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2018.10.5 06:38/ Jun

転職のときに「前職と現職は似てるよね」と思ったひとほど「適応」につまづく理由!? : 訪問看護を「事例」にして

「前職」と「現職」が一見「同じ仕事」に見えるほど「適応」できない!?
   
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 せんだって、訪問看護に関係する看護教育の先生方、専門家の方々、お話をする機会を得ました(ありがたいことです! ご縁に感謝いたします!こちらの対談の様子は『訪問看護と介護』にて刊行の予定です。佐藤直子先生と小川綾乃先生との対談でございました。お二人の先生方、同社の編集者、栗原さん、青木さんには大変お世話になりました!感謝!)。
 看護、訪問看護の領域は、僕はまったくの「門外漢」ですので、下記は、そのおつもりで読みくださいませ(間違いや誤認識が含まれる可能性が高いということです)。
  
 テーマは、
  
1.一般病棟で看護を行ってきた看護師さんが
2.職場を変えて、訪問看護の看護師さんとして働くケースが増えてきている
3.その際に「うまく適応」できない。離職してしまうケースがあとを立たない
  
 ということでした。
  
 こうしたケースが本当に増えているのか、どうか僕にはわかりません。訪問看護ですから、在宅で治療をすすめる患者さんのところに、看護師さんが訪問して、1時間ーくらいケアをするのでしょう。一見、それは「一般病棟の看護」に似ているから「適応は容易」なのかな、と思ってしまいますが、それがどうも違うとのことです。
  
 しかし、お話を伺ってしばらくして感じはじめたことは、冒頭に述べた
  
「前職」と「現職」が一見「同じ仕事」に見えるほど「適応」できないケースもあるのではないか
  
 ということでした。
  
 別の言葉を使えば、「前職」と「現職」が、一見、「同じ仕事」に見えるときほど、前職で培った経験や知識、信念、仕事観のなかで、今は使えないものを「アンラーン(Unlearn:学び捨てること)」できない。
  
 ということになります。これがネックとなって「適応」を疎外してしまうのではないかという妄想的仮説が成立します。
  
  ▼
  
「一般病棟での看護」と「訪問看護」は、「看護は看護」ですから、仕事のコアは「看護」です(何をトートロジカルに何度も同じ事を述べているのか!笑)。
  
 しかしながら、よくよく仕事の内容を聞いてみると、それは微妙に異なっていることに気づかされます。
 一般病棟の看護といっても「いろいろあるわい」、訪問看護といっても「死ぬほど多様だわい」というツッコミを、専門家から「便所スリッパでカンチョー」されながら、ひたすら受けそうな予感をしつつ、この2つを敢えて戯画的に極端に描き出します。一般性は犠牲にします。
  
【一般病棟での看護】
 ・医師からケアの内容を指示されて、患者さんにそれを伝えてケアする
 ・患者さんとは1時間単位で話すことはない(忙しくて病棟で話すのは数分という説もあり)
 ・病院という「専門家の牙城」で仕事をする
  
【訪問看護】
 ・患者さんと話して、ケアの内容を決める
 ・患者さんとは1時間ー2時間ほどコミュニケーションする
 ・患者の家という「相手の城」で仕事をする
  
 いかがでしょう?
  
 同じ看護ではございますが、もし上記のかりそめの分類が「是」だとするならば、2つの仕事は、微妙に異なることがわかります。

 といいましょうか・・・小生のような「完全なるアマチュア」「非看護ピーポー」の視点からみれば、
  
 2つは「違う仕事」に見える
  
 のですけれども、いかがでしょうか。
   
 とりわけ、個人的に気になるのは「患者さんとの距離」でございます。
   
 たとえが「猛烈に悪い」のかもしれませんが、たとえば、あなたが、学校で数分間、世間話をする「友達」なんかがいるとします。友達とあなたの関係は良く、学校での世間話は、まったく気持ちよく話すことができます。
 しかし、その「友達」と「めちゃくちゃ混んだディズニーランド」にいって、2時間30分の行列に一緒に並んで、話を持続させ、楽しく過ごせるかどうかは、また「別」のような気がします。
  
 たとえが「猛烈に悪い」ね(笑)
 でも、この「違う感覚」おわかりいただけますかねぇ。
  
  ▼
   
 今日は「前職」と「現職」が一見「同じ仕事」に見えるほど「適応」できない!?という話題についてお話ししました。
 このことは、もう6年も前になりますが、著書「経営学習論ー人材育成を科学する」のなかで、「アンラーニング」課題として論じたことがございます。
     

   
 「前職」と「現職」が一見「同じ仕事」に見えるほど「適応」できない!?
  
 ということは、
  
 「前職」と「現職」が一見「同じ仕事」だよね
 だから「前職」で培ったこと、そのまま「水平展開」すれば、「現職」でもいけるよね
  
 と考えてしまうところもあるかもしれません。
  
 本来ならば、
  
 「前職」でつちかった知識、信念、スキル、仕事観のなかで「今はやくに立たないもの」の利用を中止しなければならない=アンラーニングしなければならない
  
 ですし、
  
 「前職」では得ていなくて、「現職」においては必要な知識を「学び直す」必要がある=リラーニング(relearning)しなければならない
   
 のですが、それができない。すなわち、転職や仕事の役割転換時に「Unlearning」にも「Relearning」にもひらかれていないことが、問題をひきおこす。
  
 転職や仕事の役割転換時に、ついつい「前職」と「現職」が一見「同じ仕事」に見えてしまうということーすなわ「ベース(前職)」と「ターゲット(現職)」の「類似しているよね=近いよね」と思えてしまうことこそが、かえって「適応」を疎外してしまう、という、妄想的仮説です。
  
 皆さんは転職時に、似た経験をしたことがありませんか?
   
 あなたは「前職」でつちかったものを「適切にアンラーニング」できていますか?
 あなたは「現職」に必要なものを「十分、リラーニング」できていますか?
  
 この2つは、最近、移籍(転職)をした「僕自身」にも突き刺さるセンテンスです。
 僕、大丈夫でしょうか?(笑)
 必要に応じて、フィードバックをお願いしいたします(笑)
   
 一応、ゼロから、白紙から、やり直すつもりで仕事をしているつもりですが・・・
 本人としてはね。
 今のところ、明るく楽しくやらせていただいております。
 
 そして人生はつづく
  
  ーーー
  
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