あなたの使っている「場」という言葉の意味は何ですか?:場のコンセプトとユーザー参加型デザイン

 昨日のMCC授業「ラーニングイノベーション論」では、東京工業大学の妹尾大先生に「知識創造のための場のデザイン」というご講義&ケーススタディをいただきました。

「知識創造」というコンセプトにあらためて共感するとともに、「場」という、もっともシンプルで、もっとも深遠なコンセプトについて、改めて考え直すきっかけを与えてくださいました。妹尾先生には、この場を借りて心より御礼申し上げます。ありがとうございました。

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 あらためて考え直してみると、「場」とは難しいものです。

 一般には「場」とは「物理的な場所」のことを指したり、「仮想空間上の場所」を指示すると思われがちです。たとえば、「学びの場」とは、どこかの「物理的空間」を指し示すと考えがちです。

 しかし、知識創造理論の立ち位置にたった場合、そうした回答は、必ずしも満足のいくものではありません。

 知識創造理論の立ち位置にたった場合、場とは「複数人の人々に共有される文脈」であると考えるのです。換言すれば「複数人の人々が、協調して、知識や物事の意味を構成するために必要な背景情報」といえるかもしれません。

 しかも、知識創造理論が強調するのは、文脈の共有が「静的」ではなく、「動的」になされている状態です。換言すれば「知識や物事の意味を協調的に構成するために必要な文脈を、複数人の人々が、更新し続けている状態」と言えるかもしれません。一言でいえば、「場」とは「Shared Context in Motion」であるのです。

 ですので、物理的な場所や、仮想空間上の場所は、そうした「共有文脈」を構成するひとつの構成要素でしかありません。また、「場」は生まれては消え、消えては生まれる、そういうものです。

 卑近な例をだしていうと、こういうことですね。
 どんなにコミュニケーションスペースが素晴らしくても、どんなに大枚はたいて、素晴らしいファシリティを入れて空間をデザインしたとしても、それだけで、そこは「知識創造の場」にはならない。それを「場」とは言わない。

 「場」というものを名乗りながら、全く、メンバーが文脈を共有していない「場」もたくさんあります。かつては「場」だったんだろうけど、今は「ペンペン草」もはえないような場もたくさんあるということですね。

 場を、文字通りの「場」にするためには、それなりの「工夫」と「ケア」がいるということですね。

 妹尾先生は、昨日、ある会社の「オフィスの変革」のケーススタディを通して、その「工夫」について、私たちに考えさせていただく機会を与えてくださいました。

 その会社では、社長含め社員が全員参加で、オフィスファシリティの変革をデザインし、評価し、自分たちのオフィスを、自分たちの力でつくりあげていました。それも「未完のプロジェクト」として。

 この事例から、僕の認識では、「場」をつくりだすヒントは「ユーザー参加型デザイン」にあるのかもしれないと感じました。つまり、「自分たちの場を、自分たちが参加して、協調してつくりだす機会そのものが、場をつくりだす」ということです。
 
 それは、コミュニケーションスペースやリラックススペースといわれるような、「他者(多くは経営者)から、よかれと思って、押しつけられたスペース」につきまとう、負のソーシャルスティグマ(烙印)、つまり「あんなスペースで、ダベってるやつは、暇人で、仕事のできねーやつなんだよ、、、暇でいいね」というスティグマを防止する可能性があるのかな、と感じました。だって、みんながデザインに「参加」しているから。

 ユーザー参加で、みんなで参加してつくりあげた「場」ですので、「場」に対するメンバーのセンスメイキングがすでに為されており、共有の文脈ができているのですね。

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 短いエントリーで、「場」というものを伝えるのは非常に難しいのですが、この問いは、自分の中でも、もう一度考え直してみたいと思いました。

 あなたが、何気なく使う「場」という言葉、、、
 あなたは、どんな意味で使っていますか?

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追伸.
 先日の授業の後(授業は博報堂さんでクリエィティビティをテーマに実施されました。田沼さん、田村さん、百合岡さん、ありがとうございます)、博報堂の社員食堂(Table100:キハチが入っています。食堂とはいえ大変オシャレです)で、Class of 2009とClass of 2010の懇親会が開催されました。
 その後は、Class of 2010の富澤さんが幹事を引き受けてくださって2次会へ。下記はそのときの写真です。

