NAKAHARA-LAB.net

2021.9.15 08:16/ Jun

心ゆくまで知的に暴れよ!:若者には「自己強化」と「可塑性」というスゴイ味方がある!?

 若いみなさんには「自己強化」というメカニズムが存在します。ここで「自己強化」とは「自ら築いた、自分のイメージどおりのひとに、自分を伸ばして、高めていけること」と考えましょう。
     
 もちろん、自己強化の中身には、ときに「壮大な勘違い」をたまにふくむかもしれません(笑)。が、、、若い頃には、それもご愛敬。自分で、勝手に、自分のイメージをアップデートして、思い切り伸びていけばいいのです。
       
 たとえば、よく知られていることに「強みの自己強化」があります。自分の強みに気付き、高い自己効力感(わたしは、やればできるという自信)をもてているとすると、「自分で自分のイメージを強化」して、その後、社会人になったあとでも「自信をもってふるまい」累積的に仕事へのパフォーマンス、健康レベル、Well-being系項目を高め続けることが、かずかずの研究で知られています。。
    
 また、リーダーシップも「自己強化」です。
 若い頃に、リーダーに選ばれ、さまざまな影響力を行使できる経験をもったひとは、やはり「自己強化」のメカニズムが駆動します。
  
 先行するリーダー経験は、さらなるリーダー経験を後続させるのです。かくして、ひとは「自分はリーダーにたる人材」だと考えるようになります(Oliver et al. 2011)。いわゆる「リーダーシップアイデンティティ」を獲得していくということです。
    
 自己強化に加え、若い頃には「可塑性」というものが存在します。要するに「おっさん」や「じじい」よりは「変わりやすい」「敏感性」をもつということですね。
    
 ここから導き出される結論は、人生でもっとも大切な時期に「鉄は熱いうちに打った方がいい」ないしは「心ゆくまで知的に暴れた方がいい」ということに尽きます。
 効率性の面から考えて、年齢があがって可塑性が下がってきたあとに(もちろん、手遅れではないですよ・・・)
  
「やれ、自己効力感をもちましょう」
「やれ、仕事の自信をもちましょう」
「やれ、リーダーになりましょう」
  
 といっても、年配の方には、若い人では当然駆動する「自己強化」のメカニズムも「可塑性」も存在しません。
  
 だから、若いうちはめちゃくちゃ大切なのです。
 若いとは、それだけで「武器」です。
 若いとは、それだけで「貴重な資源」なのです。
  
  ▼
  
 ひるがえって、日本の若年層の現状は、これに照らして、決して芳しいものとはいえません。
   
 財団法人・日本青少年研究所がかつておこなった、一連の高校生調査では
  
「私は人並みの能力がある」
  
 という質問項目に対して、「とても」と答える割合は米国は56%、中国は33%・・・日本はわずか「7%」です。自分の「強み」を意識できているひとは、相対的に低いのです。
  
 一方、「自分はダメな人間だと思うことがある」という質問項目に対して、この内容を肯定してしまう高校生の割合は、米国が45%、中国が56%・・・なんと日本では「73%」です。日本人が、この手の質問に対して謙虚かつ自虐的に答える傾向があることをさしひいても、なんと日本の若者の7割が「日本をだめな人間」だと考えています。
     
 また同研究所は、最近、社会貢献に関する意識調査もしています。
 この報告書を読んでいると、暗澹たる気持ちにもなってきます。自己イメージはあまり高くは無く、「自分には社会は変えられない」「政治や社会より自分のまわりのことが重要だ」といったような諦観に誓い意識がすけてみえます。
  
 自分の周囲にあるものに「変化」をもたらすことに、自己効力がもてない、自信がもてないことが見て取れます。
       
  ▼
   
 やっぱり若い自分だと思うのです。
  
 10代からできれば20代の若い頃に、「壮大な勘違い」を含めて、自分の強みに気付き、様々な物事にふれ、多様なものに揉まれる経験をもつこと。
  
 自己強化のメカニズムと可塑性が、まだまだ、駆動しているときこそ、チャンスなのに、と思います。そして、その可能性をまだ信じているから、僕は、大学に勤めているのだとも思います。
   
