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2022.6.13 07:55/ Jun

人事の世界に蔓延する「言葉遊び」!? : 愚問は頭を悪くする!?

 ひとは「育つ」のか「育てる」のか?
   
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 人事・人材開発・組織開発の業界に、この20年、はびこっている「言葉遊び」です。誰かが忘れた頃に、この手の「言葉遊び」を思い出して口にして、人口に膾炙します。
    
「ひとは育つ派」の方は、「自分は、他人に育てられたことはないし、そもそも自分を育てるのは、自分だということ」にロマンティシズム(浪漫主義)を感じている方が多い印象をもちます。さんざんぱら、ひとに支えられてきたのにね。そんなことはきれいさっぱり、忘れてしまう。
   
 対して、
  
「ひとは育てる派」の方は「自分は、いろいろな方にお世話になったので、育てるんだろうな、と思いつつも、心の奥底で、ひとは育つ、の方がかっこいいし、面倒くさくないなと思っている方」も少なくない印象を持ちます。
   
 この業界には本当に、この手の「言葉遊び」が、消えては生まれ、生まれては消えるな、と思います。まさに「うたかた」のように。
「わたしの教育論」を背景にして、ある方は、一方の議論に荷担し、ある方は他方の主張をひっさげ、結局、問いの真偽すらつかずに、問いが賞味期限を迎えます。そして、それが繰り返される。
     
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 理論的には・・・「学び」というものは、端的にいってしまえば、「他律」からはじまり、それがフェイドアウトすることで「自律」を獲得していくプロセスです。
    
 つまり、誰かに「育てられる」プロセスがきちんと確保されており、それが徐々にフェイドアウトして「ひとりで大地に立つこと」ができるようになるのです。
   
 よって、「人は育つのか、育てるのか」という問いの結論は、結局「どっちもアリなんじゃね?」ということになります。
 そもそも「人間の成長」という大テーマを「二項対立(あれか、それか)」のフレームワークで考えるべきものではないということですね。シャバにおいて、ひとびとが「大切だ」と感じる疑問は、そもそも「二項対立」では解けないものがほとんどです。ですので、先ほどの問いは、すなわち「愚問」です。
    
 愚問は、頭を悪くします。
  
 また
  
 愚問は、時間を奪います。
   
 たかが問い
 されど問い
  
 変化の激しい社会を活きる、わたしたちには、時間も余裕も、さしてありません。
 考える必要のある問いについてのみ、考えましょう。
   
  ▼
  
 人事の業界は「言葉遊び」に満ちています。
   
 最近だと、、、「ビジョンとパーパスは何が違うのか?」を力説する「パーパスおじさん」が街を闊歩していたりして、まことに香ばしいものです。また「新たな言葉遊び」がはじまったのか、と感じます。
       
 そもそも「ビジョンとパーパスの違い」とか、何とか、おっしゃいますが、「それ、あなたが定義しただけの、違いだよね?どこに理論的根拠があるの?」というツッコミをしたくなる衝動に襲われます。が、僕にも時間がないので、やめておきます。
    
 ともかく・・・そういうときには「大きな地図」に戻ることです。もともとの理論、これまでの歴史に、たち返るとよいのではないか、と思います。そうすると、近視眼的に「些細な違い」に見えてきたものが、別のかたちに見えてくるはずです。
   
 そして、これが「理論」や「歴史」を学ぶ意義でしょう。
   
 愚問は、頭を悪くします。
 愚問は、時間を奪います。
   
「解くべき問い」についてのみ、脳がちぎれるほど、考えましょう。
    
 そして人生はつづく
      
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