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2021.5.11 07:49/ Jun

あなたの会社にあるのは「職場」ですか「チーム」ですか?

フルリモートワークが導入されている会社には「職場」はあるのか?
  
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 せんだって、あるエンゲージメント調査の件で、パーソル総合研究所の種部吉泰さんと打ち合わせをしていた際、少し盛り上がったことがありました。
  
 私どもが議論で盛り上がったことは、
  
 フルリモートワークが導入されている会社に「職場」はあるのか?
  
 というテーマです。
  
 といいますのは、現在取り組んでいる、あるエンゲージメント調査の質問項目が、当初、下記のようなものだったのです。
  
 自分の職場では・・・・である
 自分の職場には・・・・の雰囲気がある
  
 質問項目の再検討の際に問題になったのは、上記の文言のうち、この「職場」という言葉です。
  
 昨今の会社・組織のなかには、フルリモートワークが導入されている部署もあるなかで、「職場」という言葉が含まれる質問項目は、一般の従業員の方々にピンとくるのか、来ないのかが、ということが、議論の的でした。
   
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 一般に「職場」ということばからひとびとが想起してしまうイメージは「物理的空間」です。職場には「場=物理的に占有する空間」という言葉が含まれておりますゆえ、どうしても、ひとびとは、職場という言葉から「対面状況でのオフィス」を示唆してしまうのであろうと思われます。
  
 この考え方に従えば、フルリモートワークが導入されている企業には「職場」は「ない」ということになります。ないしは、フルリモートワークが導入されている組織では、ひとびとは職場をあまり意識しない。
 この場合、先ほどのこの質問項目には、答えにくい、だから変えなくてはならないということになります。
  
  ▼
  
 一方、学問的に考えるのであれば、職場とは、1)共通の目標をめざす、2)普段から社会的相互作用を有し、3)相互の仕事に関連があるような社会集団、ということになります。
  
 この定義によれば、職場は「物理的な空間」を必要としません。「場=物理的に占有する空間」がなかったとしても、ひとびとのあいだに「共通の目標・相互作用・仕事の関わり」が存在すれば、そこには「職場」がある、と考えます。
  
 しかしね、、、学問的にはコレクトでも、一般の方々にとってはどうなんだろう、という問題が残りますね。
  
 もっとも懸念するのは、
   
 職場って言われたってよ
 うちはテレワーク導入されてるから
 そんなもん、わかんねーよ
 だって、オフィスに全然いってないじゃん
 だから、この質問項目には、答えられないよ
  
 となるのではないだろうか、ということでした。
  
 結局、すったもんだ議論をした結果、わたしたちは、「職場」の文言を消しました。かわりに用いたのは、チームです。
   
 自分のチームでは・・・・である
 自分のチームには・・・・の雰囲気がある
  
 職場よりも、チームの方が、「物理的な空間」を想起してしまわないだろうという判断で、このような緊急的対応をとりましたが、どうだったでしょうか・・・。
  
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 今日はテレワークで揺れる「職場」という概念について書きました。ささいなことに感じられるかもしれませんが、これは僕にとってはゆゆしき問題です。なにせ、わたしは「職場学習論」(東京大学出版会)という研究書の著者ですので(笑)。自分の著書、研究の中心概念が、今、揺らいでいるのです(笑)
  
 しかし、一方で、こうも思うのです。
  
 職場学習論が企画されていたのは、今から、10年以上も前のことです。おそらく、この書籍も、新たな研究によって塗り替えられる、アップデートされるときなのかもしれません。
  
 それは、素晴らしいことのように思います。学問の発展は、「以前の否定」「以前からのズレ」からはじまるのですから。喜んで「上書き保存」されちゃうことを選びとり、自らは、さらに新しいことを為していきたいものです。
  
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 あなたの会社には「職場」はありますか?
    
 コロナ禍に苦しむいま、あなたは「職場」という言葉がピンときますか?
  
 あなたの会社にあるのは「職場」ですか「チーム」ですか?
  
 そして人生はつづく
  
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