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2021.12.14 08:06/ Jun

コンサルタントとクライアントは「出会いがすべて」である!? : プロジェクトが進んだあとで「アチャパー状態」に陥らないためには!?

 人材開発と組織開発のプロフェッショナルを養成する立教大学大学院 経営学研究科では、学生が自らコンサルタントになって、クライアントにかかわるアクションラーニングが、カリキュラムの随所に盛り込まれています。
  

  
立教大学大学院 経営学研究科 リーダーシップ開発コース(3期生募集中!、1月願書提出、2月に入試です!)
https://ldc.rikkyo.ac.jp/news/
  
 この大学院のカリキュラムの最大の特徴は
  
「プロジェクトにはじまり、プロジェクトに終わること」

 です。
  
 そうした数々のプロジェクトを通して、人と組織にまつわるコンサルタント(わたしたちは、アカデミック・プラクティショナーと呼んでいます)を養成するのが、この大学院の使命です。大学院では、学問知(アカデミックな知)についてはもちろんのこと、コンサルティングの臨床知を徹底的に経験から学びます。この学問知と臨床知を融合させ、企業の人事、HRBP(事業に貢献する人事)、人事サービス・人材開発・組織開発の専門家などを輩出することが、この大学院の目的です。
  
  ▼
  
 さて、コンサルタントとクライアントの間には、お互いに対する「心の揺れ」が存在することは、よく知られています。
 大学院では、こうした実践知についても学びますが、今日は、MITのエドガー・シャインの「プロセスコンサルテーション」の論考の中から、この問題を考えてみましょう。
  

  
 まずは、コンサルティングプロセスにおいて、クライアントが陥りやすい心的状態からです。
     
【クライアントの心理状態】
    
1.コンサルタントに対する「怒り・自己防衛」
「あなたが指摘するそのことなら、わたしも考えたことがありますが、うまくいきません」
「事態はもっと複雑です」
    
2.安堵
「この問題を、あなたと共有できてうれしいです」
  
3.依存・隷属
「いま、わたしは何をするべきでしょうか?教えてください。」
  
3.感情転移
「無意識」のうちに、自分が知っている誰かに、コンサルタントの姿を重ね合わせる
  
 ・
 ・
 ・
  
 どれも、あるあるだよな、と思ってしまいます。特にもっとも頻度が高いのは、どれでしょうか。個人的には1か3かなと思います。
  
 対して、クライアントに対するコンサルタント側の心的状態には、いったい、どのようなものがあるのでしょうか。 
  
 ・
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 ・
  
【コンサルタントの心的状態】
  
1.権力・権威
「簡単なことです、こうすればいいんですよ」
  
2.頼りにされたことに過剰反応
「かわいそうに、本当にお気の毒ですね」
  
3.圧力
「わたしの話をとにかく聞きなさい。わたしを信じてやりなさい」
  
4.関係拒絶
「わたしはお役に立てません」
  
5.感情転移
「無意識」のうちに自分が知っている誰かに、クライアントの姿を重ね合わせる
  
 ・
 ・
 ・
  
 こちらも「あるある」の事例だなと思ってしまいます。とりわけ、よく起こりえるのは、1と3でしょうか。
  
 以上に見るように、クライアント側にも、コンサルタント側にも、ついつい陥ってしまいがちな心的状態がありえます。
 プロフェッショナルであるコンサルタント側は、それについては、よく理解した上で、クライアントに関わる必要があります。
  
 個人的に、この話をはちゃめちゃ複雑にしてしまうのは、実は、「感情転移」だと思っています。
  
 クライアント側、コンサルタント側、双方に「自分が知っている誰か」に相手を重ね合わせて、勝手に妄想し、「相手がこんな役割を果たしてくれるに違いない」と思い込んでしまうこと
  
 がよく起こります。
  
 相手は、ちょめちょめをやってくれるに違いない
 なぜなら、相手は・・・・のようなものなのだから
  
 相手は、ほげほげに振る舞ってくれるに違いない
 なぜなら、相手は・・・・のようなものなのだから
  
 という風に、相手を「誰か」にたとえて理解して、妄想を膨らませるのです。
  
「クライアントとは何か?」「コンサルタントとは何か?」なんてものは、どこかに役割定義が書いてあるわけではありません。
 ですので、勝手に、相手の役割を自らつくりだしてしまうのです。そして、それが現実とズレていくときに、勝手に怒りを感じてしまう。
    
 これを防止するためには、双方が「はじめて出会った」ときが極めて重要です。
 いったい、相手が何をおこない、相手には何をどこまで期待できるのか、期待値調整と役割分担を行っておくことです。
   
 クライアントとコンサルタントは「出会い」がすべて!
 最初にコケれば、みな、コケる。
    
 そして人生はつづく
   

       
 ーーー    
       
【立教大学大学院で大学院生として学びませんか?】
 立教大学大学院 経営学研究科 リーダーシップ開発コースでは、経営学を基盤にしながら、人材開発・組織開発・リーダーシップ開発を実践できるアカデミックプラクティショナーを養成しています。別名、「ひとづくり・組織づくりの大学院」です。
 授業は「フルオンライン」。授業は金曜日夜と土曜日だけ行われており、2年間で、修士(経営学)が取得できます。
 今年は、3期生の募集になります!ご興味がおありの方は、ぜひ、お申し込みくださいませ!
   

      
 なお、在学生などの声、リーダーシップ開発コースでの授業の様子について知りたい方は、ぜひ、下記のニュース欄をお読みくださいませ!
  
ひとづくり・組織づくりの大学院での「学び」とは?
https://ldc.rikkyo.ac.jp/news/

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