仕事を「こなす」、仕事を「デザイン」する、仕事の中で「プチ実験」する

 先日、ある大学で、近々開催されるイベントの最終打ち合わせをしていたとき、ある方がおっしゃった、ほんのひと言が、印象的でした。

 その方は、このイベントで汗を流す大学生たちに、「受付の仕事」を任せるとき、彼らに、こうおっしゃいました。

「受付をやるんじゃなくて、受付をデザインしてください」

 このワンセンテンスは、何気ないひと言で、おそらくおっしゃったご本人も意識にのぼっていないかもしれませんが、とても僕の印象に残っています。
 といいますのは、これに類することは、僕も常日頃から、若い方々に言っていることなのです。

「仕事」は「こなす」ことは避けよう。
 どんなに些細なことであっても「やらなければならない仕事」の中に、自分だけが知っている「プチ実験」をつくったほうがいいよ。
 ほんのささやかなことであっても「結果が見えないこと」を仕込もう。そして、結果を愉しもう。

「仕事をこなす」だけでは、能力やキャリアは伸びない。「結果が見えないこと」をつくってこそ、仕事上の成長がある。

 文字にしてみると、ものすごく説教臭くて恐縮で、「穴」があったら、ガシガシ掘って入って、こたつでも持ち込んで、みかんを食べたいくらいですが(笑)、いつの頃からか、こういうことを思うようになってきました。

 それは僕自身が、次第にミドルと言われるようになったからかもしれませんし、自分自身の研究 - 経営学習論の研究を積み重ねるに従って、「信念」のようなものとしてかたちづくられたものかもしれません。

 もちろん、すべての仕事に「プチ実験」ができるわけではないかもしれない。ほんとうに「ぺんぺん草もはえないような仕事」もあるかもしれない。

 でも、できることなら、ほんの少しでも、その余地を見つけようとしてほしい。「差」はわずかです。でも、こうしたことの些細な積み重ねが「その後の分かれ道」をつくる、と信じて。

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 先の話に引き戻してお話ししますと、学生さんたちが「受付」を「タスク」ととらえるならば、それを大過なくやりとげることが目的と成る。

 そうではなく、「受付」を「創造的な対象」ととらえるならば、そこには「コンセプト」が必要になり「自らデザインしうる」ものになる。

 大切なのは仕事をどのように「見なすか」ということです。そして、その際には、自分の仕事をつねに「上流」に位置づける努力が実は、大切なのではないか、と思うのです。

 もちろん、そこで思いつくことは、ささいなコンセプトかもしれないし、デザインしうる部分は、ほんのわずかかもしれない。

 でも、一瞬でもいいから「受付とは何か」を考え、「従来の受付にはない工夫」の余地とはなにかを考えることができるかもしれない。それは、先ほどの言葉を使うのなら、「結果が見えないこと」であり「プチ実験」ともいえるのです。

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 今日の話は、裏返して考えることもできます。

 もし万が一、あなたが人材育成や人材開発の担当者であったら、能力やキャリアを伸ばしたいと思う人に「仕事をデザインさせること」「仕事のなかでプチ実験をすること」を、いかに理解させ、いかに早い段階で「習慣化」させるか、ということです。

 現在の職場は多忙化しているし、とてもそんな余力はない、とおっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。様々な外的環境の厳しさは、よくよく重々承知しています。

 でも、おそらく、それしかないと思います。
 あとは「意志決定」の問題だけが残ります。

 そして人生は続く。

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■2012/11/16 Twitter

  • 23:05  やらなければならない仕事を「タスク」とみなし「こなす」こともできます。一方で、同じ仕事を行うに際し「挑戦的なプチコンセプト」をつくり「デザイン」することもできます。大切なことは「どう仕事をとらえるか」です
  • 20:21  自らが行った介入研究を、いかに評価するか。評価研究のパラダイムと諸問題をコンパクトにまとめた良著・入門書だと感じました。改めてよい勉強の機会になりました>安田 節之 (著) 「プログラム評価―対人・コミュニティ援助の質を高めるために」: http://t.co/fKYFNSFM
  • 17:16  カミサンと連絡とれた。ふぅ。
  • 17:13  なぬ、TAKUZO、ゲロ&発熱だと! 保育園よりTELあり。しかし、オラはいま、名古屋だよ。。。
  • 16:31  東へ。時速300キロで、保育園へ。お迎え、待ってろよ。たぶんギリギリ間に合うハズ。。。
  • 08:45  【ブログ更新】「大学生研究フォーラム2013」: 東京大学で2013年8月17日に開催します!:大学 / 大学生 / 企業の今を知る!? http://t.co/AAsXApgR
  • 08:14  「大学生研究フォーラム2013」が来年は東京にやってきます!来年の「大学生研究フォーラム」は、2013年8月17日(土)に東京大学 本郷キャンパス 伊藤謝恩ホールで開催します。当初9月4・5日でご案内をしておりましたが、上記の日程に変更いたしました。どうぞお楽しみに!
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投稿者 jun : 2012年11月17日 13:37