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2018.1.30 06:07/ Jun

ところで「理論」って何ですか?:「理論」を知っていると得する4つの理由!?

 「理論」とは何ですか?
  そう他人に聞かれたら、あなたは、なんと「説明」しますか?
  
  ・
  ・
  ・
   
 わかっているようで、わかっていないものに「理論とは何か」ということがあります。
    
 先だって、國分康孝氏の「カウンセリングの理論」を再読する機会がありました。この本は、國分先生が、折衷主義の立場から古今東西のカウンセリング理論を解説している名著なのですが、その一説に、「理論についての説明」がありました。
    

    
 お読みいただいたらおわかりになると思いますが、とてつもなく「力強い書」です。無駄な文章は何一つなく、明晰、かつ、明瞭に文章が綴られています。そして、その中に「理論がなぜ必要か」についての説明があります。
 以下、同書の記述にいくつか加筆をしつつ、理論とは何かについて、紹介しようと思います(國分「カウンセリングの理論」より下記適宜引用)
  
 曰く、
  
 わたしたちの世界には、まず「現象」というものがあります。
 現象の背後には「ふだんは隠されている事実」というものがあります。
 研究者は、「分析」という手段を用いて、「現象」の背後に「事実」を発見します。
 まず、ここまではよろしいでしょうか。
   
 たとえば、「離職」というものが「現象」だとします。
 もし、この「離職」という現象が、「年齢別」によって異なる傾向を示しているならば、これが「事実」です。
 離職という「目に見える現象の背後」に、「目に見えない傾向がある」。これが「事実」です。
   
 ところで「事実」のなかには、一定程度、「共通する原理・原則」というものが出てくる場合があります。そこで生まれるのが「概念」です。
  
 たとえば、先ほどの流れを引き継ぐのであれば、昨今、話題になっている「介護離職」というものは「概念」です。親の介護という突発的事態によって、50代の働き盛りの社員を離職に導いてしまう傾向のある「事実」が、一定程度、世間一般に見受けられるので、これを「介護離職」と名付けます。
     
 そして、こうした「概念」が、ある程度、集まって形成される(ゲシュタルト)されるのが「理論」です。
 理論とは、概念があつまって、「世の理(ことわり)を説明するストーリー」のようなものと考えられます。たとえば、先ほどの「介護離職」を含みうる、「現代のビジネスパーソンの離職一般」を説明する理論がもしできたのとしたら、それがたとえば「離職ほにゃらら理論」と呼ばれるようになります。
       
 かくして、わたしたちは「理論」を手にします。
 理論が素晴らしいのは、効用をもつからです。
 理論の効用とは、下記の4点において説明できます。
    
 1.結果を予測することができる
 2.ある「事実」を説明・解釈する手がかりを得ることができる
 3.ある現象を「整理」することができる
 4.仮説を生み出す「母体」になることができる
   
 こうした効用によって、わたしたちは「無駄な体験」や「とてつもない試行錯誤」を避けることができます。
 体験主義、経験主義を標榜し、「這い回る経験主義」や「試行錯誤地獄」に陥ってしまうくらいなら、片手に「理論」をもっていたほうがいい。僕も、そう思います。
   
 これが「理論」についての説明でした。
  
  ▼
  
 今日は、わかっていそうで、わからない「理論とは何か?」についてお話をしました。たぶん、多くの人々は、理論という言葉を使いながら、「理論とは何か?」と問われると、答えに詰まってしまうのではないかと思います。うそだと思うのなら、ぜひ試してみてください(笑)
  
 予測のつかない現場に戸惑っていたり、目の前に解釈不能な「事実」が横たわっていたり、現象がこんがらかってわけがわからない状況に陥っていたら、ぜひ、片手に「理論」を。もし、あなたが現象や事実を目の前に「整理」することを望んでいるのでしたら、ぜひ、「研究」を
   
 理論は「とてつもない成功」をあなたに保証しませんが、「整理」することができます。
 そして「経験する必要のない無駄な失敗」を回避することができると思います。
    
 そう考えるのならば、志あるこれからの大人は、ひとつ「研究課題」をもつくらいがちょうどいいのかもしれません。
    
 そして人生はつづく
   
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