維持され、継承されていくのか。そして、それが、ある特定の場所での試みを超えて、他の教育現場にどのように普及・伝播していくのか。 これらの問いに対するモデルなき模索がはじまっている。

 教育工学が「実践志向の学」であることを標榜するならば、これらの問題にいかに向き合うべきなのか。サスティナビリティやスケーラビリティを向上させようとするとき、

1)研究者と実践者の関係はいかに「ある」のか

2)研究者は何をデザインし、何を評価するのか

3)研究のアウトカムはどのような表象を用い、「誰」を「宛先」に発信されるものなのか

4)研究者が「研究以外」に引き受けなければならないことは何か

5)上記のようなプロセスの中で、研究者はいかなるアポリアを背負うことになるのか。

 本シンポジウムでは、初等中等教育、高等教育から各2つずつ実践的研究事例を報告していただきつつ、これらの問いを、会場の参加者をまじえて議論したい。

 なお、本シンポジウムでは、会場の参加者間、会場と発表者間のやりとりを、よりインタラクティブにするため、いくつかのテクノロジーを活用する。

          =====================

【初等教育の部】

■学校現場・企業・研究者による共同研究のサスティナブルなデザイン

玉川大学 堀田龍也先生

概要
教育工学を支えるプレイヤーである学校現場・企業・研究者は,それぞれ異なる立場を持つため,一般に連携することは容易ではない。教育工学の発展のためには,三者が連携する共同研究をサスティナブルにするデザイン原則を共有すべきではないか。いくつかの事例をもとに検討する。

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■カリキュラム・リーダーシップに関する理論的・実践的研究-語りと探究のコミュニティの可能性と課題-

大阪教育大学 木原俊行先生

概要
「カリキュラム・リーダーシップ」は,カリキュラムに関する「語りと探究のコミュニティ」をいかに充実させるかという,問題解決の営みである。この概念の台頭や実践化を報告しつつ,そこに内包される,カリキュラムに関する知恵の交流や伝承の可能性と課題について,理論的・実践的に論ずる。

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【高等教育】
■FDは研究か、実践か?~高等教育学における臨床研究アプローチの模索~
愛媛大学 佐藤浩章先生

概要:
報告者はFDを実践するFDer(ファカルティ・ディベロッパー)である。自らの実践を普及させるために、その成果を明らかにする臨床研究に取り組んでいる。報告者の事例を紹介しながら、その特質を考察する。さらに研究成果を持続させるための、人材育成やシステムづくりの実践を紹介する。

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■京都大学センターによるFDの組織化:そのサスティナビリティとスケーラビリティ
京都大学 松下佳代先生

京都大学センターでは現在、学内・地域・全国・国際の4レベルでFDネットワーク構築と拠点形成を進めている。今回は、地域レベルでの組織化の事例を取り上げ、それがどう生成し、持続し、波及しつつあるか、そこに我々がどう関与してきたのかを議論する

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■コメンテーター
 松尾 睦先生(神戸大学:経営学の立場から)
 長岡 健先生(産業能率大学:組織社会学の立場から)

■司会と問題提起
 中原 淳(東京大学)

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投稿者 jun : 2009年9月 8日 07:58


ノーベル物理学賞受賞者、京都大学で大学教育を語る

 京都大学の松下佳代先生から、下記のようなイベントをお知らせいただきました。松下先生、ありがとうございます。わたしはあいにく出席できないのですが、もしよろしければ、ぜひご検討下さい。

 個人的には「ノーベル賞の賞金を使って、科学教材をオンラインで共有できるサイトも立ち上げています」というあたりが、印象的でした。会費は無料、同時通訳がつくそうです。

=================================================

●ノーベル物理学賞受賞者
    京都大学で大学教育を語る●

学生に科学への興味を引き起こし
  どう深い学びへといざなっていくのか?

