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2022.10.25 05:27/ Jun

「組織の問題」は「関係のなか」で起こっている!? : 「問題の属人化」を避けて「関係論的視点」に立つこと!?

 「組織の問題」は「関係のなか」で起こっている!?
   
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 学部3年生(現在4期生)は、この秋から、新たなPBL(プロジェクト学習)に取り組んでいます。名付けて「HRD-ODプロジェクト」
  
 今後、彼らは卒業まで1年半かけて
  
1.3名ー4名でチームを組み
  
2.自らクライアント組織を探し
  
3.クライアント組織のキーマンと交渉し
  
4.クライアント組織の組織状況を調べ
  
5.クライアント組織に対して人材開発・組織開発を実行し
  
6.自らの取り組みを評価する
  
 というプロジェクトに従事します。
  
(この内容は、3年生が、この夏、さんざんぱら対話を行い、自分たちで決めた内容です。中原ゼミの唯一のゼミ訓は、自分たちの学びは、自分たちでデザインせよ、です。すべて話しあって、自分たちで決断させます。なんなら、新規ゼミ生の採用も、わたしは1ミリもタッチしません。自分たちで採用研究を学び、採用基準を決めて、話しあって、次世代のメンバーを決めます。現在は、これに5期生がチャレンジしています。お疲れ様! 採用に関して、わたしが言うのは、1.採用基準を自ら話し合って決めること、2.透明・公正であること、3.応募者に心から誠意をもって対応すること、4.すべての記録は残すこと、5.ただし採用情報はすべて「秘匿」とすることだけです。いずれにしても、採用だろうが、ゼミ運営だろうが、彼らが自ら決めたことを、わたしは、サポートします)。
  
 これは本来ならば、大学院1年生の秋学期の半期で実行する内容です。さすがに大学院と同じカリキュラム、難易度で、これを行うのは難しいのですが、じっくり1年半かけて、プロジェクトを実行したい、と願っています。
  
  

 ▼
  
 秋学期が始まって以降、人材開発・組織開発にまつわる様々な知識を彼らにインプットしているのですが、前回の授業では、「関係論的思考」について、レクチャーをいたしました。
  
 端的に申し上げれば、
  
 組織のなかで起こる物事(現象)を見つめるときには、安易に「個人還元主義」で見てはいけない
   
 組織のなかで起こる物事(現象)を見つめるときには、いったん「関係論」で見なくてはならない
  
 ということです。
  
 たとえば、ある集団に、問題を抱える社員Aさんがいた、とします。なかなか仕事がうまく回らないAさん。この問題を「個人還元主義的」に考えるのだとすると、
  
 Aさんが仕事にトロイ資質を、Aさん個人の内部にもっているので、ゆえに、Aさんは仕事ができない
  
 ということになります。
  
 しかし、思い出してください。
   
 組織のなかで起こる物事(現象)を見つめるときには、安易に「個人還元主義」で見てはいけない
  
 組織のなかで起こる物事(現象)を見つめるときには、いったん「関係論」で見なくてはならない
    
 なのです。
   
 Aさんの仕事のトロさを、Aさんの安易に「個人の資質の問題」と考えるのではなく、Aさんの「周囲」に目をやってみる。すると・・・Aさんの周囲には、
   
 ・自ら忙しすぎてAさんに仕事が振れていない、2年目社員のBさんがいたり
   
 ・Aさんの育成なんて1ミリも興味がない、プレイングマネジャーのCさんがいる
  
 のです。そして、彼らとのやりとりと、関係のなかにこそ「Aさんが仕事がトロイ」という現象が生まれている。
   
 すなわち、Aさんの仕事のトロさは、Aさんが生み出しているのではなく(それもあるかもしれませんが)、2年目社員のBさんや、プレイングマネジャーのCさんの「関係」によって生み出されていることがわかります。
  
 人材開発・組織開発を行うとき、安易に「個人還元主義」に堕することなく、「関係論」的に物事を見つめよ、というのは、これが理由です。
   
 万が一、個人還元主義的に物事を見つめてしまいますと、このあとに採用される人材開発・組織開発施策は、「Aさん個人への介入(多くは研修)」となってしまいます。しかし、関係論的に物事をとらえた場合には、2年目社員のBさんや、プレイングマネジャーのCさんも介入対象になります。
  
 このように、
  
 組織における現象(問題)の多くは、関係論的に生み出されていること
  
 がほとんどです。
  
 また、
  
 組織において「問題があるひとだ!」とラヴェリングされるひとは、たいていは「Identified Person(IP:問題があると認定されたひと)」であることが、ほとんどです。
  
 すなわち、ここでいえば、Aさんを放置している2年目社員のBさんや、Aさんなんかに興味のないプレイングマネジャーのCさんが、「Aさん=仕事のトロイ奴」という意味空間を生み出し、Aさんを「問題のあるひと」に、みなで社会的に仕立て上げているのです。
  
 別の言葉でいえば、
  
「仕事のトロイAさん」は、社会的に構成された(Social Construction)ということになるのです。
  
 授業では、こうした視点についても伝えていきたいと考えています。こうした視点は、何も、学部生の彼らが、人材開発・組織開発のプロフェッショナルにならずとも、日々の生活をしていくうえで、重要な視点だからです。
   
 実は、人材開発・組織開発について学ぶとは、今後、社会で必要になる「対人関係の知」を学ぶことに他なりません。
      
 ▼
  
 今日は中原ゼミ・学部3年生の取り組むプロジェクトについてお話しをしました。
  
 あなたは「個人還元主義」に陥り、ついつい「組織の問題」を属人化させていませんか?
  
 あなたは「組織の問題」の「関係」の網のなかにいる「当事者」ではありませんか?
  
 そして人生はつづく

  ーーー    
    
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