NAKAHARA-LAB.net

2019.1.16 06:47/ Jun

今、あなたの職場の状態は「排除・同化・差異化・包摂」の4タイプのどれですか?ーダイバーシティ&インクルージョンとは何か?

※1月17日(木)は所用にてブログを休止させていただきます。1月ー2月は、立て込んでいますね。明日またお逢いしましょう!
  
 インクルージョン(inclusion)という言葉があります。ダイバーシティ(diversity:多様性)と「対」になって使われる言葉です。
(今日は、あくまで組織論のなかでのインクルージョン概念についてお話をします。インクルージョンは、障害教育など、より広い文脈では、また異なる意味をもちます)
    
 日本では、ここ数年のことでしょうか、人事の世界で「ダイバーシティ」という言葉が用いられるときには、インクルージョンとセットになり、「ダイバーシティ&インクルージョン(DI:ダイクル:ディーアイ)」という風に呼ばれることが多くなってきているような気がします。
     
「インクルージョン」はもともと「包摂」ー「つつみこむこと」という意味ですので、「何らかの理由で、そとに出されてしまいがちな個体を、(組織の)中に包摂すること」をめざすことがめざされています。しかし、「包み込む」といっても、「中の論理」に染め上げてしまうことを意味するのでは、もったいない。ここに経営学的なチャレンジがございます。
    
 インクルージョン概念には、さまざまな定義がございますが、近年注目されている概念のひとつに、Shore et alの(2011)らのインクルージョン概念があるといいます。
(これはパーソル総合研究所の研究助成で見事研究助成を勝ち取った、大阪女学院大学 / 神戸大学大学院博士課程の船越多枝先生からご教示たまわったものです。よい学習の機会を与えてくださり、パーソル総合研究所の渋谷社長、船越さんには心より感謝いたします)
   
 Shoreらのインクルージョン概念とは、一見、相反するかのような2つの異なる力動(状態)を、ひとつに、まとめあげていることです。その2つの状態というのが下記のとおりです。
   
 1.職場に受け入れられているということ(職場軸)
    +
 2.しかしながら、個として「自分らしさ(自分の強み)」を発揮でき貢献できていること(個の貢献軸)
  
 いかがでしょうか。
 Shore et al(2011)らによると、インクルージョンとは「職場で受け入れられながら、しかしながら、自分らしさを発揮できている」状態のことをいいます。
  
  ▼
  
 そして、この2つを用いると、下記のように4つの包摂の状態が生まれます(Shore et al 2011より引用)。
  
 いま仮に、「横軸」には、「職場への帰属の程度(職場に受け入れられている程度)」をとります。
 そして次に「縦軸」には「自分らしさ」をどの程度発揮できているかどうかをとります。
  
 そういたしますと、下記のとおり4つの状態が生まれる。
   
  
   
 左上は「Exclusion(排除)」、すなわち、職場にも受け入れてもらえず、しかも、個としても、能力やスキルを活かせていない。これが「ドサイアクゾーン」ですね。
  
 右上は「Assimilation(同化)、これは職場には受け入れてもらってはいるけど、個としては自分らしさを発揮てきていない。むしろ「染め上げられている」
   
 次に下段。
 左下は「Differenciation(差異化)」ーあいにく、これは職場には受け入れられてはいないけれど、自分らしさはキンキンになっている。いわゆる「一匹狼状態」がるるるる
   
 最後に右下は「Inclusion」ー職場で受け入れられながら、しかしながら、自分らしさを発揮できている。めざすべきゾーンです。
   
 あなたの職場は、いかがでしょうか。
 できれば、4をめざしたいけれど、日本の職場ではやはり2が圧倒的でしょうかね。
  
  ▼
  
 今日は、インクルージョン概念について、近年の動向を備忘録的に整理させていただきました。そのうえで、自分がいま置かれている環境を整理する軸をご紹介させていただきました。

 職場で受け入れられながら、しかしながら、自分らしさを発揮できている

 まぁ・・・論理的にはわかるけれど、マネジャーの立場にたてば、なかなか実現するのは難しい概念だよな、と思います。ため息がもれます(遠い目になっちゃう)。これは実務的にはかなり難しい。しかし「めざすべき地平だよな」とも同時に思います。
  
 やや自虐of自虐的に自戒をこめて問います・・・
  
 今、あなたの職場の状態は「排除・同化・差異化・包摂」の4タイプのどれですか?
 あなたの職場では、メンバーをどのように扱っていますか?
  
 はぁ。(遠い目)
 そして人生はつづく
  
  ーーー
  
新刊「残業学」重版出来です!(心より感謝です)。AMAZONの各カテゴリーで1位を記録しました(会社経営、マネジメント・人材管理・労働問題)。長時間労働はなぜ起こるのか? 長時間労働をいかに抑制すればいいのか? 大規模調査から、長時間労働の実態や抑制策を明らかにします。大学・大学院の講義調で語りかけられるように書いてありますので、わかりやすいと思います。どうぞご笑覧くださいませ!
  

  
 ーーー
   
新刊「女性の視点で見直す人材育成」(中原淳・トーマツイノベーション著)が、ついに刊行になりました。AMAZONカテゴリー1位「企業革新」「女性と仕事」。女性のキャリアや働くことを主題にしつつ、究極的には「誰もが働きやすい職場をつくること」を論じている書籍です。7000名を超える大規模調査からわかった、長くいきいきと働きやすい職場とは何でしょうか? 平易な表現をめざした一般書で、どなたでもお読みいただけます。どうぞご笑覧くださいませ!
  

  
 ーーー
  
新刊「組織開発の探究」発売中、重版3刷決定しました!AMAZONカテゴリー1位「マネジメント・人事管理」を獲得しています。「よき人材開発は組織開発とともにある」「よき組織開発は人材開発とともにある」・・・組織開発と人材開発の「未来」を学ぶことができます。理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
  

 
 ーーー
  
【注目!:中原研究室のLINEを好評運用中です!】
中原研究室のLINEを運用しています。すでに約10000名の方々にご登録いただいております(もう少しで1万人!)。LINEでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記のボタンからご登録をお願いいたします!QRコードでも登録できます! LINEをご利用の方は、ぜひご活用くださいませ!
  
友だち追加
  

ブログ一覧に戻る

最新の記事

2024.4.17 23:54/ Jun

給特法、および、それにまつわる中教審審議に対する私見(中原淳)

たかがタイトル、されどタイトル!?: 研究タイトルを「一字一句」正確に書いてきてね!

2024.4.17 08:17/ Jun

たかがタイトル、されどタイトル!?: 研究タイトルを「一字一句」正確に書いてきてね!

2024.4.15 08:05/ Jun

「タイパ重視の時代」だからこそ「時代遅れ!?のラーニング」を楽しむ!

2024.4.15 07:29/ Jun

【参加費無料】リーダー育英塾2024募集開始!:特色ある学校づくり+持続可能な学校づくりを進めたいあなたへ!

日本の企業はホワイトになったのか?:あなたの周りには「ノスタルジー温泉」につかって「昔」を懐かしんでいるひとがいませんか?

2024.4.4 08:57/ Jun

日本の企業はホワイトになったのか?:あなたの周りには「ノスタルジー温泉」につかって「昔」を懐かしんでいるひとがいませんか?