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2021.10.5 07:50/ Jun

自分たちの仕事の未来は、自分たちで決めていくほかはない!?

「どんな条件でいかに働けるか」は「闘いの歴史」なのである
   
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 中原研では、今年、D3の辻和洋さんが博士論文にチャレンジしています。辻さんの博士論文は「ジャーナリストが調査報道を成立させるために組織内で行っている資源動員」にまつわる研究です。
  
 ジャーナリストは「専門職」ないしは「準専門職」といわれる、いわゆるプロです。しかし、一方で、彼らは「新聞社」という「組織」に所属する「組織人」でもあります。
 この「ねじれ」と「葛藤」をいかに乗り越えていくのか、ということが、おそらく、この論文の根幹であり難しさであり、面白さでしょう。
  
 指導教員としては、彼が、何とか論文をまとめあげ、「Dr. Tsuji」「つじ・Ph.D」になっていくことをサポートしたいと思っています。
  
 辻君、頑張れ!
  
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 ところで、辻さんの論文フレームワークを昨日見つめていて、つくづく思ったことがあります。
  
 それは、冒頭に掲げたとおり、
  
「どんな条件でいかに働けるか」は「闘いの歴史」なのである
  
 ということです。

 とりわけ、ある仕事が、「専門職」ないしは「準専門職」として自らを確立していくためには、1)自らがそれに値する集団であること、2)明確で体系的な知識体系をもっていること、そして、3)その仕事を為すひとびとたちは「連帯」していることを、社会に対して、これでもか、これでもか、と継続的に示し続けなければならないのです。
  
 具体的には(辻さんによると)、専門職の条件は、下記のように整理できるようです。興味深いことです。
    
■専門職の条件(江尻 1968)
 1.高い知識と技術を基盤にもつ
 2.高度な教育訓練
 3.社会的責任感と職業的使命感
 4.倫理基準や綱領
 5.職業団体の組織化と職業的水準の維持・向上
 6.資格要件を定め、これを検定する制度
  
 こうしたものを、専門職になりたいひとびとが、自ら整備して、体系化して、確認しあって、それに見合わない不適合者をしっかり排除し、クオリティを保つ仕組みをつくってこそ、はじめて
  
「社会は、ある仕事を、専門職と見なしてくれる」
  
 ということです。
     
  ▼
  
 歴史的に、いくつかの恵まれた職業をのぞいて、最初から「専門職」として認知されていた職業はありません。
  
 自らの「仕事」が「専門職」に値する職業であるとの主張を、その仕事につく人々が集まり、意識をあわせ、活動を開始していく。
 そこには「内部の関係者の思いの統一」がまずは存在するはずです。そのうえで「内部関係者の知識獲得状況、それを用いた社会への価値提供の現状を見える化」していくことが求められます。だから、ここには自分たちの仕事を相対化する、R&D(リサーチ機能)が必要なのです
    
 それが終われば、次は「外部に向けての主張」です。
 今度は、自らの「職業」が「専門職」に値する職業であるとの主張を、社会に対して声高におこない、倫理綱領、知識体系などを整備して、専門職団体をつくり、ポリティカルパワーを行政・政治に誇示いきます。
  
 かくして
  
「ある仕事」は「専門職」になっていく
    
 のです。
    
 まことに興味深いことですね。
    
  ▼
    
 世の中には、さまざまな仕事があります。
       
 その中には、専門職や準専門職をめざしているもの、待遇の改善をめざしている仕事など、さまざまなものがあります。
       
 しかし、ある職業を社会に認知させ「専門家」たらしめるのは、まずは「内部の力」です。まずは、そうした「内部の意識」を統一し、力を結集できるかどうか。内部の現状、内部関係者の有する知識体系、内部の社会貢献状況を「可視化」できるかどうか。
   
「内部の力の結集さえできない職業」に、社会的認知の向上はありえません・・・少なくともいくつかの恵まれた職業をのぞき、歴史のうえでは。
   
 そして、逆にいうと、残酷かもしれませんが、下記のような命題もまた真実です。
    
 業界内部ですら意識を統一できない「仕事」は、いつまでたっても、社会的認知はあがらない
    
 業界内部ですら意識を統一できない「仕事」は、いつまでたっても、よい条件で仕事を行うことができない
   
 口をあけて待っていても、仕事の条件を、他人があげてくれることは、ごくごく希なのです。
 自らの仕事の未来は、結局は、自分たちで決めるほかはないのです。少なくとも歴史的にはね。
  
 そして人生はつづく
  
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相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が導入された職場では、職場のメンバー同士が、お互いの日々の仕事を観察し、そこにキラリと光るものがあったときに「称賛カード」というものをメッセージとともに送りあいます。1カ月間は無料トライアルだそうです。ご興味があえば、ぜひ、ご利用くださいませ。
     
強みの自己認知と意欲を高める『ポジティブ1on1』
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000059483.html
   
仲間から実際に認められた行動のデータから、自身の強みと職場での関係を定期的に把握できるレポーティング機能も追加されました。職場における相互称賛を、自分の強みの発見と目標設定に役立てられます。
 
自身の強みと職場での関係を定期的に把握できるレポーティング機能も追加!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000059483.html
   
あなたの会社のリーダー・管理職は「部下の強み」を観察できますか?:相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が示唆する「リーダーの条件」とは?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/12062
    
ピアトラストお問い合わせ
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ピアトラストの効果まとめページ
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