2010年5月Learning bar報告記:酒井穣さんご講演「ケーススタディで新たな人材開発を構想する」

 先日、5月20日、東京大学本郷キャンパスで、Learning bar(ラーニングバー)が開催されました。今年になって2回目のラーニングバーのテーマは、

 ケーススタディをとおして
 新たな人材開発戦略を「構想」する!

 です。


 『あたらしい課長の教科書』
 『「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト』

 などのベストセラーを出している、

 フリービット株式会社
 酒井穣さん

酒井穣さんのブログ
http://nedwlt.exblog.jp/

 をお招きして、ケーススタディをとおして、皆で、新たな人材開発戦略を構想するセッションを持つことにいたしました。いわずもがな、ケーススタディはビジネススクールで多用されるインタラクティブな教育手法です。

 今回は、Learning bar始まって以来の「ケーススタディ」。しかも参加人数は250名。参加者の方々には、あらかじめケースを読み込んできていただき、それを使ってクラスでディスカッションをいたしました。

 おかげさまで、今回のLearning barも満員御礼!です。大変ありがたいことですね。お越しいいただいた皆様に、心より感謝いたします。

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 さて、今回の「Learning bar報告」は、「準備」の段階からご説明いたしましょう。実は、今回のLearning barから大きく運営側の体制を変更しました。変更点は下記のとおりです。

1.事務局長坂本さんがご就職なさり退任なさったので、新たな事務局長吉川さんをお迎えしました。
2.会の運営を中原研究室の大学院生さんで主に担うことにし、毎回のディレクターをたてることにしました。
3.場のデザインはディレクターが中心になって、デザインを構想することにしました。
4.参加者の拡大に対応するため、学部生の皆さんを学生スタッフとして迎えることにいたしました。
5.スタッフの制服を購入しました。

 何を「こんまいこと」をおっしゃるかたもいらっしゃるかもしれませんが、実は、僕にとっては、大きなチャレンジでした。
 どんな会でも、その成功の一翼を担っているのは、バックヤードにいるスタッフの「ホスピタリティ」であり、「場の趣旨の理解」です。今回の体制変化を無事に乗り切ることが、僕の隠された「目的」のひとつでした。

 念には念をいれ、学生スタッフの皆さんには、事前に、会の趣旨を説明する会を持ちました。皆さん、すでに様々な場書で、「社会」への接点をお持ちな方ばかりでしたので、安心しました。

 結論から申しますと、吉村さんをはじめとした中原研究室の大学院生さん、坂本さん、吉川さん、そして、学生スタッフの皆さんのホスピタリティによって、ラーニングバーは大きな問題もなく、終えることができました。僕はスタッフに恵まれていると心から思います。ありがとうございました。

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 下記、準備の様子です。
 まず、入り口あたりにモールを取り付けます。

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 次にお料理です。250人分の飲み物と食べ物ということになりますと、恐ろしいほどの量になります。これを運び、並べていきます。

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 次は「受付」です。
 ラーニングバーの受付は、開始から30分前あたりがピークになる傾向があります。なるべくお並びいただく時間を少なくするため、「列」をなるべく多くします。受付処理を迅速に行うため、坂本事務局長が、学生スタッフさんに「研修」を行っています。

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 2月の会からは、食べ物に「季節の和菓子」をお出しすることにしました。こちらは、かなり女性の皆さんに人気の模様です(?)。毎回人数分以上のお菓子を用意しているのですが、すぐに!売り切れになってしまいます。こちらは、お茶や日本文化に造詣の深い大学院生の我妻さんが、和菓子屋さんに出かけ、毎回準備しています。

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 最後は、オープン直前の、スタッフ全員集まってのミーティングです。僕から、今日の会の趣旨をもう一度説明し、ゲストの方々に気持ちよく学んでもらうために、各人がホスピタリティを発揮するように、重ねてお願いします。何より、「気持ちの良い挨拶をしてください」とお願いします。

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 これにて、準備完了!
 いよいよ、ラーニングバーのオープンです。

