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2018.1.12 06:25/ Jun

僕が考える「人材育成の学」とはどのようなものか?

 今日は、僕の研究領域に狭く限って考えます。
 研究には「明らかにする系」の研究と「調べてみた系」の2種類の研究があります。
   
「明らかにする系」とは、いわゆる「調査研究」をおもいおこせばよろしいのかな、と思います。
 何か、現在の現場で、わからないことがあって、それを科学的だと思われる手続きで調査を行い、分析をして、「明らかにしてみた」。これが「明らかにする系」です。
  
 もうひとつは「調べてみた系」です。
 こちらは、いわゆる「事例研究」や「歴史研究」を想起なさるとよろしいのかなと思います。何か調べるに値する「事例」や「事象」が過去に存在し、それに関する資料を収集し、調べてみる。これが「調べてみた系」です。
  
 両者ともに、研究としての価値が高いものは存在し、興味をそそる知見も多数生まれています。これらを、さして、わける意味もないのかなと思いましたが、敢えて二つのわけるとすれば、このような分け方も可能かなと思います。
  
  ▼
  
「明らかにする系」と「調べてみた系」
  
 しかし、究極的に、自分がこうした研究のうちどちらかがしたいのかと問われると、僕自身は、「どちらも、自分のやりたいことと、ちょっと違うんだよな」という感覚を持ちます。
 ちょっと前のことになりますが、研究者同士で、研究報告を行う機会がございましたが、その際に、そのことを強く思いました。他人のことをとやかくは言いません。自分自身は「少し違うんだよな」という感覚をもつだけの話です。
  
 僕はこう考えます。
    
 僕がめざす
  
人材育成の学とは
 1.人材育成のあり方を調査・研究することを「通して」
 2.(現場の人が自分の現場の)人材育成のあり方を変革することを「支援する」
  
 ポイントは「通して」という部分と「支援する」という部分かなと思います。「研究を通した現場変革の支援」をかなり意識して、研究を組み立てる。ここがかなり意識的を行うことを狙いたいと思います。
 言葉をかえるのならば、研究そのものをデザインするときから、かなり直接的に「自分自身の研究のあり方」を「現場の人が人材育成のあり方を変革すること」を意図して、研究をデザインするということなのかなと思います。
  
 もちろん、先ほどの「明らかにする系」も「調べてみた系」も、心ある現場の方が読み、手にすれば、さして意図せず「人材育成のあり方の変革」につながることはあるのでしょう。実際、そうした「間接的支援」が起こるであろうことを淡く期待されてきました。
 しかし、僕は、この「間接的支援」というものが、どうも自分の志すものではないような気がしています。むしろ、直接的に「誰かに届き、誰かの変革に使ってもらえるかたち」で研究を組み立てたいと願ってしまうのです。
  
 これは個人の経験でしかないのですが、「現場の人々が、自分の現場の人材育成のあり方を変革すること」に役立てようと思うように研究を立ち上げる、というのは、「最初から」そのようにデザインをしなければ、なかなかうまくはいかないものです。
  
 すべては「最初から意図するか、どうか」だと僕は思っています。
  
 どのように対象を切り取るのか?
 どのようなアプローチをとるのか?
 結果として、どのような知見を産出することができそうなのか?
  
 こうした一切のことを「最初から考えた」うえで、研究を組み立てなければ、先ほどの「通して」や「支援する」を可能にすることは、なかなか難しいではないかと思うのです。
 よく「現場に還元する研究を」とかスローガンとして言われることもありますが、それを行おうとするならば、「最初から仕掛けなければならない」。これが過去20年間研究をやってきた経験上、いえることです。
 
 そして、少なくとも、自分の研究は、こうしたあり方をめざしたいと願っています。
  
  ▼
   
 今日は朝っぱらから暑苦しいネタになりました。朝5時に書くネタではないな、と思いましたが、起きた瞬間に思いついたことがこれでしたので、やむなく書きました(笑)
 
 ここに書いたことは僕の考えであって、他の研究がどうあるかは、僕の関知するところではありません。
 しかし、僕は、残り20年弱となった研究生活を、これまでどおり、こうした志向性のもとで行っていきたいなと考えています。

 そして人生はつづく

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