NAKAHARA-LAB.net

2022.5.17 08:01/ Jun

「たくさん読む」から「引き算して読む」!?

「たくさん読む」から「引き算して読む」!?
  
  ・
  ・
  ・
    
 世間にはとてつもない読書家もおられるので、あまり大きな口をたたけませんが、僕もどちらかというと「多読」な方だったのではないか、と思います。
   
 最近は「本は読まない、論文(ペーパー)しか読まない」という研究者の方もいらっしゃるようですが、わたしの時代は、指導教員などから、とにもかくにも「多読」を進められました。
   
「知の体幹を太くしろ! それには思想を読むことだ」
「先行研究を超えたいのなら、前の世代よりも本を読め」
   
 かくして、年間にたくさんの本を買い、それを片っ端から読んできました。
 おそらく最盛期の蔵書は、一般的な研究室サイズの両側の棚に本を並べて、研究室5個分ほどはあったのではないか、と思います(スペースを借りていました)。自宅にも、そこらじゅうに本が積まれていました。
      
 研究生活20年は、多読の毎日でした。
       
  ▼
     
 ところが・・・45歳を超える頃になって、すこしずつ「考え」が変わってきました。
(ここ数年は、体調の変化もあり、わたしに多くの転機が訪れています)
    
 20年、あれだけ「多読」を行ってきたのに、「たくさん読む」のは「もう卒業してもいいかな」と思えるようになってきたのです。
 むしろ、これからの自分は「引き算して読む」ということに取り組んではどうだろうか、と思うようになりました。
     
 ここで「引き算して読む」というのは、たくさんの本のなかで、時代遅れになっているもの、今の自分の考えにはあわないもの、すでに自分のなかに「内化(input)」されてしまったものを、少しずつ「整理」して「捨てていく」ということです。
  
 端的にいえば、本(知)の断捨離。
  
 コロナ禍もあり、研究室にいくことはめっきり減りましたが、出かけたときには、帰り際1時間くらいかけて、蔵書を見渡し、1冊ずつ手に取り、その内容を一寸考え、そのなかでもう「必要がないな」と思ったものを、整理しはじめています。
(研究室に、もう、これ以上、本が入らない! 新たな本を購入するためには、既存の本を整理しなければならない、という物理的事情もあります)
     
 これまでの僕は、
      
 たくさん読んで、読んで、読みまくることで、時代についていこうとしました。
 ある程度は、それも奏功していったところもあるのかな、とも思います。
 僕が「研究者」として「駆け出し」の頃は、おそらく、そうした「知の発揮の仕方」が、自分のやりたいことにあっていたのだ、と思います。かくして研究領域は、広がり、自分の著書も増えました。
          
 しかし、このままではやっていけない、とも思います。
 むしろ、これからは
         
 引き算して、引き算して、引き算して、それでも、自分に残るものは何か、自分がやりたいことは何か、を考えていきたいと考えているのです。
         
 このまま「たくさん読み続けた」としても、今年47歳になる僕の「今後のキャリア」は描けない。僕が取り組みたい「作品」や「表現」が、そこから生み出せるようとは思えなくなっているのです。
 人生の後半のキャリアは、徹底的に「引き算」をして、それでも「残るもの」を表現できないだろうか、と考えるようになりました。
    
 かくして、本は、相変わらず購入もしております。が、減る量の方が多い。なので、蔵書は少しずつ減って行っています。かつて研究部門を閉じた際に、相当数、寄付を行ったので、おそらく最盛期の3分の1ほどになっているのではないでしょうか。
      
  ▼
   
 今日は「読書のこと」についてかきました。
 自宅や研究室の蔵書を整理しながら、最近、はたと考えます。
   
 このまま「引き算」をしていって、最後まで残る本って、どんな本なんだろう?
   
