NAKAHARA-LAB.net

2018.2.22 05:56/ Jun

あなたの会社は「3Kによる人材開発」!?それとも「データに基づく人材開発」!?

「先生、新しい人事制度のことを議論する前にですね、ちょっと、うちの会社のデータを、見て欲しいんですけど・・・」
  
  ・
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  ・
  
「ここ15年で本当に変わったな」と思うことのひとつに「データにもとづく人材開発」があります。
  
 ここで「データにもとづく人材開発」とは、
  
 組織内調査(従業員調査)や人事データベースの「データ」の分析にもとづいて、人事制度・人材開発戦略を構築すること
    
 をさすものとします。おそらく、これとは対照的な人材開発とは、「3Kによる人材開発」です。
   
「3Kによる人材開発」とは、
  
 勘(K)と経験(K)と気合い(K)による人材開発
  
 に他なりません(笑)。
 データなんてどこ吹く風。頼ることができるのは「野生の勘」(笑)
  
   ▼
   
 僕の研究室には、非によって、数多くの人事・人材開発担当者の方がお見えになりますが(すべてにお答えできているわけではありません)、本当にこの数年は、「自社のデータ分析結果」をお持ちになる方が増えた印象があります。
  
 記述統計はもちろんのこと、相関分析、回帰分析、場合によっては、共分散構造分析まで行って、自社の問題点を明らかにする。そのうえで、「このような施策を、うってみてはと考えているけれど、どうだろうか」という議論をなさる方が増えてきた印象があります。
  
 もちろん、お持ちになるのは定量的なデータだけではありません。自社の現場を「ヒアリング」して、自社の問題点の仮説を構築なさる方もいらっしゃいます。
  
 定量か定性かは、さして問題ではありません。大切なのは「自社のデータに根ざして、効果的な人材開発のあり方を考えることができるか、どうか」です。
     
   ▼
  
 人材開発とは「人やチームの能力・スキル・態度の伸張にかかわる問題解決のプロセス」です。大切なのは、それが「問題解決のプロセス」であるということです。
    
 よく知られているように、「適切な問題解決のプロセス」を行うために、もっとも大切なことは「適切に問題を設定すること」です。そして、そのためには「自社のデータ」を収集し、問題の確からしさを高めることが、決定的に重要です。
  
 僕がよくお話しすることのひとつに、「人材開発は企画8割、実施は2割」というのがあります。
  
 後半の「実施は2割」というのは、研修やらワークショップやらを「実施すること・登壇すること」です。そして前半の「企画8割」とは、もちろん、「自社のデータを収集し、適切な問題解決のプロセスをまわすこと」に他なりません。
  
 ついつい、人は、登壇やファシリテーションの技術に目を奪われ、「人材開発は企画2割、実施8割」と考えてしまいますが、それは僕の認識とは異なります。
  
 「人材開発は企画8割、実施は2割」
  
 です。
  
   ▼
  
 今日は「自社データにもとづく人材開発」のお話をさせていただきました。もちろん、人材開発の営為をまわしていくなかでは、「勘(K)と経験(K)と気合い(K)」も時折必要になるのですが、おそらく、それだけでは効果的な施策運用を行うことが難しくなっているような気もします。
  
 あなたの会社の人材開発は「3Kによる人材開発」ですか?
 それとも「データにもとづく人材開発」ですか?
  
 そして人生はつづく
  
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