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2022.4.19 08:12/ Jun

あなたの周囲には「過去を手放すことができない難治性マネジャー」はいらっしゃいませんか?

「獲得すること」が苦手なのではない
    「手放すこと」ができないのである
    
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 1on1(ワン・オー・ワン:上司と部下のあいだの定期的な振り返り面談)などを、各社で推進する施策の導入、これまで、いくつか関らせていただきました。すぐに、そうした制度が定着する企業もあれば、そうでない企業もある。企業といっても、十把一絡げにまとめちゃイカンなぁ、と思います。
    
 否。この問題、正しく言えば、「ひとによる」というのがより正確でしょう。すぐに部下との面談を改善し、信頼を勝ち得る管理職もいる。
 しかし、一方、かたくなに拒み続け、何事もなかったように、これまでどおりのやり方をする管理職もいる。
どんだけ働きかけても、動かない。後者のような管理職を、わたしは、
  
「難治性マネジャー」
  
 と呼んでいます。明らかに、何かを「こじらせている」(トホホ)。
    
 押しても、ひいても、テコでも、重機でも動かない。かたくなに、かたくなに、何かを守り続けている。「変えることができない=治療が難しい」・・・だから難治性マネジャー。
 これで成果を出してくれていれば、経営もヤキモキしないのですけれども、それが、実は、そうでないケースも少なくない。職場でメンタルが発生したり、チームの離職がとまらなかったりするので、ハラハラしている、というのが現実なのかな、と思います。もちろん、高い成果を出しておられる方もいますので、一概には言えません。
  
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 こうした場合、経験上、僕には、「確信」に近いことがあります。
   
 それは、
   
 難治性マネジャーが「変われない」のは「知識・スキルを獲得できない」からでは「ない」
   
 ということです。むしろ、頭がいいので、獲得することに問題はないケースが少なくない。
   
 万が一、知識・スキルが足りない、ということであれば、研修をやって、トレーニング機会を用意して、上げ膳・据え膳で、何かを「提供」「伝達」し、転移の機会をあげれば、そこそこのことは、できるようになる。しかし、実際ではそうではない。
   
 知識・スキルが「獲得」できないから、1on1ができないのではない
   
 のです。
   
 むしろ話は「逆」です。
    
 苦手なのは「獲得すること」ではなく「手放すこと」なのです。
   
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 ■昭和の時代の働き方、考え方を「手放せない」
  時計の針がとまっている  
   
 ■かつての上司から受けてきた薫陶を「手放せない」
  何も考えず、そのまま再生産しちゃう
     
 ■若い頃に「他人からされた、いやなこと」を「手放せない」
  そのまま世代継承しちゃう
    
 ■今の働き方に「最適化」されている
  自分の居場所や家族との関係を「手放せない」
    
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 難治性マネジャーとも形容できる方と、お話をさせていただくとき、強く感じるのは、「手放すこと」に対する本能的怖さと、かたくなさ、です。
 だから、そういうときに、いくら「獲得系の施策」を打っても、うまくいきません。なぜなら「手放せていない」ので、いくら知識やら、スキルやらを「注入」しようとしても、「それ以上、入らない」のです。
   
 ならばどうするのか。
 こういうケースの場合、人材開発にできることは、1)「評価の物差しを変えること」、2)「鏡を提供すること」、ないしは、3)「寄り添って聞き取ること」くらいです。
  
 まず1)「評価の物差しを変える」というのは、そのまんまです。評価とは、もともと「望ましい方向」を示すことです。この「物差し」の基準や方向性を変えることで、望ましい行動をとってもらうというのが一番重要です。
  
 二番目の2)「鏡を提供すること」というのは、いわゆる360度フィードバックなどの機会ですね。自分がどのように見えて、自分の職場やチームが、どの程度、ズレているのかを「鏡」を提供することで「見てもらう」。
    
 最後は、3)1対1でコーチングを提供し、目標設定をして、わずかな「変化」を見逃さず、伸ばしていくお手伝いをすることかな、と思います。
  
 いずれにしても、めちゃんこ「コストがかかります」
 最終的には、どこまで「変化」に期待して、どこまでやるのか、という話になるのだと思います。 
  
 そして、こうした場合の
  
 大人の学び(変化)は「痛み」が伴う
  
 のです。トホホ。それにかかわるひとも、くたびれます。
    
  ▼
  
 今日は「難治性マネジャー」のお話をさせていただきました。
   
 端的にいうと・・・
  
 獲得することは簡単だが、手放すことって難しい
   
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 あなたの周囲には「過去を手放すことができない難治性マネジャー」はいらっしゃいませんか?
  
 そして人生はつづく
   
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