インプロ × 組織 × クリエィティビティ : インプロ(即興演劇)を組織開発・デザイン教育に活かす!?

 昨夜は、NAKAHARA-LAB on USTで「インプロ × 組織 × クリエィティビティ」というトークセッションをおおくりいたしました。

 様々な企業・組織・地域にてインプロ(即興演劇)を実践なさっている高尾隆先生(東京学芸大学)、デザイン教育の分野でインプロを応用なさっている上平崇仁先生(専修大学)、俳優の弓井茉那(まな)さんらと、不肖・中原で、「インプロの可能性」について、ゆるゆるトークをしました。

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 近年、インプロ(即興演劇)が、学習手法として注目されてようになってきています。

 あるときは、コミュニケーション教育の手法として・・・
 あるときは、組織開発やチームビルディングの手法として・・・
 あるときは、デザイン教育の一貫として・・・
 あるときは、クリエィティビティの発揮の機会として・・・

 即興演劇には、シナリオ・スクリプトがありません。その場に居合わせる人々が、創意工夫をして「場」や「物語」をつくりあげていきます。

 と・・・概要を述べるのは簡単なのですが、インプロ、なかなかイメージがつかないですよね。かくいう僕もそうでした。また、インプロをすることの意味が、さらには、なかなかわかりにくい。

 この、「何となく、わかるようで、わからない!?インプロの実践」を、いくつかの実践事例、簡単な理論的意味づけを通して、考えることが目的でした。

 前半部の録画ビデオはこちらです。どなたでもご覧頂けますので、ぜひお暇なおりにでも、ご視聴ください。

 前半は、インプロとは何か? インプロの企業・地域・組織での実践について、高尾先生にお話し頂いております。中原は著書「インプロする組織」の2章で書いた内容 - 企業でインプロを実践することの意味 - について、お話ししました。

 当日、中原使ったパワーポイントは、こちらでどうぞ。昨日のファイルをセーブするのを忘れちゃったので、ちょっと変わっていますが、でも、たぶん、それほど変わっていませんので、気にしない、気にしない(笑)。

 後半部の録画ビデオはこちらです。

 後半部は、上平先生のデザイン教育でのインプロ活用事例をもとに、創造性とは何か、について考えています。
「荷物以外の体験を持ち運ぶ紙バックをつくる」という課題のもと、様々なプロトタイプをつくり(Protptyping)、それを使って、デザイナーが利用シーンなどを演じてみて(Acting out)し、さらにリバイズ(Revising)する。非常に面白いですね。

 今回のUSTは、あっという間の2時間でした。
 皆さんは、いかがでしたでしょうか。

 中原は、個人的には、放送の録画ビデオを深夜に振り返りながら見て、いくつかのことを考えていました。

 ひとつめ。
 それは、インプロは、「大人が、何かを、身体を用いて表現・外化するメディア」のひとつであって、他のやり方を「排他」するようなものではない、ということです。
 教育や学習の言説空間は、すぐに「あれか、それか」という二交対立(ダイコトミー)の議論にふれやすい。いわゆる「振り子(Moving pendulum)」のように、注目されるものが、極に振れるということです。

 たとえば、容易に予想がつくのは・・・

「これからは対話ではなくて、インプロだ!」

とか

「これからは認知・アタマの時代ではなくて、身体だ!」

 という、わかりやすい「二項対立の議論」「キャッチーなセールストーク」が生まれ出る可能性があります。そうした議論は、批判的に吟味する必要があるでしょう。

 僕個人としては、現場・学習者の状況におうじて、特性の異なる「表現メディア」が用いられてもいいと思います。 
 そして、どのような「表現メディア」のヴァリエーションをもって、それを状況に応じて、まさにimprovisationalに使いこなせる能力が、ラーニングプロデューサ、ラーニングデザイナー、ファシリテーター・・・(何とよんでもいいですが)、そういう「学びを生み出す人々」には、求められるのだと僕は思います。

 USTでもいいましたが、私たちは、むしろ「Tool box」をもつべきなのではないでしょうか。様々な表現メディアが、多種多様に入っている自分自身の「Tool box」を持ち、現場・状況の変化におうじて、様々なものを「恥知らずの折衷主義」で用いればよいのだと思います。僕としては「Tool box」に入るような、ツールを、今後も様々に発掘したり、創造していきたいな、と感じます。

