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2017.10.19 06:04/ Jun

あなたの組織に入社してくるのは「フィードバックを求める新入社員」それとも「フィードバック拒絶新入社員」?

 この世には「フィードバックを好む学生」と「フィードバック拒絶をする学生」がいます。
 大学教員になって17年ほど立ちますが、この17年で学生の何が変わったのか、というと、僕はそのひとつに「フィードバックを好む学生が増えたこと」を、ついついとりあげたくなります。
   
 「先生、フィードバックをください!」
  
 といってくる学生・・・・フィードバックという言葉をつかわずとも、客観的なコメントや感想を僕に求めてくる学生は、この17年間で、確実に増えた印象が僕にはあります。
 専門用語では、このような行動のことを「フィードバック探索行動(Feedback seeking behavior)」といったりします。
  
 ともかく、一般化は難しいかもしれませんが、
  
 フィードバックを求める若い人は、僕には増えている印象があります。
   
 反面、何をいってものれんに腕押しの「フィードバック拒絶をする学生」もいらっしゃることはいます。問題は、これら2つが完全に二極化していることかなと思います。
  
   ▼
  
 ここに、ここで、悪のりして、もう1軸を追加しましょう。
「学生軸」につづき、今、ここで追加するべきは「組織軸」です。
  
 この世には、組織のメンバーが相互にフィードバックをしあうことをよしとする「フィードバック文化のある組織」と「フィードバックの慣習が1ミリもない組織」があります。
  
 「フィードバック文化のある組織」では、評価や面談のときに、自然と上長が部下にフィードバックをします。もちろん、フィードバックという言葉は使わないかもしれません。しかし、客観的なコメントや感想を相手に提供し、相手のリフレクションを促すことが「よし」とされている組織は、やはりあります。
  
 反面、お互いのことには干渉し合わない、お互いの仕事には誰も何もいわない「ノーフィードバック文化の組織」というものが、この世には確実にあります。
  
 ここで問題は、僕の印象論で恐縮ですが、
  
「フィードバック文化のある組織」と「フィードバックの慣習が1ミリもない組織=ノーフィードバック不干渉組織」は2極化していること
   
 さらには
  
「フィードバックを求める若い人は増えている」のに「フィードバック文化のある組織はさほど増えていない」
  
 ことかなと思います。まったくの印象論で恐縮です。
  

(新刊「実践!フィードバック」本日発売です!)
  
  ▼
  
 しかし、ここまでをまとめて、今後の組織や個人に、何がおこるか。
 今、「学生軸」と「組織軸」を「直交」させ、2×2の論理空間をつくります。
 そして、仮に「学生」が、「組織」に入社することを仮定します。
  
 そうすると、
   
 1.「フィードバック文化のある組織」に入社する「フィードバックを好む学生」
 2.「フィードバック文化のある組織」に入社する「フィードバック拒絶する学生」
 3.「ノーフィードバック不干渉組織」に入社する「フィードバックを好む学生」
 4.「ノーフィードバック不干渉組織」に入社する「フィードバック拒絶する学生」
  
という4つの可能性がうまれます。
 図にすると、こうかな。
  

  
 まず、ここで「相思相愛」なのは「1」と「4」です。1は「正の相思相愛」、4は「負の相思相愛」でしょう。
  
 しかし、この相思相愛組の最大の問題は、数年たてば「1」と「4」につとめる人の「能力格差」は格段にひらいていくと思われることです。
 フィードバックは「成長の鏡」のようなものです。
 人は、耳の痛いことを通知され、しかしながら、それによって物事を振り返り、成長を実感していくものなのではないでしょうか。フィードバックをしっかりとうける「1」と、まったく受けずない「4」では、その差は大きく開いていきます。
  
 2と3の場合は、完全な「マッチング不全」です。
 2の場合には、個人はさして望んでもいないのにフィードバックをがんがんと受けるわけですから、「ありがた迷惑」な状態になるでしょう。
 3の場合は、個人は望んでいるのに、まったくフィードバックをなされてないのですから、個人は成長を実感することができません。おそらくはその状態を「放置」に感じるでしょう。おそらく「吹きこぼれ」という状況が発生し、その状況が長く起これば、離職などにつながると思われます。
  
 なかなか難しいね。
 でも、日本の企業では、どのケースが一番多いんだろう
 研究するのだとしても面白いかもね。研究的に今日の話をいいかえるのであれば、組織レベルのフィードバック文化が、個人のフィードバック探索行動に与える影響をとおして個人の成長にあたえる影響を、階層線型モデルで表現できるかってことになるのかな、と思います。あるいは、組織レベルのフィードバック文化が、個人にフィードバック探索行動といかなる交互作用をもち、個人の能力発達にどのような影響を与えるか、ということでしょう。
 誰か、この研究やらない?
  

(新刊「実践!フィードバック」本日発売です!)
   
 ▼
  
 さて、今日はフィードバックに関して「個人」と「組織」を直行させて考えてみました。
 もう、そろそろ時間ですので(朝20分しか時間がないのです)、このあたりでやめようと思いますが、皆さんの組織は、どのケースですか?
 個人的には、これからは、おそらくなのですが、「3」のケースがもっとも多くなるような気がいたしますが、どうでしょうか。
  
 あなたの組織には「フィードバック文化がありますか?
 あなたの組織に入社してくる人は「フィードバックを好む人」ですか? それとも「フィードバック拒絶する人」ですか?
  
 そして人生はつづく

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