若者が海外赴任を嫌うのはなぜか?


 昨日は、Twitterで、久しぶりに盛り上がりましたね。お題は「若者の海外赴任忌避はなぜ起こっているのか」「若者の保守化・挑戦を忌避する傾向はなぜ起こっているのか」です。

 下記のツイートがきっかけになって、多くの方々が意見を寄せてくれました。

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なぜ仕事で挑戦しない!若いんだから羽ばたけ!、、、とはよく聞くセリフ。でも、挑戦してうまくいったら上が手柄をいいとこどり、失敗したらあんたのせい、という状況で、挑戦なんかしないんじゃないかなぁ。つまり、挑戦とは、そもそも「ソーシャルなもの」だということかな。(中原)

海外に出たがらない若者の問題も、個人の資質の問題もあるけど、それだけじゃない。 海外にでろ!と片方で言いつつ、海外にでたら、"出世遅れて、帰ってきたら、椅子さがすの大変だよ"というのでは、誰が合理的に挑戦することを選ぶだろうか? この状況下で若者に海外にいかせて、得するのは誰か?(中原)

若手が挑戦するかしないかを、"個人の資質欠如"で説明するのは、もっともらしく聞こえるし、その説明は、多くの人々に感情浄化を与える。しかし、若手が挑戦しないことに影響を与えているのは、若手を取り囲む人々、制度、慣行の矛盾であることも、少なくないのではないだろうか?そうかんがえるならば、"最近、うちの組織の若手が挑戦しなくてね"という状況は、"若手個人の問題"であるのと同時に、"みんなの問題"でもあるとおもいます。(中原)

海外赴任のみならず、"組織の矛盾"の理由は、組織の中で最も弱い存在の"個人的資質の欠如や未熟さ"で説明されます。そういうところがないとは、いいませんが、そういう状況が生じる真因は、社会的ー構造的な問題だったりすることが、少なくないと思います。(中原)

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 詳細は下記をご覧いただきたいのですが、まず、この問いに対する反応には「正解」はないのだと思うんですよね。それぞれの立場・社会的状況から、皆さんが発言しているので、それぞれにごもっとも、という感じがします。

「根っからの挑戦好きな人」は、挑戦しないことがイライラくるし、「挑戦したくても踏ん切りがつかない人」は、「誰か、背中を押して!」という発言になります。 海外にでてよかったと思っている人、あるいは、現在海外にいる人は、当然ですが、「海外に出ること」を正当化します。
 経営者には経営者なりの言いたいことがあり、かつ、物事を、俯瞰的かつマクロに見る傾向の強い金融系の方、コンサル系の方は、「このままの状態が続くのはまずい」と思っている。非常に「カオティックな言説空間」ですね。

 それを踏まえた上で、おそらく重要なことは、この問題はやはり「若手の資質の欠如」という非常にシンプルで、非常に心理主義的で、非常に個体還元的な説明では、なかなか「説明」がつかないということでしょうか。それはつとめてソーシャルで、構造的に生じている問題のように思います。
 もちろん、それを実証するデータが非常に不足しているので、推測でしかないのが残念ですが、どうしても、僕には、これが「若手の脆弱なマインド」だけによって生じている現象には思えません。そこには、若手世代に広がる雇用問題、さらには貧困問題なども横たわっているように思います。

 重要なことは、その「社会的に構造的に絡み合った問題の糸」を解きほぐすこと。そして、現象の背後にある様々なステークホルダーが、「今、自分には何ができるか」を考えることだと思います。

 しかし、一方で、わたしたちには時間的猶予はあまりないのも、また事実であるように感じます。
 望むと望まないとにかかわらずしてわたしたちは「激烈なグローバルな競争」にすでに巻き込まれています。例えば、出版業界は、その売り上げの一部が海外に流出するという「危機」でもあります。

 すべての問題を「若者の脆弱なマインド」に帰属させ、「思考停止」することから、僕は、そろそろ話を前に進めるべきではないか、と思います。
 加えて「若手が悪い」「経営者が悪い」「人事制度が悪い」「会社が悪い」という、「"が"の応酬」を国内で行っているフェイズから、そろそろ「わたしは何をするのか」「わたしたちは何をめざすのか」を考えるフェイズにきているのかもしれませんね。

