福井健策著「著作権の世紀」を読んだ!

 福井健策著「著作権の世紀」を読みました。

 福井さんは著作権が専門の現役の弁護士です。最新の事件・訴訟を紹介しながら、コンテンツ産業の世界的再編の鍵となる「著作権の変容」について平易な語り口でお書きになっています。
 著作権は、研究者であろうと、実務家であろうと、知識創造を行うすべての人にとって必要な知識であり、スキルとなっています。おすすめの一冊です。

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 福井さんによれば、「著作権が注目される環境は100年をかけて整備された」そうです。

 1.複製技術の高度な発達
 2.インターネット等による情報の大量流出
 3.メディアの発達と多様化
 4.大衆消費社会の出現

 によって、私たちを取り囲む文化に、構造的な変化が生まれました。それは、

 1.文化産業の巨大化
 2.市民文化活動の拡大
 3.複合的、産業的、多次的作品の増加
 4.作品のマルチユース化
 5.ユーザー・メディア・クリエイターが融合しつつあること

 として私たちの眼前に広がっています。
 特に、筆者が強調する「多次的作品=オリジナルが様々なかたちで二次・三次・四次・・・という具合に利用されること」、あるいは、「ユーザーがメディア化、クリエイター化していること」は、わたしたちの日々の生活を振り返ってみても、まさにその通りといったかたちでしょう。

 このような中、「著作権」、すなわち、「情報の独占を許可する制度」が非常に大きな影響を及ぼし始めているのです。

 福井さんは、欧米列強による世界分割に必要であったものが「航海技術」であったことをメタファにしつつ、今後、世界レベルで進展するコンテンツ産業の再編、あるいは知識創造の文化的覇権の「鍵」となるものとして、「著作権」を位置づけています。

 本書の後半では、著作権リフォーム論、DRM、パブリックライセンス論、日本版フェアユースなど、今まさに著作権処理の現場で巻き起こっている最新の議論を展開しています。

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 僕は、学内の仕事として、全学の教育情報・教育コンテンツの教育企画をディレクションしています。著作権については、つい先日も、法務・知財部と打ち合わせをしており、その意味で、ここに書かれていることは、非常にリアルなことでした。

 あまり、詳しいことはいえませんが、「新しい知識や技術を常に生み出す大学」という組織は、今、まさに「著作権」と本気で向き合い、世界の大学と切磋琢磨する時代に入っている、と思います。
しかし、僕の知る限り、日本の大学における現状の取り組みは、非常に乏しい、と言わざるを得ません。著作権の認識のみならず、それに対処する組織体制が、日本の大学では確立されていないところの方がほとんどです。

 教育情報、教育コンテンツという観点からいえば、このままでは、フェアユースという慣行によって、自己の教育コンテンツを社会に迅速かつ大量に提供しつつ、社会と有効なコミュニケーション回路を築き、優秀な学生をリクルーティングし続ける海外大学の影響力は、増すばかりです。

 著作権というものが、「あっちをたてれば、こっちがたたない権利」であることは重々承知しています。それゆえに、「自分で声をあげない限り、誰も権利を与えてくれない」という性格を、それはもっています。

 そろそろ、日本の大学が、本気で、社会に「声」をあげる時代に入ってきていると思います。

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■2010年5月12日の中原のTwitterでの発言

  • 16:04  かわいい子には旅をさせろですかね、、 旅育 RT @saoino: @nakaharajun 先日知ったのですが、「旅育」という言葉もあるそうですよ。子どもの越境学習、でしょうか。
  • 14:07  ボランティアツーリズムというものがあるんですね。。。勉強になりまます。RT 見る観光から、体験する観光へRT @mamiYmami: 観光ではしばらく前から「見る」⇒「体験」へのシフトが始まっている。体験ではなく、さらにその先があると思ってボランティアツーリズムを研究。
  • 14:05  見る観光から、体験する観光へRT @mamiYmami: 観光ではしばらく前から「見る」⇒「体験」へのシフトが始まっている。体験ではなく、さらにその先があると思ってボランティアツーリズムを研究 RT @hideo_miura RT 価値観は消費から経験へ。モノから体験へ
  • 14:03  おせっかい研修ギフト(笑)RT @joesakai: 面白いですねー。すごくおせっかいですけど、友人に研修を贈るとか、あるかも(笑)。 RT @nakaharajun これ、面白いですね。「モノ」ではなく「経験」を贈るギフト http://www.sowxp.co.jp/
  • 11:13  昨日の某先生との懇談では、研究することだけでなく、自前で教育することもやめ、学生にはOER(OCWなどのオープン化されたコンテンツ)で学ばせ、彼らにPh.Dクラスの人による学習サポートを提供し、学位を与えることだけに特化した「大学」がでてきているとのこと・嗚呼、大学とは「何」か?
  • 11:12  RT @hyakuko: @nakaharajun  これいただいたことあります。やってみたかったことが体験できて、とても印象に残りました。贈ってくださった友達にも報告して、会話が広がりましたよ。
  • 11:08  RT @hideo_miura: RT 価値観は消費から経験へ。モノから体験へ確実にシフトしてるね。音楽も消費する商業音楽から参加する大衆音楽へ回帰している。RT これ、面白いですね。「モノ」ではなく「経験」を贈るギフト http://www.sowxp.co.jp/
  • 11:08  某戦略会議。一部の米国大学で起こっていること。1)テニュア教員のレイオフ、2)一部職員のレイオフと一部職員のプロフェッショナル化。3)教育研究と大学経営の分離、4)大学経営陣の雇用流動化と高額所得など。嗚呼、大学はどこへ向かおうとしているのか。
  • 10:39  これ、面白いですね。「モノ」ではなく「経験」を贈るギフト http://www.sowxp.co.jp/
  • 09:20  妹尾先生、近いうちに、何か機会を見つけて、ご一緒できるといいですね。 RT @senoodai: じゃ、日程調整しましょう。RT @nakaharajun: ほほー、まつさき行きたい!
  • 08:03  ソーシャルメディアの中毒性について : SNSフェースブックに人生を翻弄される米国人中高年インテリがなぜ依存症に?http://bit.ly/bpqCEc
  • 07:31  足湯グループ学習 RT @tekery: ちなみに現実的な構想(妄想)はこんな感じです。 RT @nakaharajun 爆笑! 温泉大学。 http://tweetphoto.com/22006712
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投稿者 jun : 2010年5月13日 09:18