 自分の著書は、後半部まで残るものの、最終的には整理されるんだろうな(笑)。だって、それらは、僕の頭のなかに「すべて入っている」ものだから。
  
 きっと最後は、シンプルな哲学書が数冊が残るんじゃなかろうか。
 いやいや、もしかすると、最後には、一冊の本も残らないのかも。
 自分の「頭」だけが残る。そして、やがて、頭も回らなくなる、笑。
 でも、それでいいんじゃないか、それが人生だ、とも思います。
  
 そのときまで、おそらく、まだまだ時間はあるのではないかと思います。
 新たな表現を探して、引き算しつづけようと思っています。
  
 そして人生はつづく
     
 ーーー
  
付記
  
14期にわたって主宰させていただいているコース、慶應丸の内シティキャンパス「ラーニングイノベーション論」が、今年もはじまりました。今年も満員御礼33名(超過しております)。ご参加いただいたみなさま、事務局の内田さん、保谷さんに心より感謝いたします。
  
ラーニングイノベーション論
https://www.keiomcc.com/program/lin22a/
  
昨日は、松尾睦先生(北海道大学)がご登壇くださり、経験学習、アンラーニングなどについてレクチャーをしてくださいました。ご多用中、松尾先生には、この場を借りて御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
  
松尾先生のアンラーニングのお話を伺いながら、それを自分にあてはめてかいたのが、今日のブログ記事です、笑。それが「引き算して読む」。松尾先生、僕もアンラーニングが必要なようです、笑。
  
そして人生はつづく
 
 ーーー
   

  
新刊「M&A後の組織・職場づくり入門」発売中です。AMAZON「企業再生」カテゴリー1位を記録しました(感謝です!)。
  
これまで税務・法律の観点からしか語られなかった「企業合併(M&A)」の問題に対して、ひとと組織(人材開発・組織開発)の観点からアプローチし、シナジーを生み出す可能性を考えます。
  
M&Aという「巻き込まれ事故」に関わってしまった経営企画・人事・現場の管理者・リーダーの皆様にぜひお読み意いただきたい一冊です!
  

購入はこちら!「M&A後の組織・職場づくり入門」
https://amzn.to/3v0P0bE
     
 ーーー
          
【アンコンシャスバイアス研修・内製化ツールキット開発!】武蔵野大学・島田徳子先生、ダイヤモンド社の皆さん(広瀬一輝さん、永田正樹さん)との数年にわたる共同研究と、NPO法人日本ブラインドサッカー協会との連携で、スマホで手軽に受検できる「アンコンシャスバイアス測定テスト」と、内製化研修(プレゼンキット)を開発しました!。この問題は、学術的な背景などは、わたしどもが、テスト結果に基づき動画像(ビデオ)で解説させていただきます。ご利用くださいませ! ご自身の組織にもっともフィットしたアンコンシャスバイアス研修をつくることができます。どうぞご利用くださいませ!
      
  
■アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)のWebページはこちら!■
https://jinzai.diamond.ne.jp/ub/unconscious-bias/
     
 ーーー
            
新刊「チームワーキング」がオンライン管理職研修になりました。JMAMさんからのリリースです(共同開発をさせていただいた同社の堀尾さん、ありがとうございました。中原は共著者の田中聡さんと監修をつとめさせていただきました)。どうぞご笑覧ください! 
      
リリースしました!「チームワーキング研修版」
https://www.jmam.co.jp/hrm/training/special/teamworking/
     
 書籍「チームワーキング」おかげさまで「重版」を重ねております。応援いただいた皆様に心より感謝いたします。
     
    
 
https://amzn.to/3esCOrW
            
すべてのリーダー、管理職にチームを動かすスキルを!
ニッポンのチームをアップデートせよ!           
       
 ーーー
    
 職場診断ツール&ワークショップ「OD-ATRAS(オーディ・アトラス)」が多くの職場で使われはじめています。サーベイはもとより、それをいかに「フィードバック」するかに焦点をあてたツールです。ワークショップも開発しております。どうぞご笑覧くださいませ!
   

職場診断ツール&ワークショップ「OD-ATRAS」 (パーソル総合研究所・中原の共同開発) 
https://rc.persol-group.co.jp/consulting/survey/service/od-atlas.html
   
  ーーー
       
【好評発売中】1on1のコツをまとめた映像教材を、中原とPHPさんで共同開発しました。上司用、部下用あります。1on1について「同じイメージ」をもつことができます。どうぞご笑覧くださいませ!
     