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 ラーニングバーの受付が始まりました。
 今日の多くの方々が、「オープン前」から受付にきていただいております。

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 今日のLearning barのディレクションを担当した吉村さんも、入り口近くで、ゲストを迎えます。

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 ラーニングバーでは、会の進行にあわせて、お近くの方でのディスカッションが何度もあります。ですので、会場にお入りになった皆さんには、自分がお座りになった場所前後左右で「名刺交換」と「自己紹介」をお願いしています。

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 今日も、皆さんのご協力で、名刺交換が始まりました。最初は、少し恥ずかしい様子ですが、10分もすると、もう止まらなくなります。いろいろな場所で、名刺交換が始まります。

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 かくしてあっという間に、30分が過ぎました。いよいよ本編の始まりです。この頃には、「満員御礼」、250名が座席につきます。

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 会がはじまりました。
 僕の方から、まずイントロダクションがあります。いつものようにラーニングバーの趣旨、「楽しくこの場を過ごすためのTips」、酒井さんのご紹介をいたします。

 ラーニングバーは

 1.聞く
 2.聞く
 3.聞く
 4.帰る

 の場ではないですよ、と言います。

 1.聞く
 2.考える
 3.対話する
 4.気づく

 を実践していただけるよう、お願いsをします。
 何度もいらっしゃっていただいている方には、「またかよ」と思われるかもしれませんが、ラーニングバーは「新規」のお客さんが6割から7割いらっしゃいます。ですので、毎度のことですが、このプレゼンをしております。

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 会のディレクターの吉村さんからは、今日の「場のデザイン」のテーマが述べられました。今回のデザインテーマは「新緑」でした。5月という時期もありますし、酒井さんが帰国前お過ごしになったオランダは、自然あふれる環境でもあります。「新緑」というテーマに、お茶菓子、音楽、テーブルクロス、グリーンなどを配置しています。グリーンにあふれていたこと、皆さん、お気づきになりましたか? 僕の服も、ちなみに、グリーンにしてみました(笑)。

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 今回の会では、実は、新たな「カンファレンステクノロジー」を導入させていただきました。福山大学の杉本達應先生、メディアアーティストの宮原美佳さんに「Chart it!(チャートイット)」というシステムを利用させていただいたのです。

チャートイット(杉本達應先生)

http://www.sugimototatsuo.com/archives/161

チャートイット(宮原美佳さん)

http://www.miyabaramika.com/archives/345

 チャートイットは、「カンファレンスの参加者が手書きで書いた質問カードを高速スキャニングして、回答傾向を自動で集計するシステム」です。ここでは、杉本先生から「Chart it!」の説明がありました。

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 さて、酒井さんのレクチャーがいよいよはじまります。今回参加者の皆さんは下記の課題を事前に行ってくることが求められていました。

 下記のケースを読んで、最後にある設問に自分なりの答えを書いてください。

ケースはこちら!
http://nedwlt.exblog.jp/14089087/

 問題はこちらです!
 設問1:問題点を3つ挙げなさい。(各140字程度)
 設問2:関根(人材育成担当)は今、何をするべきでしょうか?
     (各140字程度)

 ケースをもとにしたレクチャーと議論が始まります。お近くの方でのディスカッションが始まりました。

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 議論が盛り上がる様子を見て、酒井さんも嬉しそうです。

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 福山大学の杉本さん、メディアアーティストの宮原さんも、議論に参加いただいているようです。

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 さて、実際にケーススタディが始まりました。酒井さんの「問い」に対して、数多くの「手」があがります。酒井さんは、縦横無尽に歩き回り、参加者の皆さんとのディスカッションを続けておられました。

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「積極的学習者を育成するためにはどうすればいいのか?」「グローバル化時代において、人事・人材開発の果たすべき役割は何か」・・・活発な議論がなされて、会場の温度は、またもや30度近い状態になりました。あまりの「熱気」に「冷房」がきかないのです。Maxにして「冷房」をかけているのですが、どうしても、温度が下がりません。皆様、今度からLearning barには軽装でおこしください(笑)。また、センスをお持ちいただくと幸いです(笑)。

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 会場では、リフレクションがはじまります。きょう一日自分が経験したことをもとに、何を感じたのか、何を学んだのか、を共有していきます。

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 会場がリフレクションをしている間、バックヤードは大忙しです。
まず、会場から寄せられた「Chart it!」の質問カードを杉本先生がシステムを動かして、アナライズしてくれています。250名のデータ、無事、作成することができました!

