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2018.7.12 06:09/ Jun

意志決定をするときに、ついつい「どハマリ」しちゃう「思考のバイアス」を防ぐには?

 意思決定とは「メリット」と「デメリット」の両方をあげて、そのうえで「選ぶこと」
   
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 先だって、法政大学大学院の長岡健先生の授業「経営組織論」の授業に、ゲスト登壇の機会をいただきました。
 僕からは、パーソル総合研究所さんとの共同研究「希望の残業学プロジェクト」について、調査の結果、わかったことをお話しさせていただきました。
      
希望の残業学プロジェクト
https://rc.persol-group.co.jp/zangyo/
   
 授業には30名ほどのビジネスパーソンの方々がいらっしゃって、とてもよい議論ができました。お呼びいただいた長岡先生、受講生の皆さんに、この場を借りて御礼を申し上げます。ありがとうございました。
   
  ▼
  
 授業でなされた議論の中では、「長時間労働をすること」は結局、よいことなのか、悪いことなのかについて、様々な意見が出されました。
 参加者の方々のなかには、「昨今の風潮では、長時間労働はデメリットが喧伝されるが、メリットもあるのでよいのではないか」というご意見をお持ちの方もいらっしゃいました。個人的には、それももっともなことで、そういうご意見自体は、リスペクトされるべきではないかと思います。
  
 しかし、長岡先生は、ここで「冒頭のセンテンス」をおっしゃっていました。
  
 意思決定とは「メリット」と「デメリット」の両方をあげて、そのうえで「選ぶこと」
  
 そのうえで、縦軸に「長時間労働多い / 長時間労働少ない」をとり、横軸に「メリット / デメリット」をとった2×2の下記のようなクロス表をホワイトボードにお書きになり、
            
            メリット   |  デメリット
  長時間労働あり   第1象限   |  第2象限
  長時間労働なし   第3象限   |  第4象限
    
 合理的な意思決定とは、このすべての欄をあげたうえで、為されなければならない、といった類いのお話をなされておられました。
   
 長岡先生によりますと、いわゆる「長時間労働是正の議論」が噛み合いにくいのは、「長時間労働の擁護派」はともすれば上記の表の1の場所に少しでも要因が書き込まれれば「ほらみたことか、長時間労働は素晴らしい」と考える傾向がある、とのことです。
  
 逆にいえば、「長時間労働の是正派」は表の2の場所ばかりに目をとられてしまうことなのでしょう。すなわち、長時間労働とメリデメをめぐる4象限の論理的思考に、「認知的なバイアス」が入り込んでしまう傾向があるということなのでしょう。
  
 重要なことは、
  
「メリット」と「デメリット」の両方に目配りをしたうえで、選ぶことです。
  
 この世には、
  
 デメリットのない施策はありません。
  
 また
  
 やってみて「リスク(懸念)」がない施策もありません。
  
 これは頭ではわかっているかもしれませんが、自分が当事者になると急速に失われる視点かもしれませんね。僕も、皆さまも、さまざまな「バイアス」にとらわれやすい「か弱き人間」なので・・・(笑)
  
 長岡先生のご指摘、非常にクリアで勉強になりました。
 ありがとうございました。
  
  ▼
    
「決めるということ」ーすなわち「意思決定」とは、本当に難しいことであるな、と今更ながらに思います。
「将来」のことを考えると、今の段階で、様々な困難や葛藤は予想されつつも、物事を決めなくてはならない局面というのが、私たちには多々あります。
  
 そうしたときに、2×2のクロス表で4象限を切り、その中の論理空間をしっかり整理した上で、そのうえで、物事を決めたいものだと思いました。
  
 あなたは「決める」とき、ついつい「バイアス」に囚われていませんか?
  
 そして人生はつづく
  
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