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2018.9.5 07:00/ Jun

人材開発「ズレ」理論!? : そんなわたしは「超絶ズレマニア」!?

 人材開発とは「ズレ」からはじまる
  
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 そんな戯言を突然つぶやいたら、多くの方々は「は?」となるでしょうか? マジシャンのマギー審司さんならば、きっと「びっくりして、耳がでっかくなっちゃった!」という具合になるのではないか、と思います(笑)。
     
 でも、実際に、そうなのです。
  
 人材開発とは「ズレ」をつくることからはじまる
  
 ことがまことに多いのであり
  
 人材開発担当者とは「ズレマニア」である
  
 というのが今日の記事です(笑)。名付けて、人材開発ズレ理論。ま、理論でも何でもありません。成年?中年の主張です。
  
   ▼
  
 ここで「ズレ」と申し上げているのは、言うまでもなく「比喩」です。「ズレ」とは「AとBが異なっていること」ーここでは「ひとびとの認識の違い」をいいます。
  
 誤解を恐れずにいうならば、
  
 人材開発とは、多くの場合、「様々な手法」によって「学んで欲しい人々に、自分にまつわる様々な「ズレ」を認識してもらい、これまでを内省し、これからを構想させること」
  
 からはじまることがまことに多いものです。
    
 たとえば、もっともわかりやすいのは360度フィードバック(多面評価)でしょう。
 360度フィードバック(多面評価)とは、被評価者による自己評定と、被評価者の周囲にいる人々から被評価者に対する他者評価の「ズレ」を用いて、行動補正につなげる仕組みです。
    
 たとえば「傾聴」という評価項目があったとします。
 僕が評価される側ならば、僕は僕自身で対して、自分の傾聴行動について自己評価をします。同時に、僕の周囲にいる人々にも、僕の傾聴行動について他者評価をしてもらいます。
   
 360度フィードバック(多面評価)による人材開発とは、「自己評定と他者評定のズレ」を用いて、学んで欲しい人々に対して「ズレ」を認識させ、その上でリフレクションをうながし、未来のアクションを決めてもらいます。
  
 たとえば、立教大学ビジネスリーダーシッププログラムでは、春学期はBL0、BL2の科目で、受講生全員での360度フィードバック(多面評価)を実施しました。ふだん接しているグループメンバーから、各人が、360度フィードバック(多面評価)を受けています。学生のうちから「ズレを認識すること」になれておくことは、極めて重要であると、個人的には思います。
    
 このほかには、「ズレ」をつくりだす手段は、他にもあります。
 たとえば、「対話」というコミュニケーション手段は、「会話」とは違います。端的に述べてしまえば、対話とは「認識の違いを顕在化させるコミュニケーション」です。お互いに否定をしあわず、相互の前提や考えの違いを顕在化させるべく、話し合いを行うことが「対話」です。
      
 人材開発において「対話」が用いられるのは、このためです。人材開発では「ズレ」を重視いたしますので、このズレをつくりだす対話がプログラムの中に埋め込まれやすい、というわけですね。
  
 あのね、流行しているから「対話」ではないのですよ(笑)。
 ズレをつくりだすから対話、学びにつながるから「対話」なのです。
   
  ▼
  
 今日は、人材開発とは「ズレ」をつくることからはじまる、というお話をしました。
 人材開発が「ズレ」からはじまることが多いならば、畢竟、人材開発を研究する研究者も「超絶ズレマニア」です。
(実は、組織開発もズレからはじまります。たぶんですが・・・組織開発の研究者も超絶ズレマニアなはずです。人材開発も組織開発も、ルーツは同じですので)
   
 いかに、認識や前提の違いをあぶり出すことができるか、何をみても、何をきいても、そのことばかりを考えているのが人材開発研究者です(笑)。
  
 なんか、ズレをつくりだす方法がないかな?
 そのズレの効果性はどの程度かな?
  
 寝ていないときは、そのことばかり考えています。何を見ても、何をきいても、ズレにしか見えません(笑)。あくまで比喩的な物言いですが、24時間、ズレばかり考えているひとのことを、ひとは人材開発の研究者と呼びます。まことに奇妙な生態ですね。万人には、おすすめしない生き方です。
   
 あなたは最近、自分と周囲との「ズレ」を認識していますか?
 あなたは、最近、「学べて」いますか?
   
 そして人生はつづく
  
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