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2018.5.8 06:04/ Jun

中途採用社員が決して口にしてはいけない、たったひとつの「言葉」とは何か?

「ではの守(デワノカミ : 出羽守)」という言葉がございます。
  
 主に、海外赴任から帰ってきた日本人の、ある「振る舞い」を「揶揄」する言葉として用いられるものですが、ご存じでしょうか。
 
 そうですね・・・
 
 アメリカ「では」・・・なのに、日本は・・・であるからケシカラン
 海外「では」・・・・・なのに、日本は・・・であるから遅れている

 といった具合に言葉が用いられます。
  
「アメリカでは」「海外では」という具合に、海外帰国者が「何かにつけて、外国の事例を引き合い」にだして、日本のことを揶揄するような、いわば中2病的なみっともない振る舞いを、「ではの守」といったりするのです。
  
 アメリカ「では」・・・なのに、日本は・・・であるからケシカラン
 海外「では」・・・・・なのに、日本は・・・であるから遅れている
  
 海外で長く暮らして帰ってくると、日本は、とてつもなく小さく見えたり、そんな日本で常識となっていることが、とてつもなく許せなかったりするものです。
  
 「ではの守」は、そんなときに発病する、いわば流行病(はやりやまい)のようなものです。
 頭では、そういう物言いが、周囲を不快にすることはわかっていたとしても、そんな物言いが1ミリも意味をもたないことをわかっていても、ついつい、比較を行い、口から出てしまう。
  
   ▼
   
 ちなみに、この「ではの守」は、新たな組織や会社で働き始めた「中途入社の社員」も、発病することがあります。
   
 前職「では」・・・・だったのに、この会社では・・・なのは、どうかと思う
 前の会社「では」・・だったのに、ここでは・・・・・いまだに・・・なのは、ケシカラン
 以前の職場「では」・だったけれども、今回の職場では・・なのは、違和感がある
   
 という具合に、中途入社の社員も「前職」や「前の会社」や「以前の職場」を引き合いにだして、「今の会社・職場」を揶揄したりします。
   
 新たな組織に新規で参入していくというのは、いわば、新たな国に、いわば「異邦人」として暮らし始めるようなものです。
 新規参入時には、さまざまなリアリティショックを経験しますし、見るもの、聞くものすべてが、「違和感」の塊であったりするものです。「ではの守」がニョキニョキと頭をもたげてくるのは、そんなときですね。
    
 前職「では」・・・・だったのに、この会社では・・・なのは、どうかと思う
 前の会社「では」・・だったのに、ここでは・・・・・いまだに・・・なのは、ケシカラン
 以前の職場「では」・だったけれども、今回の職場では・・なのは、違和感がある
  
 まぁ、ロジカルに考えれば、そんなこと言っても仕方がないのです。
  
 だって、あなたは、今現在、「前職」や「前の職場」で働いてんじゃないんだから!
 それに、「前職」や「前の職場」を辞めて、今の会社を選んだのは「あんた」なのだから。
  
 そんなこと言っていると、なかなか「適応」できないし、成果もでないよ・・・。
 という感じなのですが、まぁ、なかなかね、ロジカルには煮え切らない思いもあるのかもしれません。
   
 みなさまの周囲には、愛すべき「ではの守」社員は、いらっしゃいませんか?
    
  ▼
   
 今日は「中途採用社員が思わず口にしてしまう、あの言葉」として「ではの守」を取り上げました。
  
 ちなみに、僕も、新たな組織・大学で働き始めて、ちょうど一ヶ月がたったところです。僕自身も、いわば、中途採用社員として新たな組織に参入しているところです。ところで、今回の異動に際して、僕は、ひとつ心に決めていたことがあり、今もかたく誓っていることがひとつあります。
  
 それは
  
「前職では」「以前の職場では」という言葉を、絶対に「使わない」
   
 ということです。
    
 幸い、自分からは、この言葉をこの1ヶ月間で用いたことはないと思います(たまに他人から話題を振られたり、話の都合上、どうしても使わなければならないことがあったりします)。
  
(※ちなみに、邪推なさる方がいらっしゃるので、申し上げておきますが、現職に1ミリも、1ミクロンも不満はございません。とても明るく楽しく、毎日を過ごしています、笑)
  
 まぁ、正直なところでいうと、新たな授業やゼミの準備をしたりするので、「それどころじゃねーよ、オラオラ」というのが「本音」と思います(笑)。そんなこと言っている暇がないんだよぉ(笑)。
  
 そう考えますと、
  
 「ではの守」と言っているから「適応」できない
  
 のではなくて
  
 「適応できない」から、時間をもてあまして、「ではの守」的不平を言い散らかす
  
 のかもしれませんね。
  
 嗚呼、世の中、「因果」を決めるのは、本当に骨が折れるものです。
 
 みなさまの周囲には、そんな、「ではの守」社員がいらっしゃいませんか?  
 
 Accept now, Accept you!
 May the force be with you!
   
 そして人生はつづく
  
  ーーー
    
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