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2022.5.18 07:45/ Jun

商品をお客様にお届けするとは「アイデア勝負の短距離走」ではなく「試行錯誤に悶絶する長距離走」である!?

Z世代の、Z世代による、Z世代のための「内定者フォロワークショップ」を開発せよ!
    
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 今年、立教大学中原ゼミの4期生(3年生)は、ダイヤモンド社、ダイヤモンドヒューマンリソース社のみなさまとともに「内定者フォローワークショップ」を共同開発に従事しております。ダイヤモンドグループの皆様には、この場を借りて、心より感謝いたします。学生への丁寧なご指導、フィードバックに心より感謝いたします。
  
 ダイヤモンド社さんは、これまで、長く「フレッシャーズコース」という内定者フォローツールを開発・販売してきました。今回の試みは、フレッシャーズコースをよりパワフルにするワークショップを、「イマドキの学生の目線」から開発し、それを販売するということになります。単なるプロジェクト学習ではなく、リアル商品化を目指します。
  
内定者フォローツール「フレッシャーズコース」
https://jinzai.diamond.ne.jp/tools/fresherscourse/
  
 昨日は、各社の人事担当者の皆様30名ほどにご参加いただき、フィードバックを賜る会を実施させていただきました。新入社員、採用活動など、人事がもっとも忙しい時期に、わたしどものために、お時間をたまわり、本当にありがとうございました。心より感謝いたします。
  
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 学生たちは4つのグループに分かれて、「論理思考」「自己開示」「質問力向上」「強みの意識」など、内定者のうちに強化しておきたい内容をコンパクトに学べるワークショップを開発しました。
  

    
 1度も働いたこともない、会社も見たこともない学生たちが、内定者向けワークショップをつくるというのは、はっきり言いますが「無理ゲー」です。
 しかし、一見、「無理ゲー」に見えるものでも、下からみたり、横からみたり、丹念に調査を重ねていけば、見えてくるものもあります。学生に学んでほしいことは、「無理ゲー」を簡単に諦めない胆力です。

 プロジェクトは何度も何度も暗礁に乗り上げ、企画は「更地(さらち)」に戻りました。つまり、それまで温めてきた企画が「0(ゼロ)=更地」になったということです。
 中原ゼミの学生のなかでは「更地化(さらちか)」という言葉も何度も聞かれました。自分たちの提案が、ほぼゼロから考え直しになることが、連発したということです。商品開発、新事業開発というものは、1000に3つ(1000本アイデアをうって、3つ実になる)。そういうものです。彼らは、試行錯誤に悶絶しておりました。
    
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 内定者ツールというのは「何を学ぶか」も大切ですが、「学びをとおして、いかに同期の縁をつくるか」ということが重要になります。
  
 とりわけ、昨今の企業では、人手不足のなか、採用活動が「大幅難化」しています。採用しても、入社してくれない。採用しても、定着しない。採用がゴールの時代は終わり「採用と育成が連動していくこと」が極めて大きな課題になっています。
  
 そのようななかでは「採用すること」に加えて「引き留めておくこと(retention)」が課題になっておられる企業も多数あると聞きます。
 そして「引き留めること(retention)」のために大切なことは、新卒の場合は、「同期 / 社内の人々ととよい関係」をつくることです。
  
 しかし、ここで注意が必要なのですが、
  
「人間関係」そのものを直接、私たちは、つくりだすことはできません
   
 なぜなら
  
「人間関係」とは、人々の「あいだ」にある、目に見えない、触れることすら難しいものだからです
   
 かくして、わたしたちになし得るのは「ワクワクしながら、他者ともに取り組む活動」をつくることです。
 関係をつくりだすためには、その前に「ともに取り組む活動」が必要になります。
  
 つまり、
  
 人間関係が「良好」になったあとで、「活動」にともに取り組む、ではないのです。
  
 むしろ、
  
「活動」が「先」
「関係」は「後」

 です。
     
 活動に「ともに取り組んだ」から、人間関係が「良好」になる
  
 のです。良質な活動に、ともに従事することができれば、結果として、副次的に「人間関係も良好」になります。
  
 今回、中原ゼミの4年生が取り組んでいるワークショップとは、内定者の方々が、これから「冒険」に出かける仲間と、ともに「取り組むことのできる活動」をデザインしている、ということになります。
  
  ▼
  
 フィードバック会は、みなさまの御協力のもと、無事、終了しました。
  
 指導教員としては、学生たちのワークショップがはじまってしまえば、もう一切、口出し、手出しはできません。どんなミスが起ころうとも、基本的には、自分たちで乗り越えていってもらう必要があります。自分が登壇するよりも、30倍くらい緊張しますし、ハラハラします。学生を信じつつ、何とか無事終えられたことを嬉しく思います。
  
 学生たちは、様々なフィードバックをたまわり、このプロジェクトのクロージング、プロダクトの最終納品に向かっているようです。あともう少しです。しかし、長い。
  
 畢竟、「商品をお客様にお届けする」というのは、本当に大変長い、長いプロセスです。
 お客様に「付加価値」を「お届け」するというのは、ビジネスコンペで行われる「アイデア勝負の短距離走」ではありません。「商品をお届けする」というのは「アイデアをつくり、テストをおこない、試行錯誤し、ラインを動かし、PRを考え、販促を行う長距離走」なのです。
 わたしは、学生のときから、このような活動を通して「生きた経営学」を学んでほしい、と願っています。
「経営学の教科書」に、チョロリンコと「たった一行」で書かれていることが、シャバの世界で、どう実践されているか・・・自らの身体をシャバに投企し、経験学習を積み重ねていただきたいと願います。
  
