NAKAHARA-LAB.net

2021.10.11 08:11/ Jun

「別れ上手なコンサルタント」と「ズルズルズブズブ・コンサルタント」の違いとは何か?

「別れ上手なコンサルタント」と「ズルズルズブズブ・コンサルタント」の違いとは何か?
   
  ・
  ・
  ・
  
 クライアントとコンサルタントは「いつか別れる運命」にあります。
   
クライアントの問題解決が終われば、コンサルタントは不要になります。さらにいうと、クライアントとコンサルタントが「ともに居続けるため」にはお金が必要になります。だから、クライアントとコンサルタントは「必ず、いつかは、別れる運命」にあります。コンサルティングは「結婚」ではありません。必ず別れる運命こそがコンサルティングです。
   
 別の言葉でいえば、
     
 コンサルタントとは「別れ」に向かって仕事をする存在である
  
 ともいえます。
  
 かくして大問題は、この「別れ方」です。
 コンサルタントのなかには「別れ上手なコンサルタント」と「ズルズルズブズブ・コンサルタント」がいます。
  
 別れ上手なコンサルタントは、支援(Support)を行いながらも、支援解除するタイミング(Fading out)を常に意識しています。しかし、コンサルタントがいなくなってしまったあとで、組織がまったく機能不全に陥ってしまっては意味がありません。
  
 ですので、別れ上手なコンサルタントは、プロジェクトのかなり早い段階から「Exit前略をえがく=出口を描く」ものです。そのうえで、組織の「中のひと」でも、その試みを回していけるように、環境整備をしていきます。
  
 一般に環境整備とは、下記の4点、ないしは、その複合体です。
  
 1.マニュアルを残す(文書化して、知恵を残す)
 2.ひとを残す(中のひとを育て、そのひとがやれるようにする)
 3.仕組みを残す(システム・テンプレートなどを残す)
 4.制度を残す(制度をくみ上げておいて、自動的に回るようにする)
 5.理念・戦略を残す(経営計画・ミッションなどを書き換える)
  
 そして、別れるときは、すっぱり別れる。
 未練がましく、後ろを振りかえらない。
  
 これが「別れ上手なコンサルタント」です。
  
  ▼
  
 これに対して「別れることがヘタなコンサルタント」を仮に「ズルズルズブズブ・コンサルタント」とよびます。
  
 こうしたコンサルタントは、支援(Support)を全力で行うかもしれませんが、あまりFade outやExit戦略を考えることができません。
    
 また耳元に甘い囁きも聞こえてきます。
  
「あの、クライアントにしがみついちゃえよ。囲んじゃえよ。そうすれば、またフィーが自動的に入ってくるぜ、稼げるぜ。いいんだよ。自律なんてさせなくても。コンサルタントがいなきゃ、回らないように、がんじがらめにしておけばいいんだよ」
 
 これで「ズルズルズブズブ・コンサルタント」のいっちょあがりです。クライアントととの関係を「ズルズル」と引き延ばしていきます。
 さらに、これにクライアントが加担し「共犯」になっていくパターンがドサイアクパターンです。
  
 今、仮に、クライアントのなかに、あまり頭が回らず、思考停止して、さぼりたい担当者がいるとします。彼 / 彼女は、ようは自分の頭で考えることを放棄しているので、ひとりになるよりも、コンサルタントが居てくれた方が、楽で、心強いのです。なーに、高いフィーだって、自腹なわけではありません。どうせ、会社が払うのですから。
  
 かくして「思考停止しているクライアント」と「ズルズルズブズブ・コンサルタント」が「共犯関係」に陥ります。ズルズルと関係が続くどころか、ズブズブの共犯関係が続くということです。
  
 そうなると、、、会社のなから、お金だけがでていくことになりますね。
  
 ▼
  
 今日は、クライアントと対峙するコンサルタントのあり方、とりわけ「別れ方」に焦点をあてました。わたしの大学院授業「人材開発・組織開発論2」の内容の一部です。
  
 「人材開発・組織開発論2」の授業では、
  
(1)大学院生のみなさんがチームを構成し
(2)自らクライアント組織を探し
(3)人材開発・組織開発のコンサルティングを行い
(4)その成果を評価する
  
 という一連のプロセスを回します。
   
 別れ方はとりわけ重要なプロセスですので、授業の後段で扱おうと思います。
   
 先だっての授業で、現役バリバリのコンサルタントの大学院生の方(Iさん)が、こんなひとことをつぶやいておられました。
  
「別れるときは、こちらからクライアントに切り出したいですね。別れを告げられるのは辛いです」
   
 聡明なIさんらしい、非常に含蓄あふれる言葉だと思いました(感謝です)。ま、そだよね。自分で別れをデザインして、自分から別れを切り出す方が、痛みはすくない。相手から、三行半を突きつけられる方が、よっぽど辛い。
    
  ・
  ・
  ・
      
 あなたの近くのコンサルタントは「別れ上手なコンサルタント」なコンサルタントですか?
    
