人材開発・人材育成の仕事の5つの特徴 : 曖昧さ、多重性、不確実性、再帰性、そして未完成性

 仕事柄、僕は、人材開発・人材育成をお仕事になさっている方と接点が多々あります。これまで10年弱にわたり、様々な方々と、お仕事などでご一緒させて頂く機会を得てきました。皆様、ありがとうございます。

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 その経験から考えるに、組織における人材開発・人材育成の仕事とは、他の職種と比べて、いくつかの特徴があるように感じます。そして、一見、ネガティブに見える、その諸特徴こそが、その仕事の奥行きの深さ・面白さを構成しているようにも思えます。
「ネガティブさ」と「面白さ」は、コインの裏表のようなものです。それをどの角度から、どのように見るか、によって、この仕事のイメージが変わります。

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 人材開発・人材育成の仕事の第一の特徴は「知識体系の曖昧さ」。

 たとえば、会計や法律などの職種と異なり、人材開発・人材育成の仕事とは、それを実施するのに必要になる「知識ドメイン」に「曖昧さ」が残ります。ビジネスの知識はもちろんのこと、学習論、動機論、組織論、ファシリテーションなどの諸技術、組織開発の知識などが、場合によっては、必要になります。

 しかし、それらの知識を得たとしても、絶対に「効果の高い人材育成」が行えるわけではありません。知識や事例は知っているにこしたことはないとは思いますが、それが必ずや成功を約束するわけではない。
 つまり、それらの諸知識は、状況に応じて人々が判断するためのヒントのようなものです。
「道具箱」の中に何の道具も入っていない人と、いろいろな道具が入っている人では、つくることのできるものが変わります。しかし、どんなにすごい道具をもっていても、必ず、すごい作品ができるとは限りません。そして、この特徴ゆえに第二の特徴が生まれます。

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 第二の特徴は「結果の不確実性」。
 人材開発・人材育成では、外部から「介入」を行ったときに、どのような結果が得られるかは、完全には予測不可能です。ある程度の予測ならつけることは可能かもしれませんが、介入と結果とのあいだに「機械的な関連」を認めることは、一般には難しいものです。外部環境、組織の風土、また組織の構成メンバーが、それぞれに異なり、これらの諸変数によって結果は異なるからです。

 僕は繰り返し、「人材開発・組織開発には"王道"ない」といっていますが、それは、そういうことです。様々な理論や先行事例は「先達の肩の上」のようなものです。それはゼロから、何かをはじめる人にとっては、より遠くを見通せる機会となります。

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 第三の特徴は「ステークホルダーの多重性」。
 要するに、人材開発・人材育成の仕事とは、経営者、現場のマネジャー、現場の構成員・・・様々なステークホルダーの間の利害関係の中にあるということです。
 人材開発・人材育成が「誰か一人の利益に資するべく行われる」のなら、わかりやすいのですが、どうもそうはいきそうにありません。経営者にとって「短期的にはよい施策」であっても、現場が疲弊し、長期的な効果が望めないのであれば、その施策の評価はさがります。

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 第四の特徴は「仕事の再帰性」。
 要するに、人材開発・人材育成を行う人は、究極において、その仕事内で自己が発するメッセージが、ブーメランのように、自己に帰ってくる、ということです。

 あなたは、他人に「学べ」という。
 そういう、あなたは、どうなのだ?
 あなた自身は、「学んでいる」のか?

 あなたは、他人に「変われ」という。
 そういう、あなたは、どうなのだ?
 あなた自身は、「変わっている」のか?

 あなたは、他人に「挑戦せよ」という。
 そういう、あなたは、どうなのだ?
 あなた自身は、「挑戦しているのか」?

 他者に対して投げかけた言葉は、そっくり自分自身に返ってくるのです。だから、この仕事は、「自分のあり方」が問われることになります。

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 最後の特徴は「未完成性」。
 人材育成・人材開発・組織開発の仕事に「完成」はあり得ません。完成したと思えば、環境の変化により揺らぎ、揺らぎの中で「完成」をめざすようなものです。「終わりなき旅」のようなものです。

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 これらの諸特徴「曖昧さ」「多重性」「不確実性」「再帰性」「未完成性」は、古典的専門職に従事する人たちから見ると、非常にネガティブなものとして見られると思うのですが、逆に、だからこそ、面白い、だからこそ探究のしがいのあることにも思えます。

 これらの「曖昧さ」「多重性」「不確実性」「再帰性」「未完成性」に対処するためには、人事の仕事をなさっている人々自身が、自らの仕事を内省し、自分のあり方(Being)や見識を高めていくこと。さらには、アクションを行っていくことが、求められるように思います。

 そして人生は続く

(本ブログでは、敢えて読者の弁を考え「曖昧さ」「多重性」「不確実性」「再帰性」「未完成性」を伝統的プロフェッショナルとは対極にあるものとして描きましたが、実は、ドナルド・ショーンの指摘にもあるように、これらの諸特徴の一部は、一般のビジネスにも、伝統的プロフェッションにもあてはまることです。たとえば、ビジネスに「王道」はやはりないでしょう。医療行為だって、実際はステークホルダーは多重化しており(患者のみならず、患者の家族・・・)、不確実な状況で行われているのです。詳細な議論は、また次回にさせてください)

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■2012/06/17 Twitter

  • 21:17  「人生には二つの悲劇がある。ひとつは"願いがかなわぬこと"。もうひとつは"願いがかなってしまうこと"」(George Bernard Shaw)
  • 19:42  中原家、家訓。銭湯での風呂あがりは、フルーツ牛乳。 http://t.co/33qa9ebA
  • 08:53  父の日のプレゼントで、小生のものになるはずだったウチワ。出来がよかったので、パパにあげるのはイヤになったらしい。「これは父の日の、自分のウチワ」とのこと。ややこしい(笑) http://t.co/zqf2NQMF
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  • 00:35  愉しみです!RT @takaotakashi 今度行こう~。RT バーに今すぐ行きたくなりますな(笑)RT いいマンガだよね~。RT 「バーテンダー」全21巻、大人買いした。毎夜1巻づつ読むのが愉しみになりつつあります。 http://t.co/KoZAxHy0  [in reply to takaotakashi]
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投稿者 jun : 2012年6月18日 08:25