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2021.7.14 08:24/ Jun

ニッポン全国に感染拡大中、「他者決定病」という深刻な病!? : 僕が「自己決定」にこだわる理由!?

 僕が普段から、口が酸っぱくなるほど、学部生に言い続けていることは、
   
「自分たちの未来は、自分で決めなさい」
   
 です。
    
 たぶん、うるさいオヤジ(小うるさいパパ!?:最近、パパキャラでいじられている)と思われているとは思いますが、常に同じことを、いつも、いつも、言い続けている(笑)
  
 中原ゼミの運営にも、この主張は反映されています。
 中原ゼミは、ゼミの活動をすべて学生の「自己決定」にもとめています。
  
 学生が話し合い
 学生が決めて
 学生が実行する
  
 このことだけを、愚直に実行してきました。
  
 じっくり話し合ったすえに、自己決定して、自分で実行すること。
 これができれば、たとえ、その先に、どんな未来が開けようとも、納得ができる。こうした「話しあい」ができる「胆力」は地味だけれども、必ず、将来、役に立つ。
   
 なので、僕は、極力、決めごとには口をださないようにしています。
(実際、ゼミの採用ふくめ、あらゆる決め事に、僕はまったくタッチしません。もちろん、求められれば助言などはします)
  
 僕が口にするのは、
  
 自分の未来は、自分で決めなさい
  
 これだけです。
  
  ▼
  
 なぜ、僕が、ここまで「自己決定」にこだわるのか。
  
 それは、これまで20年にわたり、学生やビジネスパーソンを見つづけてきて、彼らのなかには、ある「共通の病」にかかっているひとが少なくない、と思うからです。
  
それは「自分の人生を、自分自身で決めたことがない」という病。
「自己未決定病」・・・・別の言葉でいえば「他者決定病」「他人の物差しで決定病」です。
   
 要するに、このシャバには、自分の外側にある「別の主体」「別の基準」で物事を決めているひとが、本当に多いということです。そしてその結果、猛烈な「やらされ感」「主体性のない生活」を強いられている、と思ったからです。やりたくないのに、やらされている。いたくないのに、ここにいる。これをしたくないのに、している。
  
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 なぜ、この大学にきたの?
 いや、そのくらいの偏差値だったから
   
 なぜ、この学科を選んだの?
 高校の先生が、ここにしなさいって言ったから
  
 なんで、これを学んだの?
 いや、親がここにしなさいって言ったから
  
 なんで、この会社に入ったんですか?
 いや、何となく、ゼミの先輩がいいっていったから
  
 なんで、リーダーになったんですか?
 いや、年次で
  
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 あたかも「トコロテン」が押し出されるように、何も自分で決めず、生きる。
   
 その結果、
  
「こんなはずじゃなかった」
「わたしは本当は、ここにいるべきではなかった」
「わたしには、本当の自分が、どこかにいるはずだ」
  
 となります。

 要するに「幸がうすい状況」が追い込まれる。
   
 西村和雄先生、八木匡先生らの研究によると、自己決定は主観的幸福感に影響を与えることが例証されています。
  
 下記の図に見るように、自己決定できることが主観的幸福感に与える影響は、学歴や世帯年収よりも大きいことがわかっています。学歴にいたっては、統計的有意(n.s)ですらありません(下図は西村・八木2018 p27より引用)。
   

   
西村和雄・八木匡(2018)幸福感と自己決定―日本における実証研究. https://www.rieti.go.jp/jp/publications/summary/18090006.html
  
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 また、これが行きすぎて、ひどいときには、もうニッチもさっちもいかない状況まで追い込まれます。キャリア上「つんで」しまう。
  
 今から10年くらい前でしょうか、40歳くらいの、ある超有名企業につとめる管理職の方が、自分のマネジメントに悩み、ふと、もらしたひと言が忘れられません。
  
「先生、お恥ずかしながら、僕は、40歳になるまで、自分で決めたことがないんですよ。管理職って、決めなきゃならないんですよね・・・」
  
 45¥0歳になって「自分で決めたことがない」という言葉を吐露しながら、悩むひとに、僕は、ただちに、かける言葉が見当たらないのです。
   
  ▼
    
「自己決定する」とは「自分のアイデンティティを保つ」ということであり、「自分の人生」をしっかり生ききる、ということです。
    
「他者の人生」を生きるのでも無く
「他人のつくった物差し」の上を生きるのでもありません。
  
 また「自分で決める」ということは「自分の名前を生きること」でもあります。
  
 かつて石垣りんは「表札」という詩において、そのことをうたいました。ぜひ、これからを生きる学生のみなさんには、ぜひ「自分の表札」をもって、自分の居を構えて欲しい、と願っています。
  
 ・
 ・
 ・
  
 ま・・・学生のほうは、また朝っぱらから、
 先生のお説教がはじまった、と思ってるだろうけどな。
      
 そして人生はつづく
      
  ーーー
  
「表札」石垣りん
  
自分の住むところには
自分で表札を出すにかぎる。
  
自分の寝泊まりする場所に
他人がかけてくれる表札は
いつもろくなことはない。
  
病院へ入院したら
病室の名札には石垣りん様と
様が付いた。
  
旅館に泊まっても
部屋の外に名前は出ないが
やがて焼き場の鑵にはいると
とじた扉の上に
石垣りん殿と札が下がるだろう
そのとき私がこばめるか?
  
様も
殿も
付いてはいけない、
  
自分の住む所には
自分の手で表札をかけるに限る。
  
精神の在り場所も
ハタから表札をかけられてはならない 
石垣りん
それでよい。
    
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