僕が高校生に知って欲しいと思った7つのこと

 先日、東大で開催された「大学生研究フォーラム2013」の2日目は、高校教諭の方々に、「大学の今、仕事の世界の今」をお伝えする内容でした。

大学生研究フォーラム2013、盛会にて無事終了しました!(心より感謝です) :中原のパワーポイント資料公開
http://www.nakahara-lab.net/blog/2013/08/2013_3.html

 僕は、高校で行われてようとしているキャリア教育!?というのものに全くの、甚だしいほどの「門外漢」なので、激しいアウェイ感と、強烈な違和感をもって、その場に参加していました。

 国主導?のキャリア教育!?でめざされているもの??、審議会などで議論されている仕事能力やらほにゃらら能力やらの構成概念??が、どうも、僕の知っている「仕事の世界の現在 / これから」と、どうにもズレており、そのズレを自分の中で消化するのに、時間がかかっていたのです。

 もしかすると、この違和感は、先だって、昨年でしょうか、某キャリア教育 / 職業教育系の学会の基調講演にお呼び頂いたときにも感じたものと同じかもしれません。

 仕事柄、僕は、経営企画・人事の方々とお話をすることが多いのですが、そこの皆さんが前提にしていることと、キャリア教育的世界?で話題とされていることの「あいだ」をつなぐことが、僕には本当に時間がかかりました(いまだに終わってはいません・・・)。

 こうしたズレがあるのは、もしかすると、僕が全くの「門外漢」だからかもしれません。今後とも、さらなる勉強と自己研鑽が必要なようです。

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 とはいえ、あまりにもわからないため、会の最中、僕は、ひとつのことに集中していました。

 キャリア教育を構成するほにゃらら能力?の柱やら、概念やらは、全く知りませんが、これからの時代を考えるうえで、僕がもし高校生にだったら、何を語りえるかを、考えていたのです。

 より話を具体的にするために、高校生として、自分の子ども、TAKUZOを据えました。もし、10年後、TAKUZOが高校生になったとき、僕なら、彼にわかるなるべく平易な言葉で、何を語り得るか。
 それも7つだけ選ぶとしたら、これから彼が進学、仕事の世界に入るうえで、何を知っていて欲しいと思うのか。

 僕が高校生のTAKUZOと語りたい7つのことが下記のリストです。
 ひと言で申し上げますと、彼にはポジティブなことも、ネガティブなことも含めて、「リアリティ」を伝えたいと思いました。

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1.大学は「人生のゴール」じゃない
  ・人生の成功を約束する「唯一万能な方法」は存在しない
  ・大学へ行くことは社会的に一定の意味がある。
    しかし、ゴールではない。

2.キャリアは紆余曲折、漂流必然。でも、節目判断
  ・プランは節目でたてる
  ・だが、プランはプラン。残念だけど、思い通りにはならない
  ・でも、プランがあるから修正できる

3.世の中は「変わり続けている」
  ・今日生まれる仕事もある
   今日消える仕事もある
  ・前の世代の常識は、君の世代には
   あてはまらない可能性が高い

4.一生「学ぶこと」はついてまわる
  ・「受験」はいつか終わる。
  ・学び続けることは終わらない
  ・ひとりで学ぶよりも、関係から学ぶ
   「他者とともに為すこと」で学ぶ

5.いつかは必ず「自分の仕事」で
    「食べて」いかなければならない
  ・緊急時は公的支援もありうる

6.組織も「いろいろ」、仕事も「いろいろ」
  ・仕事によって「条件と報酬と将来性」は違う
  ・組織によって「慣行と風土と常識」は違う
  ・経験と人脈がつけば、「自分」で
   仕事や組織を「つくること」もできる

7.仕事に「パラダイス」はない。
  ・でも工夫次第で「楽しむこと」はできる
  ・「戦略的逃走」「意図的反抗」も必要な場合もある

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 結局、これかよ、という感じですね(笑)。
 専門家の方々は、なんじゃ、こりゃと思うかもしれません。すみません、門外漢なので。こうしてみると、月並みです。本当に。でも、それくらいしかないよねぇ・・・(笑)。
 でも、僕が、TAKUZOに知っていて欲しいのは(たぶん高校生のうちから知っていても、ポカンでしょうけど)、こういうことです。僕が彼に知っておいてほしいことは、凡なんとか力とか、ほにゃらら基礎力とか、生きるほにゃらら、みたいな、抽象的なものではなく、具体的、かつ、リアルなものなのです。

 これらのことは「説教」されても、ピンとこないと思います。
 もっというと、どんな手法をもってしても、そのリアリティは伝えきれない、語りきれない。
 だって、そうでしょ。「これから」をいくら語っても、なかなか、まえもって、そのリアルは伝えきれない。でも、やらないよりはましなのかな、と。
 そして、もし、やるのであれば、彼が高校で仕事のことを学ぶのだとしたら、こうしたことを、「先達の経験の語りの中から知って欲しい」と僕は思います。
 多くの高校生がこれから参入するであろう組織の中で、生きている人々、組織のリアルを先達として経験した人々の「リアルな語り」と「語りを媒介とした対話」の中から、こうしたことを感じて欲しいな、とは思いました。
 そんなこと、すでにやられていると思うのですが、まことに「素人考え」で、本当にすみません。

 ま、そんなことを考えていた、フォーラム2日目でした。
 そして人生は続く。

  

投稿者 jun : 2013年8月27日 06:31