"考えるということを本気でさせた人"が一番えらい!?:「優劣のかなたに - 遺された60のことば」(苅谷夏子さん著)を読んだ!

 戦後を代表する国語教員のひとりである「大村はま」さんの珠玉の言葉をあつめ、解釈した著書「優劣のかなたに - 遺された60のことば」(苅谷夏子さん著)を読みました。

 扱われている内容は「学校教育現場」のお話 - 子ども論・授業論・教師論 - が多いですが、「人間の成長」「人間の学び」に関して深い洞察がなされており、これらの事柄に関心をもつ方であったら、たとえ「学校教育」に直接携われていなくても、愉しく読むことができると思います。

 大村はまさんは、「二度と同じ単元授業」をしないことを自らに課していた希代の国語教員であり、つねに自らに厳しい「授業研究」を課していました。特に、国語の教員らしく、言葉を大切にした方でした。

 曰く、

面白くない話に集中することは、人間としては難しいことです。子ども達がつまらない話や、何度も聴いた話を集中して聞くと行った芸当ができると思うのは、人間への誤解であると私は思います(大村はま)

一番先に浮かんだ言葉は使わないこと。たぶん、それは「自分の癖」だから、いつも同じ事を言っていることになる(大村はま)

子どもに考えさせるということをした人が、いちばん教師としてすぐれている。できるようになったか、ならなかったかは、どっちでもよろしい。けれども、考えるということをさせた事実  - "考えなさいといった人"ではなくて、"考えるということを本気でさせた人"が一番えらい/(大村はま)

メモしなくて忘れてしまったら、それでいい。忘れていいようなことだったのではないかしら(大村はま)

愚問は頭を悪くする(大村はま)

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「愚問は頭を悪くする」とは短く鋭い指摘です。そして、影賭けられたこの言葉は、鋭い刃を抱えたまま、ブーメランのように「教師」そのひとに帰ってきます。
 考えるためには、良質の問いかけを必要とすることは言うまでもありません。そのためには、「教え手」にたつ人は、常に研鑽を積まなくてはならないのです。

 ちなみに最近「対話」の重要性がよく語られることがありますが、大村さんは「話し合い」についても、よく言及なさっています。

 曰く、


話し合いは、悪い癖がついてしまいますと、まず直すことは不可能です。話し合いに対する興味を失い、その重要性を軽蔑するようになってしまいます。話し合いなんて時間つぶしでつまらない。みんな聞いてもきいても黙っていて、何も言わない人がいるとか、愉しく話せないとか、話し合っても、結局は、自分で考えたのと同じだ。話し合いがなくても、結局自分自分でやればいいんだ、とそういうふうになってしまいます。(大村はま)

話し言葉というものの世界に、どういう自己開発の瞬間があるかということを悟らせたいと思います。そして、生きた人と生きた人とが、貴重な生命の一コマをつかって打ち合っているそのとき、何が起こるのか、ということを私は悟らせたい(大村はま)

聞く力というのは智慧のはじまりです。耳のあいていない生徒は、まず成功しないと思います。集中して聞けないのは、勉強をしていく上では致命傷だと思います(大村はま)


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 常に教材を収集し、命を削りだすように、また、しぼりだすように授業をなさった方だから、子どもに対しても、厳しい目を向けていました。その目は、優しさに裏打ちされていたものでした。

 曰く、

教室でわたしは生徒をかわいいと思ったことなどない。 / かわいいか、かわいくないか、それどころではない。力をつけることで、精一杯でした(大村はま)

子どもたちに、安易に、誰でもやれる、やればやれる、といいたくない。やってもできないことがある - それも、かなりあることを、ひしと胸にして、やってもできない悲しみを越えて、なお、やってやって、やまない人にしたいと思う。

(子どもは)可愛い、可愛いではダメ。メダカ育てたって、可愛いんだから(大村はま)

自分のしたことを、自分で「一生懸命やりました」というものではない、ということを、一年の最初から教えていた。他の人の批判を封じる言い方であり、甘えた言い方である・・・ / 本当に一生懸命になっているときは、一生懸命になっているとは思わないものだ、意識しないものだ/(大村はま)

片々たることを責めない。本人が気がついてない、まずいことは、どうしても言わなくてはなりません。しかし、本人が気がついているよくないことをまた言うというのは、これは人として避けたいことと思います。本人が、ちょっとでも気づいているときには、もうその傷口にはさわならない。さわって痛い目にあわせて、それが辛くてあやまちを繰り返さなくなるなどと言われることがあります。そういうこともありましょうが、わたしは「傷跡なく」なおしたいと思います/(大村はま)

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 そして「教員」という自らの存在について、こんなことを述べてられています。それは「渡し守」のような存在だと。その凛とした言葉には、どこか「寂しさ」や「切なさ」も感じます。

