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2018.6.12 05:56/ Jun

あなたの会社の上司たちは「見るべき背中」をもっていますか?

 先だって、慶應丸の内シティキャンパスで行われた僕の授業「ラーニングイノベーション論」に、学習院大学の守島基博先生におこしいただき、「全員戦力化時代の人材開発のあり方」についてご講義をいただきました。
 守島先生におかれましては、大変ご多忙ななかご出講いただき、本当にありがとうございました。この場を借りて、心より感謝いたします。
   
 この授業で、僕は、毎年、守島先生のお話を伺わせていただいております。
  
 先生は、毎年、新たな発信をなさり、今年は、いわゆる「人材不足」の問題を真正面にとらえた授業をしてくださいました。毎年、多くの気づきを、僕や受講生に与えてくださることに心よりうれしく思います。本当にありがとうございました。
  
  ▼
  
 先だっての守島先生のご講義は、どの内容も興味深い内容でしたが、僕がとりわけ印象深かったのは、
  
 今の企業には「見るべき背中」がない
  
 という、先生の「ひと言」でございました。
  
 俗によく、OJTや新人育成の文脈では、
    
 上司や先輩の「背中」を見て、育て
 教わるのではなくて、「背中」を見て、勝手に成長するのだ!
  
 とかいうことが言われてきました。
  
 ここで「背中」というメタファで表現されているのは、いわゆる「観察学習(見て、モデリングして、学ぶこと)」のことだと思われます。
 要するに、新人や経験の浅い社員は、自分の上司や先輩の言動を「見て」、「モデリング(真似)」して、学ぶことが「よし」とされる時代が、たしかにありました。
 こうした「学習観」や「教育観」の背景にあるのは、「言葉に対する不信」でもあります。言葉を通して「伝えられること」よりも、「背中」を通して「伝えられること」ほうが本質的であるという考え方が、長く、人材開発の業界を支配してきました。
  
 しかし、冒頭、守島先生がおっしゃるように、
  
 今の企業には「見るべき背中」がない
  
 のです。悲しいかな「ない」のです。
  
 これはいったいどういうことでしょうか。
  
  ▼
  
 今の企業には「見るべき背中」がない
  
 まず、第一には、上司も先輩も忙しくて、会社にいない(笑)。
「見るべき背中」はいつも出張をしていたり、いつも「打ち合わせ」をしたりしていて、いつもプレイング状態にあり「いない」。「見るべき背中」がいないから、学べない
  
 ふたつめに、最近はテレワークの普及などで、職場にいかずに仕事をするひとも増えています。そうすると、そもそも「上司の背中」が画面に写らない(笑)。カメラで一般に写されて、相手に贈られる映像は「正面の顔」でしょう? 「自分の背中」をカメラで写す人はいないでしょう(笑)。
 空間を離れて、多様な働き方をすることになるという意味において、「見るべき背中」がいない。
  
 最後に、上司や先輩と、新たに入ってくる新入社員の能力が、分野によっては「逆転」していることもあって、「見るべき背中」がない。こちらは、より事態が深刻かも知れません。
 たとえば、語学や統計、そしてIT技術などといった分野では、完全に、上司と部下間で能力が逆転していることもないわけではない。部下の方が技術や語学に長けていたりする。そうすると、「見るべき背中」が社内にない。
  
 おまけとしては、これは守島先生が、去年おっしゃっていたことですが、
  
 最近の人々は、スマホの画面を見るために下を向いていて、「背中」を見ようとしない(笑)。
  
 ということは、「見るべき背中がない」に加えて「見るべき背中を見ようとしない」
   
 皆さんの会社ではいかがでしょうか?
  
  ▼
  
 今日は「見るべき背中がいない」というメタファから、現代の組織における人材育成のあり方を、ゆるゆると考えてみました。
  
 皆さんの会社には、「見るべき背中」がありますか?
 皆さんの会社の社員たちは、「見るべき背中」を見ようとしていますか?
  
 そして人生はつづく
  
 ーーー
     
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