 ふたつめ。
 経営・組織研究においても、「創造のために身体を用いることに関する研究が、もっと進むと面白いな」と思いました。USTでもいいましたが、これまでの研究は「生産のためにいかに効率的に身体挙動を制御するか」「多忙化・過剰負荷のために、身体に変調が起こることをいかに防止するか」「徒弟制の制度化において、師匠のわざをいかに身体化するか」ということに関する研究はあったような気がします。経営・組織の文脈において、「身体」の語られ方は、おおよそ、この3種類ではないでしょうか。もちろん、そうした研究が重要であることは言うまでもありませんが、ここにもバリエーションが生まれても面白いと思いました。

 みっつめ。
 それは、インプロを「学習の機会」として考えたい人々のコミュニティや、つながりが、インプロ業界!?(そんなのあるのかな)の中に生まれて、自分たちの実践を鑑賞・吟味し、クオリティを担保していける場があるとよいな、と感じます。僕は、インプロの内部にいる人間ではないので、このことに関しては、できることは少ないのですが、仕事柄、様々な「教育手法・学習手法の興隆と衰退」の歴史を見ていて、そのように思います。

 様々な事例がありますが、「教育手法・学習手法の興隆と衰退」の多くの歴史は、

1)手法を実践する人々のあいだの、大同小異の差が乗り越えられず、関係者内部のゆるいつながりや、協力関係が生まれず、ムーブメント自体をつくれないこと

2)資格などを設けた場合は、本来、資格を与えてはいけない人に大量に資格証明を行ってしまい(選抜と資格付与の仕組みが機能しない)、資格自体がデフレーションをおこし、その領域自体の経済的価値が地盤沈下すること

3)学習手法の普及のスピードに、学習手法を実践できる人材の育成のスピードがおいつかず、質の低いものが普及してしまうこと、ひいては、その領域自体にレピュテーションリスクが発し、地盤沈下していくこと

4)手法自体の教条化・固定化が進み、環境適応をはたせないことによって、徐々に衰退していくこと

5)実践の創設者・古参者がカリスマ化し、新参者の参入が減り、徐々に衰退していくこと

 などの、いずれかから起こります。インプロが、今後、豊かな学び・異化・内省の機会をつくりだしていくものとして発展していくためにも、ぜひ、何らかのかたちで、これらの問題と取り組む必要があるのかな、と、全くの外野・門外漢ながら、感じました。

 以上、勝手な感想です。

 ともかく、ご発表いただいた高尾先生、上平先生、弓井さん、Twitterで積極的に発言して下さった皆様、視聴して下さった皆様、今回の放送をお手伝いいただいた脇本君、保田さん、石戸谷さん、本当にお疲れ様でした。ありがとうございました。

 そして人生は続く。

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追伸1.
高尾隆×中原淳「インプロする組織」、3月16日あたりから書店にならぶようです。こちらは、三省堂の石戸谷さんに最後まで伴走をいただきました。心より感謝いたします。

 以前にもお知らせしましたが、この書籍は、一冊として同じカバーはありません。「脱予定調和」を地でいく想定で、石戸谷さんのこだわりの一冊です。

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 どうぞおたのしみ下さい。

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追伸2.
「職場学習の探究」ついに完成しました。日本生産性本部×中原研究室の共同研究の論文をまとめた書籍で、ガチ研究論文集・専門書です。ここまで伴走いただいた、日本生産性本部の深谷さん、矢吹さん、大西さん、中村さんには心より感謝いたします。どうもありがとうございました。3月21日あたりから書店にならぶようです。

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下記は「職場学習の探究」の目次です。

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職場学習の探求 ― 企業人の「成長」を捉える研究論文集
目次

