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2018.1.28 13:18/ Jun

新刊「事業を創る人の大研究」(田中聡・中原淳著)が刊行されました!:「人と組織」の観点から見つめなおす「新規事業づくりの極意」!?

 本日、新刊「事業を創る人の大研究」(田中聡・中原淳、共著:クロスメディアパブリッシング)が、刊行されました!
 新規事業、イノベーション、スタートアップ・・・などなど、新たな事業・マーケットを広めていくことに関心のある多くのみなさま、新しい物事を組織の中で推進している多くの方々に読んでいただけますと幸いです。イノベーション人材、次世代リーダーなどの育成に教育機関で携わっている方にもおすすめの内容です。
  
 込めた思いは、
    
 変われ、新規事業のパラダイム!
  
 本書は、新規事業に関与する方々を応援したいと願っています。
 どうぞご笑覧くださいませ!(下記から購入できます!)
  

事業を創る人の大研究(AMAZON購入はこちら!)
     
 一般に新規事業と申しますと、「うまくいかない」「途中でポシャる」「紋切り型のアイデアしかでない」といったワードがすぐに頭に想起されるくらい、「難しいもの」と考えられています。
 いちビジネスパーソンの視点からみれば「新規事業にはできれば、関わりたくない」とか「新規事業は、どうせ失敗する」といったような意見をお持ちの方も少なくないと思います。
  

  
 「新規事業」というワードの「華々しさ」の反面、一般的なビジネスパーソンにとっては、「新規事業」は、あまり芳しくないイメージがついて回ります。そして、下記にみますように「新規事業への風当たりは非常に強い!」
   

   
 そのようななか、本書では、新規事業にまつわる人々、新規事業を興したい、支援したいと願っている人々を、あるコンセプトのもとで、応援したいと思います。
   

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  ▼
  
 本書の特徴(オリジナリティ)を端的に申し上げますと、
  
 新規事業がうまくいかないのは、アイデアが悪いせいではない
   
 ということになります。実際に、わたしたちの調査でも、そのことは例証されています。
   
 新規事業で難しいのは「よいアイデアが浮かばない」とか、その手の話ではなく、「組織における政治」を乗り越えることが難しいことなのです。要するに「人と組織」が難しい。
 たとえば、下記のグラフにありますように「既存事業から必要な支援や協力」を受けることが難しいというのも、その難しさのひとつです。
   

  
 本書は、
  
 新規事業がうまくいかないのは「組織内の政治」による=「人と組織」に問題がある
  
 というスタンスをとります。「人と組織」にこだわることは、中原研究室のもっとも得意とするところであり、今回の第一著者の田中さんの研究の真骨頂です。
  
 これまで世の中で数多く出版されている新規事業本は、「新規事業のアイデアの具体的なつくりかた」や「成功した新規事業の英雄談」などに焦点をあてたものが多かったように思います。本書では、それらに関する記述は、まったくございません(笑)。
  
 むしろ、かつての新規事業本の多くが、触れていなかった部分
  
 人と組織の観点から、新規事業づくりを考えること
  
 を主眼に、実証データを積み重ねながら、新規事業をつくる人を応援したいと思います。
  
 下記の図表にありますとおり、「人と組織」にこだわりながら、新規事業を見つめる視点は、非常に珍しいものです。
 下記は、過去20年間にイノベーション研究の研究にどのような視点のものがあったかを分類した研究の知見ですが、個人に焦点化した研究はわずか5%、チームや集団に着目した研究は6%、両方あわせても、わずか11%しか、そうした視点の研究はありません。
  

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  ▼
  
 本書では、「人と組織」の視点を貫きます。
  
 新規事業を生み出していくためには、それにかかわる人をどのように見つけ、育成し、評価すればいいのか?
 新規事業を生み出すためには、経営者や幹部は何をしていけばいいのか?
 新規事業を生み出すためには、既存事業と新規事業は、どのような連帯を行えばいいのか?
  
