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2020.9.15 08:24/ Jun

秋の夜長におすすめの2冊!? :「組織行動論の考え方・使い方」と「関係からはじまる」はおすすめの2冊!

 秋の夜長に読むべき人事関連の本で、何かいい本はありますか?
     
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 僕だったら、服部泰宏さんの「組織行動論の考え方・使い方」(有斐閣)と、ケネスガーゲン著、鮫島輝美さん、東村知子さん訳の「関係からはじまる」(ナカニシヤ出版)をあげると思います。
      

    
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 前書の服部さんの本は、組織行動論(組織のなかの人の行動を考える分野:Organizational Behavior)といわれる領域の知見を総覧する書籍です。
  

  
 服部さんとはじめてお会いしたのは、おそらく10年くらい前、金井壽宏先生(立命館大学教授、元神戸大学教授)の科研(科学研究費のプロジェクト)の研究会だったと思います。金井先生は、多くのそうそうたる研究者が集まる科研に、僕を加えてくださりました。
 当時、服部さんは滋賀大学に赴任なさったばかりの若手研究者。しかし、その思考は、当時から非常に鋭いものでした。
    
 本書は組織行動論のなかで、定評ある理論を紹介し、その測定のためには、どのような方法がありうるかを考察しています。
   
 しかし、これだけなら、既存の組織行動論の書籍にも、類書は存在していたようにも思います。
  
 この本が稀有なのは、その底流に
   
 科学は実践の役に立っているか?
  
 という服部さんの問題意識があります。彼は、いつも「研究と実務の関係がいかにあるか?」ということを考えぬいているところがあります。この問題関心は、彼のキャリアのなかで、ずーっと、ずーっとこだわり抜いてきた内容かと思います。
   
 僕なりの言葉でいえば、本書は
    
 経営学の「内部」の知見をまとめながら、
 経営学の「外部」ーすなわち実務家の視点から「経営学をみつめるまなざし」を
もった本です。

    
 そして、この「視点の外部性」は、なかなか持てるものではありません。経営学の内部にどっぷりとつかりながらも、その「周縁」から経営学を批判的に考察できる視点は、なかなか持てない。 一般に、学問は、学問の内部のロジックで、学問の内部にしか伝わらないジャーゴンで、学問の内部にしか関心をもたれない関心のもとに、学おかれています。他の学問領域から、いかにその学問が見えるのか。そして、実務から、どのように学問が見られているかを意識することは、ふつうの研究者にはできないのです。
 また、それを400ページの大著にしたてあげることは、天賦の才能とたゆまぬ努力なしでは不可能でしょう。
   
 僕は、この本を手にしたとき、一読して、
  
 あっ、これは、普通の学者には、書けない本だな
 おそらく、数十年は、この本に類する本は、出版されないな
  
 とまっさきに思いました。
 服部さんとは知己だから申し上げているわけではありません。
   
 服部さんよりご依頼がございましたので、本書には、下記のような推薦文を、帯などに、寄稿させていただいております。
   
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膨大な文献を渉猟し、「人と組織の科学:組織行動論」の「最先端」を鮮やかに描き出す良著。加えて、組織行動論の外部から「研究」という営みを見つめ、「研究は実務に役立つのか」という永遠の難問(アポリア)に著者なりの回答を提出する。

「実務に役立つ研究」を志向する研究者、研究に関心をもっている実務家、すべてに推薦できる書籍。本書を手にすれば、研究者も実務家も謙虚に学び合うことができる。

かつての名著「組織現象の理論と測定」から40年。この本を書ける研究者は、今後40年は出てこない。今後の組織行動論を力強く牽引していく俊英の代表著作になるだろう。
(中原 淳)

  
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 秋の夜長におすすめする書籍の1冊目は「組織行動論の考え方・使い方」です。
   

   
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 2冊目の本はケネス・ガーゲンの「Relational Being」の翻訳書「関係からはじまる」です。
   

  
 ガーゲンといえば、僕がはじめて出会ったのは、大学院生の頃です。ご指導いただいていた故・菅井勝雄先生(元・大阪大学教授)が、ガーゲンを大変気に入り、これを「学びの理論」に組み込もうとなさっていました。
     
 当時、ガーゲンの書籍は、翻訳書はなく・・・・。
 あまりに難解な文書をゼミなどで読んでいた記憶があります。
      
 今となっては、多くのひとが知る社会構成主義ですが、今から25年くらい前は、知るひとぞ知る、理論だったのです。
     
 本書「関係からはじまる」は、ガーゲンの知の創造の「総決算」ともいえる本でしょう。その最大の特徴は、「本書のどこにも社会的構成主義という言葉が用いられていないこと」でしょう。
  
