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2022.9.15 07:53/ Jun

「硬直した話し合い」が氷解しはじめる「あの一瞬」は、いかなる行動から生まれてくるのか?:「Deliberative Transformative Moments : 熟考に至るための変革点」を生み出すために必要なもの

 「内蔵」をさらけ出すことが「硬直した話し合い」を氷解させる!?
      
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 シャバのあちこちには「硬直した話し合い」というものが、たしかにございます。
    
 どれだけ長い時間をかけても、意志決定が行えない
     
 重い沈黙が長くつづき、誰一人として発言しない
  
 あっちを立てれば、こっちがたたない
  
 にっちもさっちも、どうにもブルドッグ(笑)
  
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 そんな「硬直した話し合い」を変えるきっかけになる、ひとつとして注目されているのが、「Deliberative
Transformative Moments:熟考に至るための変革点(Jaramillo & Steiner 2014)」
です。
    
 「熟考に至るための変革点」とは、話し合いに参加するメンバーのうち誰かが「自己を表出した会話」を行うことによって、それまでの話し合いの雰囲気・クオリティを一変させてしまう、「その一瞬のこと」をいいます。
    
 たしかに、自分の過去の、様々な話し合いを思い起こしてみても、そんなタイミングがあったかのようにも思います。誰かの自己開示が、それまで「硬直していた話し合い」を少し氷解されてしまうような瞬間が。
    
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 実はさ、わたしさ・・・過去にこんな経験したことあるんだけどさ・・・そのとき・・・こう考えていたんだよね
    
 実は、これまで口にだして来なかったんだけど、この企画に、わたしは・・・・な思いをもってやっているんだよね
    
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 こうした「自己を表出した会話」を誰かが切り出し、「個人的な物語」や「個人的な思い」を語り出したときに話し合いのクオリティが飛躍的に高まる可能性があります。
    
「硬直した話し合い」を氷解させるためには、
     
 誰かが「自己の内臓」をさらけ出すことが必要なときもある
       
 のです。
     
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 しかし、一方、そのためには「環境」も必要です。
 誰かが勇気をだして「自己の思い」をみなのまえでさらけ出して、それをそのまま、誰も受け止めなかったとしたら「内臓放置」で出血多量です。
      
 表出された自己は、みなが、それを受け入れることが重要です。すなわち、心理的安全性(Psychological Safety : 誰かが言いたいことをいったとしても、干されたり、指されたりしない雰囲気)もチーム・職場内で確保されていなければなりません。
    
 ここでひとつの問いが頭をもたげます。
   
 それは、
  
 心理的安全性が「先」なのか、それとも、「自己表出」が「先」なのか
  
 という問題です。別の言葉でいえば、「心理的安全性が確保されているから、自己表出が可能になるのか」それとも「自己表出が行われ、それがDeliberative Transformative Momentsにつながり、結局、そのアウトプットとして心理的安全性が確保されるのか」という問題です。
   
 これに関しては、管見ながら、実証研究はないように思います。
 また、この現象自体が、いわゆる「鶏と卵」のような関係にもあるので、なかなか計量を行うことは難しいかもしれません。
   
 が、個人的な肌感覚では、「誰かがリスクをとって、勇気をだして、自己表出をすること」、すなわち「行為」が先ではないか、と思います。内臓をさらけだして行われる、その語りに、迫真性と本気を感じれば感じるほど、おそらく、それを聴いているひとは、すべての意見を受容しはじめるのかもしれないな、と思います。
  
 行為が「先」、心理的安全性は「後」
  
 だとわたしは思っています。
   
 皆さんは、いかが思われますか?
  
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 今日は「硬直した話し合い」を氷解させる「Deliberative Transformative Moments:熟考に至るための変革点」についてお話をしました。
  
 あなたは、最近、誰かが勇気をだして、自己を語り出す場面に遭遇しましたか?
  
 あなたは、最近、「Deliberative Transformative Moments:熟考に至るための変革点」を経験していますか?
  
 あなたは、最近、自ら勇気をだして自己を語り出し、話し合いを前に進めることができましたか?
    
 そして人生はつづく
        
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