会費:無料 同時通訳つき
2009年9月25日(金)14:00-
京都大学 時計台記念館 百周年記念ホール

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学生に科学への興味を引き起こし
 どう深い学びへといざなっていくのか?

この問いへの具体的なヒントを与えてくれる『学士課
程における科学教育の未来』という講演及びパネルデ
ィスカッションを、このたび、京都大学で開催する
はこびとなりました。

講演者のカール・ワイマン教授は、2001年物理
学賞受賞者ですが、研究者として超一流であるだけ
でなく、大学教育への貢献で全米のみならず世界中
に知られている人です。ノーベル賞の賞金を使って、
科学教材をオンラインで共有できるサイトも立ち上
げています。

Interactive Science Simulations
http://phet.colorado.edu/index.php

パネルディスカッションでは、日本からも、日本の
キュリー夫人といわれる元日本物理学会会長の坂東
昌子氏、実験を使ったユニークな授業で知られる岡
山大学の笹尾登氏が登壇し、自分の授業実践をもと
にした科学教育について語ります。

大学教員だけでなく、科学教育や教育一般に関心を
おもちの方ならどなたでも歓迎です。

会費は無料で、同時通訳がつきます。
ふるってご参加下さい。

●日時:2009年9月25日(金)14:00-18:20

●場所:京都市左京区吉田本町
京都大学 時計台記念館 百周年記念ホール

●申し込み方法など詳細は下のWebサイトから
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2009/090925_1.htm 

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投稿者 jun : 2009年9月 6日 18:07


住原則也・三井泉・渡邊祐介(編) 「経営理念 継承と伝播の経営人類学的研究」を読んだ!

あなたの会社は、「人を育てる会社」ですか?
   それとも、「人が育つ会社」ですか?

「育てる」「育つ」・・・あなたは、どちらが、いいですか?
ワークプレイスラーニング2009で、皆さん、考えませんか?

wpl2009.gif

■お申し込みWebサイトはこちら■
http://www.educetech.org/wpl2009/

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 住原則也・三井泉・渡邊祐介(編) 「経営理念 継承と伝播の経営人類学的研究」を読みました。経営理念(ミッションマネジメント)に関する実証的(定性的)な研究を集めたものです。

 これまでにも、経営理念に関係する本は、数はそう多くはないですが、多々あります。
 その多くは、経営者個人の歴史や信条を研究する経営者研究、あるいは、ある組織の歴史をひもときながら、社是・社訓の変遷などを読み解く歴史アプローチなどが比較的多いと思います。

 しかし、本書で、筆者らが採用する経営人類学アプローチ(経営に対する文化人類学的なアプローチ)は、非常にユニークです。

 経営理念を「固定化されたテクスト(実態概念)」としてとらえるのではなく、それが人々に解釈・再解釈され、人々の相互作用を通して実践されていく「プロセス」を、とらえようとしています。僕の目で見れば、それは「学習のプロセス」そのもののように思えます。
 本書で紹介されている事例は、カッターのオルファ株式会社、再春館製薬、旭山動物園、ヤオハンなど、様々な組織にわたっています。

 特に、ぼくは旭川出身であるだけに、旭山動物園の改革には興味深いものがありました。
 旭山動物園は、一般には2000年あたりからマスメディアで注目されましたが、実は、その改革の芽は僕が生まれた1975年あたりからはじまっていたのですね。
 そのころから「理想の動物園とは何か」を職場で問い直す機会を折に触れもっていたとのことでした。理想を語ることは時に青臭さを伴いますが、それでも、やはり重要なことなのでしょう。
 また、その改革には長い時間がかかることがわかりますね。

 ▼

 現在、東京大学中原研究室と某社(旅客・運輸系)は、「組織文化」に関する共同研究を行っています。
 内容は詳細は語れませんが、共同研究の中では、理念に関する「学習/再学習のプロセス」をいかに現場で行うのか。それをドライブする人材をどのように育成するのか、ということが問題になっています。

