2023.4.25 08:38/ Jun
観察力を高めるためには、どうすればいいのか?
・
・
・
人間の、高度な情報処理能力の基礎にあるのは「知覚」です。そのうち、目(場合によって耳も)から入ってくる情報は、圧倒的に割合が高いものです。
これらを総合した、いわゆる「観察(observation:物事を知覚して、記録すること)」ができるかどうかは、その後の、人間の情報処理の成否を分ける、といっても過言ではありません。
どんなに優秀な知性をもってしても
インプットされる情報が「カス」だと、アウトプットも「カス」です。
別の言葉でいうと、
入ってくる情報の量と鮮度が「いまいち」だと、アウトプットも「いまいち」なのです。
「ノイズのインプット」からは「ノイズのアウトプット」しか生まれません。
だから、入ってくる情報のソース(源)は重要です。
▼
「観察」はこのように非常にパワフルなのですが、しかし、実は、これほど教えにくいものはありません。観察力を教えるのは、実は、めちゃめちゃ難しいと思うのです。
その理由としてあげられるのは、まずは「思い込み」です。
具体的には、
どんなに観察力の低いひとでも「わたしは観察できている」と思い込んでいる
からであり
自分に「目と耳」さえついていれば「観察」なんて自動的にできている
と思い込んでいるからであり、
「自分の観察力が低い」なんていう、他者からのフィードバックを受けることは、まずない
からです。
このような「思い込みがトリオ化しちゃっている状況」のうえに、「決定打」となるものがあります。
それは、教える側が、
観察力を鍛えるためには、観察しなさい
というトートロジー(同語反復)にはまりやすい、ということにつきます。つまり、教える側が、観察力を教えるための工夫をあまり持たないことが、決定打ではないでしょうか。
だから巷では
「よく見なさい!」
「見てるよ」
という、ほとんど意味のないやりとりが続くのです。
・
・
・
「観察」はもっとも教えにくいものの、ひとつです。
▼
それでは観察力を鍛えるためには、わたしたちには何ができるでしょうか?
しかし、そこに魔法があるか、と言われると、そうではありません。地道で地道で、思わず、項だれて、床にゴロンしたまま放屁したくなりますが、「地道な観察と、丁寧な記録と、フィードバックされることを何度も何度も経験学習」して、それを高めるほかはないのです。
わたしが学生の頃は、基礎演習や研究方法論などの授業で「観察のトレーニング」がカリキュラムのなかに埋め込まれていた(今から考えれば)ような気がします。
たとえば、
・街の交差点で行き交うひとびとを観察し、そこに繰り返されているパターン化された行動様式を発見しなさい
とか
・カフェで談笑する人々の会話に耳を傾け、彼らから事実を聴取しつつ、彼らがどのような社会階層の人なのかを語りから解釈しなさい
とか
・子どもが食事する場面を3年分ビデオで見て、彼らの発達を記述しなさい
いう課題です。
とにもかくにも、基盤になるのは、
見続ける、聴き続ける、そのうえで記録する
記録されたものに、フィードバックされる
ことだと思います。それを何度も何度も繰り返します。もちろん、文章にするときには「箇条書き」や「パワポ」は禁止。発話もきちんと記録する。
当時は、ICレコーダーなどはありませんので、文字起こしはテープレコーダーを用いました(トランスクライバーという足踏み式のテープ再生機などを用いた時代もありましたね)。
そして
記録されたものにフィードバックされることを通して、いわゆる観察のタイミング、見るポイント、見方の記録の仕方というものを磨いていった気がします。もちろん、小生も、まだまだペーペー、修行の身ですが。
▼
大学でも、大学院でも、4月から7月のあいだは、どこかで「観察」にまつわる内容(そのものズバリではないかもしれませんが、のちのち考えれば同じことです)が入ってきます。
観察力を高めることは、その後の、人生にとって重要です。
なぜなら、
観察できなければ、他者に働きかけられない
ですし
イメージできないものは、マネージできません
そして、
解像度の低い、観察力のない人間からは、よき課題解決も期待できません
ちなみに、
リーダーシップの基礎は「観察」です
観察なきところに、リーダーシップも、クソもありません
・
・
・
観察力を磨くトレーニングは、かくも地道ですが、非常に重要な機会になると思います。
あなたは本当に「観察」できていますか?あなたの「記録」は正確ですか?