上司と部下がペアで進める 1on1 振り返りを成長につなげるプロセス(上司用)
https://www.php.co.jp/dvd/detail.php?code=I1-1-061
  
経験を成長につなげる1on1(部下用)
https://www.php.co.jp/dvd/detail.php?code=I1-1-061   
  
  ーーー
   
【祝・eラーニング完成!】中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース完成しました。リーダー・管理職になる前には是非もっていたいフィードバックスキルを、PC、スマホ、タブレット学習可能です。ケースドラマでも学べます! 
     
中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース:Youtubeでデモムービーを公開中!
https://youtu.be/qoDfzysi99w
   
「実践!フィードバック」コース ありのままを共有し、成長・成果につなげる技術(PHP)
https://www.php.co.jp/el/detail.php?code=95123&fbclid=IwAR2he6Z_PTe3YiahcnCv3z9pNRXvrajPwVaRS8LLAYFkbWVH167qHDfYF5Q    
  
 ーーー

新刊「フィードバック入門:耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術」絶賛発売中、13刷重版出来です!。AMAZON総合13位、1位(マネジメント・人材管理カテゴリー、リーダーシップカテゴリー)を記録!年上の部下、若手のトンガリボーイ、トンガリガール。職場には、多様な人々が集っています。難易度の高い部下育成に悩む管理職向けの新書です。どうぞご笑覧くださいませ。スピンアウト企画にDVD教材「フィードバック入門」、研修、通信教育もあります。こちらもどうぞご笑覧ください。
     

   
『フィードバック入門』スピンアウト企画
https://www.php.co.jp/seminar/feedback/

 ーーー
  
【泣くな!新米管理職!】
  
おかげさまで10刷重版出来。「駆け出しマネジャーの成長論」は、「実務担当者」から「新任管理職」への役割移行をいかに進めるかを論じた本です。「脱線」をふせぎ、成果をだすためには「7つの課題」への挑戦が必要であることを解説しています!全国の管理職研修で用いられています。どうぞご笑覧くださいませ!
  

  
パーソル総合研究所と中原は、このテキストをもとにした「マネジャーになる研修」を開発しました。種部吉泰さんとディスカッションは、非常に楽しいものでした。このコースについても、どうぞご覧くださいませ!
  
「マネジャーになる」 研修:プレイヤーからマネジャーへの移行期支援プログラム
https://rc.persol-group.co.jp/seminar/become-a-manager.html
   
 ーーー 
    
【注目!:中原研究室記事のブログを好評配信中です!】
中原研究室のTwitterを運用しています。すでに約37000名の方々にご登録いただいております。Twitterでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記からフォローをお願いいたします。
   
中原淳研究室 Twitter(@nakaharajun)
https://twitter.com/nakaharajun   

ブログ一覧に戻る

最新の記事

2024.3.29 08:06/ Jun

【参加費無料】リーダー育英塾2024募集開始!:特色ある学校づくり+持続可能な学校づくりを進めたいあなたへ!

ひとを褒める「語彙(ボキャブラリー)」を増やす!?

2024.3.22 08:31/ Jun

ひとを褒める「語彙(ボキャブラリー)」を増やす!?

20代ー30代のビジネスパーソンが陥りやすい「学びの死の谷(デスバレー)」!?

2024.3.21 08:12/ Jun

20代ー30代のビジネスパーソンが陥りやすい「学びの死の谷(デスバレー)」!?

2024.3.19 08:33/ Jun

私たちには見えている「将来の光景(vision)」!?:心ゆくまで知的に暴れてください!

なぜ?(why)と聞くより、How と What を聞け!:学生面談・部下面談をより有意義にするためのコツ!?

2024.3.15 10:38/ Jun

なぜ?(why)と聞くより、How と What を聞け!:学生面談・部下面談をより有意義にするためのコツ!?