 わたしたちは、何を「問題」だと認識し、何を「変えて」いくのでしょうか。
「変わるべきもの」「変わらなければならぬもの」は「ひとつ」だけではないように思います。

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■2010年6月3日 中原のTwitterでの発言(タイムライン)

  • 06:54  RT @neo_nagai: ある自責的な経営者のコメント「最近の若いのは海外に行きたがらないというが、自分だって最近海外出張がおっくうだ。先進国ですら、日本より生活レベルが下がる。例えばウオッシュレットがないとか食事がまずいとか。昔は海外赴任が質の高い生活だったというだけ」
  • 06:54  RT @neo_nagai: 私も経営者から同様の事を聞きます。多くの経営者が本音では自分も海外に行きたくない!という状況。同様に本気で挑戦している経営者も少ない。これから僕は経営者に対し「若者の挑戦を促すためにあなたが挑戦することは何でしょうか?」と問いかけます
  • 05:36  RT @next49: 「国立大学法人の裁量度 http://bit.ly/91zEOS 」 熟議が書きづらかったので、国立大学の裁量度について思いつく項目を挙げてみました。
  • 22:57  RT @nishitakakore: @nakaharajun RT既得権益を所有した上司は保守化する。保守化した上司が、若手に挑戦しろと言っても、説得力がない。若者に挑戦を求めるなら、まずは上司が挑戦してほしい。それが無理ならせめて若者の邪魔だけはしないで
  • 22:45  RT @cosmicfizz74: 昇進したいような、したくないような。自分がしたくて昇進すできるのではなく、人が決めることだからなあ、と一部醒めているのかも。 RT 「昇進したがらない傾向は、若手世代に広がっているとよく聞きます。@mark_yk: リフレクティブマネジャー
  • 22:45  RT @Akinori_Goto: 組織の中には挑戦をする「狩猟タイプ」と、維持をする「農耕タイプ」両方が必要かと。上司は「若手は挑戦する奴がいない」というけど、いったい組織のどれくらいの割合が狩猟になればいいのかまで考えていない。
  • 22:17  RT @okamoto4433: 「プロボノ×企業」の先行事例として米国のものがありますのでご紹介です。企業とNPOを繋ぐプロジェクトマネジメント機能が必須など、興味深いです。>「成功するプロボノ」 http://bit.ly/99C6HK
  • 22:16  まんじゅう屋系?(笑)RT @toromi_h: 大泉洋的なポジションが最高でしょうか。挑戦しているといえばしてる的な@kentacc: わかるぅ RT @toromi_h: 本心として、坂本龍馬は好きだけど、龍馬になりたいのではなく、龍馬の近くにいたい的なものでしょうか?
  • 22:16  「昇進したがらない傾向は、若手世代に広がっているとよく聞きます。RT @mark_yk: リフレクティブマネジャーで、ちょうど私の世代かな?昇進欲が弱いという話ってありませんでしたか?実際に昇進よりもプロになりたい人が多かったですが、今の世代って昇進欲あるんですか?
  • 22:15  RT @hajimeville: かく言う私も行きたくて行けない人。整理が必要な物がありすぎて日本を出られないタイプ。ただ、こういう状況化では面子を気にせず、多少無理をしてでもレバレッジをかけないと状況は変わりません。いまその最中。海外はその次の話。
  • 22:15  すごい比喩だねぇ(笑)・・・まぁ、そういわず、君が日本を洗濯しなよ(笑)。RT @toromi_h: 本心として、坂本龍馬は好きだけど、龍馬になりたいのではなく、龍馬の近くにいたい的なものでしょうか?
  • 22:14  RT @toromi_h: 挑戦して成功した経験や、身近に挑戦によって得たものを持った人が想像しにくいから、漠然と怖いと言うのもあると思う。自分もなんとなく怖さを感じている部分あります問題は「本来挑戦できるけど、ためらっている人」「挑戦することをやめた人」ということになる?