 あなたの近くには「ズルズルズブズブコンサルタント」と共犯関係を結んでいる「思考停止・担当者」はいませんか?
   
   ーーー
      
【参加者募集中!】
    
 
  
全国の教育現場で、未来の教育・学校づくりに邁進なさっているみなさまへ! 10/23(土)14:00-17:00「リーダー育英塾カンファレンス」「コロナ禍の中で求められるリーダーシップ」(Zoom)を開催させていただきます(公益財団法人・電通育英会主催 )。コロナ禍に負けず、奮闘する教育現場の様子をご覧ください。事前動画ビデオも配信されます。
  
・事前動画配信による講演
 「トランジション研究の新たな展開」(溝上)
 「希望をもって組織を動かす」(中原)
  
・当日
 対  談:溝上慎一・中原淳(立教大学経営学部 教授)
  
・リーダー育英塾修了生 事例報告:
 丸橋 覚(群馬県立太田高等学校 校長)「新学習指導要領の3本柱を実現する高校づくり」
 林 良知(立教大学 キャリアセンター)「権限によらないリーダーシップによる大学キャリア支援改革」
   
申し込みページはこちらです!
https://www.dentsu-ikueikai.or.jp/transmission/leaderconf/
  
  ーーー
                 
PHPカンファレンス「1on1の失敗学2021」に登壇させていただくことになりました。上司ー部下間のコミュニケーションの質を高め、人材開発を一歩前に進めるヒントを得る機会として、お役立てください。2021年10月19日です。参加費無料です。
           

             
「1on1の失敗学 2021」オンライン開催・参加無料
https://hrd.php.co.jp/management/casestudy/PHPconference202110.php
  
  ーーー
        
新刊「チームワーキング」おかげさまで「重版」を重ねております。応援いただいた皆様に心より感謝いたします。さらに、新刊「チームワーキング」がオンライン管理職研修になりました。JMAMさんからのリリースです(共同開発をさせていただいた同社の堀尾さん、ありがとうございました。中原は共著者の田中聡さんと監修をつとめさせていただきました)。どうぞご笑覧ください! 
   
    
 
https://amzn.to/3esCOrW
    
新リリースしました! 「チームワーキング研修版」
https://www.jmam.co.jp/hrm/course/training/twk.html
          
すべてのリーダー、管理職にチームを動かすスキルを!
ニッポンのチームをアップデートせよ!           
     
 ーーー    
       
【立教大学大学院で大学院生として学びませんか?】
 立教大学大学院 経営学研究科 リーダーシップ開発コースでは、経営学を基盤にしながら、人材開発・組織開発・リーダーシップ開発を実践できるアカデミックプラクティショナーを養成しています。別名、「ひとづくり・組織づくりの大学院」です。
 授業は「フルオンライン」。授業は金曜日夜と土曜日だけ行われており、2年間で、修士(経営学)が取得できます。
   
 リーダーシップ開発コースの入試説明会を2021年9月18日(土曜)午前中に開催させていただきます。来年2月の入試・コースのご説明をさせていただきます!3期生の募集になります!ご興味がおありの方は、ぜひ、お申し込みくださいませ!
   

   
【お申し込みはこちら!】2021年9月 リーダーシップ開発コース説明会開催・申込み方法について
https://ldc.rikkyo.ac.jp/news/2021/20210730/
   
 なお、在学生などの声、リーダーシップ開発コースでの授業の様子について知りたい方は、ぜひ、下記のニュース欄をお読みくださいませ!
  
ひとづくり・組織づくりの大学院での「学び」とは?
https://ldc.rikkyo.ac.jp/news/
   
  ーーー
     
新刊「働くみんなの必修講義 転職学」好評発売中です!どうかご高覧くださいませ! ひとが会社を辞めなくなるのはなぜか(それを防止するためにはどうすればいいのか)?、どのような転職活動を行えば、納得のいく転職が可能になるのか、そして、どのように新たな組織に自ら適応するのか。転職にまつわる、これらの「問い」に対して、1万2000人の大調査を通して答えをだしました。パーソル総合研究所、パーソルキャリア、中原の共同研究成果です。ご高覧くださいませ!
   

   
  ーーー  
       
拙著「経営学習論」の増補改訂版が、東京大学出版会より刊行されました。新たに「リーダーシップ開発」の章を追加し、カバーの装いも変わっています。人材開発の基礎的な理論を体系的に学べる一冊です。どうぞご高覧くださいませ!
      

