アドベンチャー体験を通じて「日常」を改めて考える : アドベンチャー教育体験記

 先日、玉川大学IB(国際バカロレア)クラスと学術研究所・心の教育実践センターを訪問させていただきました。

玉川学園国際バカロレアクラス
http://www.tamagawa.ed.jp/ib/index.html

玉川大学学術研究所・心の教育実践センター
http://tap.tamagawa.ac.jp/

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 第一に、国際バカロレアクラスとは、スイスジュネーブに本部をおく国際教育団体が認定する全世界共通の教育資格で、海外大学の多くはその資格を高卒資格と認めています。

 国際バカロレアクラスの一般的コースには、3歳~10歳を対象としたPYP(Primary Years Programme)、11歳~16歳を対象としたMYP(Middle Years Programme)、高等学校の最終2学年を対象としたDP(Diploma Programme)があります。が、玉川大学では、このうちMYP、DPを現在運営しています。授業は国語などをのぞき、英語です。

 授業はとても興味深いものでした。
 先生は外国人で、当然ながら、英語で授業をします。当日は、高校の化学の授業だったのですが、「イオン」を「アイオン」、「マグネシウム」を「マグネジウム」と発音されると、ほほー、英語では、そう発音するのか、と、なぜか感心してしまいました。

 そういう授業が日本で実施され、日本の子どもが受けている様子を見て、興味深く感じました。

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 玉川大学学術研究所・心の教育実践センターは、「アドベンチャー教育の理念と実践法」を研究・実践するセンターです。

実践事例
http://tap.tamagawa.ac.jp/practice/index.html#practice06

 詳細は、上記の実践事例をご覧頂ければイメージがつきやすいかと思うのですが、ロープ渡りや、集団でのシーソーなどの「アドベンチャー」を通じて、コミュニケーションや集団間の信頼などを考えるきっかけを提供しています。当日、私たちもいくつかのアドベンチャー教育を体験させて頂きました。
 
「アドベンチャーを通じた学習」に関する、僕なりの解釈はこういうことです(いくつか難波先生からお聞きしたキーワードをおりまぜて解釈します)。

「アドベンチャー」への挑戦は、参加者からみると日常の空間よりも「リスクが高く」見えます(percieved risk)。
 実際は「アドベンチャー体験」は指導者の先生方によって注意深くファシリテーションされていますので、リスクは少ないのですが、参加者によって知覚されたリスク(percieved risk)は高くなります。私たちは、日常、コンフォートゾーン(comfort zone)を生きていますが、リスク下における行動は、さしずめ「ストレッチゾーン(stretch zone)」「ストレスフルゾーン(stressful zone)」ということになります。

 この「知覚されたリスク」が集団間で共有されると、日常生活ではそれほどでもなかったとしても、このリスク下においては、集団間が協力せざるを得ない状況、集団間がコミュニケーションせざるをえない状況が生まれます。つまり「必然性」が生まれます。そして、そこで生まれた協力、コミュニケーションを通じて、アドベンチャーをクリアする。

 その上で、このアドベンチャーをクリアするプロセスにおいて「今、ここで」起こった「出来事」「クリティカルインシデント」を用いて、「日常」を投射します。
 「アドベンチャー下での協力・コミュニケーション・信頼」を「リソース」として、日常の生活場面での「協力」「コミュニケーション」「信頼」といった物事について「リフレクション」を行う、ということでしょうか。

 いったい協力とは何か?
 信頼とは、どういう状態で生まれうるのか?
 私たちには、どんなコミュニケーションが必要なのか?

 ですので、ポイントは、アクティビティではなく、アクティビティが終わったあとのリフレクションに、あるのだと感じました。難波先生は、このプロセスを「What(何が起こったのか?) - So what(それはどういうことだったのか?) - Now what(今、これから何をなすのか?)」とよんでおられました。
 ですので、この学習は、いわゆる「経験学習」の系譜に位置づけられるものだと思います。 もちろん、アドベンチャー教育がこの種のプロセスをとるのではないと思います。また、上記はわたしの勝手な解釈に過ぎません。