  • 22:14  RT @kuwahara_triz: 確かに。だから背中を押してくれるという意味ではありかなと。 RT 問題は「本来挑戦できるけど、ためらっている人」「挑戦することをやめた人」ということになる?@toromi_h: 挑戦する人は、上から押し付けられるところにはいたがらないだろう
  • 21:46  おっしゃるとおり。自ら進んで挑戦する人は、言われる前にやってる。そういう人は問題ではない。問題は「本来挑戦できるけど、ためらっている人」「挑戦することをやめた人」ということになる?RT @toromi_h: 挑戦する人は、上から挑戦しろと押し付けられるところにはいたがらないだろう
  • 21:42  なるほど!RT @toromi_h: 挑戦する人は、上から挑戦しろと押し付けられるところにはいたがらないだろう@collabo_factory: 同感です。「若手が挑戦しない」状況を、安易に「ゆとり」「草食」などで説明しようとする風潮をまず変える必要があるかと。"
  • 21:39  RT @megumeru: 挑戦できますって職場の裏には超ブラックな環境があることが多いのです。
  • 21:38  ただし明確なデータはありません。既存調査のサンプルに関する詳細な情報が不足していますし、それを加味した分析が行われているのは見たことがありません。とはいえ重要なご指摘だと思います。@hajimeville 若手の海外赴任忌避の背景に「若年世代に非正規雇用が広がっていること」
  • 21:35  RT @kuwahara_triz: 企業人としてではなくコンサルとしての意見ですが、日本を飛び出す事で見えてくる日本の現実の姿から受けるインパクトは受けた人の財産だと。 RT...
  • 21:34  RT @TKeicho: 「帰る椅子」、考えた事なかった。もう帰れないのか。RT @AkikoSugaya RT 海外に出たがらない若者の問題、個人の資質の問題もあるけど、それだけじゃない。 海外にでろと片方で言いつつ、海外にでたら"出世遅れて帰ってきたら椅子さがすの大変だよ"
  • 21:34  RT @mido1022: うちの職場は挑戦できる。そこが好き。だからおもしろい。RT なぜ仕事で挑戦しない!若いんだから羽ばたけ!、、、とはよく聞くセリフ。でも、挑戦してうまくいったら上が手柄をいいとこどり、失敗したらあんたのせい、という状況で、挑戦なんかしないんじゃないかなぁ
  • 21:33  若手の海外赴任忌避の背景には、「若年世代に非正規雇用が広がっていること」も無縁ではないと僕も推測します。つまり、海外に行きたい/行きたくない以前の問題であるということです。RT @hajimeville: 海外に出る最初のお金も作れない人が多いのを御存じですか。
  • 21:25  RT @kawaharatsukasa: 海外に出るに限らず、転職だ、出産だ、介護などイスがなくなると懸念する理由なんて事欠かないですよね〜変化を恐れない挑戦精神の有無 RT @MaricaYM: 「場所がなくなる」って口癖のようにいう人が多いですが、聞くたびにいらっとくる
  • 21:24  RT @MaricaYM: 「場所がなくなる」って口癖のようにいう人が多いですが、聞くたびにいらっとくる。無視だけど。RT 海外にでろ!と片方で言いつつ、海外にでたら、"出世遅れて、帰ってきたら、椅子さがすの大変だよ"というのでは、誰が合理的に挑戦することを選ぶだろうか?(略)
  • 19:58  RT @tanpopolo: 日本の新卒重視しか知らなかった私は留学先でそんなの日本くらいだと知り驚きました。こんなやりかたじゃにわか留学しか選びたくない学生が多いのも分かる。やっぱり留学は1年は最低でも費やしたい。でもそうしたら帰国後の就職が大変。社会人留学はなおさら。RT
  • 19:58  RT @tanpopolo: 私は社会人になってから2カ国へ留学し帰国後の就職活動が本当に大変でした。私はやはり語学スキルよりも何を経験しそこから何を得たのかが遥かに重要でそこを見ようとしてほしいです。RT 海外に出たがらない若者の問題
  • 19:46  RT @nishitakakore: RTよく最近の若いのはコミュニケーションスキルがないと上の世代の方は言われます。もちろん否定はできない部分は多々あるとは思いますが、上の世代の方にも果たしてコミュニケーションスキルは十分か自問自答してほしいときがあります。
