語りとしてのキャリア

 チマタ(というより僕の周囲)で話題になっていた本、「語りとしてのキャリア」をようやく読み終えました。

加藤一郎(2004) 語りとしてのキャリア―メタファーを通じたキャリアの構成. 白桃書房, 東京
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4561264175/nakaharalabne-22

 この本、とてもマニア度は高いですが、これまでのキャリア論とは一線を画するキャリアのとらえ方をしていて、非常にオモシロイ。

 一言で要約すると、「キャリアは、他者に語られるときに構築されるのだ」ということになるでしょうか。キャリアに対するナラティヴ・アプローチといってもいいかもしれません。

 筆者も述べるように、「構築主義というと、切れ味はするどいが何も生み出さない」とよく言われますね。でも、そういう批判は、この本には当たらない。「キャリアは社会的に構成されている」という命題以上の緻密な分析が展開されています。社会人MBAの学生さんたちの語りをもとに、「タイトストーリー」「ルースストーリー」「メタファ」という概念を用いて、緻密に緻密に分析を行っています。

 思うに、こういう分析の方法は、たとえば、教師のライフストーリー研究とか、やっている人には参考になるのではないかな、と思いました。

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 キャリア論といいますと、一部の秀逸な経営学者をのぞいて、非常に怪しい議論が展開されることもあるように思います。なんといっても、「キャリア」「キャリア教育」は行政も注目する流行語ですから。お金も動いていますし。

 そんな中で、非常に読み応えのある本でした。

  

投稿者 jun : 2006年1月12日 07:01