NAKAHARA-LAB.net

2018.1.19 06:15/ Jun

女性リーダーは「ダブルバインド状況」に苦闘する!?

 女性リーダーは「ダブルバインド」の状況にある
    
  ・
  ・
  ・
   
 来週、研究室OBの関根さん、館野さん、現大学院生の田中さんらが開催してくれる研究会で、「The SAGE Handbook of Leadership」というリーダーシップ研究の論文集を、みなで読む機会に恵まれました(主宰者の3名の皆様には感謝です!)。
    

  
 僕は「Gender and Leadership」という章を担当することになったのですが、先週、チラチラ、本をよんでいたら、こんな記述が目にとまりました。
  
 女性リーダーは「ダブルバインド」の状況にある
  
 ここでダブルバインド(Double bind)とは「二重拘束」のこと。
 ある人が、他人から受け取る「メッセージ」と、他者が暗に発している「メタメッセージ」が「矛盾」する関係にあり、ストレスを感じてしまう状況のことをいいます。
 端的にいってしまえば「にっちも、さっちもいかず、どないせーっちゅうねん!」という状況ですね。
  
 女性リーダーは「ダブルバインド」の状況にある
   
 一般に、西欧諸国では、男性は「主体性」や「積極性」がある「エージェンティック(agentic)な存在」としてステレオタイプとして描かれます。男性は、「攻撃的」で「支配的」で「競争的」で、かつ、「権力を有している」と考えられます(僕がそう思っているのではなありません、あくまでステレオタイプです)。
   
 他方、一般に、女性は、温和的で、支援的で、慈愛に満ちた存在として描かれます。敢えて、二律背反を用いるなら、女性は「エージェンティックな存在」ではなく「コミュナル(Communal)な存在:共同な存在」として描かれる傾向があります(Newport 2001)
  
 ややこしいのは、ここからです。
    
 一般に、ビジネス業界というのは、「リーダーとはエージェンティックな存在である」と信じているものです。(Eagly and Karau 2002)。
 リーダーたるもの、勇ましく部下を率いて、市場を制圧しなければならない。リーダーには、こうしたイメージや規範がついてまわります。ビジネス文化はマスキュリンなカルチャーに満ちています。
   
 こうしたステレオタイプの結果、エドガー・シャインの研究によれば、「Think manager(マネジャー)といえば、Think male(男性を思い起こしてしまう)」という効果ー「Think manager, Think Male effect」が生まれます。
   
 さらに深刻な問題は「女性 × リーダー」という組み合わせです。
  
 コミュナルな存在というステレオタイプで描かれやすい「女性」と、エージェンティックな存在として描かれやすい「リーダー」が「ひとりの女性」のなかで「同居」するわけですから、女性リーダーは「ダブルバインド」に迫られます。
   
 コミュナルな女性リーダーは「エージェンティックじゃないよね」という誹りを受ける可能性が高まります。
他方、エージェンティックな女性リーダーは「コミュナル」ではないという指摘を受けてしまうのです
どっちをとっても、あかんわな。にっちも、さっちも、どうにもブルドック!(死語)どないせっちゅうねん!
  
 女性リーダーにとっての大きなチャレンジは、リーダの役割において必要な「エージェンティツクさ」と「コミュナルさ」をいかにバランスをとるということにあります。
   
  ・
  ・
  ・
   
 文献には、おおよそ、こんなことが書いてありました。
「男性=エージェンティック」「女性=コミュナル」「リーダー=エージェンティック」という3つのステレオタイプが、もし本当なのだとしたら、たしかに「性別」のイメージとは相反する役割を担う場合には、ある種の印象操作を暗に求められるのかもしれないな、と感じていました。
    
 皆さんはどうお感じになられますか?
   
  ▼
   
 来週は研究会が開催されます。
  
 圧倒的にインプットが足りていない僕にとって、研究会は、非常に貴重な勉強の機会です。開催の労をとってくださっている関根さん、館野さん、田中さんに感謝しつつ、一日こってり学んできたいな、と感じています。
  
 そして人生はつづく
  
  ーーー
  
新刊「働く大人のための学びの教科書」、AMAZON総合13位、AMZONカテゴリー(仕事術・整理法)1位を記録しました。人生100年時代、私たちは、しなやかに変化しながら、長く働くことが求められています。学校では教えてくれない「大人の学び方」。7人のビジネスパーソンのリアル学びストーリーも収録しています。ぜひご笑覧いただけますと幸いです。
  

  
 ーーー
  
【注目!:中原研究室のLINEを好評運用中です!】
 中原研究室のLINEを運用しています。すでに約4500名の方々にご登録いただいております。LINEでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記のボタンからご登録をお願いいたします!QRコードでも登録できます! LINEをご利用の方は、ぜひご活用くださいませ!
      
友だち追加
   

ブログ一覧に戻る

最新の記事

2024.4.17 23:54/ Jun

給特法、および、それにまつわる中教審審議に対する私見(中原淳)

たかがタイトル、されどタイトル!?: 研究タイトルを「一字一句」正確に書いてきてね!

2024.4.17 08:17/ Jun

たかがタイトル、されどタイトル!?: 研究タイトルを「一字一句」正確に書いてきてね!

2024.4.15 08:05/ Jun

「タイパ重視の時代」だからこそ「時代遅れ!?のラーニング」を楽しむ!

2024.4.15 07:29/ Jun

【参加費無料】リーダー育英塾2024募集開始!:特色ある学校づくり+持続可能な学校づくりを進めたいあなたへ!

日本の企業はホワイトになったのか?:あなたの周りには「ノスタルジー温泉」につかって「昔」を懐かしんでいるひとがいませんか?

2024.4.4 08:57/ Jun

日本の企業はホワイトになったのか?:あなたの周りには「ノスタルジー温泉」につかって「昔」を懐かしんでいるひとがいませんか?