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2023.3.14 08:25/ Jun

権力者の「大好物」とは何か?:経営層が変わるたびに、会社の中がコロコロ変えられてしまう理由!?

「うちの会社に、外から新しい役員が来て、組織調査の質問項目を、全部、変えた方がいいっていうんですよ。時代にあってない気がするからって。でも、全部変えちゃうと、経年比較ができなくなっちゃうんですよ。先生、何とか言ってくださいよ」
   
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「やれやれ、また来たか」という感じです。年間に数件、この手のご相談が(通常は多忙なので、お引き受けしません)、わたしのもとに寄せられます。ワンセンテンスで申し上げるならば、「新しい役員を組織調査をいじくりはじめちゃう問題」です。また来たか「いじくりオヤジ」が(笑)。
  
 こうしたケースの場合、まことに残念ですが、「先生、(役員に)何とか言って」と言われても、言えません。御社の経営を担う、まさにその人物が言い出したことなので、圧倒的外部のわたしには、そんな物事、どうしようもありません。
  
 ましてこの問題は「やっかいな問題」とくっついています(たいていの場合は・・・100%とは申しません。正当な理由がある場合ももちろんございます)。
  
 すなわち、新たな役員は
    
「組織調査の質問項目が、時代にあっていない」から、質問項目を変えたい!
    
 わけでは「ない」
のです。たいていの場合は・・・。もしそうなら、ロジックと、データで、何とでも「反駁」はできます。
       
 しかし、シャバの世界で起こっていることは、そうではありません。
      
 たいていの場合は、
    
 ■新たな役員が来たから「組織調査の質問項目を変える」ということで「変わった感」を演出したい
    
 ■質問項目を変えるということで、自分が「上」に来たことのシグナルを出したい。
    
 もっというならば、
  
 ■新たな役員になったので「何か新しい仕事をした気」になりたい
   
 のです。ちゅどーん(爆)
  
  ▼
   
 実際、こういうご相談のあとに、新たな役員本人に会ったとします(シブシブです・・・お引き受けしません)。そのときに、わたしの方から「何を、どのように変えたいのか」そして、「いったい、何が時代にあっていないのか」をうかがっても、まともな答えは返ってきません。返答時間30分の役員の発話が得られますが、よくわかりません。
  
 困り果てて、発話データをchatGPTなどに入力し、要約させたとしても、GPTは
  
 「何となく、、、変えた方がいい」ってことじゃないですか?
   
 と短く答えを返してくるでしょう(笑)
   
  ▼
  
 一般論として申し上げますが、組織においては、
  
「変わらなければならないもの」が「変わる」のではありません。

  
 そうではなく、
   
「変わりやすいもの」が「変えられる」
  
「変えることに抵抗がなさそうなもの」が「変えられる」
  
「変えたことの悪影響がわかりにくいもの」が「変えられる」
  
 のです。

 もっというと「変わった感を演出できるもの」が「変えられる」のです。
  
 組織調査の質問項目については「変わりやすいもの」であり「変えることに抵抗がないもの」に分類されると思います。さらにいうと「変えたことの悪影響」も一般にはわかりにくいものです。しかし、何となく「変わった感」はある。全社員が目にするものなので。
  
 ですので、たいていの場合、新たな役員は、マウンティングなのか、思いつきなのかは1ミリも存じあげませんが、着任早々、たいてい、「組織調査の質問項目」に類するような「課題」をやり玉にあげるのです。
  
  ▼
   
 ちなみに、組織調査の質問項目を変えることについては、わたしは「まったく変えないで継続し続ける」のもNGだと思っています。感覚的なものですが、1割くらいは、常に見直してもいい。
  
 なぜなら、統計量によっては意味をなさない質問項目も出てきますし、組織内に与えるメッセージも変わるでしょうから。そのときの経営課題にリンクした形で、質問項目を再設定する必要はでてきます。変えるときは躊躇なくやればいいのです。質問項目ですから。
  
 ただ、変えるのは簡単ですが、失うものも甚大です。組織調査の質問項目を変えてしまうと、せっかく蓄積してきた経年データを比較できなくなるデメリットがあります。よって、組織のなかのKPI(大切な指標)については、なるべく変えずにそのまま使い続けることが重要ではないか、と思います。
  
  ▼
    
 今日は「新しい役員が組織調査をいじくりはじめちゃう問題」をお話ししました。
 今日の話題は「組織調査の質問項目」でしたけれども、これにあてはまるものは、世間一般には多々ございます。おそらく「企業研修」もそうですし、「広告」などもそれに類するものなのではないか、と思います。
  
 ワンセンテンスで申し上げますが、
  
 権力をもつものは「変わった感を演出できるもの」が「大好物」です。
  
 間違っていただきたくないのは、権力をもつものは「変えること」が「大好物」なのでは「ない」ですよ。
  
 もう一度申し上げますが、権力をもつものは「変わった感を演出できるもの」が「大好物」なのです。
  
 いじくり要注意。忙しいのです。仕事増やさないでください。生産性下がります。
 そして人生はつづく
     
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