 そのような意味で、非常に参考になりました。
 

投稿者 jun : 2009年9月 4日 09:02


ワークプレイスラーニング2009

 長かった大学院入試も、本日でメドがつきます。
 学内拘束(お縄、ひー)も、ようやく解放です。
 うーむ、長かった・・・。
 今週末には合格発表があります。

 入試とはドラマです。
 
  ▼

 大学院入試と「ワークプレイスラーニング2009」の募集開始の準備が重なり、一時期「死にかけ」ました。肩こりでバンバンです。
 でも、佐藤さん、脇本さんのおかげで、何とかサイトオープンにこぎつけました。ありがとうございました。

wpl2009.gif

■お申し込みWebサイトはこちら■
http://www.educetech.org/wpl2009/

 募集1日にして、既に500名を超える応募をいただいております。ありがとうございます。

 今年の参加申し込みリストを拝見していて思うのは、

1.同じ職場から数名でお越しになるケースが多い
 ある方にお聴きしたところ、このカンファレンスをネタ(肴?)に、職場(居酒屋?)で来年度のHRD計画を議論するとのことでした。ステークホルダー全員でいらっしゃった方が、話が進みやすいのかもしれません。

2.明らかに地方からのお申し込みだと思われる方が増えている
 この不況時で3Kの切り詰めが行われている中、非常に嬉しいことですね。また、シャキーンとしなきゃな、と思います。

3.医療関係者、行政担当者、大学教員が増えている
 これもとても嬉しいことです。ぜひ、いろいろな職場の知恵をご紹介いただきたいものです。
 
 と言う傾向がありそうな気がします、、、なんとなくだけど。

  ▼

 思えば、今年のワークプレイスラーニング2009の企画がはじまったのは1月。テーマを煮詰めるためのワークショップを何回か開催し、企画委員会自身が「考えること」からはじまりました。貴重なお休みを犠牲にして、何度も会をもってきました。

 企画委員会のメンバーの方々、本当に「手弁当」で、この会を運営してくださっています。また、企画協力団体の方々も、全くの無償で当日の運営スタッフを何人もだしてくださっています。この場を借りて、心より感謝いたします。ありがとうございました。

シンポジウムをワークショップでつくる
http://www.nakahara-lab.net/blog/2009/02/post_1446.html

ワークプレイスラーニング2009 企画ワークショップ
http://www.nakahara-lab.net/blog/2009/03/2009.html

テーマが決まった
http://www.nakahara-lab.net/blog/2009/04/2009_2.html

  ▼

 これから、企画協力団体がお持ちのメディアからの広報が本格化します。まだ2ヶ月ほど先の予定になってしまいますが、お申し込みはお早めにどうぞお願いいたします。

 本郷でお逢いできますこと、愉しみにしています!

 そして人生は続く・・・。

 ---

追伸.
 明日あたり、次回Learning barの抽選結果が出る予定です。今回も激しい抽選になってしまいました。心よりお詫びいたします。こちらも本郷でお待ちしております!

投稿者 jun : 2009年9月 2日 09:45


ワークプレイスラーニング2009 申し込み開始です!

あなたの会社は、「人を育てる会社」ですか?
   それとも、「人が育つ会社」ですか?

「育てる」「育つ」・・・あなたは、どちらが、いいですか?
ワークプレイスラーニング2009で、皆さん、考えませんか?

wpl2009.gif

■お申し込みWebサイトはこちら■
http://www.educetech.org/wpl2009/

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 以前から、このblogではお話ししていましたが、ようやく、ご案内できる段階に達しました(ホッ)。

 10月30日(金曜日)、「ワークプレイスラーニング2009」というシンポジウムを、東京大学・安田講堂で実施することになりました。

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 こちらは、産学共同のシンポジウムです。下記の企業・団体が企画協力団体として開催を予定しています。

