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2018.11.6 06:34/ Jun

「現場の変革」を導く「組織調査」はいかに行われるべきなのか?:組織のなかの「対話のデザイン」!?

 現場の変革に役立つ「サーベイフィードバック(組織調査)」とは、いかにあるべきか?
   
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 組織全体をサーベイ(調査)して、そこでわかった結果を、現場の方々に「お返し」して、「現場の変革」に役立ててもらうことを、「サーベイ・フィードバック(Survey Feedback)」といいます。
  
 サーベイ・フィードバックは、クルト・レヴィンのアイデアであった「アクションリサーチ」を参考に、ミシガン大学で研究を進めていたレンシス・リッカートの研究グループが創始したといわれています。
  
 このことろ、「効果のあるサーベイフィードバック=現場の変革に資することのできるフィードバックのあり方」とは、どのように行えばいいのかを模索したくて、いろいろ調べてみました。
  
   ▼
  
 すると、コロンビア大学教授 ウォーナー・バークの「組織開発教科書」に、下記のような記述がありました。
 今から30年以上も前の指摘ですが、なかなかスパイシーなことが書かれていますので、ここでご紹介させていたdさきます。ここで紹介させていただくのは、「現場を指揮するマネジャー」に対して、いかにサーベイフィードバックを行ったら良いのか、を考察している章です。
  

 曰く
  
 サーベイの結果をマネジャーに知らせた場合、マネジャーがその情報にどう対処するかによって、結果改善の良否が決まることに気づいた。
  
 マネジャーがサーベイ結果について部下と話し合う場合ーとくにグループ討議というかたちで行う場合に、はっきりとしたプラスの変革があらわれた。
  
 しかし、マネジャーがサーベイ結果を部下と共有せず、また部下とともに組織改善をはかる変革計画をあてることができなかった場合、なんの変化もおきず、せいぜい質問集には、記入したものの、その後、何の音沙汰もないという曖昧な状況に部下が欲求不満をもつだけであった。
  
Burke, W.(1987) 小林薫(監訳)、吉田哲子(著)組織開発教科書. プレジデント社  p27

  
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 うーん、30年前ですが・・・スパイシーな指摘ぢゃないですか(笑)。
  
 要するに・・・
   
 サーベイフィードバックの効果を高めるためには、マネジャーが部下とその結果を共有し、ディスカッションすることが重要であり、それがなければ、サーベイはクソの役にも立たないどころか(笑)、部下の不満を高めてしまうだけだから、よしなさいったら、よしなさいよ、お前サン!(いきなり時代劇風・・・笑)といっているのですね。
    
 ここで、妄想力の高いわたしたちは、興味深いことに気づきます。
 サーベイフィードバックは、いわゆる「診断型組織開発」とされ、ときに「対話型組織開発」と対照づけられて語られますが、診断型組織開発においても、そのあとに「対話」は必ず必要になる、ということです。
  
 さらに妄想力を高めると、こうなりますね。
  
 「サーベイ」には、上司と部下の対話が必須なのですよね。
 「サーベイ」だけでは、組織を変えられないんですよね・・・
  
 ということは・・・「図工2(小生)」が、これを図におこせば、こうなりませんか?
  

  
 すなわち・・・

 「サーベイ」という「客観的事実」そのものが、現場の変革を導くのではない(図の上)。
 「サーベイ」という「客観的事実」が、現場のマネジャーや部下に「対話」をとおして「解釈」されて、意味づけられたときのみにおいて、現場を変えうる可能性がある、ということです(図の下部)。
  
(ちょっとマニアックな方は、ここでお気づきになるのではないでしょうか。診断型組織開発と対話型組織開発という2つのパラダイムは、片方が対話がなくて、片方には対話がある、ということを想起してしまいやすく、時にミスリーディングを誘発しやすいと思われます。また、客観主義 vs(バーサス) 社会構成主義で、組織開発が二分されるという考え方も、どこか怪しいことになります。サーベイの結果から何を読み取り、何がおこるかは、社会的に構成される=人々の対話を通して、構成されるのです)
  
  ▼
  
 結局、バークは、マン(1957)やリッカートの行った、効果的なサーベイフィードバックのあり方として下記を提案します。
 また「調子こき太郎」は、図におこします。
 (僕の頭の中は、たぶん、図だらけです・・・いつも絵を描いて研究をしています)
  

   
 効果的なサーベイフィードバックを行うためには、現場をうつしとったサーベイの結果を、組織の再上位にいる経営層から下位の現場に向けて、報告を重畳的に行っていき、それぞれの各層でディスカッションを行ってもらい、未来を決めてもらうことです。
   
 データをかえすときには、自組織全体のデータと、自部門のデータを2つかえすとよい、とされています。それは「差分」をつくりだすためでしょう。「差分」があるから、対話が生まれます。
  
 このように、サーベイフィードバックを行っていけば、組織のトップからボトムに至るまで、様々な集団において、対話が生まれます。
 この対話のことを、マン(1957)は、「Interlocking chain of conferences(会議の連動チェーン)」と呼びました。サーベイという客観的事実をつなぐ、対話のサプライチェーンをつくっていくようなものでしょうか。
  
 30年前の指摘ですが、学ぶことは多いな、と思いました。
 わたしたちは、この間、30年間、何をしてたんでしょうか(泣)
  
  ▼
  
 今日は、サーベイフィードバックのあり方について考えてみました。
 この世には、現場に変革を1ミリももたらさない組織調査、ES調査、IR(機関調査)にあふれています。そこには概して、「対話」がありません。
  
 要するに、
  
 サーベイが「問題」ではないのです。
 サーベイのあとに、誰に、どの順番で、どのように「対話」をするか、が課題です。
  
  
 すなわち
  
 組織のなかの「対話のデザイン」で、サーベイフィードバックの効果が決まる
    
 ということですね。
  
 あなたの組織のサーベイは、現場の変革に役立てられていますか?
 あなたの組織では、サーベイをもとに、組織全体で「対話」が生まれていますか?
 あなたなら、あなたの組織にあった「対話のデザイン」をいかに行いますか?
  
 そして人生はつづく
  
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