わたしは「渡し守り」のような者だから、向こうの岸へ渡ったら、さっさと歩いて行って欲しい、と思います。後ろを向いて、「先生、先生」と泣く子は困るのです。「どうぞ、新しい世界で、新しい友人をもって、新しい教師について、自分の道をどんどん開拓して行きますように」そんな風に、子どもを見送っております(大村はま)
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 このように同著の内容は学校教育現場のものが多いですが、以上のように、その珠玉の言葉は、「人間」について関心のある方なら、楽しんで読むことができると思います。「子育て」で、子どもにかかわる方にもおすすめかもしれません。

 最後に著者の苅谷夏子さんについてです。
 苅谷夏子さんは、現在はオックスフォード大学で教鞭をとられている苅谷剛彦先生の奥様だそうです。苅谷夏子さんは、「大村はまさんの教え子」で、晩年は、彼女を影ながらサポートする仕事に携われていたそうです。苅谷夏子さんの綴る大村はまさんの言葉、そして、その解釈には、大変学ばせて頂きました。
 ちなみに、苅谷剛彦先生には、「教育社会調査実習」の授業で一年間大変お世話になりました(決して僕は優秀な学生ではなかったですが・・・その節は大変お世話になりました)。調査実習は、約1年間かけて、水曜日まるまる1日を使って、自分たちで仮説をたて、質問紙をつくり、統計分析をして、翌年の五月祭で成果発表をする、とい授業でした。Hard Funとはまさにこのことで、大変厳しかったですが、十数年たっても、もっとも印象に残る授業でした。
 
 苅谷夏子さんの本書を最初に手に取ったときは、全く気づかなかったのですが、この本からは大変学ばせて頂きました。What a small worldといいましょうか、勝手に、ご縁のようなものを感じてしまいました。

 そして人生は続く・・・

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■2012/10/21 Twitter

  • 21:17  「愚問」は頭を悪くする(大村はま)
  • 21:15  自分のしたことを、自分で「一生懸命やりました」というものではない、ということを、一年の最初から教えていた。他の人の批判を封じる言い方であり、甘えた言い方である・・・ / 本当に一生懸命になっているときは、一生懸命になっているとは思わないものだ、意識しないものだ/(大村はま)
  • 21:14  メモしていなくて忘れてしまったら、それでいい。忘れていいようなことだったのではないかしら(大村はま)
  • 21:11  今日の読み聞かせ絵本は、「すてきな三人組」です。親のない子供たちを集めて、お城でいっしょに暮らす三人の山賊さんのお話。子どもの頃、僕が好きだった絵本。 http://t.co/CbGnBqQM
  • 20:30  戦後を代表する国語教師、大村はまの珠玉の言葉をエピソードをまじえて解説。その言葉は、学校教育の現場だけにあてはまるものではありません。「人間の成長」「人を育てること」に関心のある方なら、ぜひ>苅谷夏子(2012)「大村はま 優劣のかなたに」http://t.co/Mh03gWGx
  • 20:30  子どもに考えさせるということをした人が、いちばん教師としてすぐれている。できるようになったか、ならなかったかは、どっちでもよろしい。けれども、考えるということをさせた事実  - "考えなさいといった人"ではなくて、"考えるということを本気でさせた人"が一番えらい/(大村はま)
  • 20:25  「一番先に浮かんだ言葉」は使わないこと。たぶん、それは「自分の癖」だから、いつも同じ事を言っていることになる(大村はま)
  • 16:00  子どもたちに、安易に、誰でもやれる、やればやれる、といいたくない。やってもできないことがある - それも、かなりあることを、ひしと胸にして、やってもできない悲しみを越えて、なお、やってやって、やまない人にしたいと思う。(大村はま)
  • 12:35  小生はLサイズ希望!RT @YmayumiY ほしい!@syasuak Mサイズ希望!@akanobu これイイですねー 親子で着たい! RT @nakaharajun: せなけいこ、おばけTシャツ。大人版があったら欲しい http://t.co/U0YOhDM3  [in reply to akanobu]
  • 12:34  TAKUZOも好きでした、、、怖がりながら読みました(笑)RT @inagakimegumi 「ねないこだれだ」ですよね。こわいのに何度も読みました。RT 先日買ったTAKUZOのTシャツ。せなけいこ、おばけTシャツ http://t.co/U0YOhDM3  [in reply to inagakimegumi]
  • 08:50  先日買ったTAKUZOのTシャツ。せなけいこ、おばけTシャツ。これの大人版があったら欲しいなぁ。 http://t.co/U0YOhDM3
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■2012/10/20 Twitter

  • 13:49  ただいま気合いで校正中。ようやく半分、あと100ページ。上田信行先生との共著、新刊「プレイフルラーニング」は12月刊行予定です!お楽しみに http://t.co/hiENNoQa
  • 09:11  東京、16度。東京大学ホームカミングデイ(卒業生・同窓生イベント)のお仕事で、本郷へ。静かな研究室。
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■2012/10/19 Twitter