 これらの問いに対して、実証的に、注意深く迫っていくことが、本書の特徴です。本書の第一著書は、僕の指導学生の田中聡さんですが、彼は、このテーマを3年間にわたって追っかけています。本書は、田中聡さんと僕の共著ということになります。
  

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 本書で取り扱っているテーマとして、たとえば、新規事業にかかわる人を、どのように「選んで」いくのか?というものがあります。要するに、どのような人を、新規事業につければいいのか、ということです。
 本書では、東京大学大学総合教育研究センター中原淳研究室が(田中さん、中原で推進)、公益財団法人電通育英会様のご寄付のもとで実行した調査データをもとに、この問いに答えていきます。
  

  
 興味深いところでいうと、新規事業に携わっていた人は、教育機関で、どんな教育を受けていたのかどんな大学時代を暮らしていたのか?に関しても、考えていきます。
 高校、大学などの教育機関で、次世代の人材育成に関与している方にも、ぜひ、ご高覧いただけますと幸いです。
  

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 もちろん、新規事業を数多く生み出していくためには、どのような組織づくりを行えばよいのか。どんな風土を構築し、どのような支援を行えばいいのか、という本論についても考察します。
   

  
 本書の最後には、新規事業を生み出していく企業事例として、サイバーエージェントの曽山哲人さん、東レ経営研究所の手計仁志さんとの対談も掲載させていただいております。お忙しいところ、お二人には貴重な時間をいただき、田中さんのファシリテーションのもと、曽山さん、手計さん、中原、小早川社長で対談をさせていただきました。
 次々と新規事業を生み出すサイバーさん、炭素繊維など数十年をかけて事業を生み出す東レさんには、どんな秘密があるのかについて、拝読いただけるのかなと思います。
  

  
 なお、最後になりますが、本書の執筆には、数多くの方々のご尽力をいただきました。まずは、クロスメディア・パブリッシングの皆さまには心より感謝をいたします。編集者の伊賀倫子さんをはじめ、同社代表取締役の 小早川幸一郎さん、構成をご担当いただいた戸床奈津美さんには素晴らしい伴走をいただきました。こころより感謝いたします。
  
 また調査の女性をいただいた公益社団法人電通育英会の皆さまにも心より感謝いたします。宮島泉さん、永妻光夫さん、小林洋一専務理事、森隆一理事長、そして、もうご退職なさいましたが一昨年前まで同社の研究担当をなさっていた吉村彰芳さんに心より感謝いたします。本当にありがとうございました。
  
 また対談にご参加いただいたサイバーエージェントの曽山哲人さん、東レ経営研究所の手計仁志さんにも重ねて御礼を申し上げます。ありがとうございました。
  
 変われ、新規事業のパラダイム!
 資源をもたぬこの国に
 さらに多くの新規事業が生まれることを願います
  
 そして人生はつづく
  

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[事業を創る人の大研究:目次]
  
はじめに
  
「事業を創る人と組織に関する実態調査」の概要
  
序章 事業創造の実態を探る
1 新規事業創造論の盲点は「人」
2 新規事業の成功確率は“挑戦母数”がカギ
3 新規事業の敵は、「社内」にあり
4 「新規事業は君に任せた」と言った時点でゲームオーバー
5 新規事業に関わる全ての人のための「見取り図」
  
第1章 新規事業は「人」で決まる
1 そもそも「事業を創る」とは
2 「事業を創る」の現状
3 問題は「人材」にあり、と決めつける前に
4 創る人をもれなく「廃人」にする魔の見取り図
5 「事業を創る」は“三位一体”である
  
第2章 データで見る、創る人の実像
1 入社前の実像【学生生活編】
2 入社後の実像【初期キャリア編】
3 「成功する」創る人の特徴
   
第3章 創る人を発掘し、任せる
1 創る人の選び方
2 新規事業の任せ方
3 「任せた」で終わらない
  
第4章 創る人を支える
1 創る人を待ち構える“死の谷”
2 創る人が直面する悶絶体験──4つのジレンマとの戦い
3 創る人は孤独
4 創る人を支える人
   
第5章 創る人と事業を育てる組織
1 既存事業との対立構造にどう向き合うか
2 人と事業を育てる組織風土
3 人と事業を育てる人材マネジメント
4 人と事業を育て、会社の未来を創造する
  
第6章 Interview 事業を創る先進企業の最前線
〈テーマ〉
企業の中で事業を創る人とは、どういう人なのか?
創る人が活躍するために、組織はどうあるべきか?
サイバーエージェント 曽山哲人さん
東レ経営研究所 手計仁志さん
  
おわりに
   
特別付録 新規事業は「人を育てる」― 創る人の成長プロセス
   

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