自分の文章スタイルをつくるためのコツ!?:作家に「なりきる」、書くことをゲーミフィケーションする

「どのようにしたら、文章が書けるようになるのでしょうか?」

 先日、また、ある学生さんからこんな質問を受けました。半年に一度くらいは、この手の質問を受けますが、また、はたと自分のことを振り返りつつ、考えてみました。

 実は、以前、僕は「書くためには、書き続けることである」というエントリーを書いたことがあります。

書くためには、書き続けること!?
http://www.nakahara-lab.net/blog/2012/02/post_1833.html

 要するに言いたかったことは「どんなものであってもよいので、書き続けてさえいれば、いざ書く段には、スラスラと書けるようになっていくよ」ということです。
 逆にいうと「書き続けていないと、なかなか言葉やセンテンスが浮かばず、いざ書こうと思っても、苦労するよ」ということです。

 いまだに、こちらのエントリーで主張したことは、あながち間違っていないんじゃないかな、と思っていますが、でも、そこには明確に論じられていないことが多々あることも事実です。

 そのひとつが

「書こうと思ったときに、一番最初になすべきことがわからない」

 ということですね。

 つまり、重い腰をあげ、何か書きたいことができたときに、どう書くかについては、全く「書かれていない」ということです。

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 僕が研究指導をしている、大学院生の舘野さんは、アカデミックライティングの研究をしておりますので、専門の助言・情報はそちらに譲ることにします。

【大学生・院生向け】文章の読み方・書き方・考え方・発表の仕方まとめ
http://matome.naver.jp/odai/2133342163910863801

 ここでは、僕自身の過去を振り返り、学生時代の僕がやったことは何かと考えます。

 すると、それは意外にも、僕なりの答えは

「自分の好きな作家・評論家・エッセイストの文体を徹底的に真似て、その人になったつもりで書いてみる」

 ということでした。

 つまり、あなたが「村上春樹」好きならば

   勝手に「村上春樹」

 「小林秀雄」好きならば

   勝手に「小林秀雄」

 「群ようこ」好きならば

   勝手に「群ようこ」

 を実践しちゃうということです、勝手に。

 間違って頂きたくないのですが、文章そのものを「コピペする」というわけではありません。それは「剽窃」です。
 というより、自分の好きな書き手の「文章のスタイル」を真似て、自分で創作してみるのです。

「あの作家だったら、この状況をどう書くだろうか」
「あのエッセイストならば、この場面を、おもしろおかしく、どのように描写するのか」

 と考えて、想像力をふくらませ「なりきって」書いてみる、ということです、密かに、ゲーム的に。

  ▼

 大学時代の僕は、結構、これを愉しんでやっていました(授●中などのヒマなときに、ノートの切れっ端に!)。時には、おー、今日は「●●になりきったぞ」としたり顔で、教室の片隅で「授●」を聞いておりました。先生ごめんなさい。
 
 でも、しばらくすると面白いことが起こります。

 次第に本当にのりうつったかのように、自分の好きな作家風に、文章が書けるようになってくるのです。あくまで「それっぽく」という感じですが、いい回しが次第に似てきます。

 第二フェイズは、マネする作家が複数になったときに出てきます。 何人かの自分の好きな作家の文章スタイルを複数マネをしていたら、しばらくすると、それがぐちゃぐちゃに混ざっていって、自分でも何がなんだかわからなくなってくるのです。

 つまり、先ほどの例を使うのならば

 「村上春樹」+「小林秀雄」+「群ようこ」的な文章スタイル

 が、だんだんとできあがってくるのです。書き出しは「星新一風」、笑いをとるところは「原田宗典風」といった感じを想像してもらえると、よりわかりやすいかもしれません。もうこうなってくると、誰が誰だか、さっぱりわかりません。

 最終フェイズでは

 「村上春樹」+「小林秀雄」+「群ようこ」的な文章スタイル

 がさらに「崩され」「デフォルメ」されていきます。自分なりに、ここは、こう変えてみよう。ここは、工夫してみよう、とか。ここは、こう落とそう、とか。

 このプロセスは「守・破・離」といえば、そのようにも解釈できそうですが、最初は完全に書き手を模倣する。次第に模倣する書き手の数が増えていくと、だんだんと、壊されていく。そして、だんだんと自分なりのスタイルが生まれてくるのです。

 で、しらないうちに、今の僕の文章スタイルができました。

 マネしている、とう感覚は、もはやありません。何がなんだかわからないけれど、たぶん、これは「僕の文章スタイル」なんだろうな、ということです。

 僕の文章スタイルは要するに

 「ごった煮」

 なのです。
 ただし、「プチスパイスで味付けされ、自分なりに、完全にデフォルメされて、ちょっと煮込みすぎのごった煮」

 美味しいかどうかはわかりません(笑)。
 さて、どうでしょ。

  ▼

 この方法の(効果は保証できません)キモは3つです。

 まず、自分の好きな作家やエッセイストを「真似る」ので、モティベーションが続きます。嫌いな人の文章スタイルを真似る必要はないんです。自分が、この人みたいに書きたいな、と思える人を選ぶとよいと思います。

 第二のポイントは、実は、マネをするためには「本気で読み込まなくてはならない」のです。だって、マネができるくらいにはスタイルをコピーするには、ひとりの作家の複数の本を読まなくてはならないでしょう。自然と読書の癖もつきます。