  • 17:22  予約せねば>グラン・ジュテ「今村久美さん「NPOカタリバ」代表」 NHK Eテレ 土曜日午後10時25分 - 10時50分 : http://t.co/QDqVjj6x
  • 07:35  牛島先生、昨日はどうもありがとうございました!RT@lattedimucca: よろしくお願いします! RT @shotaroymd 東大中原研、法政長岡研、慶應牛島研との合同研究会。テーマは「学びの〈場づくり〉について考える」 #nun
  • 07:21  皆さんの「ステージ」を愉しみにしています。お疲れ様でした!RT @takerunagaoka #nun とても素晴らしい場でした。中原先生、牛島先生、舘野さん、有り難うございました。そして、牛島ゼミ生&長岡ゼミ生、/ さあ、考えるのは「次の機会」についてですね!  [in reply to TakeruNagaoka]
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■2012/10/18 Twitter

  • 19:15  これから小生プレゼンです。緊張するね。RT @shotaroymd 東大中原研、法政長岡研、慶應牛島研との合同研究会。テーマは「学びの〈場づくり〉について考える」 #nun  [in reply to ShotaroYmd]
  • 07:44  熱帯魚水槽にヒーターを取り付けました。もうすっかり秋だねぇ。
  • 07:01  む>米国大学の学費が高騰、社会問題化。2011年-12年、公立大学費上げ幅は平均8.3%。バークリー校の年間学費、州内出身学生は11676ドル(91万)、州外34645ドル(270万)。ハーバード大40886ドル(318万)、コロンビア大学47246ドル(368万)(日経)
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■2012/10/17 Twitter

  • 16:49  授業のため、再び本郷へ。一日に二度出勤している感覚に襲われる。一日が長い。
  • 13:33  本郷での大学院ゼミを終え、駒場へ。学部授業。で、その後は大学院授業のため本郷へ戻る。キャンパス間移動、大変。どこでもドア、望む。
  • 11:41  伊勢坊さんの研究発表。「秘書職の職務行動変化」を質的研究手法でアプローチした論文。秘書職は、経年変化に応じて、どのように職務が拡大し、ボスや組織に対して何をもたらせるようになるのか? #nakaharalab
  • 11:41  関根さんの研究発表。分散協調型のOJTの実証研究。OJT指導員を「ハブ」として、職場の各メンバーによって育成が担われた場合の学習効果。#nakaharalab
  • 11:26  注目されている報告書らしい。高等教育×民主主義。木村充君情報 > A Crucible Moment: College Learning & Democracy's Future : http://t.co/7rxMbjkV #nakaharalab
  • 11:14  夏合宿の成果が、冊子になりました。各メンバーが、自分の研究の中心的概念を調べて、20p程度の小論を書きました。取りまとめをしてくださった保田さん、皆様、お疲れ様でした!#nakaharalab http://t.co/qH3vjaqy
  • 10:18  大学院・中原ゼミ(@nakaharalab) 冬学期は今日から開始です。新規メンバーも参加してくれています。#nakaharalab
  • 07:17  【ブログ更新】ともすれば忘れがちな「実験マインド」を思い出す - 皆さん、最近「実験」してますか?: http://t.co/fBlDLMnF
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■2012/10/16 Twitter

  • 18:55  RT @tatthiy 【参加者募集】第二回 「越境学習×イノベーション論」の研究会を11/1の19時から行います!参加費無料で限定15名です。「オープンイノベーション・社会関係資本」に焦点を当てます。詳細&応募はこちらから http://t.co/HyRYtTK9  [in reply to tatthiy]
  • 18:42  河渡ったね(笑)めでたい>RT @tomokihirano 僕自身、美術館・博物館研究から出発してアート・コミュニケーション研究にかかわる中で、美術館・博物館という関心から離れつつあることを感じている。僕は、今の美術館・博物館にできないことをやりたい #marebi  [in reply to tomokihirano]
  • 17:08  (2)時々「想定外の結果」が生まれたり。本当に希に「期待通り」に面白いことが起こったり。でも、ほとんどは何も起こらない・・・でもそれは「悲観」すべきことじゃないですよね。「人間と人間の出会い、そして、その後のケミストリー(化学反応)」が最高に面白い。
  • 17:07  (1)「あの人」と「この人」が出会ったら「めちゃくちゃイノベィティブなこと」が起こりそうだな、と、考えることが、僕にはよくあります。僕が、いろいろな「場」をつくるときの、根本的動機のひとつは、「そういう出会い」を見たいからなのかもしれません。
  • 08:21  なぬ!興味深し>RT @tatthiy: さっそく登録してみたけど面白い。 → デジハリ、無料動画で学べる「カメラの学校」をWeb上にオープン http://t.co/Rff0DXSS
  • 06:47  「君たちは社会に出て、良き職場や良き上司に恵まれて、社会生活を送るかもしれない。しかし、多くの場合はそうではない。有能だとは思えない上司。自分にあわない仕事内容。さて、どうする? 本当に"かしこい"というのは、そこから始まるのだ」(甲田和衛氏の言葉「生涯学習と自己実現」より引用)
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■2012/10/14 Twitter

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投稿者 jun : 2012年10月22日 07:04