■序章 - 職場学習の探求、その出発点に
中原 淳

【理論編】
■1章 職場における業務能力の向上に資する経験学習のプロセスとは?
-経験学習モデルに関する実証的研究-
木村 充

■2章 「職場学習風土」と「個人の経験学習」の関係を探求する
伊勢坊 綾

【上司編】
■3章 部下の成長を促す上司のあり方とは?
--上司の成長認知と部下に対する内省支援の関係--
脇本健弘

■ 4章 職場のオープン・コミュニケーションを促すためのマネジャーのリーダーシップ行動
吉村春美

【職場編】
■5章 新入社員の能力向上に資する先輩指導員のOJT行動
~OJT指導員ひとりでやらないOJTの提案~
関根雅泰

■6章 業績と能力を伸ばす職場の探求
組織市民行動と職場学習風土に着目して
福山佑樹

■7章 職場イノベーション風土が「職場における部下の支援」に与える影響
- 新たなことに挑む職場で人は育つ -
中原 淳

【職場外要因編】
8章 就職活動時の職業価値観は,入社後の組織社会化にどのような影響を及ぼすのか?
- 自己実現志向・組織からの独立志向をもつ人は、組織になじめぬ人か -
伊澤莉瑛

■9章 海外での経験は、能力向上にどのような影響を与えるのか?
-経験学習行動を手がかりにして -
島田徳子

■10章 ビジネスパーソンの海外経験がキャリア成熟に与える影響
重田勝介

■11章 職場を越境するビジネスパーソンに関する研究
社外の勉強会に参加しているビジネスパーソンはどのような人か
舘野泰一

■ あとがき
中原淳

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■2012/03/14 Twitter

  • 07:16  グローバル化と大学アライアンス>東北大、東京大、名古屋大、京都大、立命館大、九州大、英6大学と協力。産学連携や人材育成で新たな枠組み。技術・知識移転、大学間人材交流、社会貢献など(日経)
  • 07:05  興味深いですね。失敗について語る「失敗カンファレンス」> 「 失敗カンファレンス 2012」のまとめ:http://t.co/NKudGimX
  • 00:24  USTでもご紹介したインプロの映像です。男性2名は某企業の役員+社員の方々です。最初2つは、本格的なインプロに入る前のゲームです。一番最後は、日常の権力関係を変えるインプロです。http://t.co/cqjD9qD7 #nlabjp
  • 00:24  UST「インプロ×組織×クリエィティビティ」後半部の録画ビデオはこちらです。主に、デザイン教育にインプロを活かすか、という話です。上平先生のデザイン教育のお話、とても興味深いです! #nlabjp http://t.co/2dAa9F2b
  • 00:23  UST「インプロ×組織×クリエィティビティ」前半部の録画ビデオ(企業でのインプロ実践・組織開発)はこちらです。いつでもお楽しみいただけるので、ぜひどうぞ。#nlabjp http://t.co/lP62C9DY
  • 00:23  UST「インプロ×組織×クリエィティビティ」無事終了しました。高尾さん、上平さん、弓井さん、お手伝いいただいた脇本君、保田さん、お疲れ様でした&ありがとうございました!視聴いただいた皆様も心より感謝です。#nlabjp
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■2012/03/13 Twitter

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■2012/03/12 Twitter

  • 15:00  面白そうな講義ですね。いいなぁ。>RT @ywakabayashi 京都大学スプリングデザインスクール 2012 - スケジュール http://t.co/dryVh9L7  [in reply to ywakabayashi]
  • 14:30  マジでよくできてますね。僕が見た講義では、先生の話した内容のテキストがあって、同期されて表示される。RT @shigejam OCWなどのビデオ教材を使い外国語を学ぶサービス"StudyStream" http://t.co/KhQSLbnw  [in reply to shigejam]
  • 08:23  TAKUZO、保育園、今日から「お昼寝」がなくなる、とのことです。もう半月で「年長」さんなので、今から慣らすのだそうです。TAKUZO、残りの人生、しばらく「お昼寝」の時間はないよ。そう考えたら、今日は、歴史的な日なんじゃないだろうか。
  • 07:26  興味深い記事:「楽しさはオマケではない」>RT @yukianzai 【ブログ更新】ワークショップはなぜ楽しくなければならないのか http://t.co/uTgNYTyw  [in reply to YukiAnzai]
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■2012/03/11 Twitter