 第三のポイントは、ゲームとして愉しむ、ということです。今の言葉でいうならば、

 「ライティングのトレーニングをゲーミフィケーションする」

 ということになるのかもしれません。
 「なり切って、うまくいったときには、ひひひ、とほくそ笑む」。そんなマニアックで、誰も理解してくれそうな「知的快楽」を、教室で愉しんでみるのも一興でしょう。

 ▼

 なお、これは僕自身の「わたしの教育論」ですので、効果は保証しませんし、一般化するつもりもありません。

 ただ、僕自身は、こないだのエントリーにも書きましたが、本当に文章が苦手でした。

「今日はハンバーグを食べました。とってもおいしかったです」

 のような文章を、小学校高学年まで書き続けていきました。自分にとって、最大の苦手分野が、作文だったのです。

 でも、その苦手を克服するために「自分が文章をうまくなるための方法を、自分で工夫し、編み出したメソッドのひとつ」が、これでした。要するに、スタイルを徹底的に真似ろ、と。「作家になりきる」のだ、と。でも、真似ていれば、いつしか、自然と崩れてくる。そして、いつしか、自分のものになる、と。

 いまだに文章は得意だとは思っていません。しかし、あまり苦労することなく、スラスラと書けるようにはなってきました。苦手意識はほぼなくなった、と言えるような気がします。

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 最後に、

 僕が、どの書き手の文章スタイルをコピーしたのか?

 って?

 それは「秘密」。誰にも言いますまい。

 なんだか、こっぱずかしいからね(笑)。

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■2012/06/25 Twitter

  • 21:34  週末、東京を離れておりました。「デジタル断ち」、いわゆる「Unplugged(アンプラグド) 」ですね。順次メールをお返ししています。爆走します。
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■2012/06/22 Twitter

  • 07:36  虫歯のある子供の割合、激減っぷりが、すごい。保育園だよりにびっくりした。 http://t.co/nrWME1n9
  • 07:29  ほほー>横浜国大、全学部の定員1割の学生に留学義務付けへ :入試において「一般入試とは別に英語力を重視した選考」をおこなった学生に対して(日経)
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■2012/06/21 Twitter

  • 22:21  最近、5歳になるくらいから、生意気でして。誰に似たのか。。。RT @purezou88 ユニークな息子さんですね!RT TAKUZO、寝かしつけ完了。いやー、苦戦したわ。やむなく子守歌歌ったら「それ、呪い?」って言われた(笑)。  [in reply to purezou88]
  • 22:04  TAKUZO、寝かしつけ完了。いやー、苦戦したわ。やむなく子守歌歌ったら「それ、呪い?」って言われた(笑)。
  • 17:35  あっ、「いいこと」思いついた。たぶん、これ、降臨かも。ししし。ししし。ししし。
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■2012/06/20 Twitter

  • 23:03  素敵なモデルをつくろう!RT @tatthiy 少し先が見えてきましたね(笑)RT トランジション研究会。大学院生と一緒にデータ解析をしている。毎週毎週、僕も宿題(分析報告)あり。院生の前で「ショボい報告」はできないので、毎週時間をとるのが大変。でも面白い。  [in reply to tatthiy]
  • 22:42  今日は、国家公務員の新たな幹部育成のあり方について、総務省、人事院の方々と議論しました。会には近畿大学の谷口智彦先生もいらっしゃいました。また次回が愉しみです。
  • 22:20  霞ヶ関を出て、法政大学市ヶ谷キャンパスへ。
  • 18:42  ブログ更新。青山学院大学大学院・集中講義「組織行動論」のシラバスができました http://t.co/iE1cED2c
  • 18:05  総務省「幹部候補育成課程に関する研究会」
  • 16:57  大学院授業「経営学習論」海外勤務における組織適応と学習。統合モデルの可能性。
  • 14:20  いよいよ出ます。近いうちに最終校正に入ります。今は、編集部の木村さんが渾身の校正をおこなってくれているはずです>RT @ut_press 【8月の新刊】 中原淳『経営学習論 - 人材育成を科学する』 http://t.co/jOyQN6kU  [in reply to UT_Press]
  • 14:17  (2)「グローバルに活躍できる日本人の育成」とは「外国語を強制的に学ばせること」なんかじゃなく(できるにこしたことはない)「仕事のできる人を地道に職場で育てること」だとデータをもって示すことができそう。8月、途中経過を発表します。http://t.co/cZZqbli2
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  • 14:14  学生の情報によると、本郷キャンパスには3台きているようです。RT こんな目立つ車がキャンパス内に入ってくるのですか? RT 最近、キャンパスにお目見えするようになったランチワゴン。なかなかうまい。 http://t.co/9mb91zEu
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  • 11:37  大学院・中原ゼミ(@nakaharalab)。今日の英語文献はHellinger & Heck(2010) Collaborative leadership and school improvement(リーダーシップと学校改善効果)#nakaharalab
  • 10:58  大学院中原ゼミ(@nakaharalab)保田さん(M1)の研究発表。「新人看護師の熟達化」に関する海外論文の文献レビュー。がっつり網羅的にレビューされていますね、素晴らしい。#nakaharalab
  • 06:16  笑、その通り>RT @tomokihirano カイ二乗検定! RT 誰だい? 僕の研究室のホワイトボードに、油性マジックで板書したのは。全然消えないよ。。 http://t.co/ftmlXXvy  [in reply to tomokihirano]
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■2012/06/19 Twitter

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  • 08:28  ブログ更新「人材開発・人材育成の仕事の5つの特徴」 http://t.co/qkhcqear
  • 05:52  嗚呼、眼鏡もってくるの忘れた(泣)。途方にくれてる電車内。
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投稿者 jun : 2012年6月29日 07:00