自戒をこめて
そして人生はつづく
ーーー
【ご案内】
研修の内製化を支援する『研修開発ラボ』が記事になりました。この講座では、研修内製化について学び、効果的な研修をデザインすることができるようになります。ダイヤモンドさんが主催なさっております。
関根雅泰さん、鈴木英智佳さん、島村公俊さんらの講師陣の丁寧なサポートもあり(感謝)、また、中原のゼミナールも開催されています。今年度も募集も、おそらくじきにはじまると思われます。ぜひ記事をご覧くださいませ。
研修の内製化に欠かせない『研修開発ラボ』とはいったい何か?
https://diamond.jp/articles/-/319547
ーーー
【ご案内】新刊「話し合いの作法」!:すべてのひとびとに、対話し、合意して、決断できるスキルを! 人事パーソンはもとより、現場のマネジャー、現場の先生方などなど「話し合い」のスキルを高めたいすべての方々にお読みいただきたい一冊です!
新刊「話し合いの作法」(AMAZON予約)
https://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4569851843/nakaharalabne-22
同書の内容をサクっと学べる動画も公開されています。どうぞご笑覧くださいませ!
■仲が良くても心理的安全性が低い残念な理由【中原淳 立教大学経営学部教授】
■“残念な話し合い”5つの病【中原淳 立教大学経営学部教授】
ーーー
【人事・採用ご担当者さまへ】御社で人材開発・組織開発のプロフェッショナルを採用しませんか?
立教大学大学院 経営学研究科 経営学専攻 リーダーシップ開発コース(以下、LDC)では、経営学を基盤にしながら、次世代のリーダーシップ開発(人材開発・組織開発)を企業・組織で推進することのできる高度プロフェッショナル人材を育成しています。
このたび、このコースを修了した大学院生の皆さん(卒業生ネットワーク:アルムナイネットワークのメーリングリスト:アルムナイネットワークは、卒業生の自主的な活動です)に対して、企業人事の皆様が「採用情報」をお届けいただけるサイトを開設いたしました!。利用上の注意をご高欄いただき、適宜、ぜひ、ご利用くださいませ。無料で情報を送付いただけます。
■立教大学大学院・採用情報発信サイト■
https://ldc.rikkyo.ac.jp/recruit/
【立教大学大学院で大学院生として学びませんか?】
授業は「フルオンライン」。授業は金曜日夜と土曜日だけ行われており、2年間で、修士(経営学)が取得できます。来年1月に願書提出、2月に入試が予定されています。
在学生などの声、リーダーシップ開発コースでの授業の様子について知りたい方は、ぜひ、下記のニュース欄をお読みくださいませ!
ひとづくり・組織づくりの大学院での「学び」とは?
https://ldc.rikkyo.ac.jp/news/
ーーー
【アンコンシャスバイアス研修・内製化ツールキット開発!】武蔵野大学・島田徳子先生、ダイヤモンド社の皆さん(広瀬一輝さん、永田正樹さん)との数年にわたる共同研究と、NPO法人日本ブラインドサッカー協会との連携で、スマホで手軽に受検できる「アンコンシャスバイアス測定テスト」と、内製化研修(プレゼンキット)を開発しました!。この問題は、学術的な背景などは、わたしどもが、テスト結果に基づき動画像(ビデオ)で解説させていただきます。ご利用くださいませ! ご自身の組織にもっともフィットしたアンコンシャスバイアス研修をつくることができます。どうぞご利用くださいませ!
■アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)のWebページはこちら!■
https://jinzai.diamond.ne.jp/ub/unconscious-bias/
ーーー
新刊「チームワーキング」がオンライン管理職研修になりました。JMAMさんからのリリースです(共同開発をさせていただいた同社の堀尾さん、ありがとうございました。中原は共著者の田中聡さんと監修をつとめさせていただきました)。どうぞご笑覧ください!
「チームワーキング研修版」リリースされました!
https://www.jmam.co.jp/hrm/training/special/teamworking/
「チームワーキング」が「アセスメントを絡めた管理職研修」として利用されております。モニター利用各社の人事担当者の皆様、開発担当者の堀尾さんと、座談会をさせていただきました。ぜひご覧くださいませ!