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 一方、僕は、今日のラップアップのプレゼンテーション資料をつくります。僕のプレゼンテーションは、いつも、「生もの」です(笑)。悪く言えば、「行き当たりばったり」。かっこよく言えば、「インプロです」。プレゼンは多くの場合、その場でつくりますし、自分が発表する直前まで、オンゴーイングでつくりつづけます。
 会場の皆さんの様子を見ながら、また酒井とさんとの議論の展開を見ながら、その場にあったもっとも「フィット感」の高い内容、理論を盛り込むことをめざしています。

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 最後はQ&Aを終え、僕からラップアップをいたします。酒井さんのお話や、皆さんのレスポンスをお聞きしながら、感じたことを述べました。

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 今日も「熱い一日」が終わりました!
 講師の方へのわれんばかりの拍手の中、無事終了です。

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 最後になりますが、酒井穣さん、杉本さん、宮本さん、議論にご参加いただいた皆様、ありがとうございました&お疲れ様でした。とてもよい「学びの場」になりました。この場を借りて感謝いたします。

 今回のLearning barは、下記のようなキャストでお送りいたしました。東大のみならず、学部1年生から博士課程の学生さんまで、様々な方々に参加していただきました。心より感謝いたします。ありがとうございました。

【東京大学・中原研究室・大学院生】
 舘野泰一さん
 我妻優美さん
 木村充さん
 吉村春美さん(ディレクター)
 伊澤莉瑛さん

【学生スタッフ】
 田中勝利さん
 橋本香代子さん
 笠原麻美さん
 成澤由紀さん
 武井良さん
 草野友基さん
 熊谷勇人さん
 山崎春奈さん
 清水隆之さん
 清水典子さん
 山本真里奈さん

【Educe】
 吉川久美子さん

【ダイナミックできれいな写真をとっていただいているのは・・・】
カメラマン 見木久夫さん
素晴らしい方です!

見木久夫さんのWebページはこちらです!
http://kenmoqp.com/index.html

 次回Learning barは、少し先のことになりますが、9月29日です。
 次回は、株式会社サイバーエージェントの曽山哲人さんをお招きして、「若手が挑戦する会社をつくる」というテーマ(仮)でお送りいたします。募集は下記のメルマガで行いますので、まだご登録いただけていない方は、ぜひお申し込みください。

ラーニングバーの募集はこちらのメルマガで流れます!
http://www.nakahara-lab.net/learningbar.html

 お楽しみに!