 つまり、ガーゲンは、
  
 社会構成主義の「内部の言葉」を用いて本書を描こうとしていない
  
 のです。
    
「学問の内部」だけから、学問を描き出さない、という視点は、先の服部さんの書籍に通じるものがあります。大変興味深いことです。
    
 ガーゲンがむしろこだわるのは別のことです。
 むしろ、ガーゲンが築いた、独自の「関係論」的な視点から、すべての考察を深めています。これが、おそらく、類書とはもっとも異なる事でしょう。
    
 ちなみに・・・
  
 翻訳者の鮫島輝美さんと、実は、はじめてお会いしたのは、先ほどの、金井壽宏先生(立命館大学教授、元神戸大学教授)の科研の研究会でした。当時、京都大学の杉万俊夫先生も科研にご参加なさっていたのですが、そのご縁で鮫島さんもご参加なさっていました。
 服部さんとの出会い、鮫島さんとの出会い・・・金井先生には貴重なご縁をいただきました(学恩に感謝いたします)。はからずも、お二人の作品が同時に世にでることを嬉しく思います。
    
 ちなみにパート2・・・
     
 ガーゲンには「あなたへの社会構成主義」という書籍があります。これは社会構成主義の入門書として定番になっている本ですが、僕は、この本を大変気に入っておりました。ガーゲンが、社会構成主義を学ぶ入門者のために書いた本で、大変わかりやすい。
    
 しかし「あなたへの社会構成主義」はわかりやすい、といっても、そこはガーゲンです。当時、この本が出版された際、「この難解な本を誰が訳したんだろう」と思っていましたら、杉万先生のところにいらっしゃった東村知子さんという方でした。しかも、訳したのが、彼女が大学院生のとき! 
  
 大学院生でガーゲンを翻訳するとは!
  
 世の中には添付の才能をもった方がいらっしゃるのだな、と思った事をはっきり覚えております。
    
 今回紹介した「関係からはじまる」は「あなたへの社会構成主義」とは「異なる記述」で、ガーゲンが描きたかった世界を描いた本だと思います。
   
 秋の夜長におすすめの2つ冊目は、「関係からはじまる」です。
  
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 今日紹介した書籍は前者が400ページ、後者が500ページです。
    
 ひとりで独力で読むのが難しいとなれば、研究会や読書会を開いてみるのもよろしいかもしれません。
  
 孤独にならぬこと
 閉じぬこと
   
 学びにとって大事なことは、いつだってシンプルです。
  
 そして人生はつづく
  

  
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新刊「サーベイフィードバック入門ーデータと対話で職場を変える技術 【これからの組織開発の教科書】」がこのたび、HRアワード2020書籍部門のリストに入賞したそうです。
   
ここから、みなさまによる投票で、最優秀賞、優秀賞が決まるとのご連絡を得ました。本書は、従業員調査、エンゲージメント調査などをもちいて、組織開発を行うときに、マネジャーの方々に留意いただきたいポイントをまとめたものです。どうぞ応援のほど、よろしくお願いいたします!
  
HRアワード2020(投票)
https://jinjibu.jp/gfrm/eventEnquete/award-20-0001/form/
    

   
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【祝・eラーニング完成!】中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース完成しました。リーダー・管理職になる前には是非もっていたいフィードバックスキルを、PC、スマホ、タブレット学習可能です。ケースドラマでも学べます! 
     
中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース:Youtubeでデモムービーを公開中!
https://youtu.be/qoDfzysi99w
   
「実践!フィードバック」コース ありのままを共有し、成長・成果につなげる技術(PHP)
https://www.php.co.jp/el/detail.php?code=95123&fbclid=IwAR2he6Z_PTe3YiahcnCv3z9pNRXvrajPwVaRS8LLAYFkbWVH167qHDfYF5Q    
   
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「研修開発ラボ」(ダイヤモンド社)が、フルオンライン化して大幅リニューアルしました。初回は、特別講座「人材育成の原理・原則を学ぶ」で中原が講演させていただきます。人材開発の「基礎の原理」を学ぶことのできるトレーニングプログラムです。どうぞお越しくださいませ!
    
研修開発ラボ 特別講座「人材育成の原理・原則を学ぶ」
https://diamond-labo0911.peatix.com/
  
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「組織開発の探究」HRアワード2019書籍部門・最優秀賞を獲得させていただきました。「よき人材開発は組織開発とともにある」「よき組織開発は人材開発とともにある」・・・組織開発と人材開発の「未来」を学ぶことができます。理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
    

   
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