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2018.6.5 05:56/ Jun

残業はもれなく「武勇伝化」する!? : 「最も一緒に働きたくない上司」はどんな上司?

 残業はもれなく「武勇伝化」する
「残業武勇伝」を語る上司は嫌われる?
  
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 デロイトトーマツグループ、トーマツイノベーション株式会社さん(真﨑大輔社長)と、2年前あたりから行わせていただいている共同研究女性の働くを科学するの成果である書籍の執筆が山場をむかえています。「女性の視点からみなおす人材育成入門(仮称)」という書籍(ダイヤモンド社より刊行予定)で、そろそろ「脱稿」を向かえる予定です。
   
女性の働くを科学する
https://www.ti.tohmatsu.co.jp/target/woman_activity/
     
(現在、半分まできました・・・編集者の藤田悠さん、こんな公開の場で申し訳ないのですが、校正が思ったよりも「大手術」になっており、遅れています・・・す・す・すみません)
  
「女性の視点からみなおす人材育成入門(仮称)」は、「希望する女性が長く働くためにはどのような職場環境が必要なのか?」を、データに基づきながら論じた本です。
 男女差、ジェンダーの問題を皮切りにしつつ、今後、さらに増えて行くであろう「多様な働き方をもとめるひとびと」ーたとえば、育児や介護などを行いながら仕事をしていく人々に、どのような職場環境やサポートが必要になるかを論じています。
      
 この本には、本論のメインの話題とは別に、「コラム」のページがもうけられており、本論にのせるまでではないけれども、面白そうな調査データが紹介されています。
 今日は、そこからの「こぼれ話」です。
 実は、コラムのひとつに、「女性が一緒に働きたくないのはどんな上司か?」という項目があるのですが、皆さん、いかがでしょう。どんな上司とは一緒に働きたくないですか?
  
 実務担当者時期の女性が答える「一緒に働きたくない上司」はどんな上司像だと思われますか?
  
 ドコドコドコドコドコドコ(ドラムのまね)
  
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 はえあるワースト3位は・・・
  
1位「自分こそがいつも正しい」と考えていて、受け入れてくれない
2位「残業や徹夜がアタリマエだ」と思っている
3位「過去の栄光や成功」にすがっている
  
 となりました。
 いかがでしょうか? 予想どおり? 予想とは違う?
   
 うーん、たしかにイヤだわ。女性もいやなんだろうけど、男性もいやだわ。自戒をこめて言うけど、ちょっと痛いけど(笑)
  
 これらは、ちなみに、ダントツのワースト3!
   
  ▼
    
 ところで僕が興味深いなと思っているのは、この3つが「全部くっついちゃって」、それこそ「シナジー(交互作用・相乗効果)」をもたらしちゃうと「とてつもなくドサイアクだな」というものです。
 ゆるくゆるく妄想すると、この3つがくっついちゃった「上司像」というものが、朧気ながら、網膜に浮かんできませんか?
  
 要するに・・・全部足しちゃうとするよね・・・そうすると・・・
  
「過去の自分のやり方(栄光・成功)」こそが「正しい」と思っていて、「残業や徹夜」がアタリマエの働き方を強要し、意見をしても、受け入れてくれない上司
  
 が浮かび上がる。
 うーん、たしかに、キッチいわ(笑)
  
 さらにさらに妄想力をたくましくして、この問題にゆるく関係するところで、とりわけ、最近とみに思うのは、
  
 ある世代の上司、ビジネスパーソンは、
  
 「過去の自分の残業」を「武勇伝化」して語るのが好きだ、
  
 ということ。
   
 別の言葉でいうならば、
     
 上司の残業談義は、もれなく「武勇伝化」する
    
 です。
    
 先ほどの質問の、2番目の「残業や徹夜がアタリマエだと思っている」をコアにしつつ、1番目の「自分こそがいつも正しいと考えていて、受け入れてくれない」と3番目の「過去の栄光・成功にすがっている」をまぶしていくと、なんだか頑固者の残業上司が浮かんできませんか? そうした上司が、「過去の自分の残業」を「武勇伝化」して語っている様子が、浮かんでくる。
  
 たとえば、
  
「おれの若いころわなー、3日間寝ないでも、仕事してたもんだ、コルァ。そうやって地べたをはいつくまわって、今の地位までたどり着いたんだ」
  
 とかね
  
「オレの若い頃は、2日間、着替えをするためだけに家にかえったもんだ。そのくらい気合いを入れないと、仕事はできないもんだ」
  
 とかね・・・残業はとにかく「武勇伝化」して語られる傾向がある。そういう上司像が、先の質問項目にリンクして浮かんでくるように感じてくるのです。
  
 そして、たぶん、先ほどのデータから「ゆるゆる」で推察するに、きっとそういう上司の「武勇伝」は、今の若い人には「どん引き」されながら聞かれることになるんだろうな、ということです。
  
「過去の自分のやり方(栄光・成功)」こそが「正しい」と思っていて、「残業や徹夜」がアタリマエの働き方を強要し、意見をしても、受け入れてくれない上司 ≒ 残業を武勇伝化して語る上司
  
 まったくのイコールじゃないけど、ちょっと関係していそうな気もしますね。
 ま、妄想だけど、いかがでしょうか。
  
 皆さんの周囲には、武勇伝化した「残業ストーリー」は散らばっていませんか?
 あなたは「自分の残業」を「武勇伝」にして語っていませんか?
 残業武勇伝にご注意を!
 
 そして人生はつづく
   
(個人的には、日本全国に散らばっている面白おかしい「残業武勇伝」を集めた本というのも、面白そうな気がする。まことに不謹慎だけど、真面目な研究として。かつて組織論のなかで、組織のなかで流通する物語のバリエーションにはさして差は無いという研究があったように、集めてみると、残業武勇伝には、一定のパターンがあるような気がしますね・・・)
   
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