  • 19:46  RT @odorisekaori: 無能な上司やくだらない社長はどこにだっている。そんな人たちも含め社会は会社は組織は出来てる。そんな中で、あなたが出来ることは何?
  • 19:45  RT @artsy99: 誰も挑戦してない組織の中若手だからという理由だけでは挑戦しようと思う わけない RT そうかんがえるならば、"最近、うちの組織の若手が挑戦しなくてね"という状況は、"若手個人の問題"であるのと同時に、"みんなの問題"でもあるとおもいます。
  • 19:44  RT @dometaro: くくられる側もいい気持ちはしません。 RT @collabo_factory: 同感です。「若手が挑戦しない」状況を、安易に「ゆとり」「草食」などで説明しようとする風潮をまず変える必要があるかと
  • 19:05  RT @collabo_factory: @nakaharajun 同感です。「若手が挑戦しない」状況を、安易に「ゆとり」「草食」などで説明しようとする風潮をまず変える必要があるかと。
  • 19:05  RT @Jintan9: 中原先生風に言えば、「若い人に挑戦しろという。そういう貴方は挑戦してるのか。組織は挑戦をしているのか」というところでしょうか。組織の挑戦的な活動の中で若手に挑戦をさせられれば誰もが当事者でありえるのになぁと思いますね、組織の中で言えばですが。
  • 19:04  海外赴任のみならず、"組織の矛盾"の理由は、組織の中で最も弱い存在の"個人的資質の欠如や未熟さ"で説明されます。そういうところがないとは、いいませんが、そういう状況が生じる真因は、社会的ー構造的な問題だったりすることが、少なくないと思います。
  • 18:53  そうかんがえるならば、"最近、うちの組織の若手が挑戦しなくてね"という状況は、"若手個人の問題"であるのと同時に、"みんなの問題"でもあるとおもいます。
  • 18:49  若手が挑戦するかしないかを、"個人の資質欠如"で説明するのは、もっともらしく聞こえるし、その説明は、多くの人々に感情浄化を与える。しかし、若手が挑戦しないことに影響を与えているのは、若手を取り囲む人々、制度、慣行の矛盾であることも、少なくないのではないだろうか?
  • 18:39  海外に出たがらない若者の問題も、個人の資質の問題もあるけど、それだけじゃない。 海外にでろ!と片方で言いつつ、海外にでたら、"出世遅れて、帰ってきたら、椅子さがすの大変だよ"というのでは、誰が合理的に挑戦することを選ぶだろうか? この状況下で若者に海外にいかせて、得するのは誰か?
  • 18:28  なぜ仕事で挑戦しない!若いんだから羽ばたけ!、、、とはよく聞くセリフ。でも、挑戦してうまくいったら上が手柄をいいとこどり、失敗したらあんたのせい、という状況で、挑戦なんかしないんじゃないかなぁ。つまり、挑戦とは、そもそもソーシャルなものだということかな。
  • 15:45  企業が主体で取り組むかどうかは別として、会社を離れて自分のスキルやキャリアを見直す機会をもつことは重要だと思いますし、プロボノはひとつの機会だと思います。@okamoto4433: 企業の人材育成施策として、これからプロボノを制度化していく可能性がある?@helloprobono
  • 15:06  RT @Gauguinscom: リアルタイムTV視聴とは、留守録さえ無い黒電話に家族で飛んでく位の感じかー RT @SamFURUKAWA: TVをリアルタイムでチャンネル選んで観るなんてことは全くしなくなったよ、だってHuluがある http://www.hulu.com/
  • 11:27  RT @SamFURUKAWA: 2ヶ月ほど前に来日したシリコンバレーの友人が、「僕らは、TVをリアルタイムでチャンネル選んで観るなんてことは全くしなくなったよ、だってHuluがあるから」と..日本であまり話題にならないなぁ。 http://www.hulu.com/
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投稿者 jun : 2010年6月 4日 07:40