    

      
  ーーー
     
【好評発売中】1on1の失敗・成功ケースをまとめ、映像教材を中原とPHP研究所さんとで開発しました。失敗しない1on1について、具体的なイメージをもって学ぶことができます。どうぞご笑覧くださいませ!
     
上司と部下がペアで進める 1on1 振り返りを成長につなげるプロセス
https://www.php.co.jp/dvd/detail.php?code=I1-1-061
   
  ーーー
   
【祝・eラーニング完成!】中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース完成しました。リーダー・管理職になる前には是非もっていたいフィードバックスキルを、PC、スマホ、タブレット学習可能です。ケースドラマでも学べます! 
     
中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース:Youtubeでデモムービーを公開中!
https://youtu.be/qoDfzysi99w
   
「実践!フィードバック」コース ありのままを共有し、成長・成果につなげる技術(PHP)
https://www.php.co.jp/el/detail.php?code=95123&fbclid=IwAR2he6Z_PTe3YiahcnCv3z9pNRXvrajPwVaRS8LLAYFkbWVH167qHDfYF5Q    
  
 ーーー
   

     
「組織開発の探究」HRアワード2019書籍部門・最優秀賞を獲得させていただきました。「よき人材開発は組織開発とともにある」「よき組織開発は人材開発とともにある」・・・組織開発と人材開発の「未来」を学ぶことができます。理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
    

     
 ーーー
      
拙著「職場学習論」(東京大学出版会)のカバー・装いが10年ぶりに変わりました(内容は変わっていませんのであしからず!)。ひとは、職場でどのようにして学ぶのか、というテーマを考察しています。どうぞご高欄くださいませ!
    

    

      
 ーーー
    
新刊「中小企業の人材開発」(中原淳・保田江美著、東京大学出版会、2021年)マニアックなガチ・学術研究書なのですが、発売10日で重版出来となりました。ありがとうございます。中小企業の人材開発メカニズムに接近を試みています。どうかご笑覧くださいませ!
  

   
 ーーー
        
中原研究室では、一般社団法人ピアトラストさんとの共同研究で、相互称賛アプリ『Peer-Trust(ピア・トラスト)』の研究を行っています。
       
相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が導入された職場では、職場のメンバー同士が、お互いの日々の仕事を観察し、そこにキラリと光るものがあったときに「称賛カード」というものをメッセージとともに送りあいます。1カ月間は無料トライアルだそうです。ご興味があえば、ぜひ、ご利用くださいませ。
     
強みの自己認知と意欲を高める『ポジティブ1on1』
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000059483.html
   
仲間から実際に認められた行動のデータから、自身の強みと職場での関係を定期的に把握できるレポーティング機能も追加されました。職場における相互称賛を、自分の強みの発見と目標設定に役立てられます。
 
自身の強みと職場での関係を定期的に把握できるレポーティング機能も追加!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000059483.html
   
あなたの会社のリーダー・管理職は「部下の強み」を観察できますか?:相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が示唆する「リーダーの条件」とは?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/12062
    
ピアトラストお問い合わせ
https://www.peer-trust.com/contact/
   
ピアトラストの効果まとめページ
https://www.peer-trust.com/research/2020/
    
 ーーー 
    
【注目!:中原研究室記事のブログを好評配信中です!】
中原研究室のTwitterを運用しています。すでに約34000名の方々にご登録いただいております。Twitterでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記からフォローをお願いいたします。
   
中原淳研究室 Twitter(@nakaharajun)
https://twitter.com/nakaharajun
 
 

ブログ一覧に戻る

最新の記事

あなたの組織には「社員の主体性」をねこそぎ刈り取る3つの要因がありませんか?

2024.5.10 08:32/ Jun

あなたの組織には「社員の主体性」をねこそぎ刈り取る3つの要因がありませんか?

同じようなビルと、同じようなテナントが、果てしなく続くユートピア!?

2024.5.7 08:35/ Jun

同じようなビルと、同じようなテナントが、果てしなく続くユートピア!?

あなたの周囲では「従事軍」を見かけませんか?:モリモリに盛った「職務経歴書」の裏側にあるもの!?

2024.5.6 16:14/ Jun

あなたの周囲では「従事軍」を見かけませんか?:モリモリに盛った「職務経歴書」の裏側にあるもの!?

「わたしがチームから抜けたら、仕事が回らない」はイリュージョン(幻想)である!?

2024.5.3 08:41/ Jun

「わたしがチームから抜けたら、仕事が回らない」はイリュージョン(幻想)である!?

「余人をもってかえがたい」は「組織を腐らせる」!?

2024.5.1 08:35/ Jun

「余人をもってかえがたい」は「組織を腐らせる」!?