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■2010年6月4日 中原のTwitterタイムライン

  • 20:07  あとは、東京大学教育学部「職場学習論」。各種理論をケーススタディにして教えたらどうなるかな、と思案中。もしあなたがサークルの部長だったとして、曲者の新入部員が10人はいってきた。いかに順応させ、育成させていくのか・・・。どっかで聞いたことあるね、「もしドラ」だね、パクリだね。
  • 20:04  青山学院大学大学院 夏期集中講義「組織コミュニケーション特論」のシラバスをおくった。
  • 15:19  京都大学大学院 教育学研究科 集中講義授業「職場学習論」のシラバスをおくる。
  • 15:04  大学院ゼミ。吉村さん研究発表。「どのような学校風土・どのような管理職のリーダーシップが、教員間のコラボレーションを促すのか?」。次回までの課題は、コラボレーションの実態について調査するとともに、海外文献の読み込み。Enjoy!
  • 12:05  腰、痛い。腰、もげる。
  • 12:04  後期授業「メディアクリエイションワークショップ」(東大教養学部)、重田先生と打ち合わせ。後期授業「組織学習論」(東大教育学部)の情報照会。教育メディア戦略、理事打ち合わせ資料をもむ。
  • 12:00  Works100号記念号、楽しみにしております!RT @hsiro: 100号無事に印刷中です。しばしお待ちください。今後もよろしくお願いいたします。RT @nakaharajun: ワークス研究所の皆様にはお世話になっています。記念号特集楽しみですね。
  • 11:42  大学院生研究相談。伊澤さん。海外の先行研究を丹念に読み込んで報告、素晴らしい。研究テーマはM&A(企業合併)を従業員はどのように「経験」するのか。この種の研究は、病院のM&Aに多いそうだ。海外では病院のM&Aが多いのかな? http://twitpic.com/1tp9ml
  • 11:35  ワークス研究所の皆様にはお世話になっています。記念号特集楽しみですね。RT @hsiro: ドキ!ご本人からの反応に動揺した。先生、いつも研究所一同でお世話になっております。RT @nakaharajun: そうか!そうでしたね(笑)RT @hsiro:
  • 11:20  そうか!そうでしたね(笑)RT @hsiro: weetしたら密談じゃないですよ、中原先生。RT 吉見センター長、重田先生と密談。
  • 11:06  大学院生研究相談。福山君。シュミレーション教材(ゲームシュミレーション)の教育効果。
  • 11:04  吉見センター長、重田先生と密談。
  • 10:29  RT @ritsuko_t: 企業の人材育成とCSRは急速にこの方向に向かっていると実感してます。とても参考になりました!! RT @okamoto4433 「プロボノ×企業」の先行事例として米国のものがありますのでご紹介です。http://bit.ly/99C6HK
  • 10:29  痛い!RT @odorisekaori: 就活セミナーなどで、最低でも(若手は)3年は続けないと物事の本質は見えてこないと訴えてます。しかしながら、最大の上司である国の長が短期で投げ出す現実を見せられると信憑性に欠けるので、話がしにくいなぁと感じる今日この頃であります。
  • 10:28  RT @hhigashi: 私自身は、各国での生活を「質/生活水準」という一次元で比較してしまう事に違和感を感じます。ウォシュレットが無いだの、飯がまずいだのっていう「日本を基準にした比較」をするマインドから自由にならないと、国際的な多様性を身につけられないのでは? RT
  • 08:03  ブログを書きました。「若者が海外赴任を忌避するのはなぜか」。皆さんのご意見をまとめ、少し自分の意見を書きました。問題は複雑です。わたしたちは「"が"の応酬」を超えて、そろそろ、それぞれの立ち位置で何をするかを考える必要があるかもしれませんね。http://ow.ly/1TPne
  • 07:59  ブログを書きました。「若者が海外赴任を嫌うのはなぜか?」です。皆さんにお寄せいただいたご意見に私見をのべました。「海外に出ない日本人」問題でわたしたちは、「"が"の応酬」のフェイズから、そろそろ次のフェイズにうつることができる段階なのかもしれません。...
  • 06:54  RT @neo_nagai: ある自責的な経営者のコメント「最近の若いのは海外に行きたがらないというが、自分だって最近海外出張がおっくうだ。先進国ですら、日本より生活レベルが下がる。例えばウオッシュレットがないとか食事がまずいとか。昔は海外赴任が質の高い生活だったというだけ」
  • 06:54  RT @neo_nagai: 私も経営者から同様の事を聞きます。多くの経営者が本音では自分も海外に行きたくない!という状況。同様に本気で挑戦している経営者も少ない。これから僕は経営者に対し「若者の挑戦を促すためにあなたが挑戦することは何でしょうか?」と問いかけます
  • 05:36  RT @next49: 「国立大学法人の裁量度 http://bit.ly/91zEOS 」 熟議が書きづらかったので、国立大学の裁量度について思いつく項目を挙げてみました。
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投稿者 jun : 2010年6月 5日 16:43