 エム・アイ・アソシエイツ株式会社
 株式会社 グロービス
 株式会社 ダイヤモンド社
 株式会社 日本能率協会マネジメントセンター
 株式会社 富士ゼロックス総合教育研究所
 株式会社 リクルートマネジメントソリューションズ
 株式会社 レビックグローバル
 学校法人 産業能率大学
 学校法人 産業医科大学
 NPO法人 日本アクションラーニング協会
 日本CHO協会
 らーのろじー株式会社

 今年のカンファレンスのテーマは「成長をいざなう個と組織の関係」です。

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 従業員の能力向上や成長を、企業が「丸抱え」で支援する時代は終わりました。個人が主体的に自らの学習や成長をデザインする一方で、企業には、個人に成長する機会や場を創出することが求められています。
 同時に、企業は、もうひとつの課題にも取り組まなくてはなりません。ともすればアトム化・孤立化しやすい個を、いかに組織化するのかが問われるのです。
 ワークプレイスラーニング2009では、「個人と組織の関係」という古くて新しい課題を、参加者全員で考える機会を持ちたいと思います。

 本カンファレンスは、いわゆる

 1.聞く
 2.聞く
 3.聞く
 4.帰る

 という場ではありません。

 1.聞く
 2.考える
 3.対話する
 4.気づく

 という4つのサイクルを、皆さん自身が体験していただきたいと思います。毎年、会場内では、下記のような活発なディスカッションが繰り広げられます。

discussio1.jpg

discussio2.jpg

discussio3.jpg

 これに加え、今年はリフレクティブ・シアターという「仕掛け」を実践してみたいと思います。お帰りになった際に、もう一度、カンファレンスの様子を振り返るための「仕掛け」が用意されています。
 こちらのリアルタイムドキュメンテーションの領域で独創的な研究をなさっている神戸芸術工科大学の曽和具之准教授とのコラボレーションです。

曽和具之先生のWebページ
http://www.kobe-du.ac.jp/faculty/product/teacher/details.php?i=807&u=%2Ffaculty%2Fproduct%2Fteacher%2Ffull_time.html

 こちらの方も、ぜひお楽しみに。

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 募集は800名です。
 ただ、今後、協力各社から一斉に広報を行いますので、なるべくはやめにお申し込みください。会場の都合で、人数に達したら、募集を打ち切らざるをえない状況です。お申し込みは下記のWebサイトで行うことができます。

■お申し込みWebサイトはこちら■
http://www.educetech.org/wpl2009/

 下記は正式なご案内です。こちらメールでの転送、ブログでの貼り付け、どうぞ宜しくお願いいたします。

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    ワークプレイスラーニング2009
     成長をいざなう個と組織の関係

 「組織」と「学習」に関する産学共同シンポジウム

  2009年10月30日(金) 午前10時 - 午後5時
    東京大学本郷キャンパス・安田講堂

お申し込みは http://www.educetech.org/wpl2009/

※本案内は転載自由です。お近くの方への転送を
お願いします

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あなたの会社は、「人を育てる会社」ですか?
   それとも、「人が育つ会社」ですか?

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   ・

「企業・組織における人材育成」の「明日」を提案
するカンファレンス「ワークプレイスラーニング2009」
を、来る10月30日(金)、東京大学本郷キャンパス・
安田講堂にて開催いたします。

今年でこのカンファレンスも3回目。ワークプレイス
ラーニング2007では「ミドルの学び」。ワークプレイ
スラーニング2008では「企業教育の新たな役割」とい
うテーマで、約800名の方々にご参加いただき、ピア・
ディスカッション、携帯電話を活用した質疑応答が行
われ、新たな知の交流の場を産学共同でつくりだすこ
とができました。   

今年度のテーマは、「成長をいざなう個と組織の関係」
です。今、時代は急速に変化しています。従業員の能
力向上や成長を、企業が「丸抱え」で支援する時代は
終わりました。個人が主体的に自らの学習や成長をデ
ザインする一方で、企業には、個人に成長する機会や
場を創出することが求められています。