 心ゆくまで知的に暴れてください。 
 ひとは、イメージしたものの先にしか、なれません。
   
 他人に「壮大な誤解」と後ろ指をさされようが、なにしようが、知ったことではありません。
 他人にとやかくいう人間が、その他人の未来まで保障した事例は、わたしは知りません。
     
 シャバの原則は「お好きになさいな」です。
  
 「自己の強みをいかして、物事に貢献するイメージ」を解像度高く、豊かに持ちましょう!
教室を出れば、事を為すのみ!
  
 そして人生はつづく
      
  ーーー
       
新刊「チームワーキング」おかげさまで「重版」を重ねております。応援いただいた皆様に心より感謝いたします。さらに、新刊「チームワーキング」がオンライン管理職研修になりました。JMAMさんからのリリースです(共同開発をさせていただいた同社の堀尾さん、ありがとうございました。中原は共著者の田中聡さんと監修をつとめさせていただきました)。どうぞご笑覧ください! 
   
    
 
https://amzn.to/3esCOrW
    
新リリースしました! 「チームワーキング研修版」
https://www.jmam.co.jp/hrm/course/training/twk.html
          
すべてのリーダー、管理職にチームを動かすスキルを!
ニッポンのチームをアップデートせよ!           
     
 ーーー    
       
【立教大学大学院で大学院生として学びませんか?】
 立教大学大学院 経営学研究科 リーダーシップ開発コースでは、経営学を基盤にしながら、人材開発・組織開発・リーダーシップ開発を実践できるアカデミックプラクティショナーを養成しています。別名、「ひとづくり・組織づくりの大学院」です。
 授業は「フルオンライン」。授業は金曜日夜と土曜日だけ行われており、2年間で、修士(経営学)が取得できます。
   
 リーダーシップ開発コースの入試説明会を2021年9月18日(土曜)午前中に開催させていただきます。来年2月の入試・コースのご説明をさせていただきます!3期生の募集になります!ご興味がおありの方は、ぜひ、お申し込みくださいませ!
   

   
【お申し込みはこちら!】2021年9月 リーダーシップ開発コース説明会開催・申込み方法について
https://ldc.rikkyo.ac.jp/news/2021/20210730/
   
 なお、在学生などの声、リーダーシップ開発コースでの授業の様子について知りたい方は、ぜひ、下記のニュース欄をお読みくださいませ!
  
ひとづくり・組織づくりの大学院での「学び」とは?
https://ldc.rikkyo.ac.jp/news/
   
  ーーー
     
新刊「働くみんなの必修講義 転職学」好評発売中です!どうかご高覧くださいませ! ひとが会社を辞めなくなるのはなぜか(それを防止するためにはどうすればいいのか)?、どのような転職活動を行えば、納得のいく転職が可能になるのか、そして、どのように新たな組織に自ら適応するのか。転職にまつわる、これらの「問い」に対して、1万2000人の大調査を通して答えをだしました。パーソル総合研究所、パーソルキャリア、中原の共同研究成果です。ご高覧くださいませ!
   

   
  ーーー  
       
拙著「経営学習論」の増補改訂版が、東京大学出版会より刊行されました。新たに「リーダーシップ開発」の章を追加し、カバーの装いも変わっています。人材開発の基礎的な理論を体系的に学べる一冊です。どうぞご高覧くださいませ!
      

    

      
  ーーー
     
【好評発売中】1on1の失敗・成功ケースをまとめ、映像教材を中原とPHP研究所さんとで開発しました。失敗しない1on1について、具体的なイメージをもって学ぶことができます。どうぞご笑覧くださいませ!
     
上司と部下がペアで進める 1on1 振り返りを成長につなげるプロセス
https://www.php.co.jp/dvd/detail.php?code=I1-1-061
   
  ーーー
   
【祝・eラーニング完成!】中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース完成しました。リーダー・管理職になる前には是非もっていたいフィードバックスキルを、PC、スマホ、タブレット学習可能です。ケースドラマでも学べます! 
     