チームワーキング座談会
https://www.jmam.co.jp/hrm/training/special/teamworking/case/index.html
書籍「チームワーキング」の方も、おかげさまで「重版」を重ねております。応援いただいた皆様に心より感謝いたします。
https://amzn.to/3esCOrW
すべてのリーダー、管理職にチームを動かすスキルを!
ニッポンのチームをアップデートせよ!
ーーー
立教大学経営学部 中原ゼミ4期生、ゲームなどを活用した「内定者フォローワークショップ」を共同開発! ダイヤモンド社・ダイヤモンドヒューマンリソースさまから発売中!デンソー様、東急不動産SCマネジメント様、ラインズ様、日水コン様、リリカラ様など、なんと「40社」を超える企業で、内定者研修・新入社員コンテンツの一部として、ご利用いただいております。
先だっては、JTさまのご協力のもと(同社の三島紀子さんに心より感謝いたします)、ワークショップの実践が記事になりました。下記をご覧くださいませ。
JTの内定者懇親会が教えてくれる、内定者同士の“つながり”の大切さ
https://xn--diamond-kc4f0b9lnf.jp/articles/-/316499
内定者の論理思考力、質問力などの工場、強みの発見、内定者同士の関係構築を、オンライン・オフラインで行えます。スライド、ワークシート、動画など完全完備。企業ごとに内製化してお使いいただけます。
立教大学経営学部 中原ゼミ、ゲームなどを活用した「内定者フォローワークショップ」を共同開発! ダイヤモンド社・ダイヤモンドヒューマンリソースさまから発売中!
https://jinzai.diamond.ne.jp/rp/prospective-employee-workshop/
どうぞご高覧くださいませ!
ーーー
職場診断ツール&ワークショップ「OD-ATRAS(オーディ・アトラス)」が多くの職場で使われはじめています。サーベイはもとより、それをいかに「フィードバック」するかに焦点をあてたツールです。ワークショップも開発しております。どうぞご笑覧くださいませ!
職場診断ツール&ワークショップ「OD-ATRAS」 (パーソル総合研究所・中原の共同開発)
https://rc.persol-group.co.jp/consulting/survey/service/od-atlas.html
ーーー
【好評発売中】1on1のコツをまとめた映像教材を、中原とPHPさんで共同開発しました。上司用、部下用あります。1on1について「同じイメージ」をもつことができます。どうぞご笑覧くださいませ!
上司と部下がペアで進める 1on1 振り返りを成長につなげるプロセス(上司用)
https://www.php.co.jp/dvd/detail.php?code=I1-1-061
経験を成長につなげる1on1(部下用)
https://www.php.co.jp/dvd/detail.php?code=I1-1-061
ーーー
【祝・eラーニング完成!】中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース完成しました。リーダー・管理職になる前には是非もっていたいフィードバックスキルを、PC、スマホ、タブレット学習可能です。ケースドラマでも学べます!
中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース:Youtubeでデモムービーを公開中!
https://youtu.be/qoDfzysi99w
「実践!フィードバック」コース ありのままを共有し、成長・成果につなげる技術(PHP)
https://www.php.co.jp/el/detail.php?code=95123&fbclid=IwAR2he6Z_PTe3YiahcnCv3z9pNRXvrajPwVaRS8LLAYFkbWVH167qHDfYF5Q
ーーー
新刊「フィードバック入門:耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術」絶賛発売中、13刷重版出来です!。AMAZON総合13位、1位(マネジメント・人材管理カテゴリー、リーダーシップカテゴリー)を記録!年上の部下、若手のトンガリボーイ、トンガリガール。職場には、多様な人々が集っています。難易度の高い部下育成に悩む管理職向けの新書です。どうぞご笑覧くださいませ。スピンアウト企画にDVD教材「フィードバック入門」、研修、通信教育もあります。こちらもどうぞご笑覧ください。
『フィードバック入門』スピンアウト企画
https://www.php.co.jp/seminar/feedback/
ーーー
【泣くな!新米管理職!】
おかげさまで10刷重版出来。「駆け出しマネジャーの成長論」は、「実務担当者」から「新任管理職」への役割移行をいかに進めるかを論じた本です。「脱線」をふせぎ、成果をだすためには「7つの課題」への挑戦が必要であることを解説しています!全国の管理職研修で用いられています。どうぞご笑覧くださいませ!