同時に、企業は、もうひとつの課題にも取り組まなく
てはなりません。ともすればアトム化・孤立化しやす
い個を、いかに組織化するのかが問われるのです。

ワークプレイスラーニング2009では、「個人と組織の
関係」という古くて新しい課題を、参加者全員で考え
る機会を持ちたいと思います。

現代のビジネス環境において、人材育成のあり方とは
どのようにあるべきなのでしょうか。 企業の人材開
発部に求められることは何でしょうか。外部の民間教
育ベンダーには「何」ができるでしょうか。

本カンファレンスでは、「個人と組織の関係」という
課題から派生する様々な問いについても探求を深めた
いと思います。

本カンファレンスは、公共性の高い学術会議が開催さ
れる東京大学本郷キャンパス・安田講堂を会場として
産学協同の体制で開催します。教育学、経営学、社会
学、心理学のアカデミックバックグラウンドをもつ大
学研究者と、企業・組織の担当者が、ともに知恵をだ
しあい、ディスカッションを深めることをねらってい
ます。「企業・組織における人材育成」に関係するす
べての人々のご参加をお待ちしております。

ワークプレイスラーニング2009企画委員会一同

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■主催:
東京大学 大学総合教育研究センター
 
 
 
■共催:
非営利特定活動法人 Educe Technologies
(エデューステクノロジーズ)
 
 
 
■企画協力団体
エム・アイ・アソシエイツ株式会社
株式会社 グロービス
株式会社 ダイヤモンド社
株式会社 日本能率協会マネジメントセンター
株式会社 富士ゼロックス総合教育研究所
株式会社 リクルートマネジメントソリューションズ
株式会社 レビックグローバル
学校法人 産業能率大学
学校法人 産業医科大学
NPO法人 日本アクションラーニング協会
日本CHO協会
らーのろじー株式会社
 
 
 
■後援
日本教育工学会(申請中)
 
 
 
■日時:
2009年10月30日(金)
午前10時 - 午後5時00分(9時30分開場) 
 
 
 
■定員:
800名
※定員にいたり次第、申し込みを締め切らせていた
だきます。おはやめにお申し込みください。
 
 
 
■場所:
東京大学 本郷キャンパス 安田講堂
http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_00_01_j.html

地下鉄丸の内線本郷三丁目駅より 徒歩14分
地下鉄大江戸線本郷三丁目駅より 徒歩12分
地下鉄南北線東大前駅より 徒歩10分
 
 
 
■参加費
1名につき4000円
 
 
 
■カンファレンス内容

○開場 (09:30)

○趣旨説明・問題提起 (10:00-10:30)
・ワークプレイスラーニング2009の愉しみ方
 中原 淳(東京大学)
・問題提起
 長岡 健(産業能率大学)

○ケーススタディ1(10:30 - 12:00)

「社員が自ら変わる環境づくり」(30分)
 カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社
 代表取締役COO
 柴田励司氏

「人は育てるものではなく育つもの。だから、本人
の意思が主で会社の意思は従」。こうしたパラダイ
ム転換のもと、CCCは、個人が主体的に動き、か
つ、人と人とがつながるための仕掛けづくりに挑ん
でいる。その成果と課題をトップ自ら解説する。

○解説・コメント(20分)
 妹尾 大(東京工業大学) 経営学の立場から
 松尾 睦(神戸大学) 組織心理学の立場から
 長岡 健(産業能率大学) 社会学の立場から
 司会 中原 淳(東京大学) 教育学の立場から

○会場ペアディスカッション(20分)

○質疑(20分)
 質疑は携帯電話を活用して実施
 司会 中原 淳(東京大学)

○昼食(12:00-13:00)

○ケーススタディ2(13:00-:14:30)