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■2012/03/10 Twitter

  • 18:58  「人生だけは、他の数式のように、答えとしての数から"逆算"してみる訳にはいかないのだ」(寺山修司)
  • 07:44  ブログ更新。わたしたちは「経験をめぐる戦い」の中にいる!? 増え続ける間接経験の中で、いかに付加価値の高い直接経験を得るのか:エドワード・リードの「経験のための戦い」を読んで、妄想したこと: http://t.co/EHQmYxh8
  • 06:37  愉しみにしてまーす!>RT @takaotakashi 予定どおりおこなわれることになりました~ >3/13(火)19:00 UST 組織開発とデザイン教育にインプロ(即興演劇)がいかに活きるのか?その場でインプロもあるかも!? http://t.co/FhK5kVwD  [in reply to takaotakashi]
  • 06:35  お騒がせしました。予定通り行います> 3/13 火 19:00 「インプロ × 組織 × クリエィティビティ」 - 予定調和を脱し日常を揺さぶる。デザイン教育と組織開発への応用:高尾隆(東京学芸大)、上平崇仁(専大)、中原淳 http://t.co/aFwwQ7Xc
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■2012/03/09 Twitter

  • 14:20  「驚くべき学びの世界展@アーバンデザイン柏の葉」2012年3月20日-25日 10:00-16:00 に開催、無料だそうです> http://t.co/HSxzrKUe
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■2012/03/08 Twitter

  • 22:32  NHK Eテレ・グランジュテ「建築家・空間デザイナー 遠藤幹子」を見てます。非常に興味深いですね。おっ、大月ヒロ子さんが登場(笑)> http://t.co/1FlBiGfZ
  • 21:52  「オバマの作り方」読了。スマートフォン、SNS、ソーシャルメディア、Youtubeなどの動画メディアを駆使した大統領選挙戦術。次期大統領選は、どういう戦術で闘われるか?> http://t.co/TNB5HIhK
  • 07:09  そろそろ家族を、起こしに行こう。アイアム「目覚まし時計」。
  • 07:08  面白そうですね>世界を変える驚きの発想を、最高のプレゼンで学ぶ、新しいスタイルの語学教養番組。NHKとTEDの協力によりスタートする新番組「スーパープレゼンテーション」: http://t.co/ebkrTGU9
  • 07:01  大学教育の収益率は男性で6.2%、女性で7.8%。データに基づく実証。興味深い記事>大学生は多すぎるのか、大学に行く価値はないのか? 畠山勝太さんの論考(SYNODOS JOURNAL): http://t.co/isWV34F0
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■2012/03/07 Twitter

  • 08:50  3月13日開催予定だった「インプロ×組織×クリエィティビティ」UST配信をやむなく延期します。ごめんなさい。でもリスケして必ずやりまーす。
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■2012/03/06 Twitter

  • 22:05  空間の工夫事例 RT @YukiAnzai ワークショップの空間をいかにデザインするか?: http://t.co/h92D8TBN
  • 21:52  同感!RT @junsuzuki01: ポジティブな人ってなんだか信じられないという人がいる。でもね、いい大人がポジティブなだけなんてあり得ないんだ。もし、ポジティブに見えるとしたら、それは意志のなせる技です。
  • 18:46  嗚呼、風に吹かれたい気分だね。こんな日もある。でも、明日、また日は昇る。そして人生は続く。
  • 15:54  学生の皆さん、重田先生、お疲れ様でした!RT @shigejam 駒場キャンパスにて講義「メディア創造ワークショップ」の合評会。学生が制作した電子書籍を互いに見ます。近日iTunes Uにて公開されます。 http://t.co/Pzs1lxit  [in reply to shigejam]
  • 12:39  学習手法やワークショップ手法に著作権は発生しません(笑)それはもともとオープンソース的なものです。盛会よかったですね。RT @munyon74 今回ペアワークを入れましたが、これは、中原先生の大学生研究フォーラム2011のやり方を参考にしました。というかパクりました。#fdf17  [in reply to munyon74]
  • 07:06  ブログ更新。「ソーシャルラーニング」か「ラーニング・イズ・ソーシャル」か?:「今日・明日の生産性」には1ミリも影響しないことを書きました(笑)。 http://t.co/93xrysQ1
  • 06:40  どうも、文章に「モッサリ感」が漂っておる。思い切って、この段落を捨てるべきか・・・。でも、もったいないなぁ。
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投稿者 jun : 2012年3月14日 13:32