NAKAHARA-LAB.net

2021.12.22 07:38/ Jun

ロールモデルは「しくじり」を語るのがよいのか、それとも「キラキラ」を語るとよいのか?

ロールモデルは「しくじり(苦闘)」を語るのがよいのか、それとも「キラキラ(活躍)」を語るとよいのか?
   
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 女性活躍推進の世界や、ダイバーシティ推進の世界では、よく「ロールモデル」という言葉がとりあげられます。
    
 曰く、
    
 会社にはロールモデルとなる人材がいないから、女性が管理職になりたがらない
   
 会社にはロールモデルが不足しているから、女性が長く働こうとしない
     
 など。
    
 わたしは、このセンテンスそのものの真偽から、「本当なのか」を考えなくてはいけない、と思っているひとりですが、今日は、それは問いますまい(笑)。詳細は下記をご覧ください。
       
人事業界の定番「ロールモデルの社員への提示」は本当にうまくいくのか?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/7831
     
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 巷では「ロールモデル」としてふさわしい先輩社員を会社が指定し、その活躍ぶりをフィーチャーし、若年層の社員に呈示したりします。これがよく行われる「女性活躍推進」のリアルです。
       
 しかし、ここで課題になってくるのは、ロールモデルが社員に何を語るのか、ということです。ロールモデルは、自分の「何」を見せていくのがよいのでしょうか?
     
 端的にいえば、ロールモデルは「キラキラした活躍」を見せればいいのでしょうか? それとも、むしろ「しくじり」を見せればいいのでしょうか? 別の言葉でいえば、ロールモデルの「何」から、ひとは学ぶのでしょうか。
    
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 せんだって、これに「ゆるく関連する研究」を目にしました(Xu Du et al 2001)。
  
Reading Struggle Stories of Role Models Can Improve Students’ Growth Mindsets 
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2021.747039/full
    
 この研究では、多くの学生たちを2つの群にわけ、1)ロールモデルの「苦闘の物語(≒しくじり)」を読ませるひとびとと、2)「達成の物語(キラキラ)」を割り当て読書させる群にわけます。そのうえで、彼らが読書をする「前後」で、彼ら自身のマインドセットがどのように変わるかを測定しました。
     
 実験の結果、学生の「成長」にまつわるマインドセットは、「達成の物語(キラキラ)」を読むよりも「苦闘の物語(≒しくじり)」を読むことのほうが高まることがわかりました。
(論文には、もうひとつの実験がありますが、それは省略)
   
 面白いですね
  
 先ほどの問いに戻るならば、
  
 ロールモデルは「キラキラした活躍」を嬉々として語るよりも、「しくじり」や苦闘をかたったほうがいい
  
 ということになりますね。
  
 でも、ともすればシャバの世界では、
  
 キラキラ・ロールモデルが、自分の活躍をキラキラ語る、なんてことが行われてそうですけれども。
 
 あんな風にはなれない、よなー、と社員、ドン引き、みたいな。
     
  ▼
   
 今日は、ロールモデルからの学びについて書きました。
   
 みなさんは、ロールモデルの「何」から、何を学んできましたか?
  
 そして人生はつづく

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自身の強みと職場での関係を定期的に把握できるレポーティング機能も追加!
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