パーソル総合研究所と中原は、このテキストをもとにした「マネジャーになる研修」を開発しました。種部吉泰さんとディスカッションは、非常に楽しいものでした。このコースについても、どうぞご覧くださいませ!
「マネジャーになる」 研修:プレイヤーからマネジャーへの移行期支援プログラム
https://rc.persol-group.co.jp/seminar/become-a-manager.html
ーーー
Diamond Transition Program for Freshers(オンライン新人研修)
「新人研修をアップデートするための5つのコンセプト」に基づいて開発された、中原が監修をつとめる新人研修プログラムです。全4回にわたって実施する「オンライン研修」と「現場での実践&振り返り」を往還することによって、新人期に直面する壁を乗り越え、トランジションを果たせるよう手厚くサポートできるようになっています。経験学習を習慣化するほか、ストレスマネジメント、フィードバック、ジョブクラフティングなどについて学ぶことができます。
Diamond Transition Program for Freshers(オンライン新人研修)
https://jinzai.diamond.ne.jp/items/k00HD0024/
OJT指導員向け・短時間&動画で学べる 部下育成スキルの動画もございます。中原が新人育成のポイントについて解説しています!
短時間&動画で学べる 部下育成スキル・解説動画
https://jinzai.diamond.ne.jp/items/000HD6260/
ーーー
新刊「研修評価の教科書」好評発売中です。アカデミックな知見に根ざしつつも、実際の企業のなかで実践可能な研修評価とは、いかにあるべきか。「企業における」研修評価のあり方を論じた本です。質問事例などのワークシートなどもついております。3つの企業事例も含まれています。どうぞご笑覧くださいませ。
新刊「研修評価の教科書:数字と物語で経営・現場を変える」
https://amzn.to/3ta9mhf
ーーー
新刊「M&A後の組織・職場づくり入門」発売中です。AMAZON「企業再生」カテゴリー1位を記録しました(感謝です!)。
これまで税務・法律の観点からしか語られなかった「企業合併(M&A)」の問題に対して、ひとと組織(人材開発・組織開発)の観点からアプローチし、シナジーを生み出す可能性を考えます。
M&Aという「巻き込まれ事故」に関わってしまった経営企画・人事・現場の管理者・リーダーの皆様にぜひお読み意いただきたい一冊です!
購入はこちら!「M&A後の組織・職場づくり入門」
https://amzn.to/3v0P0bE
ーーー
拙著「経営学習論」の増補改訂版が、東京大学出版会より刊行されました。新たに「リーダーシップ開発」の章を追加し、カバーの装いも変わっています。人材開発の基礎的な理論を体系的に学べる一冊です。どうぞご高覧くださいませ!
ーーー
「組織開発の探究」HRアワード2019書籍部門・最優秀賞を獲得させていただきました。「よき人材開発は組織開発とともにある」「よき組織開発は人材開発とともにある」・・・組織開発と人材開発の「未来」を学ぶことができます。理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
ーーー
「中小企業の人材開発」(中原淳・保田江美著、東京大学出版会、2021年)マニアックなガチ・学術研究書なのですが、発売10日で重版出来となりました。ありがとうございます。中小企業の人材開発メカニズムに接近を試みています。どうかご笑覧くださいませ!
ーーー
【注目!:中原研究室記事のブログを好評配信中です!】
中原研究室のTwitterを運用しています。すでに約39000名の方々にご登録いただいております。Twitterでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記からフォローをお願いいたします。
中原淳研究室 Twitter(@nakaharajun)
https://twitter.com/nakaharajun
最新の記事
2024.9.28 17:02/ Jun
2024.9.2 12:20/ Jun
2024.8.29 19:13/ Jun
【参加者募集・無料 9/13(金)】『大学生の生み出すアイデア』が企業にもたらす価値とは?:対面開催「立教BLPカンファレンス2024に参加しませんか?
2024.8.23 08:28/ Jun
【参加者募集】人材開発・組織開発のプロフェッショナルを育成する大学院の「フェス」のような「明るく楽しくためになる入学説明会」におこしになりませんか!
2024.8.20 15:39/ Jun
【中原からのお願い】ファミリービジネスにおいて「事業承継」をご経験された方、ぜひ、アンケート調査にご協力いただけませんでしょうか?