中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース:Youtubeでデモムービーを公開中!
https://youtu.be/qoDfzysi99w
   
「実践!フィードバック」コース ありのままを共有し、成長・成果につなげる技術(PHP)
https://www.php.co.jp/el/detail.php?code=95123&fbclid=IwAR2he6Z_PTe3YiahcnCv3z9pNRXvrajPwVaRS8LLAYFkbWVH167qHDfYF5Q    
  
 ーーー
   

     
「組織開発の探究」HRアワード2019書籍部門・最優秀賞を獲得させていただきました。「よき人材開発は組織開発とともにある」「よき組織開発は人材開発とともにある」・・・組織開発と人材開発の「未来」を学ぶことができます。理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
    

     
 ーーー
      
拙著「職場学習論」(東京大学出版会)のカバー・装いが10年ぶりに変わりました(内容は変わっていませんのであしからず!)。ひとは、職場でどのようにして学ぶのか、というテーマを考察しています。どうぞご高欄くださいませ!
    

    

      
 ーーー
    
新刊「中小企業の人材開発」(中原淳・保田江美著、東京大学出版会、2021年)マニアックなガチ・学術研究書なのですが、発売10日で重版出来となりました。ありがとうございます。中小企業の人材開発メカニズムに接近を試みています。どうかご笑覧くださいませ!
  

   
 ーーー
        
中原研究室では、一般社団法人ピアトラストさんとの共同研究で、相互称賛アプリ『Peer-Trust(ピア・トラスト)』の研究を行っています。
       
相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が導入された職場では、職場のメンバー同士が、お互いの日々の仕事を観察し、そこにキラリと光るものがあったときに「称賛カード」というものをメッセージとともに送りあいます。1カ月間は無料トライアルだそうです。ご興味があえば、ぜひ、ご利用くださいませ。
     
強みの自己認知と意欲を高める『ポジティブ1on1』
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000059483.html
   
仲間から実際に認められた行動のデータから、自身の強みと職場での関係を定期的に把握できるレポーティング機能も追加されました。職場における相互称賛を、自分の強みの発見と目標設定に役立てられます。
 
自身の強みと職場での関係を定期的に把握できるレポーティング機能も追加!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000059483.html
   
あなたの会社のリーダー・管理職は「部下の強み」を観察できますか?:相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が示唆する「リーダーの条件」とは?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/12062
    
ピアトラストお問い合わせ
https://www.peer-trust.com/contact/
   
ピアトラストの効果まとめページ
https://www.peer-trust.com/research/2020/
    
 ーーー 
    
【注目!:中原研究室記事のブログを好評配信中です!】
中原研究室のTwitterを運用しています。すでに約34000名の方々にご登録いただいております。Twitterでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記からフォローをお願いいたします。
   
中原淳研究室 Twitter(@nakaharajun)
https://twitter.com/nakaharajun
   

ブログ一覧に戻る

最新の記事

褒め方ひとつ間違えると「怯える、いい子」を量産してしまうメカニズムとは何か?

2024.4.24 08:22/ Jun

褒め方ひとつ間違えると「怯える、いい子」を量産してしまうメカニズムとは何か?

2024.4.17 23:54/ Jun

給特法、および、それにまつわる中教審審議に対する私見(中原淳)

たかがタイトル、されどタイトル!?: 研究タイトルを「一字一句」正確に書いてきてね!

2024.4.17 08:17/ Jun

たかがタイトル、されどタイトル!?: 研究タイトルを「一字一句」正確に書いてきてね!

2024.4.15 08:05/ Jun

「タイパ重視の時代」だからこそ「時代遅れ!?のラーニング」を楽しむ!

2024.4.15 07:29/ Jun

【参加費無料】リーダー育英塾2024募集開始!:特色ある学校づくり+持続可能な学校づくりを進めたいあなたへ!