「熱く、温かく、人から人へ、そして未来へ」(30分)
 アサヒビール株式会社
 執行役員人事部長
 丸山高見氏

社員は仕事を通じて成長します。社員が職場で持
てる力を100%発揮できるように、上司・先輩
・同僚・社員OBがよってたかって個人の成長を
引き出す取組を行っています。皆様との意見交換
を楽しみにしています。

○解説・コメント(20分)
 妹尾 大(東京工業大学) 経営学の立場から
 松尾 睦(神戸大学) 組織心理学の立場から
 長岡 健(産業能率大学) 社会学の立場から
 司会 中原 淳(東京大学) 教育学の立場から

○会場ペアディスカッション(20分)

○質疑(20分)
質疑は携帯電話を活用して実施
司会 中原 淳(東京大学)

○休憩(14:30-14:45)

○ケーススタディ3(14:45-:16:15)
「『人が成長する』って・・?」(30分)

株式会社バンダイナムコホールディングス
グループ管理本部人事部
デピュティゼネラルマネージャー
紀伊 豊氏

「成長=レベルアップ=できなかった事ができる
ようになる事」は嬉しいことで、楽しいはずです。
会社が育てるのではなく、自ら成長するための仕
組みを皆さんと考えたいと思います。

○解説・コメント(20分)
 妹尾 大(東京工業大学) 経営学の立場から
 松尾 睦(神戸大学) 組織心理学の立場から
 長岡 健(産業能率大学) 社会学の立場から
 司会 中原 淳(東京大学) 教育学の立場から

○会場ペアディスカッション(20分)

○質疑(20分)
 質疑は携帯電話を活用して実施
 司会 中原 淳(東京大学)

○リフレクション(16:15-16:50)
 リフレクティブシアター(10分)
 ペアディスカッション(25分)
 司会 中原 淳(東京大学)

○ラップアップ(16:50-17:00)
 中原 淳(東京大学)

○閉会(17:00)
 
 
 
■お申し込み
http://www.educetech.org/wpl2009/

にアクセスいただき、各自、お申し込みをお願いします。
お申し込みが終了次第、「確認メール」をお送りいたします。
お手数でも、そちらのメールを各自印刷のうえ、当日
お持ちくださいますよう、お願いいたします。

お申し込みいただいた参加者の皆様には、下記の条件を承諾いただけているものとします。

申し込みに伴う条件
1. 本イベントの当日の様子は写真、ビデオ等で撮
影いたします。本イベントはインタラクティブなセッ
ションを含みますので、参加者の方々も撮影されます。
これらの写真・動画は、当日のリフレクション時、お
よび、NPO Educe Technologies、東京大学 中原研究室、
本シンポジウムの運営スタッフの所持・利用・作成する
Webメディア、広報手段、講演資料、書籍等、研究資料と
して許諾なく用いられる場合があります。 本イベントの
参加はこちらを許諾いただける方に限らせていただきます。
現段階の予定では、当日の様子を写真撮影・ビデオ撮影し
、その写真・動画を、会場において参加者全員に視聴して
いただく時間を設ける予定です。また、当日のうちにWeb
サイトに動画像をアップロードし、会場を出たあとでのリ
フレクションに役立ててもらう実験的な試みを実施する予
定です。

2.
本イベントで剰余金が発生した場合は、東京大学中原研
究室および、NPO法人 Educe Technologiesが企画する、
組織人材育成・組織学習に関係するシンポジウム、研究
会、ワークショップ等の非営利イベント等の準備費用・
運営費用、および研究開発費用に充当します。

3.
欠席の際には、お手数でもその旨、
educejimu [at mark] educetech.org
([at mark] を@(小文字)に変換)までご連絡下さい。
 
 
 
■本カンファレンスに関するお問い合わせ先
特定非営利活動法人 Educe Technologies
事務局長 坂本篤史

educejimu[at mark]educetech.org

[at mark]を@にかえてメールを送信下さい

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投稿者 jun : 2009年9月 1日 08:50