NAKAHARA-LAB.net

2017.11.8 06:15/ Jun

「自社HR研究」のすすめ!:自社の社員による、自社のデータを使った、自社のための人事研究

 今後の人事・人材開発研究においては「自社HR研究(自社による人事研究:HR : Human Resource)」というものが、より一般的になってくるような気がします。
   
 自社HR研究とは、僕の造語です。意味は、
  
 ・自社の社員による
 ・自社のデータをつかった
 ・自社にもっともフィットした知見を生み出し
 ・自社に応用し、パフォーマンスをあげることをめざして行われる研究
  
 です。
  
 もちろん、すべての企業がそうなるわけではありません。 
  
 しかし、実際、人事・人材開発を「データドリブン」で行っていく「余力」と「意思」のあるところは、ここ数年で、データ分析の担当者を人事・人材開発部に割り当てはじめています。
 あるいは、データサイエンティストを外部から雇用する、技術部門から異動してきてもらう、といったこともわりとよく耳にするようになってきました。
 もうこれは「近い将来の未来」ではなく、一部の企業においては「現実」です。
  
「AIのかけ声(いまだAIの影響といえるものではない、あくまでAIのかけ声)」の影響は「新たなパラダイム」ー、すなわち自社のデータベースを整備して、自社のデータを活用して知見を生み出して、自社のパフォーマンスをあげるというー「自社HR研究のパラダイム」を生み出しました。かくして、自社の社員による「探究」がはじまっています。
  
 そうなってくると、問題になってくるのが、いわゆる「研究者によるHR研究」です。先ほどと敢えて対照的に見せますと、
  
 「研究者によるHR研究」とは
  
 ・外部の専業研究者による
 ・複数の企業のデータをつかった
 ・より一般性をめざした知見を
 ・一般に適用できる知見を産出すること
  
 をめざしています。

 研究といっても、いろんな研究がありますので、ここでは簡略化して見せますが、大きくメインストリームを述べるとすると、上記のような感じです。
      
「一般性」を意識していますので、どうしても、「自社へのあてはまり度合い」は弱くなってしまう傾向があります。また、外部から企業にアクセスし、知見を生み出そうとするので、どうしても、知見の算出スピードは「遅くなる傾向」があります。
    
「自社HR研究」は、これまで専業的研究者によって「占められていた」研究を、当事者たちが、自らの手に取り戻していく活動ーすなわち「HR研究の当事者研究化」とも言えるのです。当事者研究について、僕は、ここ1年ほど書籍を読んでいましたが、これは、こういう理由です。
   
 今後、「研究者によるHR研究」と「自社HR研究」は拮抗し、どのような関係を取り結んでいくのか。
 今後「研究者によるHR研究」は、どのようなオリジナリティを主張し、このような時代をいかにサバイブしていくのか。
 何がアドバンテージになり、どのような特徴を際立たせていくのか。
   
 これら一連の問いは、勘のよい人なら、すでに動き始めていることであるように思います。
 僕は2年ほど前から、自分の研究室の大学院生には、こうした「地殻変動」についてことあるごとに話してきました。
   
 今後は、きっと、こうなるよ
 皆さんは、どう生きていくの?
   
 という具合に・・・。

 さらにいうと、現在は、これが「HR(人事)」の文脈や、大学教育における「IR(Institutional Research : 機関の達成度調査)」で動き始めている動きになりますが、さらに初等中等教育においても動きだしていくことになるのではないかと思います。
 実際、これも、もう動きだしているところが多々あります。これに関して、僕は、2つのイニシアチブを来年度から立ち上げるつもりです。
   
 いずれにしても、必要になってくるのは「ひと」のことがわかり、かつ、データ分析ができる人材です。どんなに「データ分析」ができても、所詮は「コンピューテーション(計算結果)」です。そこには「ひと」にまつわる「洞察力」がどうしても、必要になってきます。
  
「ひと」にまつわる問題について「仮説」をたて、実際にデータを用いて「検証」し、それを経営の言葉に「翻訳」しながら、仕事ができる人材。そうした人材が、今、求められています。いくつかの企業とは、膨大なデータに対して、僕も、仮説や解釈づくり、その後の施策の検討のお手伝いをしています。
  
 面白い時代になってきました。
 あなたは、この時代を、いかに「楽しみ」ますか?
  
 そして人生はつづく
  
  ーーー
   
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