(ちなみに、ダイアローグ・イン・ザ・ダークも、カリキュラム構造としては、非常にこれに類似すると思います。ダイアローグ・イン・ザ・ダークは、"圧倒的な暗闇"ということで、知覚を剥奪し、参加者の知覚リスクを高め、同種の舞台をつくりあげます。時間の都合で論じませんが、ですので、アドベンチャー教育は、理論的、かつ、カリキュラム構造的には、組織開発の一系譜に位置づけることも可能だと感じました)

 当日、当センターの難波克己先生のご厚意で、私たちはアドベンチャーをいくつも実施させていただきました。難波先生のファシリテーションは、とても面白く、また人を元気にさせるもので、私たちは大変素晴らしい時間を過ごすことができました。

 非常に興味深かったのは、我々が第一の課題を終えたときに、難波先生がおっしゃったひとことです。

「この課題をやると、この集団がどういう集団なのか、誰と誰の関係に問題があるのか。ふだんはどうやってコミュニケーションしているのかがある程度わかってきます。この状況を見て、次の課題をどうするのかをきめていきます」

 つまり、「今、ここ」で起こっている現象・出来事を通じて、次のプログラムをアドホックに構成しているということですね。アドベンチャー教育におけるファシリテーターとは、そういうものなのか、と興味深く感じました。

 ちなみに、難波先生によりますと、経験学習の学会が来月にあるらしく、そこにはアドベンチャー教育をはじめ、様々な体験・経験を通じた学習を実践する実務家の方々が集まるそうです。面白いですね。世界には、そんな学会もあるんですね。

Association for Experiential Education
http://www.aee.org/

 最後になりますが、IBをご案内いただいた常盤さん、心の教育実践センターの難波先生には、大変お世話になりました。またわたくしと一緒にアクティビティに参加頂いた皆様も、お疲れ様でした。この場を借りて感謝いたします。本当にありがとうございました。

 そして人生は続く。

追伸.
 アドベンチャー教育に関しては、これまで下記の書籍がでています。

  

追伸2.
 一緒に参加した方が、「こういう教育、5・6年前に企業でも流行りましたよね」とおっしゃっていたのが気になりました。それがどういうものかは知りませんが。この種の学習の場合、体験や教育そのものよりも、いかにそれをセンスメイキングしたり、リフレクションするかが重要になるのだと思います。

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■2011/10/23 Twitter

  • 16:01  いいアイデアが浮かばん。温泉にでもつかって、ゆるりと、考えるか。
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■2011/10/22 Twitter

  • 17:10  水槽のお掃除&水替え終了。これを終えると、週末土曜日の夕方って感じ。
  • 08:40  面白いです。成果をあげるためには、どう職場で振る舞うか?RT @fumituki85: 【参加者募集】11月5日(土)に"組織市民行動ゲームを体験するワークショップ "を東大で開催!お申し込みはこちら http://t.co/gZM2vN9F
  • 08:29  インフルエンザ予防接種。TAKUZOは、もう一回あるね。
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■2011/10/21 Twitter

  • 22:35  ありがとうございます。僕もいつも、今も、苦戦しています。自戒をこめて書いてみました「先行研究をまとめる5つのプロセス、陥りやすい3つの罠」RT @satoko_212 先行研究をまとめるのに苦戦しているので、とても参考になりました。 http://t.co/EA6RkIJI  [in reply to satoko_212]
  • 11:19  玉川学園到着。IBコースとアドベンチャー教育の見学をさせていただきます。常盤さん、難波先生に感謝です。 http://t.co/ff8S3c3Y
  • 10:44  ヤバイ、これ、急行か。間違って、乗ってもた。目的地、通過しとるがな。。。
  • 09:57  Have fun! RT @laissez0605: プロの方のお話が伺えてとても楽しいです RT 駒場・学部授業「メディア創造ワークショップ」。ダイヤモンド社の間杉さん(@masugit)をゲスト講師にお迎えして
  • 07:20  ブログ更新「先行研究をまとめる5つのプロセス、陥りやすい3つの罠」:小生もまだまだ修行中ですが、先行研究のまとめ方について書いてみました。5つのプロセスとは、コレクション、クリティーク、ストーリー、フォーカス、コネクションです: http://t.co/QPfFAjan
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投稿者 jun : 2011年10月24日 08:15