 ここまできたら、ぜひ、1年にわたるプロジェクトを無事、完走してもらいたいものです。
 きっと、彼らには、それができると、わたしは信じています。

 最後になりますが、昨日のフィードバック会にご参加いただいた企業の人事のみなさま、ダイヤモンドグループの永田正樹さん、広瀬一輝さん、廣畑達也さん、小川敦行さん、濱崎麻美さん、井上直さん、石丸恵美さん、永井敬太さん、渋木結さんに心より感謝いたします。ありがとうございました。

 大丈夫。
 終わったワークショップが、よいワークショップ。
 終わらない旅は、ない。
      
 そして人生はつづく
                

      
 ーーー
          
【アンコンシャスバイアス研修・内製化ツールキット開発!】武蔵野大学・島田徳子先生、ダイヤモンド社の皆さん(広瀬一輝さん、永田正樹さん)との数年にわたる共同研究と、NPO法人日本ブラインドサッカー協会との連携で、スマホで手軽に受検できる「アンコンシャスバイアス測定テスト」と、内製化研修(プレゼンキット)を開発しました!。この問題は、学術的な背景などは、わたしどもが、テスト結果に基づき動画像(ビデオ)で解説させていただきます。ご利用くださいませ! ご自身の組織にもっともフィットしたアンコンシャスバイアス研修をつくることができます。どうぞご利用くださいませ!
      
  
■アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)のWebページはこちら!■
https://jinzai.diamond.ne.jp/ub/unconscious-bias/
     
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新刊「チームワーキング」がオンライン管理職研修になりました。JMAMさんからのリリースです(共同開発をさせていただいた同社の堀尾さん、ありがとうございました。中原は共著者の田中聡さんと監修をつとめさせていただきました)。どうぞご笑覧ください! 
      
リリースしました!「チームワーキング研修版」
https://www.jmam.co.jp/hrm/training/special/teamworking/
     
 書籍「チームワーキング」おかげさまで「重版」を重ねております。応援いただいた皆様に心より感謝いたします。
     
    
 
https://amzn.to/3esCOrW
            
すべてのリーダー、管理職にチームを動かすスキルを!
ニッポンのチームをアップデートせよ!           
       
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 職場診断ツール&ワークショップ「OD-ATRAS(オーディ・アトラス)」が多くの職場で使われはじめています。サーベイはもとより、それをいかに「フィードバック」するかに焦点をあてたツールです。ワークショップも開発しております。どうぞご笑覧くださいませ!
   

職場診断ツール&ワークショップ「OD-ATRAS」 (パーソル総合研究所・中原の共同開発) 
https://rc.persol-group.co.jp/consulting/survey/service/od-atlas.html
   
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【好評発売中】1on1のコツをまとめた映像教材を、中原とPHPさんで共同開発しました。上司用、部下用あります。1on1について「同じイメージ」をもつことができます。どうぞご笑覧くださいませ!
     
上司と部下がペアで進める 1on1 振り返りを成長につなげるプロセス(上司用)
https://www.php.co.jp/dvd/detail.php?code=I1-1-061
  
経験を成長につなげる1on1(部下用)
https://www.php.co.jp/dvd/detail.php?code=I1-1-061   
  
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【祝・eラーニング完成!】中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース完成しました。リーダー・管理職になる前には是非もっていたいフィードバックスキルを、PC、スマホ、タブレット学習可能です。ケースドラマでも学べます! 
     
中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース:Youtubeでデモムービーを公開中!
https://youtu.be/qoDfzysi99w
   
「実践!フィードバック」コース ありのままを共有し、成長・成果につなげる技術(PHP)
https://www.php.co.jp/el/detail.php?code=95123&fbclid=IwAR2he6Z_PTe3YiahcnCv3z9pNRXvrajPwVaRS8LLAYFkbWVH167qHDfYF5Q    
  
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新刊「フィードバック入門:耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術」絶賛発売中、13刷重版出来です!。AMAZON総合13位、1位(マネジメント・人材管理カテゴリー、リーダーシップカテゴリー)を記録!年上の部下、若手のトンガリボーイ、トンガリガール。職場には、多様な人々が集っています。難易度の高い部下育成に悩む管理職向けの新書です。どうぞご笑覧くださいませ。スピンアウト企画にDVD教材「フィードバック入門」、研修、通信教育もあります。こちらもどうぞご笑覧ください。
     

   
『フィードバック入門』スピンアウト企画
https://www.php.co.jp/seminar/feedback/

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【泣くな!新米管理職!】
  
おかげさまで10刷重版出来。「駆け出しマネジャーの成長論」は、「実務担当者」から「新任管理職」への役割移行をいかに進めるかを論じた本です。「脱線」をふせぎ、成果をだすためには「7つの課題」への挑戦が必要であることを解説しています!全国の管理職研修で用いられています。どうぞご笑覧くださいませ!
  

  
パーソル総合研究所と中原は、このテキストをもとにした「マネジャーになる研修」を開発しました。種部吉泰さんとディスカッションは、非常に楽しいものでした。このコースについても、どうぞご覧くださいませ!
  
「マネジャーになる」 研修:プレイヤーからマネジャーへの移行期支援プログラム
https://rc.persol-group.co.jp/seminar/become-a-manager.html
   
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