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2018.7.10 05:41/ Jun

もし朝、あなたが目が覚めて、「ソノコト」だけしか考えられなかったとしたら!?

「リルケはね、こういったの。 / もし朝、あなたが目が覚めて、あなたが物語を書くことしか考えられないなら、あなたは、すでに作家だってね。 / あなたにも同じ言葉を贈るわ。あなたが、朝、目覚めて、歌うことしか考えられないなら、あなたは歌手になるべきよ」
  
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 先だって、家族で「天使にラブ・ソング2(シスターアクト2)」を見ました。
  
 この映画のあらすじは、ウーピー・ゴールドバーグ扮する、ひとりのシスター(デロリス)が、教会付属の高校の音楽クラスの担任となり、そこで、様々な家庭背景をもつ子どもたちを巻き込みながら、聖歌隊を組織し、見事、コンサートで優勝する、という感じです。
  
 超有名シーンに、子どもたちが「Oh!Happy day」をうたうシーンがあるのですが(下記のYoutubeに映像を発見しました)、ご記憶の方も少なくないのかな、と思います。
  

  
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 冒頭の「リルケはね・・・」の台詞は、この映画に出てくるリタという少女に、デロリスが向けた言葉です。
  
 リタは、歌手をめざしているのですが、親の強い反対によって、それを、今にもあきらめかけようとしている少女です。その彼女に向けて、デロリスは、リルケの詩を引用しながら、下記のように述べます(映画の台詞と、一字一句、同じではないと思います。ごめんなさい、うろ覚え。映画の台詞をメモして、一部、意味がとおるように加筆・修正しました)。
  
 作家を目指していたある若者が、
 ある日、リルケに手紙を出したわ。
 若者は「自分が作家になれるかどうか、
 作品を読んでほしいのですが」とたずねたの。
  
 リルケの答えはこうよ。
 もし朝、あなたが目が覚めて、
 あなたが物語を書くことしか考えられないなら、
 あなたは、すでに作家だってね。
  
 あなたにも同じ言葉を贈るわ。
 あなたが、朝、目覚めて、
 歌うことしか考えられないなら、
 あなたは歌手になるべきよ
  
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 何度みても、このシーンは、いいなと思います(いいな、という割にうろ覚えですみません・・・もうビデオを返してしまったので確認ができません)。
  
 歌手とは、一晩中「歌うこと」しか考えられないひとのこと
 作家とは、一日中「言葉を綴ること」しか考えられないひとのこと
  
 すべての仕事がそうではないと思いますが、一部の「クリエィティブ職」の中には、たしかにそういう側面をもっている仕事もあるのかな、と僕は思ってしまいます。もちろん、労働時間は守らなくてはならないことは言うまでもありません。
  
 ちなみに、もし仮に、「研究職」が、そうしたクリエィティブ職のひとつであることを許されるのなら、自分の仕事にも、そうした側面があるような気がします。もちろん、これは分野にもよるかもしれません。あくまで、僕個人は、と断り書きをしたうえで、下記に自分のことを書いてみましょう。他人に強制するつもりは1ミリもございませんので、あしからず(笑)
  
 僕個人のことをいいますと、「寝ている時間」以外のほとんどは、「人材開発のこと」を考えています。
 といいましょうか、どんな光景を見ても、どんなことを聞いても、
  
 すべてが「人材開発」にしか感じません。
  
 極端なことをいえば、
  
 世界のすべてが「人材開発」にしか見えない
  
 のです(笑)。
  
 こう書いてしまうと、かなり「ヤヴァイ精神状態」なのかもしれないのですが、本当にそうなのだから仕方がありません。
  
 たとえば、コンビニで、いつも気持ちよい挨拶をしてくれるお兄さんがいるとします。
 そういうとき、お兄さんとの会話を愉しみつつも、僕の脳裏で考えているのは、「こういうひとを、いかに採用すればいいのか?」「どのように育成すれば、このような従業員が生まれるのか」ということです。
  
 たとえば、道を歩いていて、工事現場の前をとおります。多くの職人さんのなかに、外国籍の方や若い方や、初老の職人さんが混じり、仕事をしています。
 そのときに、僕の脳裏で考えていることは、「この現場をマネジメントする管理者は、事前に、どんな経験が必要だろうか」ということだったりします。
  
 世界のすべてが「人材開発」にしか見えない
  
 とは、そういうことです(笑)。働いているわけではないのです。生きていることが、人材開発を考えることです。
  
 何を見ても、何を聞いても、何をしていても、すべてが「人材開発」にしか見えないのです。
   
 だから、僕個人に関して言えば、
  
 研究者とは、一日中「研究のこと」しか考えられないひとのこと
   
 ということになります。
 他の方がどうかは知りませんし、他人にそれを強制するつもりもありませんので、あしからず(笑)。
  
  ▼
  
 今日はかなり「脱線」しました。
  
 最初は「リルケ」にはじまり、なぜか「シスター」を経由して、「研究のこと」を語って終わるという、「腸捻転」を起こしているような文章で、すみません。
  
 でもね、やっぱり、この言葉に共感してしまうのです。
  
 もし朝、あなたが目が覚めて、
 あなたが物語を書くことしか考えられないなら、
 あなたは、すでに作家だってね。
  
 そして
  
 朝、起きて、歌うことしか考えられないならば、
 あなたは「歌手」になるべきよ
  
 そして人生はつづく
   
  ーーー
   
【重版御礼】新刊「研修開発入門ー研修転移の理論と実践」がダイヤモンド社から刊行され、重版が決定しました。研修転移とは「研修で学んだことを、いかに現場で実践し、成果を残すか」ということです。この世には「学べてはいるけれど、研修転移がない研修」が多々ございます。そのような研修の効果性をいかに高め、いかに評価するのか。「研修転移の理論と実践」の両方を一冊で兼ねそろえた本邦初の本だと思います。どうぞご笑覧くださいませ!
   

 

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