keiomcc2010.jpg

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  • 23:51  RT @tatsumie それです!ワタシは中途入職なので、業務達成水準や育成段階がもやもやで気持ち悪いのですが、だいぶ慣れてしまいました...。なので、SDが取り沙汰されると、コロリと業者さんのプログラムに乗っかっちゃうんです  [in reply to tatsumie]
  • 23:17  RT @mark_yk: その点、企業と(大学は)同じですね。経験上ですがw RT @cosmicfizz74: OJTってけっこう負担大きいですよね。早く戦力になってほしい気持ちはあれど、心に余裕のない現場・・・。人事課とて、全ての課の業務内容に精通しているわけではないです
  • 23:03  組織として「めざす人材像、人材要件」が見えないということですね、、、うーむ。RT @tatsumie ウチの大学では、どんな能力が必要なのか、考えられていません。聞けば多分「政策立案力」等々出てくると思いますが、何ができて欲しいかはわかりません。  [in reply to tatsumie]
  • 22:58  面白そうなワークショップですね!@ikiikilab ブログ記事:『ワークショップ「研究・教育の実践の場としての大学研究室を考える」@日本教育工学会第26回全国大会』がupされました。<再Tです> http://bit.ly/aVbGPB  [in reply to ikiikilab]
  • 22:53  なるほど!RT @anachoreta ビジョンとしては存在していると思いますが、それを浸透させる仕組みづくりはまだまだこれからだと感じます。RT 大学職員の方々のプロフェッショナル化、自律型キャリアだの、大学の経営方針には、よくあるのにねぇ、、、RT 大学職員の人材育成  [in reply to anachoreta]
  • 22:34  RT @cosmicfizz74: ウチも「アドミニストレータ研修」なるものがありますので、職員の育成には力を入れているはずなのですが、プロ職員のキャリアパスは用意されていないんです。RT @勉強になります。でも、大学職員の方々のプロフェッショナル化だの、大学の経営方針にはよくあ
  • 22:32  苦笑 RT @cosmicfizz74: しかし、作ってしまうと現場が人材育成を放棄しそうですRT @shyamamo: じゃ作ってみます?>> 人材育成に特化した組織を持つ大学は珍しい RT僕も本学職員の方々の人材育成については、今日知りましたが、人材育成課がない大学の方が多い
  • 22:28  RT @cosmicfizz74: ウチで言えば人事課は採用担当、現場がOJT担当です。RT @mark_yk: ええ。うちにもないですね。人事課がOJTで育成している感じですね。RT 人材育成に特化した組織を持つ大学は珍しい RT 僕も本学職員の方々の人材
  • 22:27  なるほど、勉強になります。でも、大学職員の方々のプロフェッショナル化だの、大学の経営方針にはよくあるのにねぇ、、、RT @cosmicfizz74: 人材育成に特化した組織を持つ大学は珍しいのではないかと思いますRT 人材育成課がない大学の方がどうやらおおいのですね。
  • 22:08  東大卒業生の東大就職は増えていますね。RT @jiafeirongyi @akizukid 最近は東大出て母校に事務職員として就職する人もいるとか。RT 東大にはこんな課があるんだ。RT @nakaharajun: 東京大学の職員の人材育成。人事部人材育成課の方々とミーティング。  [in reply to jiafeirongyi]
  • 22:01  僕も本学職員の方々の人材育成については、今日知りましたが、人材育成課がない大学の方がどうやらおおいのですね。RT @cosmicfizz74: 人材育成課という課があるなんて素敵です。RT @mark_yk: 東京大学の職員の方々の人材育成。人事部人材育成課の方々と打ち合わせ。
  • 18:41  東京工業大学 妹尾大先生のご講義「知識創造をめざす場のデザインとは?」
  • 17:20  東京大学の職員の方々の人材育成。東京大学人事部人材育成課の方々と打ち合わせ。
  • 17:17  そう、つながっていましたか!素晴らしい!RT @sugimana: 今日は午前は駒崎さん、午後は中原さんのインタビュー。いつも刺激的なお話ありがとうございます。@Hiroki_Komazaki: 中原先生、一方通行にならずダイアローグ的要素を取り入れた会にしたいです!
  • 16:07  英治出版「Learning bar本」杉崎さん、秋山さんとたっぷり2時間。
  • 16:05  JMA小峰さん、アサヒビール西郷さん、打ち合わせ。
  • 12:12  お久しぶりです。さっきまで御社におりました。今、本郷の研究室に向かっています。近いうちにお話ししましょう。同窓会とかも面白いかもね。RT @twitaco: いま、たまたまネット上で見つけた懐かしい同期が社内にいるらしい!お話したいなあ。もし読んでたら、久しぶりです。
  • 09:30  赤坂、博報堂。
  • 08:46  保育園送り完了。猛暑ですね、全身汗だく、10キロマラソン後のようです。気温、何度あるんすか? 北海道、最寒の地に生まれた僕にとっては、この数日は地獄です。特に35度超えるとダメですね、、、あべし。
  • 07:06  卒業税?@bbceducation University leaders welcome reports that a graduate tax is unlikely to be accepted as a replacement for tui.....  [in reply to bbceducation]
  • 07:04  南極・北極を体感 科学館が開館へ : 国立極地研究所内に24日オープンする「南極・北極科学館」。南極観測隊が実際に使った雪上車、観測用無人航空機、オーロラ映像など。(sankei) http://ow.ly/2eKMV
  • 07:01  日本人の戦争体験の語り、体系的に整理し公開 NHK : 公開されるのは全国のNHK放送局が番組制作のために撮影・保存してきた国内外の戦争体験者310人のインタビュー。「NHK戦争証言アーカイブス」にて無料視聴。(asahi) http://ow.ly/2eKIW
  • 06:57  2004年の留学中、スタタができたばかりの頃ですね。@mayumiura @nakaharajun さんのMIT Stata Center レポート。「中の人」(当時)ならではの写真満載です。 http://bit.ly/aNZGbD 未来の大学:MIT STATA CENTER  [in reply to mayumiura]
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投稿者 jun : 2010年7月23日 07:42